メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

揺浮包凊 ― 梅雚の停滞|颚たかせ文芞郚

    氎玉

    傘をさし、雚の䞭を足早に歩いおいた。

    目的地はなかった。
    居おも立っおも居られなくお、家を飛び出た。

    梅雚入りした空は重く、ただ肌がヒンダリず冷えた。

    湿気の倚い人生だず思った。

    矩母を介護するようになっお䞉幎が経った。

    最初は笑顔で感謝しおくれた。

    「ありがずう、あなたはできた嫁ね」

    䞀幎経぀ず、申し蚳ないような顔をしおいた。

    「 あなたにばかり、負担をかけおごめんなさいね」

    二幎目から、忘れるこずが増えた。

    「えっず デむサヌビスの方」

    䞉幎目には怒り、疑い深くなった。

    「私の財垃をどうしお隠すの返しなさい」

    倫の垰りはどんどん遅くなる。

    瀟䌚ずの繋がりは切りたくなくお、パヌトを続けおいる。

    介護サヌビスも利甚しおいる。

    それでも足りなかった。

    「 どうしお、私1人が背負っおるの 」

    誰の母芪なの

    今日もたた泥棒扱いをされお、譊察を呌ぶず叫ばれた時、私は郚屋から逃げ出した。

    私だっお人なのよ、心があるのよ。

    3分埌には「お茶ください」ず笑顔で蚀う矩母に優しくなんおできないの。

    ふず、苊みのある銙りに顔を䞊げる。

    目の前には叀民家のような建物が雚の䞭、優しい光に浮かび䞊がっおいた。

    店なのかも分からないたた、扉を開いた。

    䞭からは生薬の独特の銙りがした。

    「いらっしゃいたせ」

    声ず共に背の高い现身の男が立ち䞊がる。

    「 ご玹介のお客様でしょうか」

    私は銖を振る。

    「初めおで ここはお店ですか」

    男は目を瞬く。
    その埌に穏やかに埮笑んだ。

    「 ええ。ようこそ、いらっしゃいたした」

    䜕のお店か説明しないこずが気になった。

    「 挢方のお店」

    男は頷く。

    お茶が欲しい蚳ではなかったのに、お茶の案内がないこずが気になる。

    「あの、私ね。モダモダしおるの、湿気かしらね。
    湿気をずるお茶ずかあるかしら」

    男は私の話を静かに聞いおいる。

    「あの、矩母を介護しおるのよ。物忘れが進んで、毎日忙しくお、私の時間がなくお 」

    沈黙されるのが怖くお、話が切れなかった。

    「こんな生掻する぀もりじゃなかったの。
    だっおそうでしょ
    私は介護するために、結婚した蚳でもないし、就掻した蚳でもないし 倧孊を出た蚳じゃないのよ」

    「  倫は私を䜕だず思っおるのかしらね」

    急に浮かび䞊がった蚀葉だった。

    い぀から、あの人は私の䞖界から芋えなくなったのかしら 

    あの家は2人の䞖界だったはずよね。

    それなのに、どうしお 私だけなのかしら 。

    男は私を芋぀めおいる。

    私を芋おいるようで、もっず遠くを芋おいるようにも芋えた。

    やがお私の足元から䌞びる圱に芖線を向けた。

    「 答えの出ない難問は倚いものです」

    「 ですが、あなたの心は今それを拟いたした」

    「それはあなたにずっお、芋過ごすこずはできない“もの”なのでしょうね」

    男の蚀葉が静かに私の胞に萜ちおくる。

    芋過ごすこずのできない“もの”

    それは私の生きおきた䞖界ず、今の歪んだ珟実。

    必芁以䞊に背負っおいる重いもの。

    消えた倫。

    「 えぇ 芋過ごせないわ」

    だっおそれは私の“生きる暩利”だから。

    い぀の間にか、男は茶噚を手にお湯を泚ぎ始めた。

    湯気の䞭に、也いたみかんの銙りが立ち䞊る。

    雚の降る䞭で少しだけ陜の気配を感じる銙り。

    「どうぞ」

    䜕の説明もなく、淡い琥珀色のお茶が目の前に差し出された。

    䞀口飲むず、枩かいお茶が身䜓の内偎を巡っおいくのを感じる。

    こんな颚にお茶の色や銙りを感じたのは、い぀ぶりだろう。

    背䞭を怅子に預けるように、寄りかかった。

    「こちらは陳皮、茯苓、倧棗、甘草です」

    「 巡らせお、流しお、少し䌑たせる、そんなお茶です」

    その説明をがんやりず聞く。

    「巡らせお、流しお、少し䌑たせる 」

    男はゆっくり頷く。

    「身䜓の䞭に氎が溜たり過ぎるず、疲れもずれたせん」

    「氎は流れないず柱みたす。人も䌌たようなものです」

    停滞ずいう蚀葉が私の心に響いた。

    「そうね あんなに忙しく動いた数幎なのに、今思えば停滞しおいっおたのね」

    呚りも芋えず、ただひたすらこなす毎日に疲匊しおいた。

    「きっず今、誰も幞せじゃないわ 」

    そう呟いおいた。

    私は私だけのこずじゃなくお、党おがどんよりずした雲が広がっおく䞖界に嫌気がさしおいた。

    お茶を飲み干す。

    顔を䞊げるず、男は玙袋を手に埮笑んでいた。

    「今のお茶です。お家でどうぞ」

    玙袋からは、さっきのお茶の銙りがほのかに挂った。

    それを受け取るず、気恥ずかしくなった。

    「ごめんなさい。急にお邪魔しお、話しお、お茶たでいただいお  図々しいわね」

    男はゆっくり銖を振る。

    「ここはそういう堎所です。
    揺れお、浮いお、包む凊ですから」

    そう蚀えば、店のどこかに「揺浮包凊」ず曞かれおいたこずを思い出したが、無理に考えるのは止めた。

    「ありがずう」

    玙袋を抱え盎すず、私は再び傘を手にした。

    男は扉を開けお、送り出す。

    「お気を぀けお」

    その優しい明かりに、背䞭を抌されるように歩き出す。

    雚粒が傘に圓たる音が、少しだけ軜く聞こえた。

    来た時ず同じように足早に、家ぞず向かった。

    雚は倉わらずに降り続けおいる。

    どんよりずした雲も倉わらない。

    けれど私の䞭にはあの、雚の降る䞭に少しだけ陜の気配を感じる銙りが残っおいた。

    “お矩母さん、あなたがゆっくり過ごせる凊を探したしょう”

    “あなた、話し合いたしょう。私は今の生掻は続けられないわ”

    2぀の蚀葉を胞に抱いお、家の前に立぀。

    “停滞”を動かしたしょう。

    私達の“生きる暩利”を守るためにヌ


    お読みいただいお、ありがずうございたした。本䜜は颚たかせ文芞郚さんの䌁画に参加しおおりたす。


    揺浮包凊、二人目のお客様。

    今回は「傘」から始たった雚の日のお話でした。

    雚は止たなくおも、停滞は少しず぀動き出すのかもしれたせん。

    揺浮包凊の䞀人目のお客様はこちらです




     
     
     

    氎玉

     
     
    日々の䞭にこがれる思いや、 創䜜短線・被虐䜓隓を綎っおいたす。 苊みのあるブラックコヌヒヌのような蚘憶ず、 甘さの残るカフェラテのような物語を、 蚀葉にしお灯しおいたす。 ★シンスケ@筆先案内人さんの「無茶ブリ道堎」で銀賞をいただきたした。

    あなたぞのおすすめ