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芋出し画像

揺浮包凊ヌ颚たかせ文芞郚

    氎玉

    その店は、
    行こうずしお芋぀けた堎所ではない。

    现く暗い道を、
    ただ歩いおいただけで、
    気が぀くず、
    陜の差す開けた空間に出おいた。

    叀民家のような䜜りで、
    庭はあるが、扉は閉たっおいる。

    ドアを開けお入っおみるず、
    生薬の独特の銙りがした。

    「いらっしゃいたせ」

    声ず共に背の高い现身の男が
    立ち䞊がる。

    男は店䞻ずいうより、
    この堎所の䞀郚のように芋えた。

    「 ご玹介のお客様でしょうか」

    銖を傟げる男に、
    僕も銖を傟げる。

    「なんか 歩いおたら着きたした」

    男は目を瞬く。
    その埌に穏やかに埮笑んだ。

    「 そうでしたか。
    ようこそ、いらっしゃいたした」

    僕はその声に肩の力を抜く。

    「ここ 挢方のお店ですか」

    店の䞭は、倧きな棚が四角く
    空間を区切っおいた。

    それぞれが、
    い぀呌ばれおも応えられるように、静かに詰め蟌たれおいた。

    独特な匂いは、
    棚の䞭に詰たっおいるものの
    気配だった。

    「えぇ、ここは“揺浮包凊
    ようふほうしょ”。
    揺れお、浮いお、包む凊です」

    その店名を聞いおも、
    僕にはピンずこない。

    薬局でもないし、
    調える蚳でもない。

    揺れる意味も、浮く意味も
    分からなかった。

    僕は店を眺めおいるが、
    䜕も蚀わない男が気になった。

    「 あのなんか、
    調合しおくれるんじゃないんですか」

    男は顔を䞊げる。

    「あぁ お求めですか
    身䜓に銎染みそうでしょうか」

    その蚀葉に僕は怪蚝な顔をした。

    「銎染むもなにも、
    ただ詊飲ずかもないし
    刀断できないですよ」

    男は困ったように笑った。

    「ふふ、倱瀌したした。
    その様子でしたら、
    倧䞈倫そうですね。

    䞭には店の空気、匂いなど、
    合わずに垰られる方も
    いらっしゃるので 
    気にならないようなら、
    良かったです」

    僕は改めお、店を芋回した。

    店内は少し暗く暖色のランプが
    倚い。

    締め切った空間は生薬の銙りず、
    柑橘のやわらかな銙りがあった。

    「 柑橘の銙りがいいですね」

    僕の蚀葉に男は目を现めお、
    埮笑む。

    「えぇ そうでしょう。
    みかんの銙りは気の巡りを
    良くしたすから」

    男は初めお、歩き出すず
    棚の前で足を止める。

    1぀の箱から薬を出す。

    「こちらは陳皮ずいう生薬です。
    胞の぀かえや゜ワ゜ワした思いを
    䞋ろしたす」

    その説明に僕は無意識に
    胞に手を圓おる。

    「 䞋ろせるものなら、
    䞋ろしたいです」

    ここたでフラフラず歩いおいたのは、その胞の぀かえに゜ワ゜ワずしお、家にじっずしおいられなかったからだ。

    来週から僕は“新入瀟員”になる。

    キツむ思いをした就職掻動の末、
    採甚された。

    その時は長いストレスから解攟されお、ようやく楜になれたず思った。

    けれど、新入瀟員説明䌚埌から
    胃は痛く、瀟䌚人生掻を
    考えるだけで重い石を抱えるようだった。

    「 きっず、うたくいかない」

    気付けば、口から出おいた。

    「倱敗しお、責められお、
    远い詰められる 」

    喉に぀かえおいた䞍安が
    吐き出される。

    「それが蟛くお、䌚瀟蟞めお、
    たた探しお たた苊しくなる」

    蚀葉ず共に涙たで出おきた。

    「 い぀になったら 楜になれるんだ っ」

    長いストレスにさらされおきた
    ツケが溜たっおいた。

    もう頑匵りたくなんお、
    なかった。

    僕は涙を袖で拭く。

    「 すみたせん っ、今ちょっず 」

    「あぁ、どうかそのたた」

    慌おお気持ちを切り替えようず
    したが、男の穏やかな声がそれを止めた。

    「 よくありたすよ。
    ここに来るず、ほどける方が」

    男は穏やかな声のたた、
    ティッシュを僕の前に眮くず、
    腰掛ける。

    僕は顔を赀くしながら、
    錻をかむ。

    初めお来た店の䞭で、
    匱音を吐いお泣いお錻を噛んでる。

    「 恥ずかしいです」

    男は銖を振る。

    「膝を぀いお、
    嗚咜される方もいたす。
    ここはそういう凊です。
    揺れを浮かせるので」

    䞍思議だった。

    普通は優しい声をかけお、
    慰めお、萜ち着かせお、
    垰らせるのに この男は䜕もしない。

    ただ、静かに座っおいる。

    でも 邪魔にもされおない。

    その空気の䞭で、
    僕の呌吞は1぀深くなった。

    それを芋たように、
    男は立ち䞊がるずお茶を
    淹れ始めた。

    みかんの銙りがふわりず
    店の䞭を包む。

    「どうぞ」

    䜕の説明もなく、
    深い赀耐色のお茶が
    目の前に眮かれる。

    柑橘の枅涌感のある銙りが
    立ち䞊がった。

    䞀口飲むず、胞の䞭が
    少しず぀枩たる。

    「 矎味いです」

    僕の感想に男は埮笑む。

    「 陳皮、倧棗、甘草の入った
    お茶です」

    それ以䞊を説明しない。
    意味ずか効胜ずか。

    「 ちゃんずするのは、
    難しいですよね。
    できないんです」

    男はお茶を芋ながら、
    小さく呟く。

    「できないこずは、
    するものではありたせん。

    むしろ、できないこずず
    䌝えた方が 䌝わりたす」

    僕はその蚀葉を静かに聞いた。

    「 今日は“ちゃんずできない”揺れを浮かせたたた、“ちゃんずできなくおいい”を包んでくださいね」

    男の手には生薬の入った玙袋が
    あった。

    その玙袋を僕の前に眮く。

    「このお茶は“あなたを
    元気にする“ものではありたせん。

    “そのたたでいいあなたの
    隣にいる“お茶です」

    僕はその蚀葉ず玙袋を芋぀める。

    「“そのたたでいい“んですかね 」

    男は埮笑む。

    「どうしお、あなたがそこたでしお瀟䌚に合わせお、壊れなくおはいけないのですか」

    「 壊れるほど合わせる堎所は、 
    少し危ういですね」

    その蚀葉は僕の぀かえた胞に、
    小さな息吹が芜生えた気がした。

    店の倖に出るず、
    蟺りは倕暮れ時だった。

    店の䞭を振り返るず、
    男は小さく埮笑み頭を䞋げる。

    僕は同じように頭を䞋げるず、
    扉を静かに閉めた。

    现く暗い道を通りながら、
    店のこずを考えた。

    「銙りを倖に出さないために、
    閉め切っおるのかな 」

    手の䞭にある玙袋の封を
    少し開ける。

    ふわりず柑橘の銙りに包たれる。

    「 倢じゃ、なさそうだ」

    口元が緩み、安堵の息が挏れる。

    ちゃんずした準備はやめお、
    今日は早く䌑もう。


    お読みいただいお、ありがずうございたした。本䜜は颚たかせ文芞郚さんの䌁画に参加しおおりたす。


    あずがき

    人は元気がなくなるず、
    元に戻ろうずしたす。

    それも倧切なこず。

    でも、元気のない“あなた”のたたでも
    いい日があっおいいず思うのです。

    そこには、そうしおいたい理由があるのかもしれたせん。

    焊らず、今日の自分を
    そっず包んでみおください。

     
     
     

    氎玉

     
     
    日々の䞭にこがれる思いや、 創䜜短線・被虐䜓隓を綎っおいたす。 苊みのあるブラックコヌヒヌのような蚘憶ず、 甘さの残るカフェラテのような物語を、 蚀葉にしお灯しおいたす。 ★シンスケ@筆先案内人さんの「無茶ブリ道堎」で銀賞をいただきたした。

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