
私が書いているファンタジーと、その世界に込めていること
この世界を書いている理由
私はこれまで、心身の調子を崩したり、今いる世界とうまく噛み合わないように感じたりする時期がありました。
うまく適応すること。
役に立つこと。
求められた役割を果たすこと。
もちろん、どれも社会の中で生きるうえでは必要なことだと思います。
けれど、それだけで人の存在まで測られてしまうと、少し息苦しい。
世界に合わせるために、自分の形を削り続けなくてもいいのではないか。
違うものは、違うまま存在していてもいいのではないか。
そのうえで、互いを切り離すのではなく、接点をつくる方法はないだろうか。
そんなことを考えながら、私は物語を書いています。
私が創っているファンタジー世界では、違うものを同じにしようとはしません。
分からないものを、すぐに意味づけたり、排除したりもしません。
境界を保ったまま、それでも接続する方法を探します。
自分を削って世界に合わせなくても、自分の形を保ったまま、世界との接点をつくることはできる。
こういう世界のあり方もある。
その可能性を、私は物語として置いてみたいのだと思います。
私が書いている物語
そうした思いから生まれた物語の中心に、カルナリアというファンタジー世界があります。
魔術があり、結界都市があり、軍や制度があり、
その中で人々が暮らしています。
一方で、カルナリアとは別の世界を舞台にした作品も書いています。
作品ごとに、雰囲気はかなり違います。
ここからは、それぞれの作品を簡単に紹介します。
はじめに読みやすい作品
装束師
雰囲気:和風/装束/祭祀/身分差/静かなロマンス
儀式のために斎主の身体を整える、平民出身の装束師・朔。
幼い頃から斎主として育てられ、自分の身体の苦しささえ言葉にしてこなかった澪。
公の場では澪が上。
けれど支度の場では、朔が指示し、澪がその手に身体を委ねます。
触れるのは仕事。
必要以上には触れない。
装束と儀式、身分と役割。
その境界に育つ、静かな和風ロマンスです。
※カルナリアシリーズとは別世界の物語です。
こんな方へ
身分差や職人ものが好きな方。
静かな関係性の変化を読みたい方。
触れることと触れないこと、その距離を楽しみたい方。

山を下りた魔術師
雰囲気:傾聴/再出発/茶屋/静かなバディ/少しシュール
五年間の山籠もりを終え、町へ下りてきた魔術師の短編連作です。
冒険者ギルド。
町外れの茶屋。
夕暮れの水路。
黒猫。
王都から来た宮廷魔術師。
舞台は、よくある異世界ファンタジーです。
けれど、彼女が探していたのは、
次の修行を与える師匠でも、
強い冒険者でもありませんでした。
やがて魔術師は、一人の旅人と出会います。
少しずつ町に居場所を見つけ、
自分の速度を保ったまま、
もう一度世界と関わっていく物語です。
※カルナリアシリーズとは別世界の物語です。
こんな方へ
少し変わった主人公が好きな方。
大きな事件と、平熱の会話の落差を楽しみたい方。
誰かが誰かを導くのではなく、隣にいる物語を読みたい方。

首都夜警
雰囲気:捜査/軍/警察/夜の首都/社会派ファンタジー
午後十一時四十八分。
首都の夜道で、一人の魔術師が四人組に襲われます。
金品は奪われていない。
犯人たちは、彼が魔術師であることを知っていた。
事件を追うのは、首都魔術師隊長グラントと、その部下たち。
そして首都警察隊です。
小さな手がかりを追ううちに、
捜査は、魔術師をめぐるこの国の制度や、人々の意識へと近づいていきます。
大きな謎解きよりも、
事件を追う人々の仕事と、その向こうにある社会を描いた物語です。
こんな方へ
テンポのよいファンタジーを読みたい方。
捜査ものや、軍・警察が協力して事件を追う話が好きな方。
カルナリアという国を、まず社会の表側から見てみたい方。

市井の魔術師 — カルナリア街角綺譚 —
雰囲気:日常/市井/暮らしの中の魔術
街で起きる小さな魔術の問題を扱う、
市井の魔術師リオンの物語です。
焼けすぎるパン窯。
夜になると子守唄が聞こえる家。
古い結界に残された祈り。
彼が扱うのは、国家を揺るがす事件ではありません。
人々の暮らしの中に残った、目に見えない困りごとです。
古いものを壊して新しくするのではなく、
残すべきものを見つけ、現在の生活と結び直していく。
カルナリアの街の温度を、もっとも近い場所から描く連作です。
こんな方へ
静かなファンタジーが好きな方。
暮らしの中にある魔術を読みたい方。
まずは短く、世界観に触れてみたい方。

しろみ
雰囲気:お茶/静けさ/水位回復/小さな休憩所
白い小さなきのこのような存在です。
お茶を出したり、ただそこにいたりします。
何かを解決してくれるわけでもありません。
けれど、少し疲れた時に、
そっと水位を戻してくれるような場所です。
※カルナリアシリーズとは別世界の物語です。
こんな方へ
静かなものが好きな方。
お茶や白湯や、小さな休憩所のような空気が好きな方。
物語の外で、少しだけ息をつきたい方。

カルナリア世界を深く読む作品
女神と番 — Resonantia —
雰囲気:神話/軍務/共鳴/静かな関係性
首都魔術師隊の隊長ランス・ヴァレンと、
百年ぶりに現れた女性魔術師エレイン・アルディアを中心とした長編です。
国家に守られ、同時にその力を必要とされてきた二人。
火を封じるランスと、
水のような深みを持つエレインは、
魔力の共鳴を通して、少しずつ互いの存在を知っていきます。
戦争や国家級結界を扱う大きな物語である一方、
中心にあるのは、二人の身体、沈黙、距離、そして生活です。
守られることと、管理されること。
役割を与えられることと、自分で選ぶこと。
軍人であることも、
誰かの隣にいることも。
国家に定められた役割だけではなく、
一人の人間として「どう生きるか」を選び直していく物語です。
こんな方へ
静かな関係性が好きな方。
人物の距離や身体感覚をじっくり読みたい方。
神話と行政、軍務と生活が同じ世界にあるファンタジーを読みたい方。
「守ること」と「その人の自由」の境界を描く物語が好きな方。

結界都市断章
雰囲気:制度/職能/記録/大人たちのファンタジー
異なる立場から、
カルナリアという国を支える人々を描く短編連作です。
軍服を仕立てる人。
式次第を整える人。
報告書を書く人。
食堂で兵士たちの盆を見る人。
彼らは、戦場の中心に立つ英雄ではありません。
けれど、誰かの力を安全に運用し、
誰かの功績を記録し、
誰かが明日も働けるように支える仕事をしています。
制度と生活のあいだで、
それぞれの責任を引き受ける人々の物語です。
こんな方へ
世界がどのように支えられているのかを見るのが好きな方。
戦いそのものより、戦後処理や制度や生活が気になる方。
大人たちが責任を持って世界を支える話が好きな方。

どこか気になる入口があれば、そこから物語に触れてもらえれば嬉しいです。
カルナリア王国の世界観や制度については、こちらの記事で紹介しています。