
シュンジさんのメガネ④(全5回)|アラフォーサラリーマンの人生再肯定ストーリー
シュンジさんは魔法少女のいた骨董品屋に息を喘がせながら辿り着きました。
「開けろ! 開けろ! このメガネは一体なんなんだ!」
そう喚きちらしてドアを叩き、窓を覗き込みました。魔法少女はあの日と同じく、深夜だというのに雑誌を読んでいます。

「開けろというのに! おまえは一体なにものなんだ!」
少女はようやくこちらを振り向き、フンと笑いながらドアを開けました。
「フフ、あなたね。ずいぶん男前になったじゃない、メガネとってもお似合いよ?」
「からかうな。こんなの見せかけだけのものじゃないか!」
そう言ってシュンジさんはメガネをかなぐり捨てようとしますが、やはりビクとも外れません。
「頼む、頼むよう、このメガネを外してくれ」
「言ったはずよ? そのメガネを通して見えるものから目を逸らさないで……って」
「まさかこんな醜い世界が見えるとは思わなかったんだ。許してくれ」
「許してくれですって?」
魔法少女はせせら笑いました。
「その醜い世界で成功したいと思ったのはあなたじゃない。そのメガネは魔人のメガネ、あなたが見たいと願った世界をそのまま見せるメガネなのよ?」
シュンジさんは愕然としました。こんなものが私の見たかった世界だって?
「そんなバカな。私はこんな世界を望んだりはしない!」
「今はね。けど、以前はどうだったかしら?」
「……」

シュンジさんは答えられませんでした。確かにすべてがモヤモヤしていたあの頃は、このメガネをかけた今のように、キラキラ輝く自分を望んでいたのです。
「まったく人間ていうのは、ワガママなものね」
魔法少女は呆れたように続けます。
「なりたいなりたいと願って、実際そう望んだものを手に入れると、今度はそれを捨てたいと言う。
足りなければ欲しいと言い、足りてしまえばモームリだと言う。
どこまでいっても際限がないの。
言っておくけど、あなたが今見ている世界は以前からこんな世界じゃなかったかしら?
ただあなたが目を逸らしていただけ、あなたはこんな歪んだ世界でキラキラしたいと、ずっと願ってきたんじゃない」
「私が間違っていた。頼む、元に戻る方法を教えてくれ!」
「ひとつだけ、そのメガネを外す方法があるわ」
「そ、それはなんだっ! 金なら幾らでも払うから……!」
必死にすがるシュンジさんを、しかし少女は冷たく見下ろしました。
「メガネを外すたった一つの方法……それは、そのやり方に自分で気づくことよ」
シュンジさんはその場にヘタヘタと崩れ落ちました。
ーー最終回に続くーー
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