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『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』最終巻感想|父が「母さんはかわいかった」と言った日

    ※ネタバレあり

    『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』は、2020年に連載が終了した植芝理一の最新作。あれから6年が経ったが、たまに読み返す作品だ。

    今回はその『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』の感想と、現実に起こった作品の一幕について書いていこうと思う。


    『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』最終巻の感想

    『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』は、主人公の鈴木実(すずき みのる)が、ふとした瞬間に亡くなった父親の記憶をフラッシュ・バックする、という物語だ。
    父親の記憶を通して、母親の学生時代を知り、現代の自分や母とリンクさせてゆく…。

    学生だった当時、1巻を読んで「ヒロインがお母さん!?さすが植芝理一だな!」と思ったし「初期の植芝理一なら、なんやかんやあってお母さんとくっつく展開もありそうだけど、今の作風ならどうなんだ?」と疑問だった。

    植芝理一の作品は『夢使い』の後半や『謎の彼女X』からは、かなり読みやすいというか、一般的に受け入れられやすいよう描写されるようになったと思う。(それでもマニアックなのには変わりないんだけど)

    初期の植芝理一作品なら、もっと危うい方向へ進んでいた気がする。
    でもこの作品はそうではなかった。

    最終巻で物語がこのように終結することに、ある種の感慨を覚えていた。
    主人公の鈴木実は、お母さんよりも好きになれる人を見つけられたのだ。


    個人的フラッシュ・バックの想い出

    そして、ここからは私の個人的な体験談になる。
    地元に帰省し、家族で飲み会をしていた時の出来事だ。

    *

    私は就職して家を出たのだが、用がある時はたびたび地元に帰省していた。帰省時には、家族で飲みに行くこともあった。

    父は饒舌なタイプではないので、ビールを飲みつつそこまで会話に入らなかった。

    私やきょうだい、母が主によく喋っていたのだが、ふと母が席を立ったタイミングで、ふいに父が写真を見せてきたのだ。

    それは母の若い頃の写真だった。

    小さな私やきょうだいも写っていて、母は大学生くらいにしか見えないほど若い頃だ。

    酔っ払った父は、それを見せながら、作中の主人公の父と同じことを言ったのだった。

    父さんが母さんと出会った頃、母さんはすっごくかわいかったんだ。

    植芝理一『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』/講談社

    エーーーッ!!
    父、漫画と同じこと言ってるよ…。
    本当にこういうことってあるんだなあ…。

    そしてその時、昔の出来事がフラッシュ・バックしてきた。

    *

    小学生の頃だろうか。
    父が、普段は寝室の押し入れにしまい込んでいるアルバムを床に広げていた。気になった私はそれを覗き込む。

    「何見てるの?」

    そのアルバムには、若い頃の父と母が写った写真が何枚も貼ってあった。

    「かわいいでしょ」
    「この写真撮る前、お母さんと喧嘩して泣いてたんだ」
    「昔はずっと髪長かったんだよ」

    アルバムを広げ、ウキウキと想い出話をする父の姿。

    私はその時、なんとなくすぐにその場から去ったが、「普段仲良く見えない2人にもこういう時代があったんだなあ」と思っていた。

    *

    私は話を聞きながら、その時のことを想い出していた。

    当時の父と母は、そこまで仲が良いとは思っていなかったので、少し意外だった。考えてみれば、仲良くなければ結婚なんてしないんだろうけど。
    親は子どもの前で、わかりやすくイチャイチャなんてしなかったから。

    うん、まあそうだ。
    確かに母の昔の写真はかわいい。

    本人的には、席を立ったタイミングでなく直接言って欲しかったり「今も可愛いよ」と言って欲しかったりしそうだけど。

    父は酔っ払いながらそんな話をしていた。
    昔の古い写真をスマホで撮り、いつでも見られるようにしていた。
    それを聞いた私はふと小学生の頃の一幕をフラッシュ・バックしたのだ。
    主人公の鈴木実と同じように。

    『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』で、主人公は「なぜ自分は父親の記憶がフラッシュ・バックするのだろう?」と悩んでいたけれど、これが答えのような気がする。

    「母さんは昔、こんなにかわいかったんだぞ」って自慢したかったんだな。


    まとめ 子どもの知らない親の青春

    親にも自分たちの知らない青春がある。

    子どもの頃の私にとって、両親はただの父と母だった。
    でも今になって振り返ると、父と母になる前は、一人の青年と少女だったのだなあと。

    『大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック』を読むたびに、父が見せてきたあの写真を想い出す。

    そんな話ですね。おしまい。


    植芝理一の作品紹介

    良い話だった。次回作も描いてほしい。

    主人公とヒロインがよだれを舐めさせる…という、ここだけ読んだら「いやヤバい漫画だろ」と思うかもしれないけど、植芝理一作品の中では一般受けしやすく描かれていると思う。

    アニメもあり、卜部の声がピッタリすぎて驚いた。おすすめ。

    一作目。これは絵柄がかなり違ったりするけど、相変わらず描き込みが凄かったり、ヘンタイ要素もある。でも純愛で、タイトル通り他者と繋がりたくても繋がれない人物がテーマの話が多かったりする。
    植芝理一作品は、全体的にノスタルジックで好き。

    新装版は紙しかないけど、未収録作品や当時・今の作者のコメントなどが収録されており、とても豪華。旧版は実家にあり、今は新装版を保管してる。

    なぜこの並びで植芝理一作品を紹介しているのかというと、個人的にマイルドで取っつきやすい順だと思っているからです。

    年表的には『ディスコミ』→『夢使い』→『謎カノ』→『大蜘蛛ちゃん』で
    取っつきやすさは『謎カノ』→『大蜘蛛ちゃん』→『ディスコミ』→『夢使い』だと思います。※個人の見解です。

    『夢使い』の1~3巻で、だいぶファンを振るい落としてゆくスタイルなので、そこが平気なら何でも大丈夫な気がする…。
    4巻以降は純愛で、一般受けしやすいと思う。続いてほしかったな。

    こちらもぜひ読んでみてくださいませ。今度は個人体験でなく作品メインの感想なども書きたいな。

    ではでは。

     
     
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