『寝かしつけ人募集』あとがき
今回もしくじってしまった。
尺(文字数)の見誤りである。
5000文字で書くべき話ではなかった。長編ではないが、もう少しゆとりが必要だった。以前の『サトゥルヌスの午餐』は、SFということで文字数をとられてしまい、書き切れていないところが多く出てしまった。今回は現代劇なのでだいじょうぶだろうと思ったが、もっと丁寧に書くべき箇所があった。まだまだ精進が足りないのだ。
今回のお題は
平成レトロ
睡魔
ハト
である。
noteでBLの基本レギュレーションは、いわゆる三題噺と言えるが、取って付けたような消化のしかたはしたくないという意地のようなものがある。
3つのお題をそれなりの比重で取り上げ、話を組み立てることに腐心している。
平成レトロ
個人的には、平成が「レトロ」になってしまうことに愕然としなくもない。だが30年も前となれば、致し方はない。平成といっても長きにわたるし、どこを切り取るか、何に注目すべきかはいろいろと考えられたが、バブルの狂騒の絶頂と崩壊を書きたいと考えた。
好きな小説のひとつに林真理子の『ロストワールド』がある。バブルの時代は、どこか神話のようにおぼろげで、寓意的であり、ある種のロマンがある。
バブル時代を舞台に、あの頃の都市――むろん東京だ――に生きる男たちを書こうと考えた。
バブルの輝きを描くためには、仕事をする男がいい。BLといえば、なにをやっているのかさっぱりわからない解像度の低いビジネス描写がつきものなので(悪口ではない)そんな感じのリーマンBLもいいだろう。
睡魔
バブル時代のサラリーマンと言えば「24時間戦えますか」である。
今思うととんでもないコピーで、令和なら炎上している。昭和のモーレツ社員を継承しつつ、しかしここには新時代の最前線にいるという感覚があった。ビジネスが24時間止まらないのは、グローバル化によって世界とつながったからであり、昼夜を問わず戦うために栄養ドリンクで支えようというのだから、どこかサイバーパンクな趣もある。
睡魔というお題を、バブル時代のサラリーマンが、眠れないでいる(睡魔を希求する)という建て付けはどうかと考えた。これはしっくりくる。
ハト
そしてハトだ。都会的な話になりそうだが、ハトをどう組み込むか。
「平和の象徴」や「ハト時計」「伝書鳩」「レース鳩」など、いろいろなハト要素を考えたが、サラリーマンが暮らす部屋のベランダにハトがきて安眠が邪魔される、とすれば、3つのお題がひとつのシチュエーションにすっとまとまると気づいた。
そこから、相手役はハト駆除業者ということになり、不眠症のサラリーマンとハト駆除業者のあいだにどんなBLが生まれるのか、と考えた結果、このような話になった。
今回、描きたかったのは、どこか浮世離れした、昔話のような物語である。
バブルの絢爛たる夜のなかに、あったかもしれない物語。
歴史のなかでありえたかもしれないロマンスといえば、ミヤギフトシ氏というアーティストの「American Boyfriend」というアート作品のシリーズがあり、どこかそんな雰囲気を念頭に置いた。
もともとの構想では、現代で、大学教授がバブル時代の文化風俗を講義しており、バブル時代に出された奇妙な新聞広告「寝かしつけ人募集」を紹介して、学生たちが笑う……という導入から、過去へ飛ぶ、という書き方を考えていた。
だが、とてもそれだけの尺はなかったのだ。
文字数が足りなさすぎて、航平の掘り下げができず、やや不思議ちゃんになってしまったようにも思うし、それだけの印象さえも与えられていないかもしれない。
ふたりの関係の深まりももっと丁寧に順を追って書きたかったし、結末も駆け足過ぎただろう。
狙った文字数で過不足なく書ける作品づくりは、今後の課題である。
ところで、まえに書いた『サトゥルヌスの午餐』もそうだったのだが、僕はキャラクターの攻受を明確に書いていない。
この問題については、いずれ記事を書きたいが、あえて深く追求しないようにしていたり、表現としてはぼかしている部分もある。
しかしBL読者、というか、二次創作などを読まれる方は直観的にキャラの攻受を判断できると聞き及ぶので、たとえば本作のふたり、『サトゥルヌスの午餐』のふたりが、どう思われているかは、ご意見・ご感想をうかがいたいところである。
実のところ、僕のなかに明確な答えはない。この点に答えがないことが、BLとして許されることなのかどうかはわからない。このことはまたいずれ書きたい。
※ちなみに『大城くんのこと』に限っていえば、大城くんが攻である。
さて、本件とは必ずしも関係しないが、質問箱を、実は開いてある。質問箱を開設するとフォロワーに告知されることを知らず、何の気なしにつくってしまっていた。もし、直コメントやメッセージでははばかられるが、なにかお聞きになりたいことがあればいつでもどうぞ。
それでは。
