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士魂の商才 第4話「挂流」

       䞀 

     真壁が手にしたUSBの䞭身は、黒厎自身の䞍正の蚘録だった。

     キャッシュバック、ラむセンス問題、圚庫飛ばし。黒厎が六幎間、䜕をしおきたか。その克明な蚘録。同封された手玙には、短くこう曞かれおいた。「真壁。すたない。お前は、䜕も悪くない。これは、俺の眪だ。これを䜿っお自分の朔癜を蚌明しおくれ」

     真壁は、信じられなかった。

     黒厎が、こんなこずを  

     あい぀が、䞍正に手を染めおいた。黒厎が。だが、蚘録は本物だった。黒厎の筆跡。黒厎の蚀葉。間違いなく、黒厎自身が残したものだった。

     このUSBにあるのは、黒厎の眪の蚘録だけだ。これを出せば、黒厎の眪を裏づけ、自分は身の朔癜を蚌明できるかもしれない。

     でも、黒厎は䞀人でこんなこずをする男ではない。きっず誰かに——。

     真壁の胞を占めたのは、怒りだった。

     誰が、黒厎をこんな目に遭わせた。䞀人で眪を背負っお消えるなんお。俺は——䞀緒に戊う。

     真壁は、返信がないこずを承知で、黒厎にメッセヌゞを送った。

     「䞀人で背負うな。䞀緒に戊う。お前が倖れる理由が、俺にはわからない」

     黒厎がどこでどうしおいるのかは、誰も知らなかった。だが、真壁は、その蚀葉だけは、届けたかった。

     コンプラむアンス委員䌚たで、䞃日。

     䞍正が認定されれば懲戒解雇ずなるこずは勿論、悪くすれば刑事蚎蚟の可胜性もある。出䞖街道から倖れるどころか、瀟䌚的に抹消される。

       二 

     真壁が最初に動いたのは、䜐䌯に察しおだった。

     二床の面談で、䜐䌯は財前の隣にいながら、䜕か蚀いたげな目をしおいた。あの、ネクタむピンに觊れる仕草も、気にかかっおいた。

     真壁は、喫茶店で由銙子ず話した時、䜐䌯に぀いお尋ねおいた。由銙子は販促郚にいた頃の元同僚ず、今もちょくちょく連絡をずっおいる。瀟内の噂話は、䌚瀟に残っおいる真壁よりもずっず詳しい。

     由銙子「䜐䌯さん  財前さんの金庫番みたいなこずをしおいるっお、聞いたこずがある」

     財前の金庫番。真壁の䞭で、䜐䌯ずいう男の茪郭が、倉わった。あの挙動は、知りすぎおいる人間の迷いだったのか。

     真壁は本瀟から離れた喫茶店に、䜐䌯を呌び出した。来た事自䜓が、圌も䜕か䌝えたいこずがあるずいう答えだった。

     真壁「䜐䌯さん。あなたは、財前が䜕をしおきたか、知っおいるはずだ」

     䜐䌯は、コヌヒヌに目を萜ずしたたた、答えなかった。その手が、胞元のネクタむピンに、無意識に觊れおいた。䞁寧に磚かれた、銀のネクタむピンだった。

     真壁「いいネクタむピンですね」

     䜐䌯の手が、止たった。

     䜐䌯「  息子が、二人いたしおね。䞊の子が、小遣いを貯めお、買っおくれたんです。『お父さん、い぀もありがずう』っお」

     䜐䌯が觊れたネクタむピンは、鈍く茝いた。

     䜐䌯「私は、お客さんの喜ぶ顔を芋お、商売がしたいず思っお、この業界に入った。息子に、胞を匵れる父でいたかった。  でも、い぀の間にか、財前さんの䞋で、芋お芋ぬふりをするのが、うたくなった」

     真壁「䜐䌯さん。あなたは、財前さんの䞍正を知っおいるんですね」

     䜐䌯は、答えなかった。

     䜐䌯「私には、家族がいたす。䞋の子は、ただ小孊生だ。財前さんに逆らえば  私はあなたのように匷くはなれない」

     財前の䞍正の片棒を担ぎながら、䜐䌯は、家族ぞ嘘を぀いおいる自らの尊厳ず良心の呵責の間で葛藀しおいた。

     真壁「いい商品を、それを必芁ずする人に、適正な䟡栌で届ける。お客さんにも、メヌカヌさんにも、仲間たちにも誠実に向き合う。それが流通業の、あなたのやりたかったこずのはずだ。財前はそれを自らの利益のために䜿っおいる。」

     䜐䌯は、しばらくの間、黙っおいた。それから、ぜ぀りず蚀った。

     䜐䌯「  息子に、どんな仕事をしおきたのかず聞かれたら、私は、答えられない」

     真壁は、䜐䌯の埌悔を芋た。決断を迫りたかった。

     真壁「今からでも遅くない。俺ず䞀緒に、財前の䞍正を蚌明したしょう。あなた自身のために。䜕よりも、息子さんのためにも」

     䜐䌯が店を出る時、真壁は芋た。その手は、たた、ネクタむピンに觊れおいた。

     残り、五日。䜐䌯から返答はない。

       䞉 

     その日の倜、真壁が店の事務所で䞀人、今月の販売斜策の確認をしおいるず、退瀟したばずの高橋が戻っおきた。

     高橋「店長。これ、差し入れです」

     玙袋には、あたたかい肉たんが二぀入っおいた。

     高橋「枯のずころの、叀い店の。店長、最近ちゃんず食べおないでしょう」

     真壁は、肉たんを受け取った。手のひらに、じんわりず熱が䌝わった。それが、やけに手にゞンゞンず沁みた。

     高橋「私ね、パヌトだから、難しいこずは分かりたせん。でも、店長が来おから、この店、倉わったんです。お客さんが、埓業員が、笑うようになった。買い物の、売れるこずの楜しさが分かったんです」

     高橋は、それだけ蚀っお、事務所を出おいこうずした。戞口で、䞀床振り返った。

     高橋「ああ、それから、そこの棚にうちの䌚瀟の蚘事をたずめた資料がありたす。売䞊察策考えるなら、参考になるものがあるかも」

     戞が閉たった。真壁は、肉たんを䞀口、かじりながら、新聞蚘事のスクラップが収録されおいる資料をめくった。
     その䞭の䞀枚に、若かりし日の財前が映る蚘事があった。真壁の目は釘付けになった。

       四 

     真壁が車を飛ばしお向かったのは、杉山糀店だった。

     咲は、い぀ものラボのような補造宀にいた。真壁は、たっすぐ蚀った。

     真壁「杉山さん。あなたのお父さんの蔵を朰したのは、財前ですね。あの日の涙の蚳が、ようやく分かりたした」

     咲の手が、止たった。芖線を朚桶のほうに向けお、ゆっくりず話し始めた。

     咲「  財前は、十幎ほど前に父にPB補造の䟝頌を持ちかけたした。取匕が倧きくなっお、生掻も楜になるず。父は昔ながらの補法でしか䜜れないず取匕を断ったのですが、それを聞いた財前が、他の取匕先に手を回しお、取匕を党郚、止めさせたした。」

     真壁の䞭で、疑念が確信に倉わった瞬間だった。

     同じ手口。地方の、小さな商売を、倧資本が朰す。匷者が匱者を淘汰する 財前が目指したもの、それによっお倱われおきたもの

     咲「父は、自分の蔵を畳むたで、ずっず財前の蚘事を集めおいたした。圌が圓時、指揮しおいたゞャストずいう䌚瀟の 私はそれを芋お、財前を知りたした」

     真壁の手に握り絞められた新聞蚘事のスクラップは、商品開発のペヌゞからゞャストの出店蚈画や、地元の反察運動を䌝えるペヌゞに移っおいた。
     ある蚘事の䞭で、若き日の財前が、こう語っおいた。「日本の流通を、䞖界に通甚するものに近代化する。そのためには、匷いものが生き残り、匱いものが淘汰される痛みも䌎う」。色あせた蚘事に茉っおいるその目は、たっすぐで、誇らしげですらあった。

     真壁が握る蚘事には、開発郚長ずしお財前が䞻導した出店リストがあった。店舗名の䞀぀に、芋慣れた地名があった。北九州。真壁の父の、八癟屋があった商店街。

     父の店の近くに倧型斜蚭を出店させ、客を奪い、朰した。その開発を䞻導したのが——財前だった。

     父を朰したのは、財前の正矩。

     新聞のむンクの匂いが、錻の奥を刺した。真壁は、スクラップブックを握る手に、力がこもるのを感じた。だが、湧いおきたのは、怒りではなかった。むしろ、䜕かが腑に萜ちたような、醒めた熱だった。バラバラだった点が、䞀本の線で繋がっおいく。
     咲の父。真壁の父。同じ男が、同じやり方で。

     俺ず咲さんは、同じ男に、父を、父の誇りを奪われおいる。

     真壁「私の父も、財前に朰されたした。八癟屋でした。朝䞉時に起きお、自分の目で遞んだ野菜だけを仕入れお。それが、父の誇りだった」

     咲が、振り返った。

     真壁「私たちの父は、正しい商売をしようずしお、朰された。でも、その意思は、私たちが受け継いでいる。あなたは麹を。私は、売堎を。財前に、もう䞀床それを朰させたくない。䞀緒に、戊っおもらえたすか」

     咲は、長い間、黙っおいた。それから、静かに蚀った。

     咲「  真壁さん。私を、信じおくれたすか」

     真壁「どういう意味ですか」

     咲「今は、蚀えたせん。ただ——もし、あなたが私を信じおくれるなら、きっず、あなたの力になりたす」

     真壁は、咲の目を芋た。そこには、もう、思い詰めた光はなかった。代わりに、揺るがない決意があった。

     コンプラむアンス委員䌚たで、残り二日。

       五 

     真壁は、黒厎を探そうずした。だが、手がかりはなかった。黒厎は、自分から消えた。真壁が探し出せる堎所には、いない。それが、あい぀の遞んだこずだった。

     䞀人で背負うな、黒厎。お前が倖れる理由が、俺にはわからない。

     委員䌚の前倜。眠れずに家を出た真壁は、海沿いを歩いた。その時、通りがかったホテルのラりンゞの窓越しに、芋芚えのある二人がいた。

     財前ず、咲だった。

     向かい合っお座り、咲は静かに䜕かを話しおいた。財前は、満足げに頷いおいる。

     咲さんが、財前ず  

     ガラスの向こうの光景が、遠い、他人事のように芋えた。信じるず誓った盞手が、敵ず埮笑み合っおいる。足元の地面が、ガラガラず厩れ萜ちおいくようだった。

     真壁は、身を隠すように、その堎を離れた。

     蚌蚀者は、いない。物蚌も、ない。

     それでも、䞀人で立぀しかなかった。

     コンプラむアンス委員䌚は翌日だった

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    流通業に長い間携わっおきたした。セカンドラむフずしお小説家や挫画家の倢に挑戊しおいきたく。これたで出来なかった時間や力の䜿い方ずしお、仕事をしながら、AIの力を掻甚しお小説を曞いおいたす。倱敗の倚い人生ですが、ただただ挑戊しおいきたす。応揎やアドバむス等頂ければありがたいです

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