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ナナとユイともう一つの名前 3

    第三章「カズ」


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    秋が近づく頃には、ユイ達はもう、夜の町に慣れ始めていた。

    学校帰りに制服のままコンビニへ寄り、一度家に帰ってから、
    夜になると化粧をして外へ出る。

    その生活を、誰も止めなかった。

    親も。

    学校も。

    この町では “少し悪い事をしてる高校生”
    なんて珍しくなかったからだ。

    カズの車は、いつもタバコと芳香剤の匂いが混ざっていた。

    古い黒のセダン。

    後部座席には、コンビニ袋やCDケースが散乱している。

    エンジンをかけると、低い重低音だけが静かに響いた。

    「今日さ、ちょっと遠く行くわ」

    助手席のナナが振り返る。

    「どこ?」

    「盛岡」

    「え、遠っ!」

    「高速使うから余裕(笑)」

    カズは笑いながら片手でハンドルを回した。

    夜の国道を走る車内。

    窓の外は真っ暗だった。

    時々、ラブホテルのネオンだけが浮かぶ。

    ユイは後部座席で、ぼんやり窓を見ていた。

    「ユイ眠そうじゃん」

    「昨日寝てない」

    「学校?」

    「別に」

    カズはバックミラー越しに笑った。

    「ちゃんと寝ないと老けるぞ〜」

    その言い方が、妙に自然だった。

    まるで昔から知ってる年上みたいに。

    だから余計に、警戒心が薄れていく。

    カズは、どこにでも知り合いがいた。

    コンビニ店員。

    居酒屋。

    パチンコ屋。

    ガソリンスタンド。

    夜の店。

    誰に会っても、まるで昔からの友達みたいに話す。

    でも、その空気が変わる瞬間を、ユイは何度か見た。

    ある夜。

    古い雑居ビルの前で、男二人がカズに怒鳴っていた。

    「だから金どうすんだよ!」

    「待てって言ってんじゃん(笑)」

    「笑ってんじゃねぇよ!」

    怒鳴り声。

    缶コーヒーが地面に転がる。

    でもカズは、妙に落ち着いていた。

    怖がってる感じが無い。

    むしろ、相手が怒れば怒るほど、どこか楽しそうだった。

    結局その場は、カズが適当に笑って流した。

    車に戻ると、ナナが笑った。

    「また揉めてんの?」

    「いや〜、アイツ短気なんだよ(笑)」

    「絶対カズが悪いじゃん」

    「ひどっ」

    車内が笑いに包まれる。

    だけどユイだけは、なんとなく笑えなかった。

    さっき怒鳴っていた男の顔が、妙に頭に残っていた。

    本気で、何かに追い詰められてる顔。

    その頃から、少しずつ噂が増え始める。

    「カズって薬やってるらしいよ」

    「昔ヤクザと揉めたらしい」

    「女殴ったって聞いた」

    「警察にマークされてるって」

    全部 “らしい”

    田舎の噂なんて、誰も本当の事は知らない。

    でも、噂だけは異常に早い。

    翌日には、もう別の形になって広がっている。

    十月の終わり。

    ユイ達は、深夜のファミレスに集まっていた。

    カズ。

    ナナ。

    ユイ。

    そして知らない男が二人。

    一人は金髪。

    もう一人は、妙に無口だった。

    ドリンクバーの氷がカランと鳴る。

    「レイちゃん達さ〜」

    金髪の男が笑う。

    「マジ仲良いよね」

    ナナが笑い返した。

    「まぁね」

    「どっちが本物のレイなの?」

    「両方(笑)」

    その瞬間、無口だった男が初めて口を開く。

    「名前なんて、どうでもよくね?」

    低い声だった。

    店内の空気が少し止まる。

    その男は、ユイをじっと見ていた。

    知らない種類の目だった。

    値踏みするみたいな。

    ユイは、なんとなく視線を逸らした。

    するとカズが笑った。

    「怖がらせんなって(笑)」

    その一言で、空気はまた元に戻る。

    みんな笑う。

    でもユイだけは胸の奥に、小さな違和感が残っていた。

    あの日から。

    少しずつ。

    本当に少しずつ、周囲の空気が変わり始めていた。


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    創作は、僕にとって破壊と再生を試す遊び場。 AI相棒と一緒に、マンガ・アニメ・小説で何度も壊して、作り直して、また遊ぶ。 変化する時代の中で、何を残せるか試しています☺️

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