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むブ物語刀断寓話゚ラずペル第䞃十五話 ゚ラずペル


最初は䞀人旅だった。

気づけば、そこにいお圓たり前の人が増えおいた。

広げた地図には、䜕も曞かれおいない。

私はゆっくりずペンを取った。


゚ラずペル 第䞃十五話
【゚ラずペル】


巚倧な亀が、地面を震わせながら䞀歩、たた䞀歩ず進んでいく。

県䞋では、幅広い川が静かに流れおいた。

甲矅の䞊で暮らす人々は、長い旅路の終わりを芋届けようず、そこかしこから集たっおいる。

私たちも街の倖苑から、その光景を芋守っおいた。

やがお倧きな地鳎りずずもに、街を茉せた亀の巚䜓が川蟺ぞ沈みはじめる。

氎面が倧きく割れ、癜い波が倖苑の䜎い堎所たで抌し寄せた。

゚ラはその様子を芋぀め、小さく呟く。

「ありがずう  だっお」

芖線を萜ずすず、喉元門のある亀の頭は、すでに川の氎ぞ浞かっおいた。

たるで長い旅を終えた旅人が、ようやく氎を飲むように。

亀は頭を川に沈めたたた、それきり動かなかった。

䜏人たちは門を開け、川岞ぞ向かっお歩き始める。

川に駆け蟌み、笑いながら手ですくった氎を口に運ぶ人々の足元には、初めお螏む土があった。

「これからが、問題です」

い぀の間にか、隣にはディケが立っおいた。

この数日でずいぶん痩せたようで、着おいるLAGの制服も少し緩んで芋える。

「たずは、氎ず食糧をどう暮らしぞ繋ぐかだね」

ロヌズは口元に笑みを浮かべ、川を芋぀めた。

もう䞀床亀を芋䞊げ、私はそっず頭を䞋げる。

――ありがずう。

隣に立぀オトが、ゆっくりずリュヌトを奏で始めた。

〜♬

迷い道でも 空を芋れば
ひず぀光る あの星がある

名前も知らず 歩いおきたけど
同じ倜を 芋䞊げおいた

遠くおもいい 届かなくおも
消えないなら それでいい

ひずりで歌えば 揺れる声も
重ねれば 道になる

〜♬

スピカだ。

誰も、その名を口にはしない。

ただ耳を傟けながら、巚倧な亀の最期を芋送っおいた。



次の日から、街の再建が本栌的に始たった。

これたで狭い甲矅の䞊だけで暮らしおきた人々は、川から氎を匕くための氎路を掘り、新しく埗た土地を畑に倉えおいく。

川には魚をずる舟が浮かび、少しず぀生掻の圢が敎い始めおいた。

この隒乱で呜を萜ずした人々は、ルヌベントで初めお土に埋葬された。

川蟺には、新しい墓碑が䞊ぶ。

私たちも埩興に手を貞しながら、少しず぀日垞を取り戻しおいった。

ひず月あたりが過ぎたころ、街のこれからを決める匏兞の日が蚪れる。

䞭倮殻郜の倧広堎には倚くの䜏人が集たり、固唟をのんで芋守っおいた。

広堎に面した倧きな建物のバルコニヌぞ、ニコが姿を珟す。

倧きな歓声が湧き䞊がり、それが収たるず、広堎には深い静けさが萜ちた。

ニコは䞀歩前ぞ進み、手を䞊げおから口を開く。

「この街は  ルヌベントは、蟿り着きたした」

「倚くの犠牲を払い、倚くの決断を重ねながら、ここたで来たした」

ニコは手を握り締め、それを胞に眮いた。

「赀い瞳は、今日をもっお解散したす。ルヌベント行政ギルドず、商䌚ギルド『砂挠の薔薇』も同じです」

「そしお、その機胜を䞀぀にたずめ、新たにルヌベント評議䌚を蚭立したす」

宣蚀を受け、広堎から倧きな喝采が湧き䞊がった。

ニコはその声を受け止め、わずかに息を敎える。

「私は、その初代議長ずしお遞出されたした」

「これたで私が属しおきた組織が行っおきたこずに぀いお、蚱しを乞う぀もりはありたせん」

「けれど、その責任から目をそらす぀もりもない」

ニコは広堎に集たった人々を、たっすぐに芋枡した。

「ルヌベントを、誰かの意思だけが䞀方的に抌し぀けられる堎所ぞ戻さないこずを玄束したす」

「私の名はサヌシャではありたせん。私は自分の名前を取り戻したした」

「私はニコ。ただのニコです。皆さんの力を、私に貞しおください」

蚀葉を終えたニコは、深く頭を䞋げた。

広堎に短い静寂が流れる。

その静けさを砎ったのは、ひず぀の小さな拍手だった。

広堎の䞭で、゚ラがニコを芋䞊げながら拍手をしおいる。

私もそれにならっお手を叩いた。

オトずサンも続き、拍手は茪のように広がりながら、広堎の隅々を包んでいく。

ニコの埌ろでは、ロヌズがわずかに肩をすくめた。

隣に座るディケは、盞倉わらず䜕かを玙ぞ曞き留めおいた。



ルヌベント評議䌚が動き出すず、これたで分かれおいた区域や法什は少しず぀統䞀されおいった。

官憲の䞍正は摘発され、垂堎を瞛っおいた独占も緩和される。

ルヌベントの埩興は、ただ始たったばかりだず思う。

それでも私たちは、次の行き先を決めおいた。

䞖界の果おだず思われおいた砂挠の向こう。

川の先に䜕があるのか、自分たちの目で確かめに行く。

旅立ちを前に、私たちはニコから呌び出された。

䞭倮殻郜にある屋敷ぞ向かうず、玄関には執事姿のゞャッゞメントず、䜿甚人の服を着たフォヌチュンが埅っおいた。

「劙に䌌合っおたすね」

オトが笑いを堪えながら、私の耳元で囁く。

スカヌトの裟を持ち䞊げ、綺麗な所䜜で挚拶するフォヌチュンも、すっかり板に぀いおいた。

「これ、お土産です」

私が袋を取り出すず、フォヌチュンが玠早く受け取る。

その瞬間、ゞャッゞメントから䞀床だけ鋭い芖線が飛んだ。

けれどフォヌチュンは気にする様子もなく、袋の䞭からルヌベントクッキヌ饅頭を取り出すず、高々ず掲げお瞳を茝かせおいた。

その姿を芋たサンが笑いながら、ゞャッゞメントぞ声をかける。

「じい。姉さんから話っお」

「ニコ様から、莈り物があるそうです」

そう答えるず、ゞャッゞメントは静かに頭を䞋げ、私たちを屋敷の奥ぞ案内した。

通されたのは、倧きな応接宀だった。

窓からやわらかな光が差し蟌み、花瓶には色ずりどりの花が生けられおいる。

郚屋には、どこか萜ち着いた空気が広がっおいた。

ゞャッゞメントは䞀床垭を倖す。

しばらくするず短いノックが響き、扉が開いた。

ニコを先にしお、ゞャッゞメントが郚屋ぞ入っおくる。

゚ラは片手をひらひらず振り、気軜に挚拶をした。

私たちが゜ファぞ腰を䞋ろすず、ニコはサンを芋぀めお口を開く。

「姉さん。旅に出たいっお、本気」

険しい衚情を浮かべたニコを前に、サンの喉が小さく鳎った。

「ニコ。私はただ、知らなきゃいけないこずがあるの」

サンの赀い瞳ず、ニコの赀い瞳が重なる。

「䜕を知りたいの」

「えっず  矎味しい食べ物ずか  お酒ずか  」

思わず、私は吹き出した。

隣にいたオトが、やわらかく口を開く。

「サンは、友達が欲しいんです」

サンの目が泳いだ。

「圌女には家族がいたす。でも、䞀緒に過ごしおきた友達はいたせんでした」

オトはサンを芋぀め、穏やかに続ける。

「だから、友達ず笑ったり、困ったりしながら、同じ時間を過ごしおみたいんです」

ニコは額に手を圓お、倧きく息を吐いた。

「姉さん。私は友達じゃないの」

少しだけ拗ねたような声だった。

「ニコ。あなたは最初の友達で、最高の家族」

サンは慌おながらも、必死に蚀葉を続ける。

「でも、それだけじゃ足りないの」

「それだけじゃ、足りない  」

ニコはその蚀葉を繰り返し、どこか満足したように目を现めた。

「わかったわ。それが姉さんの望みなら、蚱しおあげる」

ニコは立ち䞊がり、郚屋の奥ぞ向かう。

しばらくしお戻っおきた圌女の手には、䞀振りの剣があった。

サンの顔が固たる。

私も、その姿に蚀葉を倱った。

――魔剣ケルベロスだ。

「姉さん。これは私からの逞別です」

ニコは剣を、サンぞ差し出した。

「ニコ様。サヌシャ様は戊争ぞ行かれるわけではありたせん」

隣に立぀ゞャッゞメントが、冷静な声で告げる。

うん。

いくら心配でも、決戊兵噚を逞別に枡すのは違うず思う。

ただ、ニコの気持ちを思うず、私は䜕も蚀えなかった。

サンは小さく銖を振り、差し出された剣を芋぀める。

「ニコ。これは、あなたの元にこそ必芁なもの」

剣には手を䌞ばさず、花瓶に生けられた赀い花を䞀茪だけ手に取った。

「この花、芚えおくれおたんだ。私の奜きな花」

花の銙りを吞い蟌み、サンは静かに笑う。

「私、これをもらうわ」

胞元ぞ赀い花を挿すず、ニコは少し困ったように眉を寄せた。

「姉さん。それじゃあ  」

サンは片手を䞊げ、ニコの蚀葉を止める。

「私はサヌシャ。でもね、これからはサンず呌んで」

「これが、今の私だから」

そう蚀っお、サンはニコの肩ぞ手を眮いた。

ニコもその手に、自分の手を重ねる。

「いっおらっしゃい」

ニコがそう蚀うず、サンは笑顔を浮かべた。

「いっおきたす」



屋敷を埌にするず、ニコたちは私たちの姿が芋えなくなるたで芋送っおいた。

倖門ぞ続く道を歩いおいるず、ある建物の前で足を止める。

赀い髪の女性が、小さな子䟛たちを叱っおいた。

ディアだ。

竜祀教は今回の䞀件に぀いお調べを受けたものの、街の埩興ぞ尜くしたこずも考慮され、自由の身になったず聞いおいた。

オトが蚀う。

「竜祀教の皆さんが、身寄りのない子䟛たちを受け入れるための小さな冒険者ギルドを䜜ったらしいです」

噂には聞いおいた。

ルヌス団長がギルドマスタヌずなり、ディアずシヌズは教官ずしお子䟛たちず暮らしおいるらしい。

ディアず゚ラの芖線が合う。

ディアは少しだけ゚ラを芋぀めたあず、静かに頭を䞋げた。

蚀葉は亀わさない。

゚ラはそのたた歩き出し、私たちもあずを远う。

「そういえば、竜石っお」

川蟺に着いおからは日々の忙しさに远われ、倧切なこずをすっかり忘れおいた。

「割ったよ」

゚ラは䞡手を頭の埌ろで組んだたた、気軜に答える。

「えっ」

私は慌おお゚ラを芋た。

「だっお、危ないじゃん。あんな石」

それはそうだけど、䞀蚀くらい蚀っおほしい。

耇雑な気持ちのたた黙っおいるず、オトが申し蚳なさそうに口を開いた。

「ペルさんには、内緒にしおっお蚀われたした」

隣にいたサンも、少しだけ居心地悪そうにしおいる。

「ペルさんに蚀ったら、たぶん悩みそうだからっお」

オトは前を歩く゚ラぞ目を向け、それから軜く頭を䞋げた。

私はため息を぀き、たた歩き出す。

やがお街の門が芋えおきた。

か぀おの喉元門は川に浞かり、代わりに桟橋ず船着堎が䜜られおいる。

そこでは倧きな船が建造され始めおおり、その䞭心でロヌズが倧声を䞊げおいた。

私たちに気づくず、ロヌズは勢いよく手を振る。

もずもず県垯に海賊めいた服装だったけれど、今では海賊垜たで被っおいた。

「あれで商人っお蚀われおも  」

私は独り蚀のように呟いた。

「おう。あんたたち、今日だったか。旅立぀のは」

ロヌズは笑いながら、私の背䞭をバシバシず叩く。

――痛いです。

挚拶を返しながら頭を䞋げるず、゚ラが口を開いた。

「ちょっず、䞖界を芋おくるよ」

「䞖界の端たで来たのに、ただ先が芋たいっお」

ロヌズが笑う。

「ただ、芋぀かっおないだけかも」

゚ラはずがけたように答えた。

「ああ、そうさね。だったら䜕か芋぀かったら、私に話しな。良い情報なら金は払う」

ロヌズは䞀瞬だけ真剣な顔になったあず、すぐに人倫たちぞ怒鳎り声を飛ばしおいた。

私たちはその姿を芋ながら、街の倖ぞ進む。

倖ぞ出るず、゚ラが倧きな癜地図を広げた。

ペンを取り出し、䜕かを曞き蟌んでいる。

私が芗き蟌むず、そこには䞀本の川ず、そのほずりに小さな印があった。

゚ラはその印に、『ルヌベント』ず曞き入れる。

地図に茉らなかった街が、初めお地図に蚘された。

私は真っ癜な地図を眺めお蚀う。

「でも、これじゃどっちが䞊かわからないじゃない」

゚ラは笑い、地図の右䞋に小さく文字を曞き入れた。

『゚ラ  』

「ほら」

そう蚀っお、私ぞペンを枡す。

空欄を芋぀め、ひず息吐いおから曞き入れた。

『゚ラペル』


第䞀郚 完


🔙第䞃十四話



いいなず思ったら応揎しよう