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矢男町役場の涼木デュラハン【第3話】

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    第3ハン 会議中の涼木デュラハン

    ~矢男やお町ちょう役場 3階 会議室~

    企画課の打合せ会議がおこなわれている。勝田、鳥羽津、涼木の三人が、机をコの字にして向かい合っている。

    勝田「えー、本町のお祭りが半年後に開かれるわけなんだが、その名前を変えてほしいと町長に言われた。めんどくさいけど、今日はそれを決めようと思う。めんどくさいけど」

    鳥羽津「2回も言わなくていいですよ課長。気持ちはわかりますけど」

    勝田「だってめんどくさいじゃんよー。こんなの企画課ウチじゃなくて原課でやりゃあいいのにさー」

    勝田が後頭部を掻く。

    涼木「お祭りの担当は観光課ですよね? どうして企画課に?」

    勝田「なんか観光課の連中が全員インフルエンザでぶっ倒れてるみたいなんだよ」

    鳥羽津「思ってたよりずっと悪い状況!」

    勝田「そんなわけだから、ちゃちゃっと決めてちゃちゃっと終わらせよう。そして早く帰ろう」

    涼木「課長、まだ朝の9時ですが……」

    勝田「なんだよー、あと7時間もはたらかなきゃならないのかよー。あーあ、めんどくさ」

    涼木「有休とか使わないんですか?」

    勝田「んなもん、今年の分はとっくに使い切ったよ」

    鳥羽津「まだ4月なのに!」

    涼木「とにかく早く決めてしまいましょうか」

    鳥羽津「お前はやけにやる気まんまんだな」

    涼木「はい! 町の行事に携われるということで、目の色を変えてがんばります! まあ私、目ないんですけど」

    勝田「わーったよ。あー、めんどくさ」

    鳥羽津(どっちが上司かわかんねえな……)

    勝田「じゃ、まずこれな」

    勝田が二人に去年のパンフレットを渡す。パンフレットの上部にでかでかと『第101回やおちょうまつり』と書いてある。

    涼木「ストレートな名前ですね。わかりやすくていいと思いますが、これではダメなんですか?」

    勝田「なんか『不正が盛りだくさん』みたいで嫌なんだと。だったらなんで100回目のときに直さなかったんだって話だよなー」

    鳥羽津「それはたしかにそうですね」

    涼木「私は来たばかりでこのお祭りのことをよく存じ上げないのですが、どのような催し物があるのでしょうか?」

    勝田「あー、なんかいろいろ売ったりだれかが歌ったり踊ったりしたりしなかったりしてるかなー」

    鳥羽津「課長、それほぼノーヒントですよ。矢男町は畑作が盛んだから、野菜の直売会とかやってますよね。あと去年はシンガーソングライターの南まさよしが来ました」

    涼木「南まさよし?!」

    涼木が急に声を上げたので、勝田と鳥羽津はビクッとした。

    鳥羽津「びっくりしたー!」

    勝田「おうおう、急にどうした」

    涼木「あ、失礼しました! 私、南まさよしのファンなんです! あの耳に残るような独特な歌声が好きで……まあ私、耳ないんですけど」

    勝田「なかなか渋い趣味してんなー」

    鳥羽津「課長、けっこう涼木に馴染むの早いですね」

    勝田「んー、そうかー? ただ首から上がないだけだろー」

    鳥羽津「それって相当やばいことだと思うんですけど……」

    勝田「それを言うなら鳥羽津。お前だってけっこう仲良くやってんじゃないかー」

    鳥羽津「おれは一応こいつの教育係ですから。それに最初はやっぱりビビりましたよ。『目がないのに見えてるってどういう状況?!』とか思いましたし」

    涼木「初日、私の目元に手刀でシュッシュッてやってましたもんね。まあ私、目ないんですけど」

    勝田「それも相当やべーんじゃねーか?」

    涼木「あ、パワハラだとは思ってませんよ?!」

    勝田「そういうことじゃねんだわ」

    鳥羽津「ほら今みたいに普通のテンションで接するじゃないですか。そこが課長のすごいとこだなって」

    勝田「でも私だってただの人間だからなー。さすがに涼木の表情までは察してやれんから、そのへんはコミュニケーションが難しいかもなー」

    鳥羽津「え、こいつの表情わかりませんか?」

    勝田「鳥羽津はわかるのか?」

    鳥羽津「涼木」

    涼木「はい!」

    鳥羽津の言葉に合わせて、涼木が感情を表現し始めた。

    鳥羽津「喜」

    涼木の周りにパアアッと花が咲くエフェクト。

    鳥羽津「怒」

    涼木の周りに怒りマークと炎のエフェクト。

    鳥羽津「哀」

    涼木の周りに雫マークと縦線のエフェクト。

    鳥羽津「楽」

    涼木の周りに音符が流れるエフェクト。

    鳥羽津「ね?」

    勝田「『ね?』じゃねんだわ。すげーなお前ら」

    涼木「学生時代、リアクションの勉強をしたのが活きましたね!」

    勝田「涼木の学生時代かー、けっこう興味あるなー」

    鳥羽津「あ、おれもです」

    勝田「なあ涼木、ちょっと嫌な言い方になるんだけどさー」

    涼木「なんでしょう」

    勝田「お前、友達とかいるのかー?」

    涼木「いますよ」

    鳥羽津「いるんだ」

    涼木「ほとんどが幼稚園から中学まで一緒でしたから」

    勝田「そういう問題じゃない気もするけどなー」

    涼木「あ、でも高校は男子校だったので、女友達は少ないですかね」

    鳥羽津「男子としてちゃんと扱ってもらえたんだ」

    涼木「はい! 高校生活はすごく楽しかったですね! 友達もいっぱいできましたし!」

    勝田「友達いっぱいって意外だなー」

    涼木「私、元々は人見知りでしたからね」

    鳥羽津「そこじゃねえよ」

    涼木「自分で言うのもなんですけど、高校では人気者でしたよ! 文化祭の出し物も主役でしたし!」

    勝田「へー、どんなことやってたんだー?」

    涼木「私のクラスは、3年間ずっと西洋風おばけ屋敷でした」

    勝田・鳥羽津「だろうな」

    涼木「私の演技があまりにもリアルすぎて、私の卒業後はおばけ屋敷系の出し物は禁止になってしまいましたが」

    鳥羽津「原因は演技ではないだろ」

    涼木「文化祭って準備期間が楽しいんですよね! みんなよく私の鎧の中に入ってコスプレごっこしてました」

    勝田・鳥羽津「それは楽しそう」

    勝田と鳥羽津は、涼木の鎧を装備してはしゃぐ男子高校生の姿をイメージした。

    勝田「だったらこのお祭りでもおばけ屋敷やったらいいんじゃないかー? 涼木もいるわけだし」

    涼木「私はかまいませんよ!」

    鳥羽津「それはでも観光課が決めることですから……ていうか、名前どうします?」

    勝田「あーそうだったー。早く終わらせたかったのによー。だれだよ会議ダラダラ長引かせてんのはー」

    鳥羽津「いや課長ですよ」

    勝田「あーもーけっこう時間かかったから休憩するぞー」

    涼木「会議時間はまだ15分足らずですが」

    勝田「たったそんだけかよー。あーあ、めんどくさ。タバコ吸ってくるわー」

    鳥羽津「いや課長タバコ吸わないじゃないですか。サボろうとしてんのバレバレですよ」

    勝田「だってよー、めんどくさいじゃんかよー」

    涼木「ではこうしませんか? これからお二人には10分だけ休憩していただいて、その間に私がいくつか案を考えてみます」

    鳥羽津「めちゃくちゃ建設的!」

    勝田「でもよー、それだと涼木の休憩時間がなくなるぞー? ずっと座ってたら肩ガッチガチになるぞー?」

    涼木「大丈夫です。私、肩ないんで」

    鳥羽津「いや肩は一応あるだろ」

    勝田「かーっはっはっは! やっぱ涼木はおもしれー奴だなー。じゃあ10分もらうわー。そのかわり、私らが戻ったらお前も10分休めよー」

    涼木「ありがとうございます! おまかせください!」

    勝田「そんじゃ、行くぞ鳥羽津ー」

    鳥羽津「えっ、あっ、はい」


    ~矢男やお町ちょう役場 2階 給湯室~

    鳥羽津がコーヒーを淹れている。

    鳥羽津「課長、砂糖とミルク入れますか?」

    勝田「おー、砂糖7:ミルク2:コーヒー1の割合で頼むなー」

    鳥羽津「いやそれもうコーヒーじゃないですよ。血糖値が爆上がりして逆に眠くなりません?」

    勝田「しっかしまー、企画課ウチにおもしれー奴が入ってきたもんだなー」

    鳥羽津「涼木ですか」

    勝田「見た目はアレだけど、ふつーにいい奴だよなー」

    鳥羽津「まあそうですね。見た目はアレですけど」

    二人が話していると、給湯室に女性職員が入ってきた。

    女性職員「あ、勝田課長。松志倉町長から内線電話が入ってます」

    勝田「町長から? うわー今度はなんだよー。あーめんどくさ。今行くわー」

    勝田が自席に戻る。給湯室にいる鳥羽津に、勝田の電話の声が聞こえる。

    勝田「代わりましたー勝田ですー。……はい……はい……あー……えー……あー……わかりましたー失礼しますー」

    勝田がより気だるそうになって給湯室に戻ってきた。そして盛大なため息をつく。

    勝田「はああああ~~~~~」

    鳥羽津「課長……? 町長はなんと?」

    勝田「観光課が全員インフルエンザだって言ったろ? だから準備とかぜんぜんできなくなるってんで、今年のお祭りは中止だとさ」

    鳥羽津「え! ……ってことは」

    しばし沈黙。

    勝田「……鳥羽津、涼木に言っといてくれ。私は町内のパトロールの時間だから。じゃ」

    ダッシュでその場を去る勝田。

    鳥羽津「あっ! ずるい! パトロールって、なんて幼稚なウソを! 課長! 課長ーーー!!!」


    ~矢男やお町ちょう役場 3階 会議室~

    涼木「『YAOフェス』なんてオシャレじゃないか? うーん、でも『やおやおまつり』もポップな感じがして捨てがたいな……」

    休憩時間の10分が過ぎても夢中になってアイデアを考えていた涼木は、鳥羽津が戻るまでに21個の候補を出していた。

    涼木「勝田課長や鳥羽津さん、驚くかなあ。想像しただけで顔がニヤけてしまいそうだ。まあ私、顔ないんだけど」


    (つづく)




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    物書き(エッセイや小説)。kindle『不憫男子〜フビダン〜』発売中。商業作家を目指して修行中。 |note創作大賞2025 エッセイ部門 中間選考通過、2年連続ベストレビュアー賞受賞|ポケモンとDOMOTOと特撮とコナンが好き|不憫男子|Amazonアソシエイト参加中

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