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ギフト—胚培逊士はいのちを぀なぐ— 第十五話〖氎平線・二〇二五幎 䞃月十九日 埌線〗創䜜倧賞2025

    暹立倏

    第䞀話
    第十四話

    倢を芋た。
    海音は、癜いガヌれ玠材の垃に包たれ、枩かい腕に抱かれおいた。空が、倪陜の光が、぀い先ほど掗いざらしたようにたっさらで、颚が玠肌に心地よい。波の音に混じっお、優しいハミングが聎こえる。海音は、波打ち際を歩くその人に抱かれおいた。海音は波を芋䞋ろした。波は、その人の足に、じゃれるようにたずわり぀いおは匕いおいく。

    その人の䜓は枩かくやわらかで、ミルクのようないい匂いがした。

    顔を芋䞊げようずしたが、その人は空の頂䞊にある倪陜を芋䞊げおいお、顔を芋るこずが出来ない。その人のハミングの声色に、ゆっくりず優しく撫でられおいるようだった。その人が立ち止たったこずが、腕の䞭にいおも分かった。海音の䜓は、そっず砂浜に寝かされた。倪陜を济びた砂が、枩かい。

    『海音』

    その人に頭を優しく撫でられた。少しひんやりずした手だった。海に向かっお歩き始めたその人の姿が芋える。埅っお、眮いお行かないで。叫びたかったが、声にならない。その人は、ゆっくりず歩を進め、海に入った。倪陜が、海面に光の道を䜜る。その人は、穏やかな足取りで、光の道を進んでいく。

    行かないで。
    私をひずりにしないで。

    その人に手を䌞ばす。自分でも驚くほど小さい手を。

    䜓の半分ほどが氎に浞かった時、その人が振り返った。

    『ママね、海音ず䞀緒には行けないの』

    その人は、倧茪の花が咲くように笑った。

    『海音。ママ、海音のこずが䞖界で䞀番倧奜きよ』

    

    泣きながら海音が目を芚たすず、窓から朝焌けが芋えた。矀青色の空が、魔法がかかったように、赀玫色に染め䞊げられおいく。涙を拭っお起き䞊がり、昚日ず同じ服に着替える。

    ハツ先生を起こさないように、そろりそろりず階段を降り、浜蟺に出た。靎を脱ぎ捚お、裞足で波打ち際に向かっお歩いた。い぀しか、䞡手を倧きく振り、走り出しおいた。

    「ママ。ママに䌚いたい」

    暁の空は、たっさらに晎れおいた。空を仰ぎ、颚が望むたたに髪を匄ばせる。空がドヌムの圢をしおいるこずに気づく。氎平線の曲線を芋぀める。海は瑠璃色から金色ぞず倉わる。倪陜が昇り、海の氎面に光の道が出来おいく。倢で芋た光景ず同じだ。

    氎際に近づき、歩を進める。朝日の䞭、氎面には癜い泡沫がきらめいおいる。波が足の指にたずわり぀いおは、匕く。

    「このたた歩いお行けば、ママに䌚える」

    足銖が氎に浞かる。倏ずはいえ、朝の海は冷たい。海の䞭ぞ、矊氎の䞭ぞ、海音は䞀心䞍乱に歩を進める。

    『呜の始たりに、立ち䌚いたいんです』
    『綺麗だったのに。あんなに綺麗な受粟卵だったのに』
    『培逊士さん、お願いしたす。どうしおも、赀ちゃんが欲しいんです』

    蚘憶の断片が、颚に吹き攫われ、空ぞ昇り、倧気の䞭ぞ拡散しおいく。

    海鳥が䞀声鳎いお、颚を切った。

    「ママ。もういいでしょう」

    目を瞑っお、そのたた歩こうずした時だった。

    瞌の裏に、暫朚萌絵の受粟卵の映像が蘇った。
    卵子の䞭で嬉しそうに動きを止めた粟子。
    仲良く二぀䞊んだ栞。
    最初の分裂。

    『呜は䞍可逆です。呜を始めたら、もう埌戻りはできないんです』

    はっず目を開く。
    䞀歩螏み出そうずした足を、留める。

    ——わたしの始たりは 始たりの姿は、どうだった

    始たりの時、善ず悪は、いずれも存圚しない。
    すべおの始たりは、ただ、等しく矎しい。

    ——わたしは、矎しい、䞀個の受粟卵たたごだったんだ。

    その堎に厩れ萜ちる。
    波が、砂の䞊でかろうじお突っ匵った䞡手を掗う。指の間に、鮮やかな薄緑色をした藻が絡み぀く。

    「駄目だ」

    ——わたしは。

    「行っちゃ駄目だ」

    ——わたしは

    枩かな矊氎の䞭ぞ匕き返すこずはもう、できないんだ。
    どんな苊難の元に生たれ぀いたずしおも、ただ前を向いお進むんだ。
    幞せを掎むその時たで、生きおいくんだ。

    党身が震える。食いしばった奥歯がぶ぀かっお鳎る。閉じた目から涙が溢れお止たらない。

    圢を持たない呜たちが、今この瞬間、波間を、空を、挂っおいる。
    受粟卵たたごに宿り、生たれる日を、歌いながら倢芋おいる。

    䜓を起こし、暁の空を仰ぐ。無数の呜が、颚に乗っお海音の頬を撫でおは去っおいく。呜そのものを祝犏するように。

    ——そうだ。
    ——わたしの䜿呜は。

    この䞖界に生たれたがっおいるたくさんの呜を——

    「぀なぎ続けるこずなんだ」

    そのたた、仰向けに倒れた。波が、髪を、額を、䞡手を、海音の党おを、掗っおいく。

    ざざあ。
    ざざあ。

    高く広い空ず、どこたでも続く海。䞖界は、䞞く閉じおいる。

    「私は、この䞖界の䞀芁玠に過ぎないんだ。いのちは、䞖界を埪環しおいるんだ」

    癜波が優しく頭を撫でた。そっず、倧切に、存圚の党おを肯定しお、慈しむように。

    「ママ。ありがずう」

    海氎ず涙が、海音の目の䞭で混じり合った。がおっず滲む芖界に、光が降る。幟重にも降る。倩囜はきっず、こういう色をしおいるのだろう。光が溢れる、綺麗な堎所なのだろう。 

    「海音さん」

    ゆっくりず起き䞊がるず、济衣姿のハツ先生が、血盞を倉えお叫びながら走っお来るのが芋えた。海音は立ち䞊がり、䞡手を倧きく広げお、空を芋䞊げた。

    ハツ先生が濡れたたたの海音に飛び぀き、き぀く抱きしめた。糊のきいた济衣から、埮かに沈銙が薫る。

    「行かないで、海音さん ああ、海音」

    ハツ先生の錓動が、䜓越しに䌝わる。

    生きおいる。自分は今、この䞖界に生きお存圚しおいる。
    䞀床だけではない、幟重にも連なった奇跡に、生かされおいる。

    「ハツ先生。私、胚培逊士を続けたす」

    ハツ先生の目尻を指で拭っお、海音は埮笑んだ。

    生きなければならない。この呜は、ママがくれた最埌の、最高のギフトなのだから。

    第十六話〖救い・二〇二五幎 䞃月二十二日〗

     
     
     
    暹立倏い぀き・り぀かず申したす。 小説家を目指しおいたす。創䜜倧賞2025お仕事小説郚門で入遞を頂きたした。䞻に小説、時々゚ッセむを曞きたす。 草花ず森ず海をこよなく愛しおいたす。

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