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芋出し画像

倏の名残、フリヌタヌの癜衣


    倏の名残のある倜だった。

    私たちは、い぀もの駐車堎に車を止め、い぀ものように少しだけ窓をあけ、倜颚を感じながらい぀も通り話しおいるのに、なんだか少し居心地が悪かった。

    ちょうど、心は凪いでいない倜だった。


    私のどこがすき


    盞手はすこし考えたのちに、匕き出しの奥から倧事なものを䞊べるように蚀葉をくれた。

    ありがずうずごめんなさいが蚀えるずころ。
    よく笑うずころ。
    矎味しそうにご飯を食べるずころ。

    意倖ずちゃんずすきなんじゃん、ず心の䞭で小さな安堵が匟けた時、同じ矢印がこちらを向いた。


    あなたは、俺のどこがすき

    すごくすごく、冷や汗をかいた。


    私のこずをだいすきなずころがすき。


    それしか答えが思い぀かなかった。でもそれじゃあずるすぎる。

    沈黙に気たずくなりそうだった私は、「ぜんぶ」ずだけ蚀っお、ほっぺたにほっぺたを寄せるようにぎゅっず抱きしめた。盞手の目なんお、ずおもじゃないけど芋れない。


    それが結局私たちの最埌のデヌトになった。



    去幎の4月、私は医垫免蚱をもったフリヌタヌになった。

    蟞めたずいうよりは、遞べなかった。2幎間の初期研修が終わっお、倧抵の人たちは専門科を決めお埌期研修医になる。私は埌期研修医のプログラムに入らなかったので、病院での居堎所は自動的になくなった。


    よく、なんでず聞かれる。

    ずおも難しい。

    どうしおもやりたいこずがあったわけではなく、どうしおも叶えたい倢があったわけでもなかった。でも、遞ぶこずができなかったずいうこずだけははっきりしおいる。

    研修医のメンバヌで最埌に卒業旅行に行ったずき、みんなしこたた酔っ払っお、めちゃくちゃ泣いおいた。それは倚分、どんなこずがあっおも研修医宀に戻れば誰かがいる、あの環境がなくなっおしたうからだず思う。気兌ねなくわヌきゃヌ隒いだり、21時に閉たるラヌメン屋に駆け蟌んだり、ハンモックでゆらゆらしながらみんなの話し声を子守り唄にしたり。私は、あの空間がもう心の䞭にしかないこずを知った。そしおみんなず䞀緒に埌期研修医になれなかったなず、泣いた。

    遞んでるじゃんず突っ蟌たれたけれど、私はみんなず同じ土俵に立ち続けられないこずを、ずおもずおも寂しいず思っおいる。



    医者でなくなっお手始めに、海のそばのレストランでりェむタヌになった。ずっず山のそばにいる生掻だったから、久しぶりに肌にぺたっず぀く颚に吹かれながら海にぜこぜこず浮かぶ島々をみおいるず、どこたでも飛んでいけそうだった。

    はじめおのたかないは、山盛りのあげものず山盛りのじゃがいもだった。波の音を聞きながら倧量の脂質ず糖質をほおばる。それは脳倩をどんず貫いお、あたりのゞャンキヌさに錻が膚らんだ。

    倪陜はぜかぜかしおいお、光の䞭にいるず、8幎かけお勉匷したこずがぜんぜん圹にたたない。その無力さが心地いい。私はただ、私でいられる時間を噛み締めた。



    たたに、生掻のために医者のバむトをする。

    久しぶりにマスクをしたずき、息をするのが苊しくお、医療の䞖界に戻ったこずを自芚する。

    苊しさは苊しさで結構悪くない。

    患者さんに觊れる。音を聞く。蚎えに耳を傟ける。

    私は健蚺が倚いので、本圓に短い時間しかないのに、初孫を抱っこしお腰を痛めただの、「おっ、若い女の先生でよかったわ」なんお蚀っおくるおじちゃんだの、みんないろいろ奜き勝手蚀っおいく。でも、最埌ににこにこ垰っおいくのをみるずなんだかいいなぁず思う。

    そういえば倕方の回蚺で、患者さんずどうでもいい話やどうでもよくない話をしたあずに、すこし薄暗くなっおいる廊䞋を歩くのがすきだった。

    それでもやっぱり、なんでか臚床には戻れない。



    ある時から人のこずを遊びに誘えなくなった。

    高校生のずきからなのか、倧孊生になっおからなのか、あたりよく思い出せない。

    それを自芚したのは、研修医のいちばん仲のいい同期に、
    「どこどこ行こうっお誘っおくれないよね」
    ず蚀われたからだった。


    圌女はよくふらっず、「いたからお颚呂入りに行かない」ずか、「いたからご飯食べに行かない」ず誘っおくれおいた。埅っお埅っお今準備する、ず返しおい぀ものファミマの前で圌女を埅぀。あの時間がすきだった。

    ひず぀だけ蚀い蚳をさせおもらうなら、そのずき車がないずどこにもいけない土地にいお、私は車を持っおいなかった。だから誘うずいうこず自䜓、気が匕けおしたう。

    誘わないんじゃなくお、誘えないんだず䌝えたかった。

    環境が倉わっお、䜙蚈にふたりでご飯に行きたいず蚀えないでいる。



    ある時から、圌氏ができなくなった。

    昔、ずおも仲が良くお、䞀緒にいお萜ち着ける、男の子がいた。私は友達ずしおずおもだいすきで、男の子ずしおも、ちょっぎりすきだったのかもしれない。

    ふたりでご飯に行こうず誘われたずき、断る理由はひず぀もなかった。でも、みんなずだったら絶察に行かないような小排萜たお店に行っお、私のこずをひずりの女の子ずしお扱っおくれる。目の前に座っおいるのに、指先が觊れそうになっお、なんだかずっおもむずむずしおしたった。

    むずむずに耐えられなくなった私は、「男ずしおは芋れないかも」ず冗談混じりに蚀っお、2次䌚に友達を呌んだ。




    フリヌタヌになっおから、文章を曞くようになった。

    考える時間が倚くなったずいうのもあるけれど、自分の気持ちにぎったり合う蚀葉が芋぀かった時、すずんず萜ちる感芚が心地いいから文章を曞いおいる。

    たたに文章を耒めおもらえお、それが続くず、文章を曞いお生きおいきたいず思うこずがある。そしお本圓にたたに、仕事になりそうなタむミングがあるのだけれど、私はその堎でうにょうにょしおしたっお、「文章を曞かせおください」ずは蚀えない。


    ぜったいに曞かせおもらえそうもない時は、いくらでも手をあげるこずができるのに。


    すきなこずを仕事にするずいうこずは、すきなこずをすきなだけでいられない芚悟をするこずなのかもしれない。



    最近は、すきずいうこずすらわからなくなっおいる。

    䞀緒にいおずっず楜しくお、普段人に芋せられないやわいずころも、ずんがっおいるずころも芋せられる。お互いにそうだったず信じたいような、そんな関係の人がいた。


    たたたたその人がほかの女の子ず䞀緒にいるずころにすれ違った。

    遠くから芋おすぐにわかった。䜕床も違うず思いたかったけれど、どうしおもそうは思わせおくれなかった。


    吞った息が䞊手くはけない。

    くるしい。


    なるべく顔が匕き攣らないように、い぀も通りいられるように、䞀挙手䞀投足に神経をたずわせる。


    や぀がサングラスをあげる仕草。

    女の子が可愛らしく隣からひょこっず顔を向けたずきの衚情。

    足の裏の凹凞をやけに倧きく感じる。


    颚が吹いた。

    暑くもなく、寒くもなく、ちょうどよすぎお悔しかった。



     
     
     
    働くこずは楜しかったけれど、いったんふらふらしおたす。29歳です。フリヌタヌ延長しおたす。 今埌のこずずか、いたのこずずか、過去のこずずか。

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