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    <title>医者を離れてフリーターになった</title>
    <description>働くことは楽しかったけれど、いったんふらふらしてます。29歳です。フリーター延長してます。

今後のこととか、いまのこととか、過去のこととか。</description>
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    <copyright>医者を離れてフリーターになった</copyright>
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    <lastBuildDate>Wed, 07 Oct 2026 12:58:19 +0900</lastBuildDate>
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      <title>夏の名残、フリーターの白衣</title>
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      <description><![CDATA[<p name="AB7CECC9-D286-4DD5-B625-D2D0CA2E5AA5" id="AB7CECC9-D286-4DD5-B625-D2D0CA2E5AA5"><br>夏の名残のある夜だった。<br><br>私たちは、いつもの駐車場に車を止め、いつものように少しだけ窓をあけ、夜風を感じながらいつも通り話しているのに、なんだか少し居心地が悪かった。<br><br>ちょうど、心は凪いでいない夜だった。<br><br><br>私のどこがすき？<br><br><br>相手はすこし考えたのちに、引き出しの奥から大事なものを並べるように言葉をくれた。<br><br>ありがとうとごめんなさいが言えるところ。<br>よく笑うところ。<br>美味しそうにご飯を食べるところ。<br><br>意外とちゃんとすきなんじゃん、と心の中で小さな安堵が弾けた時、同じ矢印がこちらを向いた。<br><br><br>あなたは、俺のどこがすき？<br><br>すごくすごく、冷や汗をかいた。<br><br><br>私のことをだいすきなところがすき。<br><br><br>それしか答えが思いつかなかった。でもそれじゃあずるすぎる。<br><br>沈黙に気まずくなりそうだった私は、「ぜんぶ！」とだけ言って、ほっぺたにほっぺたを寄せるようにぎゅっと抱きしめた。相手の目なんて、とてもじゃないけど見れない。<br><br><br>それが結局私たちの最後のデートになった。<br><br><br><br>去年の4月、私は医師免許をもったフリーターになった。<br><br>辞めたというよりは、選べなかった。2年間の初期研修が終わって、大抵の人たちは専門科を決めて後期研修医になる。私は後期研修医のプログラムに入らなかったので、病院での居場所は自動的になくなった。<br><br><br>よく、なんで？と聞かれる。<br><br>とても難しい。<br><br>どうしてもやりたいことがあったわけではなく、どうしても叶えたい夢があったわけでもなかった。でも、選ぶことができなかったということだけははっきりしている。<br><br>研修医のメンバーで最後に卒業旅行に行ったとき、みんなしこたま酔っ払って、めちゃくちゃ泣いていた。それは多分、どんなことがあっても研修医室に戻れば誰かがいる、あの環境がなくなってしまうからだと思う。気兼ねなくわーきゃー騒いだり、21時に閉まるラーメン屋に駆け込んだり、ハンモックでゆらゆらしながらみんなの話し声を子守り唄にしたり。私は、あの空間がもう心の中にしかないことを知った。そしてみんなと一緒に後期研修医になれなかったなと、泣いた。<br><br>選んでるじゃん！と突っ込まれたけれど、私はみんなと同じ土俵に立ち続けられないことを、とてもとても寂しいと思っている。<br><br><br><br>医者でなくなって手始めに、海のそばのレストランでウェイターになった。ずっと山のそばにいる生活だったから、久しぶりに肌にぺたっとつく風に吹かれながら海にぽこぽこと浮かぶ島々をみていると、どこまでも飛んでいけそうだった。<br><br>はじめてのまかないは、山盛りのあげものと山盛りのじゃがいもだった。波の音を聞きながら大量の脂質と糖質をほおばる。それは脳天をどんと貫いて、あまりのジャンキーさに鼻が膨らんだ。<br><br>太陽はぽかぽかしていて、光の中にいると、8年かけて勉強したことがぜんぜん役にたたない。その無力さが心地いい。私はただ、私でいられる時間を噛み締めた。<br><br><br><br>たまに、生活のために医者のバイトをする。<br><br>久しぶりにマスクをしたとき、息をするのが苦しくて、医療の世界に戻ったことを自覚する。<br><br>苦しさは苦しさで結構悪くない。<br><br>患者さんに触れる。音を聞く。訴えに耳を傾ける。<br><br>私は健診が多いので、本当に短い時間しかないのに、初孫を抱っこして腰を痛めただの、「おっ、若い女の先生でよかったわ」なんて言ってくるおじちゃんだの、みんないろいろ好き勝手言っていく。でも、最後ににこにこ帰っていくのをみるとなんだかいいなぁと思う。<br><br>そういえば夕方の回診で、患者さんとどうでもいい話やどうでもよくない話をしたあとに、すこし薄暗くなっている廊下を歩くのがすきだった。<br><br>それでもやっぱり、なんでか臨床には戻れない。<br><br><br><br>ある時から人のことを遊びに誘えなくなった。<br><br>高校生のときからなのか、大学生になってからなのか、あまりよく思い出せない。<br><br>それを自覚したのは、研修医のいちばん仲のいい同期に、<br>「どこどこ行こうって誘ってくれないよね」<br>と言われたからだった。<br><br><br>彼女はよくふらっと、「いまからお風呂入りに行かない？」とか、「いまからご飯食べに行かない？」と誘ってくれていた。待って待って！今準備する、と返していつものファミマの前で彼女を待つ。あの時間がすきだった。<br><br>ひとつだけ言い訳をさせてもらうなら、そのとき車がないとどこにもいけない土地にいて、私は車を持っていなかった。だから誘うということ自体、気が引けてしまう。<br><br>誘わないんじゃなくて、誘えないんだと伝えたかった。<br><br>環境が変わって、余計にふたりでご飯に行きたいと言えないでいる。<br><br><br><br>ある時から、彼氏ができなくなった。<br><br>昔、とても仲が良くて、一緒にいて落ち着ける、男の子がいた。私は友達としてとてもだいすきで、男の子としても、ちょっぴりすきだったのかもしれない。<br><br>ふたりでご飯に行こうと誘われたとき、断る理由はひとつもなかった。でも、みんなとだったら絶対に行かないような小洒落たお店に行って、私のことをひとりの女の子として扱ってくれる。目の前に座っているのに、指先が触れそうになって、なんだかとってもむずむずしてしまった。<br><br>むずむずに耐えられなくなった私は、「男としては見れないかも」と冗談混じりに言って、2次会に友達を呼んだ。<br><br><br><br><br>フリーターになってから、文章を書くようになった。<br><br>考える時間が多くなったというのもあるけれど、自分の気持ちにぴったり合う言葉が見つかった時、すとんと落ちる感覚が心地いいから文章を書いている。<br><br>たまに文章を褒めてもらえて、それが続くと、文章を書いて生きていきたいと思うことがある。そして本当にたまに、仕事になりそうなタイミングがあるのだけれど、私はその場でうにょうにょしてしまって、「文章を書かせてください」とは言えない。<br><br><br>ぜったいに書かせてもらえそうもない時は、いくらでも手をあげることができるのに。<br><br><br>すきなことを仕事にするということは、すきなことをすきなだけでいられない覚悟をすることなのかもしれない。<br><br><br><br>最近は、すきということすらわからなくなっている。<br><br>一緒にいてずっと楽しくて、普段人に見せられないやわいところも、とんがっているところも見せられる。お互いにそうだったと信じたいような、そんな関係の人がいた。<br><br><br>たまたまその人がほかの女の子と一緒にいるところにすれ違った。<br><br>遠くから見てすぐにわかった。何度も違うと思いたかったけれど、どうしてもそうは思わせてくれなかった。<br><br><br>吸った息が上手くはけない。<br><br>くるしい。<br><br><br>なるべく顔が引き攣らないように、いつも通りいられるように、一挙手一投足に神経をまとわせる。<br><br><br>やつがサングラスをあげる仕草。<br><br>女の子が可愛らしく隣からひょこっと顔を向けたときの表情。<br><br>足の裏の凹凸をやけに大きく感じる。<br><br><br>風が吹いた。<br><br>暑くもなく、寒くもなく、ちょうどよすぎて悔しかった。</p><p name="C926AED3-9248-4658-9DEC-0C04333FA479" id="C926AED3-9248-4658-9DEC-0C04333FA479"><br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n7f8fc5c0d1e4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 08 Jul 2026 23:11:49 +0900</pubDate>
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      <title>上海の夜と166元の本</title>
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      <description><![CDATA[<p name="A2CCC4FB-CC46-4EB1-85DE-7208BF3086BE" id="A2CCC4FB-CC46-4EB1-85DE-7208BF3086BE">上海の夜はむんわりという言葉がぴったりなくらい、空気が肌にまとわりつく。じっとしているだけでもじわしわ汗がでてきて、ああ上海に来たんだなぁと思う。<br><br>ホテルを出てバス停に向かって歩き始めると、歩くことによって空気が動くのか、止まっているときより涼しくなる。</p><p name="CBD6DBED-04F3-4AA0-8A50-65084CB13DCF" id="CBD6DBED-04F3-4AA0-8A50-65084CB13DCF">夜風とクラクション。上海の街を歩く。<br><br><br>今回は視察で上海に来ている。視察っていうと出世した感があるけれど、申し込めばいける。ようは社会なんて、切り取り方次第なのだ。<br><br>路面バスの71路に乗る。Alipayを使いこなせるようになったかと思ったけれど、うまくいかずおばちゃんはぶっきらぼうに私の携帯を操作する。たしかにいままでAlipayに電車に乗れたことはなかった。認証できなかったらどうしようと、一瞬ひやっとしたけれどうまくいった。2元。<br><br>入り口のそばによっかかって立つ。払ってしまえば、私は日常の風景に溶け込むことができる。<br><br><br>それにしても蒸し暑い。ドアがあくたびに、あたたかい空気がまとわりついてくる。それを、大きく吸い込んだ。</p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/ne8fbe451271a'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 18 Jun 2026 12:05:24 +0900</pubDate>
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      <title>素手で洗ったあとの、妙な心地よさについて</title>
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      <description><![CDATA[<p name="303490D5-24B7-4E20-8AEC-2286D8777D86" id="303490D5-24B7-4E20-8AEC-2286D8777D86"><br>私は去年の4月、後期研修医になるという選択をせず、医者を辞めフリーターになった。<br><br>その1ヶ月前にこんなことを書いている。<br><br></p><figure name="1CB2702D-B663-4FED-853B-7C8571CB538F" id="1CB2702D-B663-4FED-853B-7C8571CB538F"><blockquote name="1CB2702D-B663-4FED-853B-7C8571CB538F"><p>最近、労働について考える。というのも、あと4週間で研修医を終え、フリーターになるからだ。<br><br>この2年間で労働することの楽しさを学んだ。働いてお金を得ることは楽しい。特に身体を動かして働き、その成果を実感できた時、とても充実感がある。<br><br>ただ、患者さんを無事に退院させ、「ありがとう」と言われた時と、施設でお年寄りの身体を汗まみれになりながら洗って「ありがとう」と言われた時、充実感は変わらなかった。<br><br>どちらも、自分の手で誰かの役に立っている実感があるためだと思う。これに気がついた時、昼夜問わず人のために働き、高収入を得ることが自分の人生を豊かにしてくれるのかわからなくなった。<br><br>誰かの役に立つ充実感は知った。それは金銭が伴わないとなくなってしまうものなのだろうか。<br><br>現在の時給は3000円近く。4月からは1000円。きっと月収は半分以下になるだろう。そして2ヶ月弱働いたのちには、収入が0になる。<br><br>医者としての王道を外れることの怖さはあるはずなのに、想像すると胸が高鳴る。この気持ちは、はじめてひとりで海外の空港に降り立った時の感覚に似ている。<br><br>わくわくはいったんポケットの中にそっと忍ばせて、あと4週間は全力で研修に励もうと思う。<br></p></blockquote>
<figcaption>2025年2月の私</figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/ne3bdf496fdd2'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 01 Jun 2026 19:39:09 +0900</pubDate>
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      <title>ニート、延長</title>
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      <description><![CDATA[<p name="AF355FAE-1304-466F-B039-05AB2A7E4913" id="AF355FAE-1304-466F-B039-05AB2A7E4913">「春の風が心地よい季節となりました。道中お気をつけていってらっしゃいませ。この度は日本航空をご利用くださりありがとうございました。」<br><br>慣れ親しんだ高松空港に到着した。晴れているんだか、曇っているんだかわからない空をしている。太陽の光には溢れているのに、太陽の姿は見当たらない。山と空の境目は、ぼんやりとしていてなんだかとても春らしかった。<br><br><br>医者を辞めフリーターになり、1年が経とうとしている。<br><br>春の霞がかった空を見ると、2ヶ月とちょっと海のレストランで働いていたときのことを思い出す。私は毎日9時にレストランに行き、店内の掃除をしてからテラスの掃除をするのが日課だった。<br><br>テラスの掃除は格別な楽しさがある。頭の中を今日のオペレーションでいっぱいにしながら、身体は掃いても掃いてもきれいにならないテラスと格闘する。脳と腕が別々の方向に忙しい。でも、普段はお客様でがやがやしているテラスを独り占めできるのはなんだか背徳感があるし、ふとした瞬間に目に入る景色は同じはずなのに毎日まったく違うものになるから飽きることがなかった。<br><br><br>高松港に向かうバスに乗る。<br><br>高松空港を出ると、ゆるやかな下り坂のカーブが続いていて、ここに来ると高松だなぁと思う。<br><br>この1年間のことを思い出した。<br><br>時給1000円から数倍以上もらえる医者のバイトまで、いろいろな時給で働いた。お金に関わらず、働くことが好きだということを知った。<br><br>はじめて個人で仕事をもらった。うまくいかなくて、悔しくて大泣きした。<br><br>ははと6年ぶりに2人だけで海外に行った。<br><br>ネイティブだらけのご飯会で浮かないくらいの英語力が身につき、スペイン語はほんのちょっぴり話せるようになった。<br><br>家に引きこもって、私という質量がこの世に5kgほど増加した。<br><br>文章を書くようになった。<br><br>意味のあることも、ないことも、というかないことの方が多かったような気がする。意味のあることしかしてはいけない時間が長かった。そんな私にとって、意味がないと言えたことが嬉しい毎日だった。<br><br>あれこれ考えていると、あっという間に高松港に着いてしまった。相変わらず、夕暮れ時の薄鈍色の空に鉄骨のキリンがにゅっと立っている。<br><br><br>私は、世界の全てを知りたいと思っている。<br><br>無理だとわかっているけれど、1年かけて世界を端からちょっとずつ触っていった。<br><br>とげとげしていたり、とぅるんとしていたり、ざらざらしていたり。触れそうとは知って行ったら蜃気楼でがっかりしたり、ぜったいに地面があると思って飛び降りたら思いの外高く怪我をしたりした。<br><br>でも、すごく楽しかった。<br><br><br>触り始めたら、触りたいものがたくさんでてきてしまった。私はもうちょっとこの作業に没頭していたい。<br><br><br>ぴゅうっと風がほほにあたった。高松港の海風は、ちょっぴり冷たくて強い。そんな風が心地よいなと思いながら、桟橋4番乗り場で豊島行きの船を待つ。<br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n424ba9707618'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 29 Apr 2026 16:22:27 +0900</pubDate>
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      <title>せめて読点がほしい</title>
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      <description><![CDATA[<p name="F4B37AA8-0822-4F3A-A38C-8F4E95F5A648" id="F4B37AA8-0822-4F3A-A38C-8F4E95F5A648">恋愛市場というバッターボックスに、代打でしか呼ばれなくなってはや数年が経つ。そんな私に久々にお呼びがかかり、打席に立つことになった。<br><br>相手はなかなか際どいコースの球ばかり投げてくる。隣の体温に焦れた私は我慢できなくなって、ボール球に手を出した。<br><br><br>「私のことすき？」<br><br>ひと呼吸おいて、相手はこう言った。<br><br>「今はすき。」<br><br><br>え、『今は』ってなんだ。<br><br>今は好きっていうのは、<br>「今は好き。」なのか、<br>「今は好き！」なのか、<br>「今は好き？」なのか、<br>「今は好き、、」なのか。<br><br>でもこれはどう考えても<br>「今は好き。」<br>の類な気がする。<br><br>句点は結構最悪だ。せめてにょろっと伸ばし棒つけるとか、あるんじゃないの。<br><br>そうすると、<br>「いまは、すき。」なのか<br>「今は、好き。」なのか<br>「いまはすき。」なのか<br>「今は好き。」なのか<br>でまた意味が変わってくる。<br><br>私的には、『いまは、すき。』がいちばん可愛げがあって、なんかちょっと困惑している感じもあって大変好ましい。でも、『今は好き。』っていうのはいただけない。この『今』は、どう考えても秒単位か分単位だろう。せめて『今は』のあとに読点が欲しい。私たちの関係にためらいとか、恥じらいとかそういうものを感じたい。<br><br>たった5文字のひらがなだ。聞けば済むのに、『今』が気になりすぎて先に進めない。<br><br>私は結局、<br>「へー、そうなんだ。」<br>と言った。<br><br><br>5年と7ヶ月と10日ぶりに異性から言われた『好き』という言葉なのに、きゅんの『き』の字すら出てこない。<br><br>『好き』と言われたら、ほわほわときらきらのトーンがぶわっと広がるものだと思っていた。現実の『好き』は、思っていたよりずっと種類が多くてくらくらする。<br><br><br>今回の打席は空ぶったのか、ファウルだったのか、はたまた見逃し三振だったのか。それとも、ぼてぼてのゴロがうまいこと間を抜けて出塁できていたりしないだろうか。<br><br>私の「へー、そうなんだ。」の意味も少しはこねくりまわしてくれてないかなと思いながら、今日も『今』の意味を考えている。<br><br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n16daee785581'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 05 Apr 2026 12:10:20 +0900</pubDate>
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      <title>魚の小骨</title>
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      <description><![CDATA[<p name="476A070B-22F4-4600-9249-42780BFB9D56" id="476A070B-22F4-4600-9249-42780BFB9D56">研修医時代の同期たちと、ありがたいことに定期的に会っている。<br><br>今回は金沢にいる同期に会いに、1泊2日の温泉旅行を決行した。<br><br>ほっぺが筋肉痛になりそうなくらい、めちゃくちゃ楽しかった。<br><br><br>間違えて人のペットボトルを飲み干したことにまったく気がつかないAと、いつのまにかお茶がなくなっていることをおそるおそる告白したIに大笑いしたこと。<br><br>額にしわをよせて息継ぎの隙間もなく話し続けるSを、みんなで微笑ましく見守ったこと。<br><br>歯に衣着せぬ発言に磨きがかかっているYの爽快さにすかっとしたこと。<br><br>相変わらず、Kを怒らせてはにこにこ謝るHと、「むかついた！」とぷんぷんしているKの隣を歩いたこと。<br><br><br>氷見の鰤も美味しかったし、能登の牡蠣も美味しかった。雪の兼六園は言葉にはできないほど美しかった。<br><br>でも、きっと数年後に思い出すのは、文字にすると面白さのかけらもない、変わらない日常だと思う。<br><br>ただはしゃいで、ただ大笑いして、ただその場に素直にいられる。湯船に肩まで沈むみたいに、まるはだかのままでいられる関係があることを幸せに思った。<br><br><br><br>ただ、身体があたたまればあたたまるほど、湯冷めの気配が先に立つ。<br><br><br><br>金沢駅で合流してすぐのこと。<br><br>寒波が到来している金沢駅は、びしゃびしゃの溶けかかった雪と、降り積もる雪が同居していた。同期のひとりは、その上をつるつる滑りながら雪の感触を噛み締め、「病院にはない感覚」とぽそっと呟いた。<br><br>私も、太陽を欲していた。平日の昼間外に出たとき、呼吸が一段深くなる、あの感じを。<br><br>私は、「わかる」が言えたはずだった。<br><br><br><br>ひとつの部屋に集まって、夜な夜なさまざまな話をした。<br><br>当直の話や、持っている患者さんの話。1年前まではありありとわかっていた背景がわからなくなっていた。今まで勝手に入ってきていた小さな情報たちが、手元にない。<br><br>これが、「わかる」のひとことに繋がっていたのだと、このとき初めて気がついた。<br><br><br><br>帰りの新幹線。<br><br>わざわざ前の人に声をかけてみんなで喋れるように、席を回転させて向き合った。<br><br>明日から働きたくないと言い合っているみんなと、一緒に「働きたくない〜〜」と言えなかったとき、なぜか胸がちくんとした。<br><br>私は何も言えず、黙ったままだった。<br><br>「わかる」を飲み込むたびに、湯冷めが一段深くなる。</p><p name="582D1652-FC49-47DF-9B31-A60079536802" id="582D1652-FC49-47DF-9B31-A60079536802"><br>これは1年前、研修医が終わったときからわかっていたことだったけれど、思っていた以上に「わかる」と言えない自分をまだ受け止めきれていない。<br><br>思っていたよりも、私はあの環境を愛しているらしい。<br><br><br><br>みんなと別れ、最終の新幹線。<br><br>人がまばらにしか座っていなかった。スーツを着ている人はほとんどいない。からっぽの車内で、自分が手放すものがひとつずつ浮かんできた。<br><br><br>鳴るかもしれない携帯。<br><br>消毒液のにおい。<br><br>深夜に食べる油っぽいお弁当。<br><br>昼間の検食の牛乳。<br><br>手術のあとのくせのついた前髪。<br><br>隙間に生まれるなんでもない雑談。<br><br>硬いベッドと乾燥した空気。<br><br>動脈を刺したときの逆血。<br><br>剥離面をうまく出せたときの快感。<br><br><br><br>好きな人たちと一緒にいたい。でも、それだけでは戻れない。<br><br><br><br>新幹線から見えるはずの町のあかりは真っ暗だった。景色がさらに滲みそうになる。高崎駅の手前でふと目に入ってきた、緑色のルートインの看板がやけにまぶたに焼きついていた。<br><br><br>ふと気がつくと、大宮の駅が近づいていることを知らせる放送が耳に入った。町のあかりが増えている。<br><br>ホームに降りると、しんと澄んだ寒さはかけらもなくなっていた。汗ばんで、重ね着していたウルトラライトダウンを脱ぐ。<br><br>金属と、コンクリートと、光と、大量の人。<br>眠らない町の中を、鉄の塊が走っていく。<br><br><br><br>改札を抜けて、人混みにまぎれる。渋谷のネオンと、すれ違う人たちの無関心さが、今夜はちょうどよかった。<br><br>言えなくなってしまった「わかる」のひとことは、いつまでものどの浅いところにひっかかっている。</p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n69e13a438bdf'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Sun, 22 Feb 2026 22:46:33 +0900</pubDate>
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      <title>ニート、部長になる</title>
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      <description><![CDATA[<p name="78E6F8A0-41D3-46B8-8949-69F3018D4FA6" id="78E6F8A0-41D3-46B8-8949-69F3018D4FA6">ニートをはじめて、はやくも季節が一周しようとしている。ニートもだいぶ板についてきたけれど、慣れない瞬間は違う形でやってくる。<br><br>自己紹介である。<br><br>私はその場に合った自己紹介を探すために、他の人の話を半分以上聞いていない。何度やってもうまくならないけれど、相槌を打つふりをしながら考えるのだけは得意になった、と思う。<br><br><br>特に肩書を名乗らなくてはいけないときは、さらに億劫になる。<br><br>「医者です」<br>そう名乗るたびに、真っ黒なペンキで染められている気持ちになる。そのせいか、患者さんの家族に電話するときも、医者バイト先で名前を名乗るときも、なるべく「医師の」とは言わないようにしている。<br><br>自己紹介も、他己紹介も、名刺交換も、なくなってしまえばいいのになと思っている。名刺持っていないけど。<br><br><br><br>先日、大勢の前で自己紹介する機会があった。<br><br>所属と今日の感想を述べよというミッションだ。<br><br>正面の席のマダムに、最近よく使っている「いまニートなんですよ〜。」とへらへら繰り出したところ、見てはいけないものを見た顔に変わってしまった。慌てて氷の溶け切ったレモンサワーをぐいっとあおり、真面目に略歴をプレゼンする。<br><br><br>でも、みんなの前では「医者です」とも言えなかったし、「いったん休業しています」なんてもっと言えなかった。ここは一発ウケを狙うしかない。<br><br><br>ちょうど通りかかった取締役(母)を捕まえて、こそっと相談した。<br><br>「宇沢国際学館*の役職名、なにがいいかな？」<br>「ソーシャルイノベーション部とかでいいんじゃない？」<br><br>母は私に目もくれず、楽しそうに飲み会の席に戻っていった。ソーシャルイノベーションってなに？と思ったけれど、語感としては悪くない。その語感の良さがむしろ今の私にぴったりな気がした。<br><br><br>※解説しよう。<br>宇沢国際学館とはいまのところ霞を食って存在している有限会社である。<br>ひげ：祖父<br>名誉会長：祖母<br>取締役：母<br>総務部秘書課部長：妹<br>ソーシャルイノベーション部部長：私<br>ドラ孫：弟<br>影の立役者：父<br>以上のメンバーで構成。実働部隊は3.5人くらい。うち2名は天国から参加。<br><br><br><br>新しい肩書を手に入れた私は、他の人の自己紹介にこにこうなずきながら頭の中で何回もシミュレーションした。<br><br>ようやく回ってきた本番。厳かに立ち上がったつもり。そして、溜めに溜めてこう言った。<br><br>「宇沢国際学館、ソーシャルイノベーション部、部長のうらべと申します。」<br><br>一拍おいて、音のかたまりがどっと身体に当たる。してやったり、と思った。<br><br>その後もなんとか語尾だけは落とさなかった。ふう、と一息ついて腰を掛けると、私の自己紹介なんてなかったかのようにその場の空気はもう次の話題へ流れていく。私はひとり、水の底にゆっくり落ちていく。外の音がぼんやりと響いている。<br><br>レモンサワーに口をつける。からん、と氷が音をたてる。ごくりと飲み干すと、熱くなったのどに、炭酸がじゅんと染み込んでいった。しかし、グラスを置いた瞬間、べったりとした人工のレモンの甘さが舌に残る。上書きするようにまたひと口含むけれど、甘さは消えてはくれなくて、気がつけば耳の奥まで真っ赤になっていた。<br><br><br>ほろ酔いで帰宅後、布団にもぐりこんで、「ソーシャルイノベーション部、部長」と呟いてみる。あの炭酸の感触が、まだ喉の奥でくすぐったい音を立てている気がした。<br><br>悪くないな、と思ったけれど、明日にはもう忘れていたい。<br><br>やっぱり、自己紹介なんていらなくて、あだ名とその場にいる理由くらいがちょうどいいんじゃないかと思うんだけどな。<br><br></p><p name="D0BAF48D-4860-480C-B00A-E7F8191B85D6" id="D0BAF48D-4860-480C-B00A-E7F8191B85D6"><br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/nd70bc7e5ce90'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 13 Feb 2026 16:46:50 +0900</pubDate>
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      <title>石ころだらけの地面でも</title>
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      <description><![CDATA[<p name="FBD59598-8903-4C01-825F-8A1DF913B46C" id="FBD59598-8903-4C01-825F-8A1DF913B46C">ひとつ上の先輩と飲んでいるときに、<br>「普通やりたいことがあって休むんじゃないの？やりたいことないの？」<br>と言われたことがある。<br><br>たしかにそうだよなあ、と思った。<br><br>ぬるくなってしまったビールを飲んでみたり、ジョッキの水滴を拭いてみたりしたが、話題は一向に移らず、結局うにょうにょ言ってその場を凌いだ。<br><br>先輩は、納得していなさそうな顔をしていた。<br><br><br>初対面の人に自己紹介をすると、<br>「これからどうするんですか？」<br>と必ず言われる。<br><br>自分でもわからない。アルカイックスマイルを浮かべてくねくねしてみたり、あえて神妙な顔をして触れられない空気を作ってみたりする。<br><br>でも、うにょうにょ言ってもあまりごまかされてはくれないし、好意に応えられないことに少し疲弊する。<br><br><br>このことを思い出すきっかけとなったのは、オトハルラジオの収録だった。前回は、空振り三振もいいところで、収録画面に映る真っ赤な顔を忘れられずにいる。なのになんとまさかの2回目。ありがとうございます。<br><br><br>収録後、ふと、やりたいことや夢は地面に埋まっている種のようなものではないかと思った。<br><br>どこに埋まっているかも、どんな種類があるのかも、何個埋まっているのかもわからない。<br><br>気がついたら初めから芽が出ていて、あとは光に向かって伸びていくだけの人もいれば、芽が出ることを信じてていねいに手入れをする人もいる。<br><br>気がついたら、実は根は立派だけど土からは見えないことにもなっているかもしれない。<br><br>もしかしたら、実は飛んでいるのは胞子で、年月が経ってふとした瞬間に、足元に立派な苔が生えていることもあるだろう。<br><br>世間は芽を出したほうがいいと言うけれど、どんな種が埋まっているのか見るために、掘り起こしたら死んでしまうこともある。<br><br>だから芽を出す出さない以前に、今日の太陽はいい感じに土をあたためてくれるとか、数日ぶりの雨が気持ちいいなとか、そういうことを感じていられるなら、芽を出そうとやっきにならなくてもいいのではないかと思う。<br><br><br>私はやりたいことを聞かれるたびに、自分の地面は石ころだらけかもしれないから見たいって言わないで、と言いたくなってしまう。<br><br>そんなときにオトハルラジオを聞くと個性豊かなエピソードが勢揃いで、自分の石ころもたくさん集まれば枯山水か、と思わせてくれる。<br><br>人生に迷っていても、迷っていなくても、明日もどうにかなるだろうと思えるので、オトハルラジオ、よかったらぜひ。<br><br>私の回は、気が向いたら聞いてくれると嬉しいです。<br><br><br>P.S.<br>今回は、飾らない、演じない、わからないは正義の3箇条を心に誓って収録にのぞんだ。<br><br>そうしたら、素が出過ぎてしまってラジオで喋るというより、三好洋子さんと住吉若菜さんとリビングに座ってまったりお茶飲んでいるような感じになってしまった。<br><br>公共の電波に乗っけてしまっていいのかと、またもや穴を掘って反省している。<br><br>あれ私喋ってなくない？と気がついたときの沈黙は、消えかけのろうそくを目の当たりにしているようだった。火が消えないようにと風を送ったつもりが蛇足だったことを思い出して、気がつけば足元の穴はさらに深くなった。<br><br>ああ、冬眠したい。<br><br><br></p><hr name="80C5B088-BDEB-419D-AA39-A7E059E66DA3" id="80C5B088-BDEB-419D-AA39-A7E059E66DA3"><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n713bb673df69'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 02 Dec 2025 02:48:13 +0900</pubDate>
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      <title>国際劇場の夜</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1E5F17BB-BEF2-4DEE-96CC-37E6A7A1D205" id="1E5F17BB-BEF2-4DEE-96CC-37E6A7A1D205">こつ、こつ、こつ<br>がさっ、がさっ、がさっ<br><br>ハイヒールの音とビニールのこすれる音が近づいてくる。<br><br>片桐はいりの『もぎりよ今夜も有難う』という本の一場面が頭をよぎった。</p><figure name="06D60A6C-2AA8-479D-9E86-E191F733D1F0" id="06D60A6C-2AA8-479D-9E86-E191F733D1F0"><blockquote name="06D60A6C-2AA8-479D-9E86-E191F733D1F0"><p>劇場で怪しい人影を認めた時にはなるたけ目立つ前方の席に陣取って、そして暗闇から伸びてくる手を防ぐため、隣の席との間にかばんで堅固な城砦を作って闘った。あの頃はどんな女にだって、映画館に行くときには必ずこの問題がついて回ったものなのだ。</p></blockquote>
<figcaption>片桐はいり　もぎりよ今夜も有難う　幻冬舎文庫<br>女王の男より<br><br></figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n2ea6e27d89ac'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Fri, 31 Oct 2025 20:01:53 +0900</pubDate>
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      <title>波にまぎれる境界線　　キューバ旅行記その②</title>
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      <description><![CDATA[<p name="489433D6-D660-4BBE-B5DE-5FE883E43C09" id="489433D6-D660-4BBE-B5DE-5FE883E43C09">「近くに市場とかスーパーとかない？人々の様子がよくわからん」<br><br>早々にハバナから撤退し、リゾート地バラデロに移動完了の報告LINEへの、父のコメントである。<br><br><br>再起不能に陥った。<br><br>せっかく自意識のリュックがかっさらわれたところだったのに、劣等感という名の新しいリュックがずしんと肩にのしかかる。<br><br>絶対にそれらしい言い訳をしなければと必死に考えたけれど、全く思いつかなくて、「お金せびられすぎて人の写真はないです」と送り、携帯のWi-Fiを切った。<br><br>日本語でキューバの本を読み、せっかく勉強したスペイン語を放棄し、外資系の資本のオールインクルーシブで一息ついている自分に落ち込んだ。憧れのコバルトブルーの海と真っ白の砂浜を目の前にしているのに、景色は色を失っていた。<br><br><br>人に興味がないのかもしれない。<br><br>致命的である。<br><br><br>そうなると、ハバナで感じた苛立ちやもやもやは相手のせいではなく、郷に入ったのにも関わらず、郷に従えていない自分のせいなのかもしれない。<br><br><br>ハバナ国立美術館に行ったときのこと。<br><br>ぱりっとしたミニスカスーツを着た学芸員のおばちゃんが、いきなり「薬代のためにお金をください」という紙を見せてきた。<br><br>そこが特別課金エリアであるわけでもなく、作品の説明をするわけでもない。<br><br>それ以降、美術館で話しかけてくる人に毎回怯えなくてはならなくなったのでおばちゃんにはかなりいらだった。<br><br><br>はたまた、ハバナの街を歩いていたときのこと。<br><br>Holaと親しげに話かけてくる小綺麗な人たちは、最終的にはみんな口を揃えて「For my baby」と言って、人差し指と親指をすりすりしてくる。<br><br>本当に生活に困っているのか疑問に思う。<br><br><br>医療費ただなのになぜ薬にお金が必要なの？本当に生活に困ってるの？と、もやもやを本人たちに聞いてみればよかった。<br><br>そうしたら、『もの』と『もの』を交換する世の中で生きてきた私にとって、失礼に思える人たちを拒絶せずに、興味を持てるようになるのかもしれない。<br><br>めんどうでも、話してみたら何かが変わるかもしれない。そう思った。<br><br><br>そんな誓いは束の間、ひどい体調不良で三日三晩寝込んだ。<br><br>夜中にひどい頭痛と関節痛がおそう。うんうん唸りながら、天井を眺める。数歩先のスーツケースに薬が入っているのに、取りに行く元気もない。<br><br>寝られない。こういう時こそ、冷静に自分の武器を思い出せと、朦朧としながら鑑別を挙げる。上気道症状がないことでパニックになりかける。頭が痛すぎるし髄膜炎か。腎盂腎炎か。下腹部が痛いかもしれない。婦人科系の感染だったら太刀打ちできない。受診とか入院とか必要だったらどうしよう。<br><br>明け方、下痢が出て、とてもとても安心した。胃腸炎だ。<br><br>育ててくれた上級医の先生たちに心の底から感謝した。<br><br><br>峠は越えたとはいえ、辛いものは辛い。<br><br>何もしないなら、やっぱり沖縄に行けばよかった。<br><br>ペットボトルの水は何回もらっても、蓋がすっとあく。<br><br>お腹を壊しているのに、消化にいい食べられるものがない。<br><br>塩分を取るために、持っていた梅干しを食べる。さらに自分が遠く離れたところにいることを実感させられ悲しくなった。<br><br>母にべそをかきながら、日本に帰りたいと電話したところあまり慰めてはくれず、「体調が良くなってから考えなさい」と言われた。薄情な母である。<br><br><br>しかし、耐え忍べば体調は良くなるものだ。<br><br>とはいえ、お腹的にも気持ち的にも長距離の移動はできなかった。夢のオールインクルーシブホテルは1泊1万円から2万5千円に跳ね上がってしまったので延泊は叶わず、安いカサ・パティクラル（キューバ政府が認めている民間の宿）に移ることにした。<br><br><br>海から近くてWi-Fiが使えると評判のカサをえらんだ。2階に家族が住んでおり、1階のアパートを旅行者に貸しているカサだった。<br><br>主のシルビアばあちゃん（80歳）は、私をみると毎回話しかけてくる。私がカサにこもっていたり、夜は早々に寝ていたりするのを心配している。<br><br>カサの軒先は私のお気に入りの場所で、いい風が吹くし、居心地がいいからずっとここにいて本を読みたい。しかし、海にも行かないアジア人が信じられないらしい。<br><br>お腹壊したからあんまり外に出たくないんだよね、と伝えてもまた会うたびに外に出ないことを心配してくる。シルビアばあちゃんの姉のアブエリータ（名前忘れた）にも「散歩に行かないの？」と言われる始末。<br><br><br>あまりにも居心地が悪くなったので、しぶしぶ外に出ることにした。<br><br>騙されないぞと意を決して歩いた街は、あっというまにがんじがらめの心をほぐしていった。<br><br>ハバナと違ってお金を要求してくる人は全然いない。携帯を出すたびに神経を尖らせなくていい。趣味の写真をゆったり撮れる。むやみやたらちょっかいかけてくる人は誰もいない。ぼーっと椅子に座って街ゆく人たちを眺めることができる。<br><br>気を張らなくても街に存在できることを幸せに思った。<br><br>そしてはじめてキューバに来てよかったと思った。<br><br><br>街を満喫してカサに戻り、また軒先で本を読んでいるとシルビアばあちゃんが話しかけてきた。街歩きが楽しかったことを報告する。<br><br>しかしばあちゃんはそれだけじゃ物足りなかったようで、私にもっと外出して欲しいらしい。<br><br>シ「踊りは好き？」<br>り「ううん」<br>シ「ならば音楽は好き？」<br>り「音楽は好きだよ」<br>シ「それならば夜、外に遊びに行きなさい。音楽をきかなきゃ。それも22時以降にね。」<br>り「えーまじ。大丈夫なん？」<br>シ「ここら辺は大丈夫だから。いってらっしゃい。」<br><br>実の祖母のようなお節介さを持っているシルビアばあちゃんは、本当のおばあちゃんなのではと錯覚しそうになった。もともと聞いていたキューバの人の良さというのはこういう感じなんだろうか。<br><br><br>しばらく話していると、シルビアばあちゃんはいたたたたと言って肩を抑えた。どうやら肩が痛いらしい。<br><br>肩を揉もうか？と言って、私はシルビアばあちゃんの肩を揉んだ。ばあちゃんはgraciasと言って、にこっと笑った。<br><br><br>夕方になり、ばあちゃんずの圧にまたもや負けた私は、夕日を見に海辺へ行った。黄昏時のバラデロは美しく、街は音楽にあふれていた。シルビアばあちゃんに背中を押されながら、音に誘われるようにして街に繰り出した。<br><br><br>いちばん魅惑的な音を辿り、行き着いた場所は、Beatlesという主にロックバンドが野外ライブをやっているバラデロでも有名なバーだった。<br><br>生のバンドの音が心地いい。<br><br>敷地内にいる人たちは踊り狂ったり、しっとり座って音楽に身を委ねていたりと各々の時間を楽しんでいた。そしてなによりバンドマンたちが楽しそうだった。<br><br>私も中に入りたい。<br><br>1人で入ってもいいかなとか、バーが法外に高かったらどうしようとか、浮いたらどうしようとか、色んな心配を駆け巡らせたが、旅の恥は掻き捨てである。<br><br>1人なんだけど、、とガードマンに言うと、にっこりどうぞと入れてくれた。好きなところに座っていいらしい。<br><br>座った後もメニューがないけどどうしようとか、なかなかオーダー取りに来てくれないけどどうしようとか、またもやいろんな心配をしたけれど、がんがんのロックを聞いていたら小さな心配は後回しでいいかと思った。<br><br>しばらくして無事にオーダーを取りに来てくれた。メニューは見れなかったが、値段を聞いてみると法外な値段でもなく（確か3ドルくらい）、なにより頭がつるつるで強面のおじちゃんがにっこり笑顔で接客してくれたのが嬉しかった。<br><br>ピニャコラーダとロックバンドとゆきずりの人たち。<br><br>知っている曲や知らない曲が次々と流れ、ほろ酔いで音楽に身を委ねるとあっという間に夜は更けていった。<br><br><br><br>次の日の朝、いつもの軒先でご飯を食べていると、シルビアばあちゃんはまたおはようと声をかけてきた。肩がどうにも痛そうである。<br><br>シ「りさ、medicina（薬）をくれない？」<br><br>ううむ。出たよ。<br><br>キューバの人たちは話せば何かをもらえると思っている人が多い気がする。<br><br>痛み止めの残薬はほとんどなくあげられない。抗菌薬はあげられるが、それは医療者としては無責任すぎる。<br><br>というかあげる必要はあるのか？とふと考える。日本では薬をもらうのにはお金がかかるし、さらには薬の大部分は税金なんだけど、とちょっとむっとする。<br><br>結局迷って、大量に持っていた整腸剤と風邪薬はあげられるよということにした。あげないと言って突っぱねるのではなく、反省を生かして話をしようと思った。まずは日本の薬はただではないことを説明することにする。<br><br><br>シルビアばあちゃんと話をするために住居である2階に上がっていった。ぴかぴかのテレビとソファーが置いてあり、広いバルコニーは白く輝いていた。<br><br>シルビアばあちゃんとは、バルコニーのパラソルの下で話をした。<br><br>り「胃腸薬と風邪薬ならばあげられるよ。でも日本では薬はただではないから、何かと交換しよう。例えば1日の2ドルのWi-Fiとこの薬を交換するのはどうか。」<br><br>シルビアばあちゃんは渋っている。<br><br>シ「整腸剤や風邪薬はいらない。痛み止め欲しい。」<br><br>私が痛み止めは残りが少ないからあげられないことを伝えると、シルビアばあちゃんはちょっと怒った表情で、こう言った。<br><br>シ「キューバには何もない。日本に帰ったらたくさん手に入るのになんでくれないんだ。」<br><br>潤っていそうな生活をしているのに、薬を手に入れられないことで苛立ちを露わにしているシルビアばあちゃんをわがままだと思った。<br><br><br>じいちゃんばあちゃんの肩痛い、腰痛い、膝痛い問題は万国共通なのだと思った。痛み止めでは根本的な解決にならない。老化における痛みの改善方法があればいいのにと思った。<br><br>ストレッチしなとかそういうことを伝えようと思ったけど、受け取ってはもらえないだろうと思ってやめた。<br><br><br>ばあちゃんたちと少し気まずくなってしまったし、体調がよくなってきているので、ハバナへ戻ることを決めた。<br><br>そのことを伝えにシルビアばあちゃんのところへ行くと、シルビアばあちゃんはまたお節介ばあちゃんに戻っていた。<br><br>バス停までは歩いて15分くらいなので歩こうとしたら、荷物が重いんだからタクシーに乗りなさいとあれよあれよという間にタクシーを呼びにいった。<br><br>親切にしてもらったのかなと思い、やっぱり薬をあげられないのは私個人の器が小さいのかもしれないと心がちくっと痛んだ。しかし、帰ってきたシルビアばあちゃんに宿代を渡すと、まるでドアの隙間から風が抜けるみたいに、ふいっといなくなった。<br><br>タクシー代は5分で8ドルもした。<br><br><br>バラデロからハバナへ戻るバス。青い海を横目に、混沌とした街へ戻る。親切と打算の境界は、波のようにかき消えた。<br><br><br>でも、バーの人たちは本当に親切で、帰り際に思い切って手を振ったらシンガーのお姉さんはとびっきりのファンサを返してくれた。<br><br>ビーチで仲良くなった人は、キンキンに冷えたビールを奢ってくれた。その中のロックなTシャツを着たキューバ系アメリカ人のご夫婦は、快く写真を撮らせてくれて私の旅行者写真集の記念すべき1枚目となった。<br><br>軒先で日向ぼっこをしていると、おじいちゃんがマンゴーをくれた。マンゴーはじんわりと甘くて異様に美味しかった。<br><br>そして、薬のことでシルビアばあちゃんに自分の気持ちを伝えることができた。結果はいいのかわからないけれど。<br><br>コバルトブルーの海は、もう一度、少しだけ色を取り戻していた。その青さは、昨日よりも、すこしだけやさしかった。<br><br>ハバナでもなんとかやっていけそうな気がした。<br><br></p><figure data-align="center" name="61A3E12F-DE98-4DF3-A090-EF6C8A16B554" id="61A3E12F-DE98-4DF3-A090-EF6C8A16B554"><img src="https://assets.st-note.com/production/uploads/images/223634393/picture_pc_fc5b8e8186976c545992ffa50f81b6ec.jpg" width="620" height="348" id="image-61A3E12F-DE98-4DF3-A090-EF6C8A16B554"><figcaption>記念すべき写真第一号</figcaption></figure><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n60439f315199'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125352103/profile_84797b5bba81b20003e3c91dbcf13e43.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 20 Oct 2025 21:31:19 +0900</pubDate>
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      <title>踊れなくてもいいと知った夜　　キューバ旅行記その①</title>
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      <description><![CDATA[<p name="75916F69-3B26-4BD2-B23E-C500AD1AE224" id="75916F69-3B26-4BD2-B23E-C500AD1AE224">キューバ、初日。<br><br>外はもう17時を過ぎているのに、キューバの空気はまだ昼の顔をしていた。<br><br>カサ・パティクラル（キューバ版民泊）に荷物を置き、街へ出た。<br><br>ハバナの街を歩く。見えるもの全部がちょっと不思議だった。<br><br>芝生が青々と広がり、ごみはほとんど落ちていない。道路は、がたがたで穴だらけのところと、妙にきれいに舗装されたところが共存していた。<br><br>建物は、すすけた均一な団地か、スペインの香りのする今にも崩れそうな色とりどりの建物が並び、街を賑わせている。<br><br>ぴっかぴかの1960年代アメ車が走っている後ろを、乗り口のドアがぱたぱたと揺れているバスが必死に後を追いかけていた。その横を最新モデルの高級車が滑るように通り抜ける。<br><br>お金を要求してくる人たちは、身なりがこざっぱりとしている。<br><br>豊かなのか貧しいのか、よくわからない。見たことのないアンバランスな街並みにちょっぴり不安になった。<br><br><br>そうこうしていたら、あれよあれよという間に観光地によくいる客引きにまんまとつかまった。<br><br>不安と孤独は、観光地にとって甘い匂いを放つ。そういう空気をまとう人間に観光地は優しくはなかった。<br><br>そうして、まんまと騙され、サルサのショーをみることなった。<br><br><br>会場は3階建てで、手をぱんとたたいて響きを堪能したくなる建物だった。<br><br>ショーとカクテル4杯で35ドル。これが高いのか安いのか、もうよくわからない。<br><br>会場にはカップルが1組しかいない。客引きはブエナビスタがうんちゃらこーちゃらで、今日は有名なミュージシャンがどーのと言っていた。しかし、きっと有名ミュージシャンは毎日来るのだろう。<br><br>騙された自分と、嘘をついた客引きにいらいらしながらモヒートを飲む。空腹の胃にラムが滲みる。ノーストロングと言ったのに、結局ストロングで出してきたお姉さんにもいらいらする。<br><br>きっとキューバでは「ストロングこそが正義」なのだろう。でも今は、勘弁してほしかった。<br><br>「なんで見栄張ってキューバ行くって言っちゃったんだろう。何もしないなら沖縄にしておけばよかった。」<br><br>一瞬そんな気持ちが頭をよぎり、頭を振って気がつかなかったふりをする。<br><br>オフラインのGoogleマップもうまく使えない。私の世界は、このホールの外でぷつりと途切れていた。<br><br>ただ、時折聞こえるトランペットのチューニングの音がいい音で、それだけでこんがらがった気持ちが少しだけゆるむ。<br><br><br>待つこと1時間。<br><br>気がつけば、ホールはいつの間にか満席に近い。舞台には、打楽器隊、コーラス、金管楽器、ベテランのシンガーたち。<br>熱気がじわじわとホールに満ちていく。<br><br><br>そして、ショーが始まった。<br><br><br>声量がすごい。音のかたまりが身体にぶつかる。<br><br>はじめてのラテンの生演奏に心は踊るのに、まだ素直になれない自分がいる。心を許してたまるかという気持ちで、仏頂面で演奏を聴いていた。<br><br>そんな私をみかねたのか、マフィアの大ボスみたいな風貌のおじちゃんが歌いながら近寄ってきた。<br><br>手を差し伸べられる。<br><br>踊れ、ということか。<br><br><br>うん、無理だ。人前に立つのも嫌いなのに、ましてやダンスなんて絶対に無理だ。<br><br>でも、同じくらいNoと言うことが苦手である。日本人特有必殺曖昧笑顔で笑っていると、案の定全然通じず、あれよあれよという間に舞台に引っ張り上げられていた。<br><br>ファーストサルサを人前で、懸命に、おじと踊る。<br><br>ぎゃー。<br><br>顔がひきつる。<br><br>せめてジャージ、眼鏡、すっぴんじゃなくてコンタクトにしてくればよかった。<br><br>一刻も早く終わって欲しい。引き攣った笑顔を貼り付けながら、踊り続ける。ほんの数分だったのに、永遠に感じた。<br><br>しかし、ふと気づく。目の前の人たちは、すごく楽しそうに微笑んでいた。上手い下手は測られていなさそうだった。<br><br>踊れなくてもいいんだな、と思った。<br><br><br>曲が終わり、席に戻る。なんとか踊りきったこっぱずかしさと、違う常識に触れた高揚感が入り混じって、胸の奥がふわふわと落ち着かない。<br><br>その後も、何度も一緒に踊ろうと声がかかる。<br><br>隣のカップルは誘われていたけれど、あっさり断っている。断られた側も気を悪くした様子はなく、さらっと去って行った。断っていいんだと思った。<br><br>誰も私に何かを求めていない。周りの期待を汲むんじゃなく、したいようにしていいんだと思った。<br><br>ストロングモヒートをちびちび舐めながら、踊っている様子を眺める。　<br><br>若い人も、歳を重ねていても、スタイル抜群の人も、そうでない人も、肌が黒かろうが、白かろうが、黄色かろうが、踊れようが、踊れなかろうが、恋愛対象が女性であろうが、男性であろうが、そうでなかろうが、みんな自由に体を揺らしていた。<br><br>ふと気がつくと、私の肩はずいぶん軽くなっていた。<br><br>無理やりのサルサは、自意識のリュックをかっさらっていった。どうせまたすぐに新しいリュックを買ってきて、大切に大切に中身を詰めてしまい肩こりに悩むことは目に見えている。<br><br>しかし、キューバにいる間はミニマリストになれるかもしれない。帰り道の足取りは軽かった。<br><br><br>ただ、無事に帰れるとは限らない。<br><br>真っ暗闇の中、Googleマップは無言のまま。<br>通りを歩く人影は、旅人の味方のはずなのに、<br>今の私には全員ギャングに見えた。<br><br>不安に駆られて、自転車タクシーを止める。<br><br>カサに着く。最初3000ペソでと言っていたのに、1000ペソ追加でくれと言ってきた。<br><br>なんで嘘をつくんだ、と喧嘩した。どうにもならなかったので追加の1000ペソを払った。<br><br>すっかりずたぼろになり、私はベッドに沈み込んだ。この街でサバイブするには、鎧と盾が必要そうだった。<br><br>タクシーの4000ペソも、ショーの35ドルもかなりぼったくりだったと気がつくのはずいぶん後の話である。<br><br>つづく。<br><br><br>キューバ🇨🇺メモ：<br>この時$1＝約380ペソ、キューバの平均年収は約6000ペソ<br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n0af1bea9f4b0'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 08 Jul 2025 12:55:01 +0900</pubDate>
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      <title>七転び、穴掘り。ーラジオ収録記ー</title>
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      <description><![CDATA[<p name="EF0BC346-D161-44E7-9777-1E019D605D5C" id="EF0BC346-D161-44E7-9777-1E019D605D5C">ありがたいことに、ラジオに呼んでいただいた。</p><p name="2936D5FE-FE24-4C1A-80E4-5B3B8A257129" id="2936D5FE-FE24-4C1A-80E4-5B3B8A257129">ラジオ収録が終わったいま、自意識のリュックが重すぎて地面にめりこんでいる。<br><br><br>いちばん後悔していることは、かっこつけてしまったことである。</p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n86320915f469'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 11 Jun 2025 22:41:18 +0900</pubDate>
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      <title>自意識過剰とキューバと、何もしない勇気</title>
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      <description><![CDATA[<p name="07BCA58C-414C-44D0-A8B8-849BE5B6E5B3" id="07BCA58C-414C-44D0-A8B8-849BE5B6E5B3">私は、筋金入りの自意識過剰である。</p><p name="162E0629-B48D-46AC-B928-59BE36B06EC3" id="162E0629-B48D-46AC-B928-59BE36B06EC3">例えば、ライブに行くとき。<br>素直に音楽にのることができない。「痛いやつと思われていないか」「その場に馴染めているか」など、周囲から自分がどう見られるかが気になってしまう。</p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/n1f7f26e287db'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 05 Jun 2025 11:01:45 +0900</pubDate>
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      <title>6月が怖くて、100個のやりたいことを書き出した</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1E0284DC-0FFE-46FB-A06C-4DB65F3B72B0" id="1E0284DC-0FFE-46FB-A06C-4DB65F3B72B0">医者をいったん辞めた。<br>とくに明確な理由はなかった。<br><br>周囲には、「海外を放浪したい」と口にしていた。けれど、具体的なことは何も決まらないまま、言葉だけが先に歩いていった。<br>たぶん、旅をしたかったというよりは、「世の中」から少し距離を置きたかったのだと思う。<br><br>それもそのはず。プランを立てる段階でぽわんと思いつくものはあれど、これだ、というものは思いつかなかった。<br><br>最初の2ヶ月、何も決まらないまま、導かれるまま、豊島に来た。<br><br>豊島で小銭を稼ぎ、ぼーっとし、次の手を考えるつもりでいたが、そう上手くはいかなかった。<br><br>思っていたより「世の中」は、豊島にもあった。<br>むしろ、以前より濃くて、手触りがあるように思う。<br><br>毎日、葛藤の日々。</p><p name="A83D5EF0-7AD7-46B6-AB2E-8B8E25F4A459" id="A83D5EF0-7AD7-46B6-AB2E-8B8E25F4A459">「こんなはずじゃなかったのに」とつぶやきながら、時給1000円でレストランのウェイターをしている。<br><br>それでも、自分の持っている方法で「世の中」に抗ってみる日々は、それなりに面白いのが唯一の救いだ。<br><br><br>しかし、そろそろ、島生活にも終わりが見えてきた。自分の時間をどう使うか向き合わなければならない。<br><br>そんなとき、シェアハウスで一緒に暮らしている人が、「やりたいことを100個書き出してみたら？」と勧めてくれた。<br><br>やってみることにした。<br><br>・1ヶ月くらい俗世間から離れて海の近くで本を読み続ける(近くにお気に入りのカフェと椅子があるところ)<br>・宝塚のおたくと宝塚鑑賞<br>・パリの三つ星レストランでディナー<br>・ブロードウェイで2週間くらいミュージカル三昧<br>・文章を書くことでお金を得る<br>・TikTokで万バス<br>....<br><br>79個まではすんなり埋まった。<br>小さな願いから、ちょっと背伸びした夢まで。<br>でもそこから先が、どうしてもしっくりこない。<br><br>人生でやりたいことかと考えると違うような気がして、思いついては消しを繰り返していた。<br><br>3日間かけて考えている最中、穂村弘さんの『迷子手帳』というエッセイを読んだ。<br><br>『子どもの夢、大人の夢』という章で、恐竜の赤ちゃんが欲しいと泣く子どもを見て<br>“子どもにとっては夢と現実の境目が曖昧なことを改めて思い知った。”<br>と書いていた。<br><br>それなら、あとの21個は「恐竜の赤ちゃんが欲しい」というような圧倒的な夢を考えてみようと思った。<br><br>・真夜中のプールで泳ぐ(できれば忍び込みたい)<br>・雲の上に乗ってぷかぷか浮かびながら本を読む<br>・ふとんにもぐったら別世界に繋がっている<br>・タンスの奥がファンタジーの世界だった<br>・人の言葉を喋る猫について行ったら冒険が始まった<br><br>どこかでみたような話ばかりである。うぬ。<br><br>不思議だったのは、「意外と便利なものはいらない」と思っている自分に気づいたことだった。<br><br>どこでもドアは便利だけど、なんだかんだ贅沢な移動の時間がなくなるのは惜しい。<br><br>翻訳コンニャクは便利だけど、何かを努力して達成することの面白さは捨てがたい。<br><br>暗記パンは難しいな。勉強することの楽しさは残しておきたいけど、知識をどーっといれられたら目の前の事象の理解度が上がって楽しそう。<br><br>お菓子の家は欲しくない。虫が湧くのが目に見えている。<br><br>惚れ薬は絶対にいらない。あっても自分に自信がなくなって、自滅するだろう。<br><br>大人になるということは、想像の範囲が狭くなることかもしれない。<br>でもそのかわり、何が自分にとって大切なのかを知っていくことでもあるのだと思った。<br><br>まあ、圧倒的な夢は心の奥底に眠っているに違いないけれど。<br><br>100個埋まった。<br>でも、6月からの予定は、まだ空白のままだ。<br></p><br/><a href='https://note.com/risabonbonbon/n/nc5cedccd6a4a'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>医者を離れてフリーターになった</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 26 May 2025 08:03:43 +0900</pubDate>
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