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【3つのお題に空想のひらめきを第64回】銀河鉄道の忘れ物.彗星を追いかける少年.星の海を泳ぐくじら|ショートショート

    鈴蘭


    タイトル:銀河の底で、君を待つ

    少年は、夜空を走る銀河鉄道に乗っていた。

    窓の外では、星々が海の泡のように流れていく。

    「待って!」

    少年は突然、車掌に声をかけた。

    銀河鉄道を降りるとき、ひとつだけ忘れ物をしてしまったのだ。

    それは、小さな銀色の羅針盤。

    亡くなった祖父からもらった、大切なものだった。

    けれど列車は、もう遠ざかっている。

    少年は走った。

    そして見つけた。

    夜空を横切る、一筋の光。

    彗星だった。

    「待ってろ!」

    彗星を追いかける少年。

    星から星へ。

    月を越え、土星の輪をくぐり抜け、とうとう星の海へ飛び込んだ。

    そこには、巨大なくじらが泳いでいた。

    星の海を泳ぐくじら。

    その背中には、無数の星が降り積もっている。

    「銀河鉄道の忘れ物を知らない?」

    少年が尋ねると、くじらはゆっくり尾びれを振った。

    そして少年を背中に乗せると、海の底へ潜っていった。

    どこまでも。

    どこまでも。

    やがて星の光が消え、真っ暗な深海になった。

    そこに、一匹の深海魚がいた。

    光のない場所で、その魚だけが小さな灯りを持っている。

    深海魚は少年を見つめると、口にくわえていた銀色のものを差し出した。

    羅針盤だった。

    「どうして、ここに?」

    少年が尋ねる。

    深海魚は答えなかった。

    ただ、羅針盤の針を夜空へ向けた。

    少年は気づいた。

    羅針盤が示していたのは、帰る場所ではない。

    誰かが待っている場所だった。

    その瞬間、深海の闇に一本の光が差し込んだ。

    銀河鉄道が、海の底まで迎えに来たのだ。

    少年はくじらと深海魚に手を振り、列車へ乗り込んだ。

    窓の外を見る。

    彗星が、まだ走っている。

    少年は笑った。

    追いかけていたつもりだったけれど、

    本当はずっと、

    自分の帰る場所へ連れてきてもらっていたのかもしれない。

    銀河鉄道は、静かに星の海を走り始めた。

    そして少年の手の中で、

    忘れ物だった羅針盤が、

    もう一度だけ光った。


    おしまい

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    *下記企画に参加させて頂きました*


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    鈴蘭

     
     
    心身の不調と付き合いながら、日々の気づきや心の動きを文章にしています。 ショートショートやエッセイ、詩などを発信中。 アフィリエイトや有料記事には抵抗がありましたが、自分のペースで少しずつ挑戦しています🍀 AIすず日記📖✐☡

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