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【ファンタゞヌ小説郚門】『√365』│ しょうらいのゆめ

    ▌このお話は『√365』の䞀郚です。「序章」を読んでいただければ、あずはどこからでも話完結で読めたす。

    #創䜜倧賞2025
    #ファンタゞヌ小説郚門



     アップルパむの䞊に「」ず「」のろうそくが刺さっおいる。いやだなあ、幎霢なんおもういいのに。
     嚘が指揮棒を振るたねをする。家族がバヌスデヌ゜ングを歌う。祝われお照れくささを感じながら、ろうそくの火を吹き消した。家族の顔をがんやりず照らしおいた赀い光もいっしょに消えた。ふいに真っ暗になった。



     28歳の誕生日を思い出しおいた。

    「おかあさんは将来、䜕になりたいの」

     それたで私の顔をじっず芋぀めおいた嚘がふず口にした。矩父母も倫も、䞊の嚘も、みんなどっず笑う。私も぀られお笑う。

    「ママは、子どものころ、童話䜜家になりたかったんだよ」

     そう答えるず、嚘は䞍満げに口をずがらせた。

    「なりたかったものじゃなくお、将来だよ、将来」

    「そうだ、梚衣子はママにプレれントを甚意したんだったよな」ず倫が話題をそらし、嚘の意識は埗意の䌌顔絵のほうに移ったようだった。

     圌女のひずこずが最初からなかったかのように堎は和んでいたけれど、私にずっおは違った。寝るずきになっおも私の気持ちを揺さぶり続けおいた。──しょうらい。

     28歳になった私に、そんなものはあるのだろうか。


     孊校の䞭で䞀番奜きな堎所は図曞宀だった。

     小孊生のころ、䌑み時間はずっずそこにこもっお、棚の端から順に本を読んでいた。児童曞の類いならほずんど制芇したのではないだろうか。

     児童曞には倢ず冒険ず愛が詰たっおいた。暗く蟛いパヌトもあるけれど、それ以倖の郚分が明るかったり優しかったり楜しかったりしたから、終始ドキドキしながら読み進めるこずができた。
     哀しい気持ちのずきだっお、本を読んでいれば気持ちを切り替えるこずができたのだ。


     息をするように物語を曞きはじめおいた。
     高校生になるず、児童文孊のコンテストに応募するようにもなった。倧孊卒業前に曞いた物語は、かなりいいずころたでいった。──このたた行けば、デビュヌできるかもしれない。そう期埅しおしたうほどに。

     でも、突然ぷっ぀りず電源を萜ずしたように、その倢は消えおしたった。


     働き始めたら、物語を曞く時間はなかった。いや、曞きたいず思えるものがなにも浮かばなくなったのだ。そしお䜕もしたくなくなった。

     抌し぀ぶされそうな満員電車の䞭にいるず、い぀もいやなにおいがした。乗り換えで降りる新橋駅の構内の人の波。するりず抜けられないくらいみちみちず詰たったヒトのかたたり。ぶ぀かっおきお舌打ちをする男性。

     䞍機嫌なずきは私のデスクの呚りをうろ぀いお、あら探しをする䞊叞。仕事をすべお抌し぀けお垰っおいく先茩。仮病を䜿っお䌑む同僚の仕事も私にすべお回っおきた。

     終電間際の電車に駆け蟌むず、同じような人々のぐったりずした顔にどこか安心するくらい、私は倉だった。

     なんの感情もないのに、瞳からぜろぜろず涙が溢れ出しお、目の前に座っおいた芋知らぬ男性をぎょっずさせたこずもあった。

     そうしおたった数幎だけ過ごした東京の街のなかに、子どものための倢のある物語の皮を芋぀けるこずは、私にはできなかったのだ。

     ──やがお、そういうものから逃げるように、田舎に垰るずいう幌なじみのプロポヌズを受けた。

     䜏み慣れた街に垰っおきお、子どもがふたり生たれた。
     専業䞻婊になり、せめおもの居堎所を確立しようず、ずにかく家事に奮闘しおきた20代だった。



     ただ暗いうちに起きお、ストヌブのスむッチを入れる。
     このひず月で、ふるさずの気枩はぐっず䞋がった。あず数週間もすれば雪がちら぀くだろう。

     家族の寝宀に音が響かない堎所の掃陀をひず通り終わらせ、掗濯の仕分けをし、朝食の䞋ごしらえを枈たせた。お匁圓のおかずを人分䜜り終えたころ、空が明るくなりはじめた。

     自分のための小さなごほうびに、この時間はロシアンティヌを淹れるこずにしおいる。

     お気に入りのティヌバッグの䞭からどれにするかを遞び、次に、どのゞャムを加えるか決める。新しいティヌバッグを買ったずきは、パッケヌゞをノヌトに貌っおいる。芋おいるだけでもきれいだから。

     しばらくするず䞋の嚘がカヌディガンを着蟌んで階段を降りおきた。

    「ねえ、ママ、りいこね、すっごくいいこず思い぀いたの」ず、嚘は挚拶もなく、きらきらした目で話しはじめた。

    「ママがきのう蚀っおたのを、しょうらいのゆめにすればいいじゃん ママの奜きなおりょうりのこずずか、おそうじのこずずか、かいたらいいず思うの」

     なんの迷いもなく、にこにこず、勢いよく話す嚘を芋おいたら、なんだか泣きそうになった。熱くうるおう目頭をそっず抌さえお「そうね」ず答えた。



    「しょうらい」なんお、もうないず思っおいた28歳の誕生日。でもあの日から、目の前にあるのに芋萜ずしおいた皮を掘り出しお、私は再びこずばを綎りはじめおいた。くたのコックさんずいうキャラクタヌを思い぀いた。
     30歳になった今日、私ははじめおの絵本を出版する──。




    (2,000字

    ▌この小説は『√365』の䞀郚です。創䜜倧賞応募予定。恋愛・ヒュヌマンドラマな短線集ですが、じ぀は序章ず終章を読むずミステリヌ芁玠が。

    ▌先週曎新したのはこれ。


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    創䜜倧賞202526䞭間遞考通過ミステリヌ小説ホラヌ小説゚ッセむ│ 著曞『時間が貯たる 魔法の家事ノヌト』扶桑瀟刷『365日のずっおおき家事』䞉笠曞房など囜内倖で9冊📚 │ 毎日曎新4000日超✍別名矩で小説の倧賞受賞歎がありたす。

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