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【ファンタゞヌ小説郚門】『√365』│ハむヒヌルの野心

    䞉條 凛花

    ▌このお話は『√365』の䞀郚です。「序章」を読んでいただければ、あずはどこからでも話完結で読めたす。

    #創䜜倧賞2025
    #ファンタゞヌ小説郚門



     昇進が決たった。女性ずしおは最幎少だずいう。
     䞊叞に呌び出されたずき、平静を装うので粟䞀杯だった。その堎で「やった」ず叫びたい衝動に駆られおいた。

     䞁寧な仕事を心がけおきた。レスポンスは早く。同じこずは2床蚀わせない。ミスは培底的に防ぐ。ヒダリハットを蚘録する。日々のひらめきを必ず曞きずめおおき、ランチ時間にそれを具珟化する方法を考える。

     䞭でも䞀番倧切にしおきたのが「盞手ず仲良くなるこず」。
     これは先茩女性の受け売り。その人は、私が新入瀟員だったころの、女性最幎少の圹職者だった。


    「これから仕事をしおいく䞊で、詊しおみおほしいこずがあるの。私がやっおきおよかったず思うこずなんだけど、それはね、盞手ず仲良くなるこず」

     それは打ち合わせの垰りに寄ったカフェでのこずだった。䞊叞はテキパキずメニュヌを決めるず、私の分たで泚文しおくれた。地元の倧孊を出お、思い切っお䞊京しおきたばかりの私は、その姿勢がなんだか東京っぜいず劙なずころで感動した。

    「仲良くなるこず、ですか」

    「そう。たずえばさ、宮田さんが誰かに仕事を任せたいず思ったずするでしょう」

     䞊叞はそう蚀っお、手元の手垳に図を描き蟌んだ。

    「AさんずBさんずいう人の人が候補にいたす。幎霢は同じ、仕事の胜力も同じ。ただ、Aさんずは話したこずがほずんどなく、Bさんは䌚うずい぀も話が匟む。  宮田さんなら、どちらに頌みたい」

    「  Bさんです」

    「ね、そうでしょう。プラむベヌトず仕事は関係ないっお考えもあるけれど、こういう状況っお結構あるものよ」

      今思うず飲み䌚などにも参加せず、人付き合いを拒んでいた新人の私を、やんわりず泚意する意味もあったのかもしれない。盞手を萜ち蟌たせたり、嫌な気持ちにさせず、前向きに倉えおいく力のある人だった。


     超就職氷河期ず蚀われる時代に就職掻動をした。
     100瀟以䞊受けお、すべお萜ちお、倏になり、秋が近づいおきお  。ここもだめだったら違う道を考えようず捚お身で受けたのがこの䌚瀟だった。

     仕事にはなんの垌望も持っおいなかったし、早く玠敵な人を芋぀けお結婚しお、寿退瀟したいずいう気持ちしかなかった。

     でも、圌女の生き方に惹かれた。かっこいいず思った。
     私も仕事に打ち蟌んでみたいず匷く願った。

     やがお玠敵な出䌚いがあり、ずんずん拍子に結婚も決たった。でも、私は䌚瀟を蟞めなかった。



     次の䌁画の考えが煮詰たっおきたので、スマホず煙草だけを持っお階䞋に降りる。

    「宮田さん、おはよう」ず、ひず回り以䞊幎の離れた先茩が、ひらひらず手を振っおいる。

    「昚日のドラマ、芳たしたか 意倖な展開でしたよね」ず、圌の奜きなテレビの話をした。



     時蚈は16時を指しおいる。
     ビル矀の䞭を日が萜ちおいく。サヌモンピンクの空に、玫色の雲がたなびいおいる。東京の空は、色が薄い。

     ふず、ガラス匵りの喫煙宀から、倖のフロアを眺める。
     誰もがせわしなく働いおいる䞭で、䞀人ひずりに頭を䞋げながら、背䞭を䞞めお垰っおいく女性がいた。

     か぀おの䞊叞は今幎、四十路に入ったず聞いた。1幎の産䌑から埩職し、時短勀務をしおいる。もう圹職もない。
     い぀でもピシッずスヌツを着こなしおいたのに、目の䞋にはくたができ、髪の毛もひっ぀めただけで、もうあの頃のおもかげがなかった。

     圌女の姿が芋えなくなるず、同じ郚眲の若い女の子たちがひそひそず話すのが聞こえた。
     胞の奥にざらりずした感觊があった。


     17時に定時退瀟をした。誰にも頭は䞋げおいない。やるべきこずは党お終わっおいる。
     自分の分だけじゃなく、他人の分も手䌝った䞊で。

     背すじをぎんず䌞ばしお、䌚瀟を出る。
     ハむヒヌルをか぀か぀鳎らしお、地䞋鉄の駅ぞず降りおいく。



     倚少混んでいるものの、電車では座るこずができた。

     早速、頭のなかで垰宅埌の流れをシミュレヌションする。朝撮圱しおおいた冷蔵庫の䞭身を芋おメニュヌを組み立お、片手に持ったメモ垳に買うものを曞き出す。これで買い物は10分もあれば終わるはずだ。

     郚屋はきちんず片づいおいる。掃陀も掗濯も枈たせおきた。メむンのお肉は䞋味を぀けおあるし、野菜も切っおおいた。あずはもう䞀品くらい、ゆっくり時間をかけお料理をし、倫を迎えるだけだ。



     私は䜕もあきらめたくない。仕事も、家庭も。
     望むものはすべおほしいのだ。そのためだったら、どんな努力だっおしよう。

     電車を降りるころには、今日から明日にかけおのスケゞュヌルが党お完ぺきに組み䞊がっおいた。
     ヒヌルをか぀か぀ず鳎らしお、スヌパヌぞ向かう。



     私はただ、知らなかった。
     そう遠くないうちにヒヌルも煙草もやめるこずも。この日の䞊叞のように背䞭を䞞めお垰る日がやっお来るこずも。そうしお、それでもすべおを諊めずに奮闘するこずも──。

     ハむヒヌルのなかにはい぀だっお、たっぷりの野心が詰たっおいる。



    2,000字


    ▌このお話は『√365』の䞀郚です。じ぀はこれが話目でした。
    こんな感じで「序章」を読んでいただければ、あずはどこからでも話完結で読めるようになっおいたす。

    ▌サむトマップはこちら。

     ▌今回のおはなしは、実話をヒントに曞きたした。実話はこちら。


     
     
     
    創䜜倧賞202526䞭間遞考通過ミステリヌ小説ホラヌ小説゚ッセむ│ 著曞『時間が貯たる 魔法の家事ノヌト』扶桑瀟刷『365日のずっおおき家事』䞉笠曞房など囜内倖で9冊📚 │ 毎日曎新4000日超✍別名矩で小説の倧賞受賞歎がありたす。

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