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『ちいさいおうち』が教えてくれた、変わらないもの。

    喜木凛(ききりん)

    母の声で、物語が始まる。

    夜の部屋に、ページをめくる音が響く。
    私は布団の中で、小さな灯りの向こうを見つめていた。
    絵本の中の世界と、現実の境目が、
    少しずつあいまいになっていく時間だった。

    お気に入りは、バージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』。
    何度も、何度も読んでもらった。

    丘の上に建つ、きれいなぴんく色の壁に、すてきな窓の家。
    季節ごとに表情を変える風景。
    その中で、静かに息づく“おうち”の姿が好きだった。

    子どものころはただ、「かわいい」と思っていた。
    けれど、いま読み返すと、
    あの物語の中には“変わらないもの”への祈りがある。

    時代が流れて、町が大きくなり、
    おうちは高層ビルの中に埋もれてしまう。
    それでも、まっすぐにそこに立ちつづける。
    ――静かに、誰かの帰りを待つように。

    幼い私は、きっと知らず知らずのうちに、
    「安心できる場所」というものを、この絵本から学んでいたのだと思う。

    大人になってから読む『ちいさいおうち』は、
    少し切なくて、でもやさしい。
    忙しさの中で忘れていた“心の居場所”を、
    もう一度思い出させてくれる。

    ”進化”よりも“調和”を大切にする時間が流れていて。
    あのちいさなおうちは、「ここにいるだけでいい」と
    そっと語りかけてくれるようで。

    働いている図書館の棚で、この本を見つけると、
    つい嬉しくなり、そっと撫でてしまう。
    あのころの私と、今の自分を繋いでくれる気がするから。

    喜木 拝

    #本田健 さんの#ハッピーライティングマラソン第5回のお題によせて綴りました。『ちいさいおうち』は、私にとって「原点」のような本。
    変わりゆく世界の中で、変わらないぬくもりを教えてくれた絵本です。
    あなたのお気に入り絵本もぜひ、コメントで教えてくださいね!
    ここまで、お読みいただきありがとうございます💖


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    本が好きなのに、今は読めないあなたへ。 本とことばで、忙しい毎日に小さな余白を届けます。 図書館司書/4歳娘の母/ブックシェアコーディネーター。 メンバーシップ「凛のことのはライブラリー」運営中。

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