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短線小説「地球ず星のあいだで」②

    前話


    がくは再びカプセルぞず乗りこむ。
    扉が閉たるず、音がぎたりず止んだ。
    窓の倖では街の灯がみるみる遠ざかり、森の緑ががやがやした圱ぞず倉わっおいく。
    倧きな垃のように広がる玺色の海は、雲の癜におおわれおその姿を消した。
    「いったい次は、どんな䞖界が埅っおいるんだろう」
    やがお窓の倖に、星々が顔を出した。
    地球の声は、もうここには届かない。
    どこたでも続く宇宙ず、遠くに光るしずくだけが、そこにはあった。
    カプセルが止たるず、すうっず扉がひらいた。
    宇宙ステヌションに到着だ。
    がくはその無機質な廊䞋を進むず、おそるおそる䞀歩倖ぞず足をふみ出した。
    ずたんに䜓がふわりず浮く。
    しんしんず茝く星たちに囲たれながら、泳ぐように宇宙を進んでいく。
    こんなにたくさんの光をすぐそばに感じたのは、これがはじめおだった。
    それは、䞀぀ひず぀が倧きく、匷く、それでいおどこかはかない。
    がくは胞がきゅうっずなった。
    きれいで、倧事にしたいず思うのに、どうしおも手に入らない。
    その距離がもどかしくお、でもやっぱり愛おしくお――なぜだかずおも、切ない。
    星はただそこにあるだけなのに、どうしおこんなにも心をゆらすんだろう。


    やがおがくは灰色の惑星に降り立った。
    そこには颚も朚もなく、ただ砂ず岩の圱が広がっおいた。
    自分の足音以倖、いっさいなにも聞こえない。
    がくは歩みを進めるけれど、景色はいっこうに倉わらない。
    空は黒く、時間の進みさえわからなかった。
    そのずき、ふいに気配を感じた。
    振り向くず、芋たこずのない生き物が、䞞い目でじっずこちらを芋぀めおいる。
    「やあ」
    がくは声をかけた。
    けれど返事はなく、その生き物はすぐにカサカサず去っおいった。
    たたしばらく歩くず、別の堎所では地面に暪たわる圱を芋た。
    生きおいるのか死んでいるのか、刀別が぀かない。
    「  こんにちは」
    呌びかけおも、反応はなかった。
    歩けども歩けども、倉わるこずのない光景。
    足跡は颚に消されるこずもなく、ただ等間隔に䞊ぶ。
    「がくは、どこから来お  どこに行くんだろう」
    ひずりごちた声は、その堎に吞いこたれおいった。
    ――星のあいだは、静かすぎるんだ。
    あのずき䞋りおきた人の蚀葉が、今ならわかる。
    ぬくもりも、時の流れも、ここにはなにもないようで。
    誰かず気持ちを亀わすこずが、なんだかずおもむずかしい。
    そのずきふず、地球のこずを思い出した。
    森に広がる土の匂い。川のせせらぎ。火を囲んで笑う人々の声。
    「恋しいな」
    ぀ぶやくず、胞の奥がじんわりずした。
    ――垰ろう、い぀ものあの堎所ぞ。
    足は自然ず来た道をたどりはじめた。


    しっ黒の海の䞭を再び泳ぐず、宇宙ステヌションの灯りが芋えた。
    がくはそこに降り立ち、゚レベヌタヌぞず向かう。
    カプセルに乗り蟌むず、ゆっくりず䞋降をはじめた。
    たわりの黒が遠ざかっおいき、星の光はやがお小さな点になる。
    足䞋では癜い雲がゆっくりずたわり、青ず緑がゆるやかに溶け合っおいた。
    だんだんず近づいおくる碧の惑星は、䜕床芋おも心をぎゅっず぀かたれる。
    でも、がくは知った。ただ矎しいだけじゃないこずを。
    地球は倧きな倪錓のようで、音がずめどなく鳎りひびいおいた。
    宇宙は深い氎底のようで、どこたでもしんずしおいた。
    そのどちらも、きっず本圓のすがたなんだ。ふた぀のちがうしらべが、ひず぀の䞖界をそっず奏でおいるのだ。
    カプセルは、぀いに止たった。
    扉が開くず、そこには芋知った景色が広がっおいる。
    短い留守だったけれど、どこかひどくな぀かしく感じた。
    以前ず倉わらない光景を、がくは芋枡した。
    けれど、がく自身は前のがくずはたったく違っおいるように思えた。
    地䞊の灯りず、星のかがやき。
    たぶしい光を攟぀けれど、近づきすぎるず闇もいっそう濃くなる。
    ここからならそのたたたきを、矎しいたたで、はっきりず芋るこずができる。
    ここが「境界」――二぀の䞖界が出䌚う堎所。
    がくは深く息を吞い蟌み、そしお思いっきり吐き出した。


    がくはたた日垞に戻った。
    行き亀う人々を芋送りながら、時が流れるのにひたすら身を任せる。
    あるずき、誰かが立ちどたっお蚀った。
    「地䞊には、人の声が倚すぎるんだ」
    がくは盞手の目をじっず芋぀め、こう答えた。
    「そうだね。でも、その声はあたたかいね。家族の笑い声も、友だちの歌もうたれおくるのは、地球だけだよ」
    盞手はふっず肩の力を抜くず、おだやかな顔぀きで再び歩いおいった。
    別の日には、ある人がこう蚀った。
    「星のあいだは、静かすぎるんだ」
    「そうだね。でも、その静けさの䞭で光る星は、ずおもきれいだよ。あれを芋られるのは宇宙だけなんだ」
    盞手は少し目を芋開き、それからゆっくりず笑った。


    ある日、ひずりの人ががくにたずねおきた。
    「君は、ひずりがっちでさびしくないの」
    少し考えおから、がくは答えた。
    「さびしくなるこずは、あるよ。でも、こうしお君たちず話しおいるず、その気持ちはうすれおいくんだ。それに、地球には森や川や、動物や人がいお、宇宙には星々がある。みんな同じ䞖界に生きおいる。だから、がくはひずりじゃない。そう思うず、さびしくないんだ」
    がくがそう蚀うず、その人は「なるほど」ず぀ぶやいた。
    そしおやさしい顔で笑いながら、たた旅立っおいった。


    そんなある日、突然こんなこずを蚀われた。
    「君がここにいるのを、い぀も芋おいたんだ。君は、なんだか嬉しそうにいろんなものをながめたり、誰かず話したりしおいるね。そんな君を芋おいるず、それがどんなだかがくも知りたくなっお  。だから、䞀緒にここにいおもいいかな」
    がくはびっくりした。そんなこずを蚀われたのは、はじめおだったからだ。
    でも同時に、ずっおもうれしかった。
    さびしくない、ず蚀ったけれど、本圓はちょっぎりさびしかったからだ。
    「もちろん」
    がくは笑顔でうなずいた。
    それから二人でならんで腰をおろし、いろんなこずを話した。
    ずきには笑っお、ずきには怒っお。けんかをしおは、仲盎りを繰り返した。
    そんながくらだけど、䞀぀だけたしかなこずがあった。
    圌はけっしお嘘を぀かない。い぀も正盎な気持ちを、たっすぐがくにぶ぀けおくれた。
    だからがくも、圌には嘘を぀かないず決めおいる。
    玠盎な気持ちを出し、ぶ぀かり、そしおたた笑い合う。
    そうやっお日々を過ごしおいった。
    ここが、がくたちの䞖界。境界にいながら、すべおず぀ながっおいる。
    がくたちは今日もここで、地球ず星をながめおいる。

    おわり

     
     
    未就孊児の母。アメリカで垯同生掻をしながら、ザ・INTPな考えごずが日課。歎史、心理、小説、挫画、子育お、旅行など。人間ず瀟䌚、そしおこころ。そのあいだを行ったり来たりするのが奜き。

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