
【小説】To be continued ~第4話 未完成の上書き保存~
2026年3月バリ島@ウブドからクタ、そして・・・帰国へ
滞在7日目の朝。
明後日は、帰国日。
チケット変更で、滞在期間を長くしたけれど、楽しい時間は、やっぱり短く感じる。
一昨日の初ピラティス。
そのスタジオで見かけたウェアが気になっていた。
聞けば、ウブドに唯一の専門店があるという。
ならば行くしかない。
車をチャーターして、私はサヌールを離れた。
Google マップで店を調べ、向かう。
「Hello~!」
何というタイミング。
バリ島のお正月“ニュピ”を控え、お店全体でセール中。
私は、早速、店内を物色する。
「あ、これ・・・。」
試着して、確認。間違いなくマイサイズだ。
ホワイト地に、鮮やかなブルーで柄が描かれている。
一目で気に入った。
車は、ウブドからクタ方面へ向かう。
バリ島の巨大スーパーで、家族へのお土産を様々買いこむ。
もちろん、私が大好きなボディクリームも、買い物かごへ。
レジで会計を済ませると
「……。」
店員が笑顔で何かをまくし立てながら、少し向こうを指差している。
これだけ旅行しているのに、何を言ってるのかさっぱり分からない。
どうやら、サービスカウンターへ行けと言うことらしい。
ニュピ前の店は、人が溢れている。
人ごみをかき分けて向かうと、クジ引きをやっていた。
レシートを見せると、1回クジを引けと。でも、日本とは違うクジ?また分からない。
教えてもらって、早速、クジを引いてみる。
「!?」
何とゴージャスなパッケージのボディクリーム1個をget!
実は、私、クジ運は悪くない。
ボディクリームを大事にバッグへしまい、軽やかな足取りで車へ戻る。
予定を少し変更して、美味しいと評判のワルンに立ち寄ってから、ホテルへ向かった。
荷ほどきをして、ビンタンビールの時間。
ワルンの手作り総菜の数々。ツナたたき、大きなミートボール、トマト&アボカドのサラダ、いんげんのごま和え。
優しい味とビンタンが、体のすみずみへ行きわたった。
最終日は、ホテルから近いスパで癒され・・・帰国日が迫ってきた。
やっぱり名残惜しい気持ちしかない。
また来るね、と誓って、帰国の途についた。
ーー数日後。
いつもの毎日がやってきた。
灰色の空。
冷たいアスファルト。
仕事。
”バリでは呼吸できる。”
”日本では息ができない。”
満員電車に揺られながら、莉緒は気づいた。
蓋をしていた気持ちが一気に溢れてくる。
売上の見込み、ゼロ。
顧客、ゼロ。
商品も、無い。
それでも胸の奥では、何かが静かに燃えていた。
案が未熟なことは、百も承知で、調べた挙句、「開業届」を電子申請した。
送信完了画面。
その光は、あの島の星空のように静かで、鋭かった。
そんな頃。
一人のバリ島ブロガーの記事が目に止まった。
軽い気持ちで申し込んだホロスコープ鑑定は、思いがけず私の心を揺さぶった。
鑑定レポートは、自分の内側に秘めていたこととの答え合わせ、だった。
星は、私の「意志」を待っていたのだ。
そう気づいた瞬間、身体が勝手に動いていた。
私は、予約済みの5月チケットを確認する。
ーー有給が一日余っている。
昔の私なら、そのまま捨てていたと思う。
実際、何年もそうしてきた。
でも、歩けなくなったあの日から、考え方が変わった。
自分のために使える権利。
時間は、戻ってこない。
私は迷わず出発日を前倒しした。
たった一日半。それだけのことだったが。
日本での責任を剥ぎ取り、バリ島で本当の私を呼吸させる。
その往復の果てに、何が待っているのか・・・。
そして、この頃に。
私は、少しずつ「ホンモノの自分」を試し始めていた。
誰にも頼まれていない。
収益化の当てもない。
ただ、自分の言葉を書きたかった。
それが、自分の言葉を書き始めた最初の一歩だった。
未完成でもいい。
何者でもなくてもいい。
私は、「note」の中で、自分の人生を上書き保存し始めていた。
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