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【5/10 第4章】就職氷河期の男 ―― 燃える珟堎

    第章 燃える珟堎

    - 新たな課長

    リヌマンショック
    幎月に発生した䞖界的金融ショックである。
    そんなこずが起きる予兆が無い奜景気に沞いおいた月に新たな課長がきた。
    名は草野[仮名]である。
    離婚ず結婚を繰り返し、子䟛でサッカヌチヌム出来るず豪語する人栌砎綻者である。

    業界の幎代初頭で䞊圹に付いおいた人はバブルの萜ちこがれが倚かった。䞭にはたずもな人もいたが、田䞭が居た瀟レベルには来ない。

    草野は蚀った。
    「倧きな案件ずっお、俺たち䞀課のみんなの絊䞎を䞊げる」
    「俺はドットネットの神ず呌ばれた男だ」
    田䞭は怯えた。
    花火垫だ。ダバい。距離を取ろう。


    課長歓迎䌚での話
    若い女性瀟員を䟍らせたいのが芋え芋えの草野の隣に割り蟌む田䞭
    「男が隣に来るな、気持ち悪い」ず草野。
    『草野さんの歊勇䌝を聞きたくお』ず田䞭のペむショ。
    ・・・
    調子に乗っおいろいろず話す草野、それにリアクションする田䞭。
    田䞭はこの状況に蟟易しおいる若手女性瀟員を
    なるべく遠くに配眮換えするのを忘れない。
    「氎割りくれ」ず草野が咆哮する
    『承知したした』ずラヌメン屋のノリで察応する田䞭
    で氎割りを䜜り、草野に出す田䞭。
    「誰だ、俺の酒に氎入れたのは」ず酒を田䞭にぶっかける。
    『申し蚳ございたせん。』
    俺が芋本芋せおやるず草野。満々の焌酎に、チョロリず氎を入れる。
    「これが氎割りだ」
    『ご教瀺ありがずうございたす。』ずニコニコする田䞭。

    内心怒っおいるず、どこかに出る。感づく人もいる。
    本心を党く芋せないこずに慣れた田䞭。
    酒を掛けられおも䜕も思わない。
    垰り際、酔いが醒めた草野はボ゜っず「田䞭はむキナリ刺しおきそうだ」ず蚀った。
    圓然、田䞭は吊定した。
    だが距離を取る良い口実になるず内心ホッずしおいた。 


    - 䞊に立぀人ずしおの資栌

    草野は宣蚀通り、超倧型案件を取った。

    システム開発は倧枠で芁件定矩、蚭蚈、開発、テストず進む。
    芁件定矩はどんなビゞネス䞊の課題があっお、どこをシステムで解決するかを決めるこずをする。

    あずで分かったこずだが、この芁件定矩䞭、草野が連れお行ったメンバが客先から離垭しお二床ず䌚瀟に戻っお来なくなった。
    窮した草野は䞀課の若手だけだず足りないから二課に管理、䞊流工皋をしおくれず持ち掛け、ふたを開けたらダメダメだったので二課からクレヌムの嵐。

    そんな状況を知らなかった田䞭は急に猫なで声で草野に蚀われた。
    「応接宀で面談があるから出お。俺は行けない。」
    田䞭は昇栌面談かなず思い、軜い気持ちで応接宀に向かう。
     
    居たのは圹員ず鬌の圢盞の二課の人達。
    「䞀課のダツらがダメな仕事をしお二課に抌し付けたので炎䞊しおいたす。」
    「䞀課のお前、どうするの」
    田䞭は圹員の前で、吊し䞊げられ、トカゲのしっぜ切りにされたのだ。
    田䞭は倪っお実幎霢より老けお芋えたので䞁床良い身代わりだった。
    二課の面々が窮状を感情のたたに蚀い、怒号が飛び、䞀課を代衚しお田䞭をなじった。
    田䞭は怒りで震えそうになったが、こらえた。
    真実が分からない。䞋手に動かない方が良い。
     
    結局、怒り狂った二課のメンバず亀代しろず圹員の指瀺が出お、
    田䞭は珟状の仕事をやりながら火消しをするこずになった。

    「ふヌん、そうなの」
    「なんで蚀い返さなかったんだよ」
    「倱敗したら䞀課のボヌナス無くなっお、みんなに恚たれるぞ」
    「お前、今の仕事どうする぀もり」
    他人事のように蚀う草野。

    ヌヌヌこのクズが。
    田䞭は珟実的な案を草野に提案、念のため、さらに䞊の䞊叞にも話をしお合意した。

    電話を取るこずすら䞍安がる珟状の若手たちに、田䞭が瀟甚携垯を時間持ち、遠隔指瀺をするこずを玄束した。
    客先ぞの定䟋報告は、田䞭も出垭する。
    なるべくメンバの䞍安を解消し、田䞭は草野の尻ぬぐいのため本瀟から離れた倉庫のようなプロゞェクトルヌムに向かった。


    この炎䞊案件で二課の係長である䜐々朚さん[仮名]は枩和な人栌者であった。
    䜐々朚さんに挚拶した。
    たた雑談がおら䜕も知らないで圹員面談に蚀ったこずず、週次報告があるので週䞀回䞍圚になるこず、別プロゞェクトでの䜜業があるかもず䌝えた。

    「この前は倧倉だったね、これから䞀緒に頑匵ろう」
    『うちの草野が、倧倉倱瀌したした。』
    そう蚀う田䞭に、いいよ、いいよず䜐々朚さん。

    䞀課の若手メンバは田䞭の登堎を芋お喜んだ。
    皆、田䞭が育おたメンバである。

    田䞭は誇らしく思うず共に、内心これから察応策をどうするか䞍安でいっぱいであった。
    ただ衚情には出さない。
    歎史䞊の名将は個人の気分で兵の士気を䞋げるような事はしないからだ。

    たずは䜐々朚さんに䜕が足りおいないか確認から始めた。
    どうやら激怒しおいた二課のメンバが倧半のタスクを片付けおいたが、
    垳祚出力は抜けおいたずのこず。
    実物の垳祚は倧量に印刷されおいたが、デヌタベヌスのどこから出しおいる項目か、さっぱり分からない。
    田䞭はお菓子をコンビニで倧量賌入し、プロゞェクトメンバに挚拶し぀぀担圓者しか把握しおない内容を雑談しながらヒアリングしお回った。 

    結果、タスクに察しお圧倒的に人数が足りおいなかった。
    リヌマンショックでアサむン先が無くなりスキル習埗の名目で攟眮されおいる新人を䜿おうず田䞭は䜐々朚さんに提案をした。
    勉匷の名目で実際には案件にアサむンさせず、プロゞェクトの収支を悪化させないのがミ゜だった。

    だがアサむンされた新人たちの目は死んでいた。
    それはそうである。
    月入瀟から冬たで自己孊習ず称しお倉庫のような堎所で攟眮されたのである。
    優秀な人からアサむンが決たり消えおいく環境䞋で、どれだけ䞍安であっただろうか。

    キレむに出力される垳祚を芋お、
    初めおのモノづくりに新人のくすんだ目が茝き始める。
    田䞭は、い぀ものオヌバヌリアクションで新人たちを耒めた。
    ただ、぀らい時期を過ごした新人達の朜圚胜力を発揮させるたでには、
    時間が掛かる。
    ヌヌヌ間に合うか。
    しかし、やるしかない。
     
    垳祚の芁件定矩は別䌚瀟のコンサルが入っおいた。
    田䞭が『ここは案のうち、案ですよね』ず蚀うず
    「そう思うだろ、だが案なんだよ、いや案だな」ずコンサルタントコンサルが蚀う。
    玠人の䞋請けのパンチャヌ颚情が、ず䞊流工皋を担圓する倧䌚瀟のコンサル様が蚀倖の態床で衚す。

    察面のミヌティングの埌、「案で」ずクラむアントの宛先をメヌルに含んで、深倜に予定送信しお忙しく仕事しおいる颚を装う。
    圓然、培倜䜜業の田䞭は即時に返信する。承知したした、ず。

    どう考えおも案になるので案で既に䜜成しおいた田䞭は深倜に栄逊ドリンクを飲みながらクスリず笑う。
    クチだけの信甚できない男だな。

    ただ田䞭の䌚瀟から盎接クラむアントに質問が出来ない䜓制であった。
    それほどの倧䌁業のクラむアントであった。
    このコンサルを、おだおお䜿うしかない。

    こっちから正答するずコンサルずしおの存圚䟡倀が萜ちるからか、無駄に珟堎を匕っ掻き回す自己䞭心的な行動をする。

    無事に玍品させるのが目的の田䞭は手段を遞ばない。
    コンサルずのミヌティングはペむショし぀぀話を確定しおいった。
    知っおいるこずを知らないふりしおいた。

    『勉匷になりたす』、『凄いです』、『貎方みたいになりたいです』ず繰り返した。
    コンサルは埐々に田䞭に心を蚱しお協力しおくれるようになっおいった。 
    田䞭は冬に参画したが幎末玍品ずいうタむトな状況であった。


    たたに郚長が来お、犁煙の宀内でタバコに火を぀けお蚀う。
    「終わんの」
    「なんずかしたす」ず䜐々朚さん
    「クチだけでは䜕ずでも蚀えるよね」ず郚長
    郚長も䞊から、盞圓詰められおいるのだろう。
    そうでもなければ平成の䞖の䌚議宀でタバコを吞うはずない。

    長い進捗䌚議ずいう名の詰問のあず郚長は䌚議宀の机でタバコをもみ消し、
    䜐々朚さんに投げ぀けお郚長は垰っおいった。
     
    田䞭の甚意した手順を守る新人たちは想定より早く垳祚を仕䞊げおいった。
    田䞭はい぀ものように、報告に来た新人たちを耒めちぎった。
    田䞭に耒められたい䞀心で䞀生懞呜に働く若手ず新人たち。
    䞀か月経぀頃には䞀課・二課の若手ず新人たちは自発的に考え、動けるようになった。
    そしお、幎末玍品に間に合った。圌らの、みんなのお陰であった。

    ただ幎末幎始で䞍具合が芋぀かり、田䞭がデスクトップパ゜コンを持っお
    タクシヌで客先に行っお治したのは若手には内緒だ。
    若手たちには登っおいく達成感だけ味わえば良い。

    嫌な事はリヌダヌの田䞭が受けお立぀。
    これは遠藀さんから孊んだ、埌進を守るリヌダヌずしおの資栌。
    田䞭の誇りでもあった。


    炎䞊プロゞェクトが終わり、瀟内の圹員報告䌚があった。
    参加者は郚長、䞀課・二課の課長、そしお係長の䜐々朚さん
    「で、誰が悪いの」
    圹員は聞いた。
    「こい぀です」
    郚長は䜐々朚さんを突き出した。
    結果、䜐々朚さんは実質絊䞎枛額ずなる子䌚瀟出向ずなった。

    圹員報告䌚の埌日に䜐々朚さんず喫煙所でバッタリ䌚った。
    「毎日電車に乗るのが怖い、飛び蟌みそうで。」
    田䞭は草野のせいで酷い目にあった䜐々朚さんに同情するこずしか出来なかった。
    䜕も蚀えない。
    䞊叞ずしお、責任者ずしお仕方ないず人は蚀うかもしれない。
    だが、しかし。

    草野は倧きな売䞊を䞊げたこずで、課長を続けるこずになった。
    今思えば、草野は草野で䞀課のメンバの絊䞎査定のため手段を遞ばなかったのかも知れない。 


    - 䌚瀟の危機ず䞊叞のはざたで

    田䞭は郚内で名が売れた。
    だが、利益を出しおいないので昇栌できない。
    せめおもの枩情で䞀課から二課に転籍し最新技術を䜿ったプロゞェクトにアサむンされるこずになった。
    ゚ンゞニアずしお腕ずキャリアを䞊げるには良い内容だった。
    瀟内で優秀な人を集め切磋琢磚し、出来䞊がっおいく成果物。
    忙しいが田䞭には嬉しい日々であった。

    しかし、ここで事件が発生した。
    子䌚瀟が獲埗した倧型案件が炎䞊したので
    本瀟党䜓で䜕ずかしろず瀟長から号什が出たのだ。

    田䞭の䞊叞は、田䞭にすぐに珟堎に行くように蚀った。
    期間は䞀週間だけ。
    身支床を敎え、戻った埌に困らないように仕事に区切りを぀けおからの出発。
    今床の炎䞊珟堎には二癟名ほどの自瀟人員が居た。
    ほずんどが今日、急遜呌ばれた面々だ。
     
    草野はおらず、二課の課長ず郚長が居たので挚拶ず自分の圹割に぀いお䌺う田䞭。
    が、たさかの埅機呜什。
    座る垭もないので客先で申し蚳なさそうに、ずっず立っおいるだけの田䞭。

    終電でクラむアントが垰宅し、プロゞェクトメンバが少しず぀垰りだした頃、二課の課長が田䞭に蚀った。
    「おい、垭が空いたぞ。仕事しろ」

    ログむンするためのずパスワヌドも分からないパ゜コンで手がかりは無い。
    今日は垰らなそうな人に恐る恐る質問しログむンする。

    珟圚では考えられない杜撰な管理である。
    培倜で顔色の悪い人にプロゞェクト固有の情報を申し蚳なさそうに話を聞き出す田䞭。

    急遜呌ばれた倧量のメンバはクラむアントぞのポヌズで䜕も出来おないこずに気付く。
    ログむンしたパ゜コンのプログラムの起動が出来なかったからだ。
    培倜で残っおいる子䌚瀟のメンバが実質仕事しおいる状況であった。
     
    お客様は、うちらの業界最倧手。ここで倱敗するず䌚瀟が危ない。
    二課の課長ず郚長が、がそっず蚀いプレッシャヌを田䞭にかける。

    田䞭は自宅で勉匷を欠かさなかったので、すぐにプログラムを実行できた。
    そしお玄束の䞀週間が経った。
    でも、完成には、ほど遠い。

    二癟名のうち、たずもに䜜業出来おいた名を残すこずになった。
    田䞭は䞍運にも遞ばれた。

    田䞭は二課の課長に「䞊叞に延長になったこずを䌝えお欲しい」ずお願いをした。
    そしお䌚うたびに念抌しした。
    プロゞェクトキヌ必須の郚屋で、倖郚ぞの通信手段が無く、ガラゲヌを持ち蟌めない培倜状況。
    二課の課長は分かった、分かったず蚀った。


    「今週の土日が山だ」
    炎䞊プロゞェクトの管理者が毎週蚀う。
    䜕連勀しただろう、田䞭はたた枊䞭に巻き蟌たれた。
    働き方改革など、ただ無い時代であった。

    総勢人くらいで機胜を䜜り䞊げる。
    遞抜したメンバは優秀で立ち䞊がりが早かった。
    䜕ずか完成が芋えおきた、玍品䞀週間前。

    衝撃の事実が発芚した。
    田䞭は青ざめお珟堎リヌダヌの江藀さん[仮名]に報告した。

    このプロゞェクトのりリである重芁機胜が手付かずの状態だったのだ。

    事の重倧さに気付き狌狜する江藀さん、田䞭の頭は察策を緎り䞊げる。こう分担しお、こう進めたしょう。田䞭は䜜戊を緎っお江藀さんに䌝えた。
    もちろん、それでも無理難題であった。
    人が数か月かけお䜜ったシステムに、ほが同様芏暡のりリの機胜を䜜る。
    だが、田䞭は志願した。
    この難局を䜕ずかしようず腹をくくったのだ。

    江藀さんず䜜戊䌚議しお、既存機胜を流甚出来るように話を持っおいきビゞネス芁件を満たす。
    プログラミングしながら、田䞭は死力を尜くす。

    女性瀟員が垰れない田䞭が臭いず裏で文句を蚀っお、
    垭の間を空けられおも田䞭は気にしない。

    党おは䌚瀟を救うため。確固たる決意だった。
    そしお江藀さんず田䞭は過酷な運呜に勝った。

    江藀さんの安堵の笑顔に田䞭は報われた、田䞭も思わず笑っおしたった。
    䞀週間で機胜は党お完成し、玍品しチヌムは解散ずなった。 


    田䞭は数か月ぶりに本瀟に出瀟した。
    元居たプロゞェクトの䞊叞に元気に
    『䌚瀟の危機を救いたした。』
    ず満面の笑みで報告した。

    䞊叞は蚀った。
    「䜕だ今頃、䜕をしおいた」
    『』
    「䞀週間だけっお蚀ったのだから、適圓にやっお䞀週間で垰っお来いよ」
    「他の案件なんか知ったこずじゃないだろ、このカスが」
    ずゎミを芋るような目で蚀い攟ったのだ。

    結果、田䞭はプロゞェクトを倖された。
    干されたのだ。

    䞀䜓どこで間違えたのだろうか。
    田䞭には分からなかった。

    ただ、この䌚瀟から去る時期が来たのだず思った。


    隔週で続けおいたバスケで久々に愚痎った田䞭に元同期の高野は蚀った。
    「うちベンチャヌの開発䌚瀟だけど来ない」
    「今の絊䞎から䞇アップで正瀟員にさせる」
    「䞊堎したらむンセンティブも貰えるかも」ず真剣な高野。
    䌊賀先茩も圚籍しおいお、是非ずも、ず勧める。

    高野は田䞭にずっお芪友で、䞀番田䞭をからかうが心底では優しさがあった。
    䌊賀先茩も信頌のおける立掟な人栌者である。

    芪友ずずもに倢を芋るのも良い話だ。
    呜がけで仕事するならば、せめお信甚できる友ず。
    そう田䞭は思っお転職を決意した

    【䜜品に぀いおのご案内】
    本䜜品はフィクションです。実䜓隓に基づき再構成しおいたすが、䜜䞭に登堎する人物・団䜓・出来事は、実圚のものずは䞀切関係ありたせん。
    執筆坂本梚颚


     
     
    坂本梚颚さかもずりふう 就職氷河期䞖代の生き残り。 過去から孊び、珟圚そしお未来ぞず諞孊問の叡智を借り倚角的な芖点でAIず共に思考実隓をしおいたす。 次の䞖代にバトンを぀なげるために地球の未来を思考するクリ゚むタヌずしお新しい物語を綎ろうず思いたす。

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