
一粒の時を紡いで
概要
16歳~85歳までの一人の人生を描いた短歌集となります。
自分に当てたり、友人に合わせたりしながら読んで頂けると幸いです。
第一章:どんぐりと背比べ(16歳〜18歳)
背伸びして
必死に掴んだ
チャンスさえ
並べば皆んな
背丈が同じ
転がって
進めば道と
思う間に
やり方違(たが)う
手法と戦法
落ちていく
どん底悔やむ
這い上がる
下がって上げる
好意と好感
朝ドラの
主役はいつも
笑顔丸
親が観ていて
気になる自分
努力した
結果は無事に
結ばれて
来春私は
名門大へ
第二章:「天才といえど 」18歳〜22歳
自分さえ
冴えてた才能
生かすべく
挑む世界は
雲より高く
クラス仲
いつの間にやら
仲が出来
置いていかれる
孤独の性より
勧誘で
入ったサークル
騒音部
ストレス発散
掃き溜め会へ
恋仲や
進めば都
戻る恥
一歩が中々
出ずに去るなり
就職も
決まれば安泰
余裕顔
ここでも闘う
ライバル達よ
第三章:「消えない傷は永遠に」28歳
沖合で
触れた手払い
頬に傷
別れた我は
酒におぼれる
髭を剃る
鏡の中に
あの時を
忘れる事に
朝に疼きぬ
安焼酎
薄める水が
足りなくて
苦い記憶を
そのまま飲み干す
腫れた頬
拭いハンカチ
当ててても
変わらぬ気持ち
思いぞ募る
番外編:「歳追うが馬」30歳&8歳
年食うが
喰われてしまう
人間に
追うものすべて
先を越してる
幼子や
観る物全て
新鮮化
目新しさより
自分の好きよと
小学よ
少額持って
駄菓子屋へ
募った仲間は
露知れどこへ
大人たち
どうしてそんな
生き急ぐ
流れる時間
皆同じけり
第四章:「再会そして」36歳
あの時の
彼女が側に
居てくれて
過去の思い出
語り合うなり
沖合で
語る2人は
あの時の
頬の痛みも
消え行き空に
第五章:「惑わぬふり 」40歳
守るべき
我が子が生まれ
泣き顔で
抱いたあの日を
忘れることは
鏡見る
若さの消えた
目元には
父に似た皺
笑うと深く
子の笑顔
仕事の疲れ
吹き飛ばす
それでも夜は
酒を傾け
惑わずと
孔子は言えど
まだ迷う
それでも明日
来ると信じて
第六章:「夕映えの傷 」50歳
夕焼けの
赤さに染まる
帰り道
あの頃よりも
遅くなりたり
部下の名
すらりと出ずに
詫びる朝
老いとは斯くも
静かに来るか
体より
先に折れゆく
心あり
それでも明日
また立つと誓う
傷跡は
消えたと思い
いたけれど
夕日に透けて
また浮かぶなり
第七章:「還る季節 」60歳
退職の
日に貰いたる
花束を
妻と眺めて
黙して過ごす
故郷の
山の匂いは
変わらねど
戻る自分が
変わり果てたり
親の墓
石の冷たさ
手に感じ
詫びる言葉は
土に染み込む
子の子らが
走り回れる
庭先で
老いた自分は
縁側に座る
第八章:「静かなる対話 」70歳
昔日の
自分に問えば
何と言う
正解など無い
問いを抱えて
妻の手の
温もりだけが
現にて
夢と現の
境さまよう
孫の声
騒がしいほど
有難く
静けさよりも
賑やかが良い
生きてきた
道を振り返る
秋の夜
悔いもあれども
それが我が道
最終章:「死期の賛美」85歳
泣つらに
滴る水は
汗の味
忘れるなかれ
人は皆生きて
逝く前に
もう一度だけ
見たい顔
浮かぶ笑みは
皆あの世にか
痛みさえ
生きている証
有難く
息を吸うたび
感謝が溢れ
長い旅
終わりに近く
夕暮れに
ありがとうの字
口から漏れる