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陰陽師の隣で 第九話『呼び寄せる人』

友人の祖母が亡くなり、その後を追うように祖父も亡くなった。

——『ここから先が視えん』

陰陽師の先生の言葉が、頭から離れなかった。

よりによって、不吉な事ばかり当たっていく。

あの時、一緒に視てもらった友人は、もう陰陽師の先生が怖くなってしまったと言う。

無理もないのかもしれない。

『産まれてくる子供は障害を持つかもしれない』

『50歳前後で、この世にいないかもしれない』
そんな事を言われれば、もう視てもらう事自体嫌になるのも当然だった。

一方、もう一人のオカルト好きな友人は違った。

「また聞きたい事あるんよ〜!」

相変わらず目を輝かせている。

結局その友人に付き添う形で、私は久しぶりに陰陽師の先生の家へお邪魔した。

もう一人の友人の話は、あえてしなかった。

『当たっていた』と言えば、また怒られるかもしれない。

そもそも先生は、視えた事をそのまま言っただけだ。

悪気があって言ったわけではない。

私は、母の事を相談した。
アルコール依存症がさらに酷くなっている事。

父も私も、もう疲れ切っている事。

そして以前言われた、“霊道”について尋ねた。

「やっぱり、霊道が通ってるから色んな霊の影響受けてるんですか?」

すると先生は、眉間に皺を寄せて少し怒ったように言った。

「あのな。確かに霊道は通っとる」

煙草を咥えながら続ける。

「でもな、霊道通っとる家なんか、お前ん家だけちゃうぞ?」

私は黙って聞いていた。

「お前の言う通り、“霊道があるせいで悪い事起きる”んやったら、他の家も不幸だらけや」

その言葉に、私は少し反論した。

「でも先生、最初に来た時、私について来てる霊がいるって言ってませんでした?」

「あぁ、ついて来とったな」

先生はあっさり答えた。

「でも、あれは悪い霊ちゃう」

私は思わず聞き返した。

「え?」

「あんたの身体が居心地良かったから、くっついて来とっただけや」

そんな理由あるのか。

先生は続ける。

「放っといても良かったんやけどな。中には悪霊化する奴もおるから、一応祓っといた」

やっぱり祓ってたんだ。

私は内心少し安心した。

すると先生は、真面目な顔になって言った。

「確かに、お母さんはダメージ受けとる」

私は息を呑む。

けれど先生は、すぐ続けた。

「でもな。全部が全部、霊のせいちゃうぞ」

その言葉は意外だった。

「悪い事起きるたんびに、何でも霊のせいにする奴おるけどな」

先生は煙を吐きながら言った。

「俺から見たら、霊の方が可哀想や」

私は思わず聞き返した。

「霊道とか霊のせいじゃないなら……何が原因なんですか?」

先生は、私を見ながら静かに言った。

「霊を呼び寄せる人間や」

空気が少し重くなる。

「負のオーラ満載の人間が家族におるわ」

そして、はっきり言った。

「お母さんのアルコール依存症も、その人がおるせいやな』

——霊を呼び寄せる人。

兄はもう結婚して家を出ている。

今この家にいるのは、父と私だけだ。

父か。

それとも、私か。

飲んだくれている母の事は、正直好きではなかった。

うちの両親は元々、過保護で過干渉だった。

力で支配するような人達だった。

もし呼び寄せているのが私なら。

両親から離れたいと思っている、この感情のせいなのかもしれない。

そんな事を考えていると、先生が再び口を開いた。

「お母さんの実家、どこや?」

「えっと……富山県です」

すると先生は頷いた。

「今年くらい、一回連れて帰ったらどないや」

私は少し驚いた。

「長い間、帰ってへんやろ」

確かにそうだった。

母はアルコール依存症になってから、何十年も実家へ帰っていない。

仕事も忙しく、そんな余裕もなかった。

でも——。

それも、いいかもしれない。

私は帰ったら、父に相談してみようと思った。


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