
あの戸棚を開けてしまった日 #127
開ける必要のない場所があった。
歪んでしまって、
もう使えなくなったイヤリングを、
しまっておいたあの戸棚。
その戸棚を、開けてしまった。
しばらくは
もう開けない、もう見ないと決めていた。
それなのに、
引き出しを引けば簡単に開いてしまう。
うっかり引いてしまった。
そっと、中を覗く。
触らない。ただ見るだけ。
ハッと我に返って、
すぐに閉めた。
もう私の耳にはまらないことくらい、
わかっているのに。
もう開けない。
開ける必要がないから。
でも、たまに、
どうしようもなく寂しくなったときだけ。
開けてしまってもいいのだろうか。
見てしまっても、いいのだろうか。
この戸棚に閉じ込めた、歪んだものを。
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