見出し画像

かみなりの告白 第3話 ふつうの声で話す家|ともしびの仲間たち

夜ふけ、コトはカイのあとを追って、壁の外へ出ます。


小さな小屋の戸が開くと、
この谷ではじめて聞く「ふつうの大きさの声」がしました。


今回のことばは How long have you 〜?
「どのくらいずっと〜?」と、should。


英語 約535語 / 読む時間 約6分 / 朗読 4分24秒

▼ 下の枠を1回タップすると、物語がはじまります

▼ ドラマCD 下の枠を1回タップすると再生できます

▼ 動画で見る 日本語の字幕も出せます


日本語で読む


カイの跡をつけるコトとナギ

壁の小さな戸は、まだ開いていた。外の夜は広くて灰色で、カイの小さなランプが、道のずっと先でゆれていた。


コトはあとを追った。足音を立てずに歩いた──静かでいることが、ついに、何かの役に立った。


最初の角で、影がひとつ、足音もなくとなりにすべりこんだ。ナギだった。「…起きてたから」


それだけ言った。
カイは、山のふもとの小屋の前で止まった。

小屋は少しかたむいていたけれど、
窓はあたたかかった。


オトばあちゃんの家

カイはノックした。タン……タン・タン。

ひみつのノック。

戸が開いて、光と声がいっしょに出てきた

──ほんものの声。


ふつうの大きさの声。
この谷に来てから、はじめて聞く声だった。


「カイ! お入り、お入り。
   それから、そのふたつの影さんたちもね」
カイはくるっとふり向いた。


コトとナギが、暗がりの中で、
見つかって立っていた。
小屋の中は小さくて、きれいだった。


ほしたハーブが天井からぶら下がり、
ストーブの上でやかんが歌っていた。


おばあさんは小さくてまるくて、
鳥みたいにすばやい黒い目をしていた。


オトだ。
「またパンかい」と、カイのかごを受け取りながら言った。

「あんたはわたしを太らせる気だね。

 おすわり。みんなもだよ。

 ここでは、ささやかない。

 ここには、わたしと空しかいないからね。
 空は、大きな声のおしゃべりが好きなのさ」


「これはパン!」
トモがかごに飛びこみながら歌った。
「あったかいパン!」


「…パン」とコトは言った。
しゃべる火花を見ても、
オトはまばたきひとつしなかった。


パンを切りながら、
コトのランプの中の、四つの小さな光を見た。
「四つ」とオトは言った。


「赤、青、シアン、緑。
 ほう、ほう。じゃあ、ほんものだね。
 ランプの旅人の話は、聞いたことがあるよ」


「ここには、どのくらい住んでいるの」
 とナギがたずねた。

「三年」とオトは言った。


三日、みたいな言い方だった。
オトはカイが食べているあいだに

コートのボタンをつけ直し、
からになったかごに茶色い卵を六つ、
むりやり持たせた。


カイはささやき声で抗議した。
オトはふつうの声で勝った。

カイのランプがまた道のずっと先まで行ってしまうと、
オトはコトとナギのほうをふり向いた。


ランタンを確認するオト


鳥の目が、するどくなっていた。
「かみなりのランタンを取りに来たんだろう」


とオトは言った。
「なら聞きな、ちいさなランプ。

 あのランタンはね、
 たったひとつのものにしか灯らない。

 何もかくさない声。
 それだけさ。

 それから、空? 
 空はおこってないよ。

 空は三年間、質問をしてるんだ。
 ゴロゴロ、ゴロゴロ──

 同じ質問を、何度も何度も。

 だれかが答えなきゃいけない。
 声に出して。
 大きな声でね」


「…ほんとうのことを、町の人に言うべき」
 とナギが静かに言った。
「鐘をわったのは、あなたじゃない」


オトはほほえんだ。


あたたかくて、同時に、
がんこなほほえみだった。

「ほんとうのことにはね、
 わたしのものじゃないものも、あるのさ」


オトは、
カイが帰っていった暗い道に目をやった。

それから、コトの手を、小さなかわいた両手で包んだ。


「あんたもだよ、ちいさなランプ」
 とオトは言った。


「のどの奥に、質問がつかえてるね。

 聞こえるよ。

 あんたは、

 あんたの質問に、もう答えたのかい?」

 コトは口を開けた。

心を見透かされるコト

何も出てこなかった。

ふしぎな一瞬、コトは小屋の中にいなかった

──灰色の海のそばの、
こわれた町にいた。

だれも決して言わない名前の前に、

立っていた。

オトはコトの手をぽんぽんとたたいた。


「おやすみ」とやさしく言った。

「答えは重いからね。ゆっくり、持って帰りな」


「あんたの質問に、もう答えたのかい」。


------To be continued


コトは、口を開けたままでした。


つづきは、また明日。




#小説 #創作 #教育 #英語学習 #個人開発 #児童文学 #中学英語


いいなと思ったら応援しよう!