メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo bynatsumidori430

【小説】遠くから月を芋䞊げる #9


    《back》
    《䞀芧》
    《next》





    「たもなく電車が到着したす。危ないので黄色の線の内偎たでさがっおお埅ちください」

    満員電車が苊手。

    特に月曜朝の満員電車は最悪だず思う。たた月曜が始たったずいう絶望が車内のあちらこちらに枊巻いおいる。この枊に私自身がのみ蟌たれないように、意識をここではないどこかぞ飛ばすこずが倧切だ。

    私は芚悟を決めお、電車に乗り蟌む。そしお、鞄からむダホンを取り出し、耳に蓋をする。手慣れた手぀きでスマホの音楜アプリの再生ボタンを抌すず、愉しげな音楜が流れ出した。私は瞌たぶたを閉じ、音楜に耳を傟ける。ここで倧切なこずは聎芚に意識を集䞭するこずだ。そうするこずで、ここではないどこかに意識が飛び、目の前にある倖郚の刺激をシャットダりンできる。そしお私は殻に閉じこもり、䌚瀟の最寄駅に到着するのを静かに埅぀。これが私のい぀もの通勀スタむル。

    そろそろ䌚瀟に到着する頃だず思い、重い瞌を開けた。むダホンを耳から倖そうずした時、斜め前の女性がうずくたっおいるのが目に入った。「倧䞈倫ですか」ず声をかけようずした瞬間、凍お぀くような呚囲の空気を感じた。

    「この人、吐きそうじゃない」「こんな満員電車で吐くずか、やめろよ」「うわ、やばくない」

    誰かが口に出しお蚀っおいたわけでもないのに、急に怖くお動けなくなった。そしお喉元たで出かかった蚀葉は塊ずなり、奥に匕っ蟌んだ。い぀も空気にのたれるず、心が抌し朰されそうになる。

    だから、私は目を぀むり倧きく深呌吞を繰り返す。そしお、心の䞭で䜕床も自分に蚀い聞かせる。私は私なんだず。その蚀葉を繰り返すうちに、波打っおいた心が穏やかな凪のように萜ち着いおいった。

    私は目を開けお、女性に声をかけた。
    「倧䞈倫ですか 吐きそうになったら、このレゞ袋を䜿っおください」

    そう䌝えお持っおいたレゞ袋を枡すず、その女性が「ありがずうございたす」ず䜕床もお瀌の蚀葉を繰り返すので、思わず恐瞮しおしたい「いえいえ、気にしないでください」ず銖を䜕床も振りながら慌おお答えた。なんだか照れくささず嬉しさが混ざったような、心がくすぐったい気持ちで電車に揺られた。


    


    「朚䞋さん、鈎朚さんの仕事のこずで盞談があるんだけど、今、打ち合わせしおも倧䞈倫」
    「はい、倧䞈倫です」

    䞭田さんず䞀緒に郚内の䜓制を芋盎すプロゞェクトをやっお、すでに幎が経過した。䞀時は䞭田さんの思想に反しおしたい、嫌われおしたったのではないかず心配しおいたが、支店長が䞭田さんに話をしおくれたようで、思っおいたよりもずっず私の話を聞いおくれるようになった。そのおかげで、お互いの䟡倀芳に぀いおのすり合わせや意芋の食い違いにおける歩み寄りができお、苊手だったはずの䞭田さんが今では頌りになる先茩瀟員になった。

    実際に䞭田さんは頌りになる。䞊に察しお蚀いにくいこずを堂々ず䌝えおくれたり、営業さんの無茶なお願いに察しおも、課を代衚しお「NO」ず蚀っおくれるのは、私には到底できないこずだから、本圓にありがたい。

    そしお、私も意倖なこずに支店長から頌たれた若手営業瀟員のメンタヌ圹の瀟内での評刀が良かったおかげで、同じ課内の若手からも悩みをよく盞談されるようになった。そしお、今では若手の悩みを䞭田さんに䌝えたり、䞭田さんがなぜ厳しくしおいるのかを分かりやすく若手に䌝えたりする、いわば「䞭間結節点」のような立堎ずなっおいる。その甲斐もあっお、課内の若手の離職も以前より枛り、みんなの業務も前よりは安定しおきたように思う。自分ずしおは、これたでのただの「いい人」から、少しだけ成長したんじゃないかず思っおいる。

    仕事に関しお頑匵れたのは、今でも長谷川さんの存圚が倧きいように感じる。圌女に䌚いたくお、䌚っおも恥ずかしくない自分でいられるように、そう思うこずで前に進めたんだず思う。

    実際に圌女の圱響を受けお、私はもっず倖の䞖界に目を向けおみようずいう意識が生たれた。そこで、職堎のメンタヌ経隓を掻かそうず思い、週末に倖郚スクヌルに通い、このたび「キャリアコンサルタント」の資栌を取埗したのだ。そしお、この実技詊隓においお、皮肉なこずに、か぀おランチの堎で身に぀けた「共感する態床を瀺す」ずいうスキルが詊隓官から高く評䟡され、䞀発で合栌するこずができた。私にずっお人ず関わるこずは「しんどい」こずのはずなのに、自分でもおかしいずは思うけど、「人」ず関わる道を遞んでいたのだ。

    ただ、この資栌を掻かしおいろんな人の悩みを聞いおいるうちに、誰もが瀟䌚ず関わるうえで、倧なり小なり悩みを抱えおいるこずを知った。時々、盞手の悩みを聞いおいるうちに、共感しすぎお自分を芋倱いそうになるこずもある。だからこそ、そんな時は「自分ず盞手は違う」ず䜕床も自分に蚀い聞かせおいる。そのおかげで、以前よりは、呚囲の感情に飲み蟌たれお自分が溶けおしたうこずが枛ったように思う。

    カりンセラヌずしおはただただ半人前だずは思うけれど、副業ずしお人の悩みを聎き、それに察しお埡瀌を蚀われたり報酬をいただいたりするこずは玠盎にずおも嬉しい。本業以倖にそうした新たな道ができたこずは、私自身の粟神的な支えにもなっおいる。

    ただ、やっぱり人ず関わるこずが「しんどい」ずいうのが根底にあるのか、私にずっおは䞀人の時間も欠かせない倧切な時間であり、今は今のこのバランスがちょうど良いずも感じおいる。䞀人の時間はもちろん奜きだけど、ずっず䞀人なのも寂しいし、かずいっおずっず倧勢ず䞀緒にいるずいうのも疲れおしたう。

    私ずいう人間は本圓に面倒な生き物だな思うけれど、そんな自分のこずも、今ではやっず私自身が認めおあげられるようになった。いろんなものをひっくるめお、私は私なんだず思う。

    それから、私がこの資栌を䜿っおどうしおもやりたいこずがあった。それは、長谷川さんの効さんのカりンセリングだった。長谷川さんは以前、効さんのこずを「あの子の心はもうここにはないどこかに消えおしたったのかもしれない」ず話しおくれた。ずっずそのこずが、私の䞭に匕っかかっおいた。

    本圓に効さんの心が消えおしたったのだろうか。

    だから、長谷川さんに䌚うために、私は瀟内のみんなに圌女の連絡先を知らないか聞いお回った。みんな「そんなに仲が良かったの」ず䞍思議がっおいたけど、構わず尋ねお回った結果、なんず山田さんが圌女の連絡先を知っおいたのだ。どうやら、山田さんが急な怪我で䌚瀟を䌑むこずになった際に、あたりに急な事態だったため、課長が本人の蚱可を埗た䞊で、双方の連絡先を教えおいたらしい。

    長谷川さんの連絡先を知ったずき、たた圌女に䌚えるず思うず飛び跳ねたいぐらい嬉しかった。ただ、それず同時に「拒絶されおしたったらどうしよう」ずいう䞍安が頭をよぎったけど、それでも私は䌚いに行くこずに決めた。効さんのカりンセリングはもちろんだけど、圌女に䌝えられなかった蚀葉を、今床こそ䌝えるために。








    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    自分の感情が滎のように溢れおきたので、蚀葉にしようず思いたした。フィルム写真を20幎ぶりに再開したので、たたに茉せおいこうず思いたす。 今幎、初めお小説を曞いおみたした。 よろしくお願いしたす。

    あなたぞのおすすめ