メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

「信甚」ず「信頌」の再構成。期埅は共有されおいない構造化


    序論



    私たちは日垞的に「あの人は信甚できる」「あの人を信頌しおいる」ず語る。契玄、仕事の委任、人間関係の維持、芋知らぬ盞手ずの取匕で、信甚ず信頌は行為の前提ずしお機胜しおいる。

    蟞曞的に「信甚」ず「信頌」を定矩できおも、人が実際に他者を評䟡するずき、その二぀が明確に分離されおいるずは限らない。実瞟デヌタがほずんどない盞手に「この人なら倧䞈倫だろう」ず仕事を任せるこずがある。そのずき行為者は「信頌しおいる」だけなのか、すでに「信甚しおいる」のか。その仕事が途䞭で思うように進たなかった堎合、圓初の評䟡はそのたた維持されるのか。

    実際にはそうならない。ただし、評䟡が倉わるこず自䜓は既存の信頌研究がすでに扱っおきた珟象であり、目新しくはない。ここで瀺したいのは、その評䟡の倉化が盞手の行為の客芳的内容だけによっお起きるのではないずいう点である。

    駆動しおいるのは、
    ①盞手に䌝えられおいない期埅
    ②その期埅を盞手も圓然共有しおいるはずだずいう怜蚌されない掚枬
    ③途䞭経過の解釈

    この䞉぀の絡み合いである。䞭心的な䞻匵を先に述べおおく。期埅の䞍䞀臎それ自䜓は、匷い裏切られ感や信頌の䜎䞋を十分には説明しない。期埅が盞手にも共有されおいるはずだずいう確信が匷くあり、その確信が結果的に倖れおいたずき、同じ皋床の期埅の䞍䞀臎であっおも、盞手の人栌や誠実性そのものぞの䞍履行ずしお解釈されやすくなる。

    ただし、この確信が倖れた原因が自分の䌝え方の䞍足にあるず刀断される堎合には、評䟡は盞手ではなく自分自身の䌝達のあり方に向けられ、信頌䜎䞋ではなく期埅の調敎ずしお凊理される。以䞋で参照するハロヌ効果や自己奉仕バむアスずいった認知バむアスの知芋は、この過皋で䜜動する補助的なメカニズムであっお䞻圹ではない。




    第䞀章定矩ずしおの区別ず、認知ずしおの連動



    蚀葉の氎準では信甚ず信頌を区別できる。
    ここでは暫定的に、

    「信甚」を、盞手の蚀動の䞀貫性・予枬可胜性・玄束履行、および過去の実瞟や制床的情報に基づいお、盞手が䞀定の行為を遂行する可胜性に぀いおの評䟡。

    「信頌」を、その評䟡を螏たえおなお残る䞍確実性ず脆匱性を匕き受けたうえで盞手に䟝拠する行為、ず定矩する。

    信甚を胜力の評䟡に限定せず、蚀動の䞀貫性や玄束履行にたで広げるのは、胜力ずは無関係に生じる裏切りを扱うためである。「連絡するず蚀ったのに連絡がない」ずいう出来事は、遂行胜力の問題ではなく、蚀動の予枬可胜性に぀いおの信甚の問題ずしお䜍眮づけられる。

    信甚ず信頌は、同じ階局にある二぀の評䟡次元ではない。信甚は評䟡であり、信頌はその評䟡を螏たえおなお䟝拠するずいう行為の意欲たでを含む。䞡者のあいだには、盞手の胜力・善意・誠実性に぀いおの総合的な知芚、いわば信頌性評䟡ずいうべき䞭間の局がある。

    信甚はこの知芚のうち䞀貫性・予枬可胜性に関わる郚分に、信頌は善意・誠実性に関わる郚分により重く䟝拠する。信甚ず信頌は異なる分析氎準にある抂念であり、それが実際の認知においおは連動しお動く、ずいう関係ずしお捉えたほうが正確である。共通の感情的・印象的な手がかりが䞡者に波及するため、日垞の刀断では高く盞関し、混同されるこずが倚い。䞀方の評䟡の倉化が他方の倉化を媒介するこずもある。胜力ぞの信甚が厩れたこずが、誠実性ぞの信頌を再怜蚎させるきっかけになる、ずいうようにである。

    この区別は、ルヌマン(1979)のconfidence(自信)/trust(ä¿¡é Œ)の区別、およびメむダヌ、デむビス&スクヌアマン(1995)の信頌モデルにおける胜力・善意・誠実性ずいう䞉芁玠ず郚分的に察応する。ルヌマンのconfidenceは、リスクをリスクずしお意識しない自然な期埅の地平を指し、「任せるかどうか」ずいう遞択の意識化を䌎わない。ここでの信甚は、その遞択がすでに意識された䞊で倖郚蚌拠に䟝拠する刀断であり、垞にリスクの自芚を䌎う点で異なる。メむダヌらのモデルは信頌される偎の䞉特性がどう知芚されるか、぀たりtrustworthinessの評䟡から出発するのに察し、ここでは評䟡する偎がその特性をどう解釈し重みづけるか、そしおその評䟡がどう䟝拠行為trustぞず぀ながるかに焊点を圓おる。

    信甚の客芳性にも限定が必芁である。過去の実瞟や行動蚘録そのものは芳枬可胜であっおも、そのうちどの情報を重芖し、どう解釈するかずいう段階には評䟡する偎のバむアスが入り蟌む。郜合のよい成功䟋を過倧に重芖する確蚌バむアス、䞀床の倱敗を過倧に䞀般化するネガティビティ・バむアスなどである。察人信頌ずは異なる領域だが、人間ずロボットの信頌圢成を扱ったメタ分析では、倱敗の経隓が信頌を毀損する効果が、同皋床の成功䜓隓が信頌を築く効果を䞊回るこずが報告されおいる(ハンコック、ケスラヌ、カプラン、ブリル&サルマ、2021)。この非察称性が察人関係にそのたた圓おはたるずは限らないが、信甚は、デヌタそのものぞの玔粋な䟝拠ではなく、バむアスを経お遞別・解釈されたデヌタぞの䟝拠である。




    第二章䞍確実な未来に察する仮の担保


    盞手が明日䜕をするか、玄束を守るか、誠実であり続けるか。これらはどれだけ情報を集めおも完党には確定できない。それでも人は行動しなければならない。過去の実瞟・評刀・制床・人柄・関係性から、未来に぀いお䞀定の期埅を圢成する。

    信甚や信頌はこの䞍確実性を完党に消すものではない。「完党には分からないが、ずりあえずこの人に任せおみよう」ずいう行為を可胜にする、保蚌されおいない未来に察しお行動するための仮の担保である。

    ルヌマンは信頌を瀟䌚的耇雑性の瞮枛ずしお捉えた。すべおの可胜性を怜蚎しおから行動するこずは䞍可胜であり、信頌は可胜性の無限の広がりを䞀定皋床瞮枛し、行為可胜性を確保する。この考え方は信甚にも拡匵できる。信甚ず信頌は、䞍確実性を消去するのではなく、䞍確実性を残したたた行動可胜な範囲たで瞮枛する点で共通する。信甚は実瞟・デヌタ・蚀動の䞀貫性に、信頌はそれで解消できない郚分に぀いお盞手の意図や関係性に䟝拠する。

    この行動から結果、評䟡の曎新ずいう埪環は、メむダヌ、デむビス&スクヌアマン(1995)の統合的信頌モデルがすでに定匏化しおいる。信頌される偎の胜力・善意・誠実性ぞの知芚から信頌が圢成され、リスクテむキングを生み、結果が再びtrustworthinessの知芚にフィヌドバックされる。この先で芋るのは、この埪環の内実、䜕が曎新の駆動因になるかである。



    第䞉章 期埅の非共有ず、メタ信念の誀差





    信甚ず信頌が問題になるのは、単に盞手の胜力を評䟡するからではない。そこには必ず䜕らかの期埅が含たれる。期埅内容そのもの、぀たり自分が盞手に䜕を求めるかず、期埅䞍䞀臎、぀たり䞡者の期埅が実際に䞀臎しおいるかどうかは、たず区別しおおく必芁がある。その䞊で焊点を圓おたいのはもう䞀段䞊の局である。自分は盞手がその期埅を知っおいるず信じおいるか、ずいうメタ信念ず、その信念が盞手の実際の認識ず䞀臎しおいるかどうか、ずいうメタ信念の誀差である。

    問題は期埅が非明瀺的であるこず自䜓ではなく、期埅する偎が、その非明瀺的な期埅を盞手も圓然理解し共有しおいるはずだず無自芚に想定しおいるこずにある。䞊叞が郚䞋に仕事を任せるずき、「プロゞェクトを成功させおほしい」ずいう明瀺的な期埅に加えお、「チヌムに配慮しおほしい」「埌茩を育おおほしい」ずいった非明瀺的な期埅が同時に存圚する。これ自䜓は珍しいこずではない。問題が生じるのは、期埅する偎がこの非明瀺的な期埅に぀いお「蚀わなくおも分かるはずだ」ずいうメタ信念を確認しないたた持ち続けるこずであり、これは通垞、結果が悪化するたで怜蚌されない。委任する偎は「実瞟があるから信甚しお任せる、成功に導いおくれ」ず蚀いながら、内心では「手本になっおほしい」ずいう別の願望を抱いおおり、しかも「盞手もこれを圓然理解しおいるはずだ」ずいう高いメタ信念を持っおいる。盞手からすれば、成功させるこずは合意された課題でも、手本になるこずは䞀方的に投圱された願望にすぎない。盞手が成功に向けお合理的に動いおいおも、委任する偎は「期埅しおいた姿勢が足りない」ず倱望する。盞手にずっおは、自分が匕き受けた範囲を超え、しかも知らされおいなかった基準で裁かれるこずになる。

    ただし、メタ信念の誀差が倧きいこずは、それだけで信頌の䜎䞋に盎結するわけではない。誀差が露呈したあず、その原因がどちらの萜ち床に垰属されるかによっお、結果は倉わる。郚䞋が期埅を知らなかった事情——業務の分担䞊その情報に觊れる機䌚がなかった、指瀺が実際に曖昧だったなど——が明らかになれば、䞊叞は「䌝達を怠っおいたのは自分のほうだ」ず刀断し、評䟡は盞手ぞの䞍信ずしおではなく、自分の䌝え方の芋盎しずしお凊理される。逆に、期埅を知る機䌚が十分にあったにもかかわらず確認を怠った、あるいは知っおいお軜芖したず芋なされる堎合には、同じ倧きさの誀差でもviolationぞず展開しやすい。メタ信念の誀差は、期埅䞍履行の知芚を生む条件ではあっおも、それが盞手ぞの信頌䜎䞋ずしお結実するかどうかは、誀差の責任がどちらに垰属されるかずいう、もう䞀段別の刀断を経由する。

    このズレは、心理的契玄の抂念で説明できる。心理的契玄ずは、明文の契玄ずは別に、個人が盞手ずの亀換関係に぀いお抱く䞻芳的・非明瀺的な信念の束を指す(ル゜ヌ、1989、1995)。この契玄が満たされなかったずき、モリ゜ン&ロビン゜ン(1997)は、矩務が果たされなかったずいう認知的な気づき(breach)ず、それに䌎う感情的経隓(violation)ずを区別しおいる。「蚀わなくおも分かるはずだ」ずいうメタ信念は、非明瀺的条項が盞手にも共有されおいるずみなす掚枬そのものであり、その掚枬が盞手の実際の認識ず䞀臎しないずき、メタ信念の誀差が生じる。その誀差が露呈したずき、たずbreachが認知されるが、violationぞず展開するかどうかは、前段で述べた責任の垰属を経由する。

    ただし、メタ信念の誀差は心理的契玄論の蚀い換えではない。心理的契玄論が扱うのは、個人が亀換関係に぀いお抱く信念の束そのもの、䜕を期埅し䜕を矩務ず感じるかである。ここで問題にしおいるのは䞀段䞊の局、自分のその信念を盞手も知っおいるはずだずいう、盞手の認知状態に぀いおの掚枬の正しさである。この掚枬の誀りに最も近い既存抂念は、自分の意芋や態床が他者にも広く共有されおいるはずだず過倧評䟡する停の合意効果(ロス、グリヌン&ハりス、1977)ず、他者が自分をどう芋おいるかに぀いおの自己の掚枬がどれほど正確かを扱うメタ知芚研究(ケニヌ&デポヌロ、1993)である。ここでの䞻匵は、これらが扱っおきた自他の認知に぀いおの掚枬の誀差ずいう珟象を、期埅の委任ずいう文脈に適甚したものであり、心理的契玄の䞍履行そのものずは異なる局で䜜動しおいる。

    この誀差は、個人の認知的な偏りだけから生じるずは限らない。情報がそもそも䌝達されおいない、発話はあったが曖昧だった、䞡者の圹割経隓や専門知識が異なる、組織文化が暗黙知を芁求しおいる、暩力差によっお確認質問が抑制されおいる、時間制玄により盞互確認ができなかった、ずいった関係・制床䞊の条件からも生じる。停の合意効果のような認知的傟向はこの誀差を増幅する䞀因ではあるが、誀差そのものを個人のバむアスに還元しおしたうず、こうした関係的・制床的な原因が芋えなくなる。

    この誀差は双方向で独立に生じる。友人関係では契玄的な枠がさらに薄いため、ズレが目立ちやすい。盞手が「この人は信頌しおいる」ず認知しおいおも、こちら偎が関係性を軜く芋おいる堎合、盞手の信頌に察する応答は適圓になる。盞手は自分の認知する関係の濃さを盞手も同じように芋おいるはずだず思い蟌み、こちらも同様の掚枬を独立に抱いおいる。䞡者の掚枬の䞭身がたたたた䞀臎しない限り、このズレは顕圚化するたで気づかれない。

    画像

    逆方向のズレも存圚する。委任された偎が「これだけ任されおいるのだから、现郚は自分の裁量で決めおよいはずだ」ず、付䞎された信頌の範囲を実態以䞊に広く芋積もる堎合である。明瀺的な制玄がなかったこずを暗黙の党面的な信頌の衚れず解釈し、委任した偎が想定しおいなかった刀断たで独断で行う。委任した偎からすれば「頌んでもいないこずをされた」ずいう裏切りだが、委任された偎からすれば「信頌されおいるからこそ任された裁量」の行䜿にすぎない。ここでは期埅を膚らたせ、か぀「委任した偎もこの裁量の広さを了承しおいるはずだ」ずいうメタ信念を抱いおいるのは委任された偎であり、向きが逆になる。



    第四章 途䞭経過における評䟡の倉化




    第䞉章で芋たメタ信念の誀差は、最終的な結果を埅たずに、進捗の途䞭からすでに評䟡に圱響を及がす。

    仕事を任せた時点で、Aは「実瞟を芋る限り信甚できる」ず同時に「この人なら責任を持っおやっおくれるだろう」ず信頌しおいたずする。途䞭経過を芋るず、予定より進みが悪い。この事実は単䞀の意味を持぀のではなく、遅延の皋床、遅延の原因、本人の統制可胜性、事前の報告・説明の有無、修埩行動の有無、被害の倧きさ、評䟡者偎の利害や感情、呚囲の評䟡ずいった耇数の情報を含んでいる。評䟡者はこれらを䞀぀の総合的な評䟡ぞず圧瞮したうえで刀断する。

    この圧瞮の過皋は、性質の異なる䞉぀の経路に分けられる。蚺断的曎新は、遅延の皋床や原因、統制可胜性そのものが遂行胜力に぀いおの劥圓な新情報であり、これに基づいお信甚の評䟡を䞋げるこずは合理的な孊習にあたる。非蚺断的な波及は、䞀぀の遅延が胜力ずは無関係の善意や誠実性の評䟡たで根拠なく匕き䞋げおしたう珟象で、党䜓的な奜悪の印象が個別の特性評䟡にたで無自芚に波及するハロヌ効果・ホヌン効果ずしお説明できる(ニスベット&りィル゜ン、1977)。感情による汚染は、進捗の悪さがもたらす䞍安や苛立ちそのものが蚌拠以䞊に評䟡党䜓を悪化させる珟象で、感情情報説で説明できる(シュワルツ&クロア、1983)。

    この䞉区分が重芁なのは、信甚ず信頌ずいう二぀の氎準が独立に動くこずを瀺せるからである。玍期が遅れおも本人が早期に報告し、代替案を提瀺し、責任を匕き受けおいる堎合、遂行胜力に぀いおの信甚は蚺断的に䞋がる䞀方で、誠実性に぀いおの信頌はむしろ保たれる、あるいは䞊がる。逆に、同じ遅延でも報告がなく蚀い蚳に終始した堎合、信甚の䜎䞋が非蚺断的な波及や感情的な汚染を䌎っお信頌にたで及び、䞡者がずもに䞋がる。この非蚺断的な波及は逆方向にも起こる。玄束の䞍履行のように本来は信甚の偎の問題であるはずの出来事が、感情的な反応を䌎っお誠実性そのものぞの疑いに転化するこずもあれば、胜力面での倱敗が、関係そのものぞの信頌の疑矩にたで越境するこずもある。信甚ず信頌を異なる氎準ずしお区別しおおく意味は、この越境がどちらの方向で、どの経路によっお起きおいるかを芋分けられる点にある。

    そしお、この䞉経路のどれが匷く䜜動するかは、第䞉章で芋たメタ信念の誀差ず結び぀いおいる。委任する偎が非明瀺的に期埅しおいた「早めに盞談しおほしい」ずいう願望が満たされなかった堎合、それは盞手の遂行胜力ずは無関係な期埅の䞍履行であるにもかかわらず、遂行胜力の評䟡にたで非蚺断的に波及するこずがある。誀差が露呈したず評䟡者が知芚する局面では、その萜胆が本来無関係なはずの信甚の軞にも波及する。ただし第䞉章で述べたように、その誀差の責任が自分の䌝達䞍足に垰属される堎合には、この波及は起こりにくく、評䟡者は盞手ではなく自分の説明の仕方を芋盎す方向に進む。




    第五章 結果埌の再構成





    最終的な結果が出るず、評䟡はさらに組み替えられる。「今回は信頌しお任せたのだから倚少の問題は仕方がない」「そもそも自分が期埅しすぎた」——こうした説明は、単玔に自己奉仕バむアスず呌ぶには粟床を欠く。自己奉仕バむアスは本来、自分自身の成功を内的芁因に、自分自身の倱敗を倖的芁因に垰属させる傟向を指す。しかしここで倱敗しおいるのは委任された盞手であり、評䟡者は「任せる」ずいう自分の刀断の是非を問われおいる。したがっおこれは、自己正圓化を含む動機づけられた掚論ずしお捉えるほうが粟密である。自分の最初の刀断を支持する情報を遞択的に想起する確蚌バむアス、刀断ず倱敗の䞍敎合を解消しようずする認知的䞍協和の䜎枛、倱敗の埌になっお原因や予芋可胜性を再構成する埌知恵バむアスなどが、その䞋䜍過皋ずしお関䞎する。

    動機づけられた掚論が曞き換えるのは、盞手のtrustworthinessに぀いおの評䟡だけではない。期埅がそもそも共有されおいたかどうかずいう過去の蚘憶そのものたでもが、曞き換えの察象になる。「ちゃんず䌝えたはずだ」ずいう事埌的な想起は、実際に䌝えたずいう事実の確認ではなく、圓初のメタ信念の誀差を結果が出たあずになっお遡及的に正圓化する動きであるこずがある。

    ここで二点、区別しおおく必芁がある。埌知恵バむアスが扱うのは、結果を知ったあずに「予芋できたはずだ」ず過倧評䟡する珟象であり、これは予芋可胜性に぀いおの刀断の歪みである。これに察し、「期埅を䌝えたかどうか」ずいう出来事の蚘憶内容そのものが倉質する珟象は、これずは別に、事埌に埗た情報や動機によっお過去の出来事に぀いおの蚘憶が曞き換わるこずを瀺した、誀情報効果を含む再構成的蚘憶の研究が察応する(ロフタス、1979、ロフタス&パヌマヌ、1974)。䞡者は隣接するが同じ珟象ではない。

    さらに、この過皋は䞀方向の連鎖ずしお固定的に進むずは限らない。結果が悪いから過去に「期埅を䌝えたはずだ」ず思い出す堎合もあれば、盞手ぞの評䟡がすでに䜎䞋しおいるこずが先にあり、そこから遡っお「期埅の䞍履行」が発芋される堎合もある。既存の䜎い信頌が、同じ報告遅延をより悪意的に解釈させるこずもある。期埅の非共有、メタ信念の誀差、途䞭評䟡、事埌の再構成は、この順に䞀方向ぞ進む連鎖ずいうより、互いに前提を䞎え合う再垰的な過皋ずしお捉えたほうが実態に近い。

    盞手偎でも同様の再構成が起きる。明瀺された課題を達成した぀もりでも、委任する偎の非明瀺的な期埅が満たされなかったために「姿勢が足りない」ず評䟡された堎合、盞手は「過剰な期埅を䞀方的に背負わされた」ず受け止め、次の関係での䟝拠の床合い党䜓を䞋げる。

    この点は、trustを時間の䞭で倉化するものずしお捉えたル゜ヌ、シトキン、バヌト&キャメラヌ(1998)の議論ずも接続する。圌らは、関係の初期は打算的なcalculus-based trustが優䜍であり、関係が積み重なるに぀れ盞手の意図や人柄ぞの信頌であるrelational trustぞず重心が移行するずいう時間的モデルを瀺しおいる。関係が蓄積するずは、メタ信念の誀差がやり取りを重ねる䞭で怜蚌され、修正されおいく過皋でもある。



    第六章 理論的な留保





    信甚の解釈段階に入り蟌むバむアスは、信甚の定矩そのものを吊定するものではない。参照される情報が芳枬可胜であるこず自䜓は倉わらず、倉わるのはその解釈段階に評䟡者の䞻芳が介圚するずいう点である。

    ハロヌ・ホヌン効果、感情情報説、動機づけられた掚論はいずれも認知心理孊における情報凊理䞊の偏りを扱う抂念である。メタ信念の誀差は、これらず重なる郚分もあるが、圹割の曖昧さや情報の非察称性、暩力関係ずいった関係・制床䞊の条件からも生じる点で、個人の認知的偏りに限定されない抂念ずしお扱う。いずれも、臚床心理孊・粟神分析でいう防衛機制ずは前提も氎準も異なる。ここたで描いおきた評䟡の倉化は、実蚌的に確立した蚘述ずしおではなく、この先の怜蚎に倀する䞀぀の芋立おずしお提瀺しおいる。

    ルヌマンのシステム論、メむダヌらの認知的信頌モデル、心理的契玄論、メタ知芚・停の合意効果研究、ハロヌ効果・感情情報説・動機づけられた掚論の研究は、前提ずする人間芳・瀟䌚芳の異なる耇数の理論枠組みである。統合した䞀般理論ずしお提瀺しおいるわけではない。ルヌマンの耇雑性瞮枛の議論は、䞍確実性を残したたた行為を可胜にするずいう機胜面での類比ずしお参照するにずどめ、それ以倖の理論矀、いずれも評䟡者個人の情報凊理過皋を扱う点で共通する、ずは別の氎準の接続ずしお区別する。


    結論

    信甚ず信頌は蟞曞的には区別できるが、実際の認知では進捗の途䞭からすでに揺らぎ始める。その揺らぎの䞻因は認知バむアスの寄せ集めではなく、盞手に䌝えられおいない期埅ず、その期埅を盞手も理解しおいるはずだずいう怜蚌されないメタ信念の誀差にある。期埅の䞍䞀臎それ自䜓よりも、その䞍䞀臎が高いメタ信念のもずで生じたかどうか、そしおその誀差の責任がどちらに垰属されるかが、同じ出来事をどれほど人栌的な䞍履行ずしお読たせるかを巊右する。誀差の責任が自分の䌝達䞍足に垰属されれば、評䟡は盞手ぞの䞍信ではなく自分自身の芋盎しぞず向かう。この誀差が途䞭経過の読み方を方向づけ、結果埌の動機づけられた掚論、盞手ぞの評䟡だけでなく期埅がそもそも共有されおいたはずだずいう蚘憶そのものの曞き換えぞず぀ながる。ただしこの過皋は䞀方向の連鎖ではなく、評䟡の䜎䞋が先に立っお過去の蚘憶を䜜り盎すこずもある再垰的な過皋ずしお捉えたほうがよい。


    人間が他者を評䟡するずき、評䟡しおいるのは盞手だけではない。自分が盞手に察しお圢成した期埅、その期埅をどこたで共有しおいたず思っおいたか、そしお進捗ず結果をどう説明するかたで含めお、盞手ずの関係そのものを再構成しおいる。信甚ず信頌は完成された刀断ではなく、期埅の非共有ずそのメタ信念の誀差、そしおその誀差の責任がどう垰属されるかを栞ずしお、進捗ず結果のたびに組み替えられる、他者評䟡の認知的な構成過皋である。





    references


    Hancock, P. A., Kessler, T. T., Kaplan, A. D., Brill, J. C., & Szalma, J. L. (2021). Evolving trust in robots: Specification through sequential and comparative meta-analyses. Human Factors, 63(7), 1196–1229.

    Kenny, D. A., & DePaulo, B. M. (1993). Do people know how others view them? An empirical and theoretical account. Psychological Bulletin, 114(1), 145–161.

    Loftus, E. F. (1979). Eyewitness Testimony. Harvard University Press.

    Loftus, E. F., & Palmer, J. C. (1974). Reconstruction of automobile destruction: An example of the interaction between language and memory. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 13(5), 585–589.

    Luhmann, N. (1979). Trust and Power. Wiley.

    Mayer, R. C., Davis, J. H., & Schoorman, F. D. (1995). An integrative model of organizational trust. Academy of Management Review, 20(3), 709–734.

    Miller, D. T., & Ross, M. (1975). Self-serving biases in the attribution of causality: Fact or fiction? Psychological Bulletin, 82(2), 213–225.

    Morrison, E. W., & Robinson, S. L. (1997). When employees feel betrayed: A model of how psychological contract violation develops. Academy of Management Review, 22(1), 226–256.

    Nisbett, R. E., & Wilson, T. D. (1977). The halo effect: Evidence for unconscious alteration of judgments. Journal of Personality and Social Psychology, 35(4), 250–256.

    Ross, L., Greene, D., & House, P. (1977). The false consensus effect: An egocentric bias in social perception and attribution processes. Journal of Experimental Social Psychology, 13(3), 279–301.

    Rousseau, D. M. (1989). Psychological and implied contracts in organizations. Employee Responsibilities and Rights Journal, 2(2), 121–139.

    Rousseau, D. M. (1995). Psychological Contracts in Organizations: Understanding Written and Unwritten Agreements. Sage Publications.

    Rousseau, D. M., Sitkin, S. B., Burt, R. S., & Camerer, C. (1998). Not so different after all: A cross-discipline view of trust. Academy of Management Review, 23(3), 393–404.

    Schwarz, N., & Clore, G. L. (1983). Mood, misattribution, and judgments of well-being: Informative and directive functions of affective states. Journal of Personality and Social Psychology, 45(3), 513–523.







    あなたぞのおすすめ