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あるいは我儘の中で 第4話 我儘の代償【四部作・完結編】

    我儘の代償


    誓いのような指切りをした、あの夜
    彼は音楽へ、私は日常に戻った

    帰ってきた
    お土産と一緒に

    連絡先は交換した
    けど

    そんなの
    気軽にできるかー?

    元気?とか
    どう?とか?
    それに、さ
    私が振った立場だし?
    それは言い過ぎか

    連絡はこない

    私はこの夢のような現実から
    なんとか覚めるように、覚めないように

    お弁当をつくり、仕事へ行き
    変わらずに

    毎日、彼の歌をきく
    私だけはあの日を

    家族とは相変わらず
    夫の顔をみるのは、少し胸が痛んだ
    けど、この人に真実を伝えても嘘にしかきこえないだろう

    2人の約束

    私はそう毎日、彼のメロディをきく

    ある日スマホの通知が続く
    何気なくみる
    そのまま
    スマホを持って慌ててひとりでキッチンへ

    ライブあるから、おいで

    彼だ

    ライブ
    知ってる
    だって応募してるもん
    近くに来るから
    もちろん応募していたよ

    席とる
    また連絡するよ

    また、とはいつ?
    いつだよー

    予定あんだよ
    と思いながら顔がどんどん緩んでくる

    カレンダーをみて、日にちを数える…

    彼は、あの日からずっと曲を出し続けていた
    約束を守ってる


    素直に返信する

    うん
    ライブ行く

    また連絡してね

    と
    彼の歌を歌いながら冷蔵庫をあける

    あー買い物行かなくちゃ

    少し気が抜けて、冷蔵庫にもたれて座りこむ


    私も彼からの

    あの小説続きあるの?
    言葉が刺さっていた

    小説は書き続けていた
    雨の日に出会ったあの物語の続きを…

    小説の中のふたりは曲の為に苦しむ
    ひたすら浮かんだ言葉を書きとめていた

    私、結局はオレンジに染められてる

    浮かんだまま、
    ひとつの物語を書き終えた

    それは

    Rain
    という物語



    私を餌にして…彼に言った言葉を思い出し
    自分の物語をスクロールする

    なんだか、画面がにじむ



    私は自分の妄想の中で


    あるいは我儘の中で


    彼とずっと繋がれる気がする


    立ち上がり
    玄関を開ける

    オレンジ色の空

    私は買い物に出掛ける
    彼の歌をききながら



    あるいは我儘の中で  完




    そして
    彼女の書いた物語



    本作はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
    作品内の描写は創作上の表現であり、特定の個人の評価・名誉等を意図して示すものではありません




     
     
    (ましろ8) 猫のいる主婦 AIにほんのちょっぴりだけ見守ってもらいながら 余韻のある物語を書いています 掌編、小説、詩、ときどきエッセイ 音楽や物語に引っ張られて、気づけば深いところまで潜ってしまうことも 好きなものは音楽、映画、ウイスキー、Vaundy

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