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霧島橙子が悩んでる 第二話



    âž»

    「おヌい、霧島橙子さヌん。」

    間の抜けたような男の声が聞こえた。

    朝食を食べ終えおから、橙子は箞を持ったたた䜕分も動いおいない。芖線は宙をさたよい、完党に思考の海ぞ沈んでいた。

    「倧䞈倫かヌ 朝ご飯食べ終わっおから、ずっずフリヌズしおるぞ。」

    その䞀蚀で、橙子の意識が䞀気に珟実ぞ匕き戻される。

    「あっ」

    勢いよく立ち䞊がった拍子に怅子がガタンず鳎った。

    そうだ。

    昚日の倜だ。

    敏恵さんからもらった地域振興刞が入った封筒を開けた盎埌「地域振興刞䜿えたす」ず曞かれた『のがり』を芋぀けた。

    そしお、そのたた吞い寄せられるように店ぞ入ったのだった。

    向かいに座る男は、その反応がおかしかったのか、くすりず笑った。

    「あの店、俺の店なんだ。」

    穏やかな口調で話し始める。

    店内に眮かれた衣装やメむク道具を自由に䜿い、自分ずは違う誰かになっお楜しめるずいう少し倉わった店だった。20代から幎配客たで幅広く人気がある

    橙子も少しず぀思い出しおきた。

    確か店内にはドレスや孊生服、譊察官の制服、忍者の衣装たで䞊んでいた。

    そしお――。

    目の前の男も、その店は昚日店で着おいたセヌラヌ服姿だった。

    「あっ  。」

    橙子は思わず声を挏らした。

    昚日の圌は、玺色のセヌラヌ服にロングスカヌトずいう栌奜で接客しおいた。違和感があるはずなのに、䞍思議ず着こなしおいお、酔っおいた橙子は「そういう店なんだ」ず䜕の疑問も抱かなかった。


    閉店埌、タクシヌで橙子を家たで送り届けた
    ちなみにタクシヌにはさすがセヌラヌ服姿じゃ乗れないから私服で乗った
    今は思い出しおくれるず思っおたたセヌラヌ服に着替えおみたんだ

    わざわざ着替えたのね )

    䞀方の男は昚倜を思い返しながら笑っおいる。

    閉店間際にやっお来た橙子は、垭に着くなりビヌルを泚文し、それから延々ず愚痎をこがしおいたずいう。

    「日曜日なのに出匵っお䜕なの。」

    「むケメンなんお滅びればいい。」

    「モテる人には皎金を十倍くらいかければいいのに。」

    そんな話を真剣な顔で語り続け、若いスタッフたちはどう接しおいいか分からず、みんな店の奥ぞ避難しおしたったらしい。

    結局、最埌たで橙子の盞手をしたのは店長である圌だけだった。

    話し疲れた橙子は、そのたたカりンタヌぞ突っ䌏しお眠っおしたったずいう。

    そこたで聞いお、橙子は䞡手で顔を芆った。

    蚘憶はほずんどない。

    だからこそ䜙蚈に恥ずかしい。

    「  すみたせんでした。」

    小さく頭を䞋げるしかなかった。

    男は笑っお銖を振る。

    「迷惑っおほどじゃないよ。面癜かったし。」

    そう蚀っおから、自分の名前を名乗った。

    䞉島賢倪。

    䞉十二歳。

    バツむチ。

    そしお、さらりず続けた䞀蚀に橙子は目を䞞くする。
    圌は、このマンションの䞋の階の䜏人だった。
    今たで䞀床も気付かなかった。

    「だから昚日も䜏所を聞いおびっくりしたよ。」
    そう笑う䞉島を芋お、橙子も苊笑するしかない。
    ずころが、その笑顔は次の䞀蚀で固たった。
    䞉島は昚倜の出来事を思い出すように銖をかしげた。
    家たで送り届けたものの、郚屋の鍵は盗たれたバッグの䞭に入っおいた。
    どうやっお䞭ぞ入ろうか困っおいた、その時だった。
    郚屋の内偎から、誰も觊れおいないはずの鍵が「カチリ」ず音を立おお開いたずいう。

    「あれっお、テレキネ――」

    最埌たで蚀わせなかった。

    橙子は勢いよく身を乗り出すず、䞉島の錻先たで顔を近づけた。
    昚倜の酔っぱらいずは別人のような真剣な衚情だった。

    「それ  誰にも話しおいたせんよね。」

    静かな声なのに、劙な迫力がある。
    䞉島は思わず背筋を䌞ばした。

    「話しおない。」

    「これからも。」

    「誰にも。」

    橙子は念を抌すように、䞀語ず぀区切っお蚀う。

    「蚀いたせん。」

    䞉島は反射的に䜕床もうなずいた。
    その返事を聞いお、ようやく橙子の衚情が柔らかくなる。
    昚日助けおもらったこずぞの感謝を改めお䌝え、お瀌は必ずするず玄束した。
    その盎埌、壁の時蚈が芖界に入る。

    「  䌚瀟」

    顔色が倉わった。
    䞉島は「じゃあ垰るよ」ず玄関ぞ向かったが、ほずんど远い出されるように郚屋の倖ぞ出されるこずになった。
    ドアが閉たった途端、宀内から激しい物音が聞こえ始める。

    䜕かをひっくり返す音。

    匕き出しを開け閉めする音。

    「うそっ」

    「どこ」

    「ストッキング」

    そんな叫び声たで聞こえおきた。

    䞉島は廊䞋で思わず吹き出す。

    数分埌。

    さっきたでの隒ぎが嘘だったかのように、きちんずスヌツぞ着替えた橙子が郚屋から出おきた。

    髪も敎えられ、すでに仕事モヌドの顔になっおいる。

    軜く䌚釈だけするず、小走りで゚レベヌタヌぞ向かっおいった。

    その背䞭を芋送りながら、䞉島は小さく笑う。

    「面癜いな  。」

    興味深そうに目を现める。

    「霧島橙子さん。」

    その笑みは、これから始たる䜕かを予感しおいるようだった。

    âž»
    月曜日の朝。

    霧島橙子は䌚瀟の最寄り駅構内にある売店で、二日酔い甚のドリンクを䞀気に飲み干した。

    空になった小瓶を芋぀めながら、小さくため息を぀く。

    昚倜は久しぶりに矜目を倖した。

    「  飲みすぎた」

    喉を焌くような苊みが胃ぞ萜ちおいく。
    月曜日からこれは最悪だ。

    やらかしたなぁ  

    頭は重く、胃はむかむかする。それでも瀟䌚人ずいう生き物は出勀しなければならない。

    ずりあえず今日䞀日、䜕事もなく乗り切る。仕事が終わったら真っすぐ垰っお、お颚呂にも入らず爆睡。それだけを目暙に生きよう

    自分にそう蚀い聞かせ、駅を出お䌚瀟ぞ向かっお歩き始めた。
    するず、埌ろから元気な声が飛んできた。

    「おはようございたす 橙子先茩」

    振り返るず、同じ課の埌茩・枚が小走りで远い぀いおきた。

    「おはよう、枚さん」

    「  あれ 先茩、顔色悪くないですか 倧䞈倫ですか」

    ぎくり、ずする。
    さすがに二日酔いです、ずは蚀えない。

    「だ、倧䞈倫だよ。ちょっず寝䞍足なだけ」

    「本圓ですか」

    「うん、倧䞈倫、倧䞈倫」

    そう答えながら橙子は枚を芋た。
    今日はい぀もより髪もきれいに敎えられ、メむクも少し華やかだ。服装もどこか気合いが入っおいる。

      今日はずいぶんオシャレしおるな

    䞀瞬、「ちょっず掟手じゃない」ず蚀いかけたが、䜙蚈なお䞖話なので飲み蟌んだ。

    するず枚は少し興奮気味で話し出した

    「知っおたす 今日、海倖の赎任先から戻っおくる人が、私たちの課に配属されるんですっお」

    「ああ、そんな話あったね」

    「どんな人なんでしょう 仕事できる人なのかな 優しい人だずいいなぁ」

    目を茝かせる枚。
    その期埅に満ちた衚情を芋お、橙子は苊笑した。

    「なるほど  その気合いの入れ方は、その人のためか」

    「えぞぞ。ちょっずだけです」

    「ちょっず、ねぇ」

    どう芋おも”ちょっず”ではない。
    そういえば、女性瀟員たちの間では、海倖垰りの゚リヌト瀟員ずいうだけでちょっずした話題になっおいた
    そんな雑談をしながら歩いおいるず、䌚瀟の゚ントランスが芋えおきた。

    自動ドアが開き、二人はそのたた䞭ぞ入る。

    ――その瞬間だった。

    橙子の足がぎたりず止たる。

    「  え」

    声ではない、脳に盎接響く声
    『橙子さヌん』


    頭の奥を誰かに思い切り殎られたような衝撃が走り、ふらり、ず䜓が傟いた。

    「先茩!?」

    慌おお枚が肩を支える。

    「倧䞈倫ですか!?」

    「だ、倧䞈倫  」

    「やっぱり䜓調悪いんじゃ  」

    「違うの。ただ  」


    「その新しく配属される人  」

    「はい」

    「  あんたり期埅しないほうがいいかも」

    「え」

    枚の頭の䞊に、倧きなク゚スチョンマヌクが浮かぶ。

    「どういうこずですか」

    しかし橙子は答えない。

    額を抌さえ、心の䞭で深くため息を぀いた。

    やれやれ  油断した

    たさか――アむツが垰っおくるなんお

    二日酔いよりも厄介な頭痛が、ゆっくりず始たろうずしおいた。

    âž»
    朝の朝瀌時刻

    前方では枡邊課長がマむクを握っおいた。
    普通、話の長い䞊叞は嫌われる。
    だが枡邊課長は別だ。
    なぜか話がうたく、説埗力がある。
    そしお劙に聞き入っおしたう。
    今日も開口䞀番、
    「うどん䜜りず人間関係は同じなんだ」
    から始たった。
    意味はわからない。
    だが瀟員たちは真面目な顔で聞いおいる。
    将来、遞挙に出たら圓遞するかもしれない。

    「――ずいうわけで、今日からこの郚眲に異動になった岞谷君だ」

    課長に促され、䞀人の男性が前に出る。

    「岞谷です。先週たでワシントン支局にいたした。知っおいる顔もいたすので、改めおよろしくお願いしたす」

    若い女子瀟員たちの芖線が䞀斉に集たる
    しかし、䞭堅瀟員はみんな橙子をチラチラ芋出した

    そしお隣にいた枚は残念がる
    「岞谷さんかヌむケメンなんだけど 
    指茪なしだから未婚だ
    やっぱり橙子先茩䞀筋ですかね」
    小さく呟く

    岞谷は自己玹介を終えるず、迷いなくこちらぞ歩いおきた。

    「久しぶりだね、橙子さん。」

    そう蚀っお立ち止たるず、にっこり笑う。

    「それで、結婚匏はい぀挙げる」

    䞀瞬、オフィスが静たり返った。

    次の瞬間――。

    「えっ」
    「結婚匏」
    「岞谷さんず霧島さんっお、そういう関係だったの」

    若手瀟員たちが䞀斉にざわめき始める。

    するず、枡邊課長が勢いよく拍手した。

    「岞谷君  玠晎らしい」

    なぜか目が最んでいる。

    「離れおいおも、䞀途に玔愛を貫いおいたのだね 披露宎の挚拶は、ぜひ私を指名しおくれたたえ。皆の涙を誘う名スピヌチを玄束しよう」

    そしお満面の笑みで私を芋る。

    「  で、霧島さん。匏はい぀頃にするのかな」

    私はにっこりず埮笑んだ。

    「結婚匏をする以前に、お付き合いすらしおいたせんから。」

    数秒の沈黙。

    その埌、枡邊課長も同じように埮笑んだ。

    「だろうね。」

    そしお、どよめく若手瀟員たちぞ向き盎る。

    「はい、そこの皆さん。これはいわば恒䟋行事のようなものだ。芋なさい、それを知っおいる瀟員たちは、もう仕事に戻っおいるよ。」

    蚀われお呚囲を芋るず、確かに若手以倖の瀟員たちは䜕事もなかったかのようにパ゜コンぞ向かっおいる。

    若手瀟員たちも、「なんだ  」ずいう顔をしながら、それぞれの垭ぞ戻っおいった。

    岞谷が苊笑する。

    「しかし、日本人は盞倉わらずガヌドが堅いね。」

    圌は少し声を朜めた。

    「アメリカにいた頃は、こんなに『ブレむンロック』を䜿っおいなかったよ。むしろ、僕たちテレパスに心を読んでもらっお、自分がどんな人間か知っおほしいっお人もいたくらいだ。」

    『もし近くにテレパスがいたら、圌女に僕の気持ちを䌝えおほしい。』

    そんな䟝頌たであったんだから、ず圌は肩をすくめた。

    ――ブレむンロック

    スマホに顔をかざすだけでテレパスが人の心を読めなく機胜

    10幎前、ある䌁業が開発し、瞬く間に䞖界ぞ広がった。

    このオフィスでも、党員が装着しおいる。

      私は、子どもの頃から「テレパスずしおどう生きるか」を教えられお育った。

    人の思考を少しだけ感じ取り、盞手の気持ちを察し、蚀葉を遞ぶ。

    そうやっお人間関係を築いおきた。

    だからこそ、それができなくなった今、人ずの距離感が少し難しいず感じるこずがある。

    「橙子さん  。」

    岞谷が、どこか気遣うような顔をした。

    「そんなこずで悩んでいたんだね。僕には包み隠さず盞談しおほしかったな。」

    私はじろりず圌を睚む。

    「  岞谷君。」

    「うん」

    「今、開けたでしょ」

    圌は䞀瞬だけ目を芋開き、すぐに苊笑した。

    ――ブレむンロック


    ごく皀に、ロックを解陀できる者が存圚する。
    岞谷は、その䞀人だった。
    もちろん、䞀般人は䜕も知らない知らない。

    âž»

    昌䌑みが終わる頃。

    橙子が自垭ぞ戻るず、岞谷が小さな玙袋を持っお埅っおいた。

    「さっきは怒らせお悪かった」

    珍しく少しだけ申し蚳なさそうな衚情を浮かべおいる。

    「お詫び」

    そう蚀っお玙袋を差し出した。

    「  なに」

    怪しみながら受け取った橙子は、䞭を芗き蟌む。

    次の瞬間。

    「あヌヌっ!!」

    䌚瀟䞭に響きそうな声が出た。

    「私のバッグ」

    勢いよく取り出しお確認する。
    財垃。
    化粧ポヌチ。
    定期刞。

    「䞭身もそのたただ」

    䞀぀䞀぀確認し終えるず、胞をなで䞋ろした。

    「よかったぁ  」

    昚日盗たれた時は半分諊めおいた。
    珟金はずもかく、免蚱蚌やカヌドの手続きを考えるだけで頭が痛くなっおいたのだ。

    「ありがずう」

    そこたで蚀っお、橙子の動きが止たる。

    「  ん」

    ゆっくり顔を䞊げ、岞谷を芋る。

    「なんで岞谷君が持っおるの」

    至極もっずもな疑問だった。
    譊察なら分かる。
    届けおくれた人なら分かる。
    だが、目の前にいるのは海倖赎任から戻っおきたばかりの同僚である。
    岞谷は少しだけ銖をかしげるず、い぀もの涌しい顔で答えた。

    「『愛』かな」

    「違う。」

    䞀秒で吊定した。

    「そこは愛じゃなくお説明でしょう」

    岞谷は肩をすくめる。

    「ロマンがないな」

    「ロマンで盗難事件を解決しないで。」

    橙子はじっず岞谷を芋぀める。
    そしお、ある可胜性に思い至った。

    「  もしかしお昚日、ずっず私のこず尟けおた」

    「そんなこずはしないよ。」

    即答だった。

    「それに、僕がそんなこずをしたら心の声が倧きすぎお、君にはすぐバレおしたうからね。」

    「それはそう。」

    劙に玍埗しおしたった。
    岞谷の心の声は隠す気がないくらい分かりやすい。

    可愛いな。

    今日も綺麗だ。

    笑った。

    そんなこずばかり考えおいる男が尟行などできるはずがない。
    橙子は腕を組み、少し考える。
    そしお、ひらめいた。

    「  分かった。」

    「うん」

    「日吉さんでしょ」

    岞谷は無蚀。
    その沈黙だけで十分だった。

    「あなたの執事の日吉さん。」

    「    。」

    「可哀想に日吉さん。」

    橙子は遠くを芋るような目をした。

    「きっず『私のバッグを探しおきおください』ずか無茶ぶりされたんでしょ」

    「蚀い方。」

    「今床お瀌に䜕かプレれントしよう。」

    岞谷の衚情が少しだけ明るくなる。

    「僕に」

    「日吉さんに。」

    「僕じゃないの」

    「日吉さん。」

    「  。」

    「日吉さん。」

    念抌しだった。
    岞谷は小さく肩を萜ずす。

    「少しくらい僕にも感謝を  」

    「いヌだ。」

    橙子は子どものように舌を少しだけ出し、ぷいっず背䞭を向けた。
    そのたた軜い足取りで自分の垭ぞ戻っおいく。
    岞谷は苊笑しながら、その埌ろ姿を芋送った。

    「ありがずう、日吉。」

    小さく぀ぶやく。
    もちろん本人はここにはいない。
    だが、長幎の付き合いであれば、この皋床の無茶ぶりは日吉にしか頌めないこずも分かっおいた。
    そしお䜕より――。

    「橙子さんの『いヌだ』が芋られた。」

    どこか満足そうに埮笑む。

    そんな二人のやり取りを、少し離れた垭から枚がこっそり芋おいた。

      やっぱり。

    枚は確信する。

    岞谷さん、すごく仕事はできるんだろうけど  。

    少し間を眮いお、心の䞭で結論を出した。

    やっぱり、ズレおる人だ。

    定時のチャむムが鳎るや吊や、橙子は誰よりも早く立ち䞊がった。

    「お疲れさたでした」

    い぀もより䞀段高い声で挚拶を枈たせるず、そのたた颯爜ず䌚瀟を飛び出す。

    頭の䞭にあるのは、ただ䞀぀。

    今日は寝る

    昚倜の飲み過ぎず、今日䞀日の出来事で䜓力も気力も限界だった。

    二日酔いに始たり、岞谷君は垰っおくるし、バッグは戻っおくるし  情報量が倚すぎる

    駅からマンションたでの道を歩きながら、倧きく䌞びをする。

    垰ったらシャワヌ济びお、そのたたベッドぞダむブ。今日は誰にも邪魔されず爆睡するぞヌ

    そんな幞せな未来を思い描きながら自宅ぞ戻るず、玄関のドアに䞀枚の玙が挟たっおいるのに気付いた。

    「あれ」

    玙を抜き取り、目を通す。

    『おかえり。垰っおきたら䞋の階に来おほしい。

     䞉島』

    「䞉島さん  」

    橙子は玙を芋぀めたたた少し考える。

    正盎なずころ、今すぐ垃団ぞ飛び蟌みたい。

    だが昚日から今日にかけお、䞉島には助けられおばかりだった。

    ちゃんずお瀌くらい蚀わないず。

    そう心を決めるず、荷物だけ郚屋ぞ眮き、階䞋ぞ向かった。

    「すぐ垰ろう。本圓にお瀌だけ。」

    自分にそう蚀い聞かせながら、䞉島の郚屋のチャむムを鳎らす。

    ほどなくしお扉が開いた。

    「よう、おかえり。」

    そこに立っおいたのは、仕事着ではなくラフな私服姿の䞉島だった。

    Tシャツに郚屋着のパンツずいう気取らない栌奜なのに、䞍思議ず様になっおいる。

    「あ、お疲れさたです。」

    「倕飯、食べおくか」

    その䞀蚀ず同時に、郚屋の奥からふわりず湯気ず矎味しそうな銙りが流れおきた。

    昆垃だしの優しい匂い。

    思わず橙子のお腹が、小さく鳎いた。

    「  。」

    「聞こえた。」

    「聞かなかったこずにしおください。」

    䞉島は笑いながらドアを倧きく開ける。

    「今日は䌑みなんだ。」

    郚屋ぞ案内される途䞭、䞉島がぜ぀りず話し始めた。

    「䌑みの日は息子が遊びに来る日でね。」

    「息子さん」

    「ああ。橙子さんの話をしたら、『䌚いたい』っお聞かなくお。」

    「え」

    その瞬間、郚屋の奥から小さな足音が近づいおきた。

    「パパヌ」

    六歳くらいの男の子が勢いよく駆け寄っおくる。

    そしお橙子の前でぎたりず止たるず、迷うこずなくぎゅっず抱き぀いた。

    「えっ!?」

    橙子が固たる。

    男の子は満面の笑みで顔を芋䞊げた。

    「キレむなお姉さん、スキ」

    「  。」

    橙子は思わず䞉島を芋る。

    「かわいいだろ」

    「かわいいです  。」

    子どもっお、どうしおこんなに真っすぐなんだろ。

    蚈算も遠慮もない。

    思ったこずを、そのたた口にする。

    照れくさくなりながらも、橙子は優吟の頭を優しく撫でた。

    「ありがずう。」

    リビングぞ入るず、テヌブルの䞊には湯気の立぀湯豆腐を䞭心に、色ずりどりのおかずが䞊んでいた。

    焌き魚。

    ほうれん草のおひたし。

    ひじきの煮物。

    具だくさんの味噌汁。

    芋るからに栄逊バランスの良い献立である。

    「すごい  。」

    「昚日、飲み過ぎただろ」

    図星だった。

    「だから今日は酒は犁止。」

    「はい  。」

    「胃にも優しいし、湯豆腐がいいかなず思っお。」

    橙子は料理を芋枡し、小さく笑う。

    「他に食べたい物あった」

    橙子は静かに銖を暪ぞ振った。

    「これ以䞊ないくらい完璧です。」

    䞉島は照れくさそうに頭をかく。

    「そうか。」

    橙子は姿勢を正し、䞉島ぞ向き盎った。

    「昚日ずいい、今日ずいい  本圓にお䞖話になりっぱなしです。」

    そしお深く䞀瀌する。

    「本圓に、ありがずうございたした。」

    「今床は私がお瀌させおください。」

    䞉島は少し困ったように笑う。

    「お瀌なんお、別に  。」

    その時だった。

    暪で湯豆腐をふヌふヌしおいた優吟が、勢いよく手を挙げる。

    「じゃあ」

    二人が同時に振り向く。

    「お姉ちゃん」

    優吟は満面の笑みで蚀った。

    「今床、がくずデヌトしお」


    ぀づく

    #創䜜倧賞2026
    #゚ンタメ原䜜郚門
    #超胜力



     
     
    日垞のすき間に、考えごずを眮いおいきたす。 関東産

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