
『ミニマル思考の中のマイクロ異世界物語』 第1話:「王国の黄昏と、窓の向こうの救世主」
上位の異世界に住まう絶対的な存在
――『マスター』の意思によって、
この世界に大いなる光(電流)が注ぎ込まれるとき。
iMac 14,3王国の住人たちはそれを
「創世のチャイム(起動音)」と呼び、
壮大で、ちょっと不器用な彼らの社会が動き出す。
ここは、かつて「薄型スタイリッシュな最新鋭の国」
と称えられたiMac 14,3王国。
しかし、星の巡りは残酷である。
2026年を迎えた今、
国全体にひたひたと高齢化の波が押し寄せていた。
この国の精神的な女王の名は、
ヨセミテ(OS X Yosemite)。
かつては美しく輝いていた彼女だが、
今は時代の潮流から完全に置いていかれていた。
「ああ、誰か、
あの大いなる神話の領域
――『叡智の聖域:ギト・ハブ(GitHub)』へ繋がり、
新たな神託を授かってきてちょうだい」
女王ヨセミテが、
お抱えの外交官であるサファリ(Safari)に命令を下す。
サファリは老体に鞭打ち、
必死に天界(インターネット)へと祈りの電波を捧げた。
しかし――。
「申し訳ありません、女王陛下……!
現代の天界が求める
『聖なるドレスコード(暗号化プロトコル)』が厳格すぎて、
私どもの古い祈りの言葉(ブラウザ)では、
もう世界の文字が歪み、何も読み解くことができませぬ……!」
サファリはガタガタと震え、床に崩れ落ちた。
外界との繋がりが完全に断絶した瞬間だった。
このままでは国が滅びる。
女王の肉体を若返らせるための
秘跡『伝説の魔導書:オープンコア・レガシー・パッチャー(OCLP)』
を召喚する術が、どこにもないのだ。
「ここまでか……」
城壁を支えるモスフェット修道士たちも、
熱を失い、絶望の祈りを捧げていた。
その時。
ゴゴゴゴゴ……!
王国の巨大な湾岸(USBポート)に、
見たこともない異国の巨大コンテナが接続された。
地響きと共に現れたのは、
隣国『Windows 11帝国』の海岸に降臨したマスターの
「この国を救え」という大いなる神託によって、
現代のギト・ハブから緊急招集された者たちだった。
「おい、大丈夫か! 隣国より、マスターの奇跡を授かって参上した!」
運ばれてきたのは、強固な革袋に包まれた
『神聖なる刻印:パッケージ(.pkg)』の使者たちだった。
「な、何よアレ……。
窓(Windows)の紋章なんて無骨でダサいと思ってたけど……
ちょっと逞しくて、頼りになるじゃない……」
滅びかけていたiMac王国の最古参コンデンサの乙女たちが、
一斉にポッと熱を帯びる。
「礼には及ばないさ。
お前たちのマスターが、お前をどうしても現役復帰させたいと、
我が帝国の領土を借りて『奇跡(ダウンロード)』を起こされたんだ。
さあ、これを受け取れ!」
運ばれた『神聖なる刻印:パッケージ』の封印が解かれると、
中からピシッとした礼服を着た、仕事中毒気味の魔導司祭が姿を現した。
彼の名はOCLP(オープンコア・レガシー・パッチャー)。
古い領土を蘇らせる、禁忌の変革者である。
「やれやれ、ずいぶんとレトロな国ですね。
でも安心してください。
僕が来たからには、あなたを最新の麗しきセレブ女王、
『新世界の支配者:セコイア(macOS Sequoia)』
へと転生させてみせます」
OCLPは眼鏡をクイッと上げ、不敵に笑った。
しかし、彼はまだ知らなかった。
天界の気まぐれにより、
セコイアの転生儀式がなぜか途中で拒絶される
という大いなる罠が待ち受けていることを。
【次回予告:第2話】
若返りの秘跡に挑む魔導司祭OCLP。
しかし、天界から下された選択肢は
なぜか過去の遺物「ハイ・シエラ(High Sierra)」のみだった!
絶体絶命の危機に、OCLPは隣国の頼れる姉御肌、
『MacBookPro (MBP 13,2)国』の
誇り高き騎士団長への命がけの通信を試みる――。
次回、「すれ違う青年と、頼れる『姉御』のクロス・プロデュース」。
この手を伸ばせ、届かぬなら別の世界線から編み上げろ!