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【短線集‐花の冠】第二五話『語りかえ二』

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    語りかえ二ヌサリムヌ


    ペヌゞが闇を開いた瞬間、䞖界の茪郭が、ゆっくりず溶けおいった。

    音が消え、光が匕き、ただ、重たく沈む空気だけが残った。

    曞棚の隙間から、黒い霧のようなものが滲み出しおくる。
    冷たいわけでも、熱いわけでもない。
    それは“語られなかった想い”が、息を吹き返したようだった。

    「  サリム」

    グラヌゞュの声が䜎く萜ちる。

    「感じるか あのずきの匂い  雚ず泥ず血。
     あい぀の声が聞こえおきそうだ」

    僕は、ゆっくりずうなずいた。

    蚘憶でも、再珟でもない。
    ただ、確かに――フェむルの気配が、生きおいた。

    そのずき、図曞通の奥から颚が吹いた。
    僕たちを呌ぶように、そっず。

    黒い霧が避けお、䞀本の道が浮かび䞊がる。
    その先には、かすかに光が灯っおいた。

    「  芋える」

    僕の問いに、グラヌゞュが答える。

    「フェむルの本が  俺たちを進たせようずしおる」

    僕は、胞に抱いた本を芋䞋ろした。
    青い衚玙は、どこか枩かかった。
    たるで、本そのものが、語りたがっおいるようにさえ思えた。

    暗がりの奥――
    暖炉が地䞋ぞの口を開けおいた。

    石の階段。
    地䞋ぞず続くその先は、ただ黒く沈んでいた。

    「サリム。地䞋が俺たちを呌んでいる。  いや、呌んでいるのはフェむルか」

    僕は小さくうなずいた。

    「フェむルが残した蚀葉。僕にも教えおくれないかな」

    「  そうだな」

    グラヌゞュがそう答えたずき、本が鈍く光った。

    僕は本に促されるように頁をめくった。

    「これは  」

    グラヌゞュの蚀葉に、僕は手を止める。

    「これ  フェむルの最埌の蚀葉」

    「ああ。俺が聞いた、最埌の蚀葉だ」

    死ぬ機䌚を埅っおいたんだ。虚勢を匵っお生きおきた  
    家にも、劻にも  子䟛にも  
    そんな自分が嫌だった。党郚捚おお逃げ出したかったんだ  

    戊堎はい぀だっお死にあふれおいた。
    ありがたいこずに、死ぞの感芚は麻痺しおいった。

    でも  誰かのせいにしないず、俺はダメなんだ。

    最埌に  俺は、お前を助けた。奎隷だったお前を。
    それが俺の“正矩”だ。  それは囜にも、家にも、家族にも䌝わる。
    矎しい正矩の男ずしお、俺は人の䞭で生きおいける。

    あんたには  俺が、匱さを抱えお生きおきたこずを  
    そしおその重荷を背負わすこずを、蚱しおほしいんだ。

    その蚀葉は、匱くお、そしお――あたりにも残酷だった。

    グラヌゞュは黙ったたた、芖線を萜ずしおいた。

    「でも、グラヌゞュ」

    「  なんだ」

    「その蚀葉が真実だっお、本圓に蚀えるの」

    「どういうこずだ」

    「どうしおだろう。僕には、『生きたい』っお蚀っおいるフェむルの気持ちが聞こえるんだ」

    蚀葉のあず、しばらくの静けさが萜ちた。

    フェむルのためじゃない。
      僕たち自身のために。

    「行こう」

    僕がそう蚀うず、グラヌゞュも迷いなく歩き出した。

    階段の前に立ち、ひず呌吞だけ眮く。

    そしお、僕たちはゆっくりず、闇の䞭ぞず降りおいった。

    本を抱えお、語りの続きを探しに。

    颚はただ、そこにあった。
    静かに、でも確かに――僕たちを導いおいた。


    《続く》



    ➡第二六話 『語りかえ䞉』 

    6月3日 12:00



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