
君と僕と夏 5
5. 独占欲
⚪︎浜ゼミ・自習室(朝)
翌日。
夏海は、朝一で予備校に向かった。
夏休みも中盤に差し掛かり、朝から自習室に籠る人も増えていた。
その中に、高瀬と天音の姿はなかった。
夏海は小さく息をつく。
快晴。
夏海は、窓側の席に座った。
小窓から一点の曇りもない青空を眺めていると、心のモヤモヤが少しずつ消えていくような気がした。
⚪︎同・廊下
13:58
夏海は、1人で歩いている高瀬の姿を遠目で見かけた。
⚪︎同・休憩室
15:30
夏海とアミが休憩室から出ると、天音がすれ違いで入ってきた。
彼女と同じ高校であろう男女3〜4人と談笑している。
⚪︎同・廊下
アミと歩きながら、考え事をする夏海。
2人のことが気になってしまう。
この感情との向き合い方が分からない。
夏海の晴れかかった心は、どんより雲に戻った。
⚪︎同・入り口付近の自販機前(夜)
20:15
この時間に慣れてきた夏海とアミ。
いつものように帰宅する生徒の波を掻き分けていくと、自販機前のベンチのそばで意外な組み合わせの2人が立ちながら話をしていた。
夏海(モノローグ)
『山田くんと、・・・高瀬くん?!』
どちらかというと山田が高瀬に一方的に話しかけていて、高瀬は感情の読めない表情で頷いている。
夏海(モノローグ)
『あの2人に接点なんてあったのかな』
不思議に思っていると、後方から人の波を掻き分けながら2人に向かって駆けてくる天音の姿が見えた。
夏海(モノローグ)
『ああ・・・嫌だ。』
夏海の表情が硬くなる。
夏海(モノローグ)
『誰が誰と仲良くなろうと自由で止める権利はないと分かっているのに、嫌だ』
いつからこんなに強く芽生えたのか分からない感情が、夏海の心をじわりじわりと締め付ける。
目の前でこれから始まる、いやすでに始まっていたのかもしれない出会いを阻止したい。
と同時に、そう考えてしまう自分に、夏海はすごく惨めな気持ちになった。
天音が2人に合流する寸前。
高瀬は山田に一礼して去っていく。
その直後、天音は山田に声をかけ、高瀬が去った方向を見ながら2人で話し始めた。
夏海「アミ、ごめん。ちょっと用事忘れてた。今日は先帰っててね。ごめんね」
アミ「え?今から?」
夏海は、アミに申し訳ないと思いながらも自分を止められなかった。
高瀬の後を追って駆け出した。
アミ「・・・気いつけなよー!」
心配そうに見つめるアミ。
⚪︎同・自習室前
高瀬に追いついた夏海は、
自習室に入ろうとする高瀬を呼び止めた。
夏海「・・・あのっ、高瀬さん」
振り返った高瀬は、感情の読めない表情で少し上を向いた後、つぶやいた。
高瀬「井上さん」
夏海の頬が緩む。
名前を覚えてもらえていたことが嬉しかった。
夏海「あの、今、少しだけいいですか?」
少しの沈黙の後、高瀬は小さく頷いた。
高瀬「はい」
夏海「ありがとうございます」
夏海は、自習室の近くにある空き教室に入り、電気をつけた。
夏海「ここに、いいですか?」
頷く高瀬を教室内に入れて、後には引けない状況を作り出した。
夏海は、高まる鼓動とともに思い切って口を開いた。
続く