
君と僕と夏 6
6. 勇気
◯浜ゼミ・空き教室(夜)
夏海「あの、私・・・高瀬さんがどんな人なのか気になっていて・・・よかったら、今度、少しだけ時間もらえませんか」
夏海は、変な言い訳をするより正面から直球でぶつかりにいった。
高瀬「俺?」
高瀬の表情は何一つ変わらない。
夏海「はい、迷惑だったらごめんなさい。でも、謎に包まれているというか、その、話を聞いてみたいというか・・・いや、変な意味はないんですけど・・・」
話しているうちに自分でも何を言っているのか段々と分からなくなり、しどろもどろになっていく夏海。
やっぱりやめておいたらよかったと後悔に変わり始めたころ、小さく、そして思いのほか優しい声が返ってきた。
高瀬「いいですよ」
夏海「え、本当に?・・・ですか?」
高瀬「多分、普通ですけど」
夏海「・・・いえ、何かある気がしています!!」
フッ。
高瀬はわずかに笑う。
夏海(モノローグ)
『・・・また笑った』
ほんのわずかな笑みでも、普段の高瀬と比べるととても柔らかい。
夏海はドキドキと動く鼓動を落ち着かせながら続きの言葉を探すも、また何を言えばいいか分からず目が泳ぐ。
そんな夏海を横目に、高瀬はスマホを取り出した。
高瀬「今週、日曜午後は空いてます」
夏海「!? 私も空いてます」
高瀬は、コクンと頷いた。
夏海は勢いそのままに続けた。
夏海「あの、場所は、ここだと少し何というか、その、よかったら近くの公園で話しませんか。30分とか・・・
もし希望があればそこでも・・・」
高瀬は、夏海が冷房対策のために左手に持っていた高校のジャージの上着を見たあと、呟くように言った。
高瀬「井上さんの高校、行ってみたいかも」
予想外の答えに驚く夏海。
高瀬「公園でも大丈夫です」
夏海「いや、えっと、高校・・・行きます!」
高瀬は、少し柔らかい表情で、
高瀬「ありがとうございます」
夏海「いえっ。あの、こちらこそ・・・ありがとうございます」
夏海は、相手の気が変わらないうちに決めることを決めなくてはと変に焦りながら続けた。
夏海「Z高というところで、若葉駅が最寄りなんですけど、若葉駅の正面口に13時ごろはどうですか・・・?」
高瀬「わかりました」
夏海「ありがとうございます・・・」
高瀬「また」
高瀬は、教室から出ていった。
夏海は、うわぁ〜〜と顔を覆いながらその場でしゃがみ込んだ。
廊下から漏れる生徒たちの声を聞きながら、夏海は深い呼吸をして、立ち上がり、教室を後にした。
⚪︎夏海の自宅・部屋(夜)
22:00
"遅い時間にごめんね
今週の日曜日
吹奏楽部練習ある?"
夏海は、クラスメイトの吹奏楽部の女子にメッセージを送った。
アミほど心は開けていないが、よく授業でペアを組んだりする仲だ。
"あるよ〜
15時過ぎくらいまでだと思う!"
"ありがとう🙇♀️
急にごめんね
練習頑張ってね"
日曜日に学校が空いていることを確認した夏海は、眠りについた。
続く