第141話 「サイバー・イン」
こんな夢を見た。
「検察側の主張によるとこの時刻に被告が凶行に及んだということになりますが、我々弁護団は被告のアリバイを立証する証拠を提出したいと思います」
「異議あり」
「異議を却下します。弁護人は続けて」
「はい。その時間、被告は居酒屋ダッカーで手品をしていました。証人を呼びたいと思います」
「異議あり」
「異議を却下します。証人は証言台へ」
「証人に尋ねます。あなたの名前は」
「早川腱」
「あなたの職業は」
「ネットカフェ・デジタルの経営者」
「早川さん。被告人とはどういう関係ですか」
「…」
「どうやら証人は極度に緊張しているようです」
「弁護士さん。ちょっと言い難いんだが…。ギターを弾いていいかい。
被告人との関係はこいつを抜きに語る訳にはいかないんだ」
「おい。君。何を言い出すんだ。あ、こら、止めなさい」
「ジャン、ジャン、ジャン、ジャン
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン
ジャカジャカ、ジャン、ジャジャン。
ひゅー。決まったぜ。被告人ダンディハリー。手品をやらせたら右に出る者はいないほどの達人。その正体は犬神天一。だがその腕前は日本じゃあ二番目だ。」
「なんだとお。じゃあ、日本一は誰なんだ。」
「チッチッチ。俺だ。」
「被告人は黙って。証人は勝手に被告人と会話しないように」
「早川さん。あなたは居酒屋ダッカーを知っていますね」
「はい。常連です」
「居酒屋ダッカーではどんな凶行が繰り広げられていたのでしょうか」
「手品です」
「手品ですか。手品の一体どこが凶行なんですか。裁判長。
お聞きの通り被告は手品をしていただけで、凶行に及んでないのは明らかです」
「ッズッバーッ。弁護士さん。手品を嘗めちゃあいけないな。
そこに居るダンディハリーは、日本じゃ二番目の腕前だが、
手品で人が殺せるのはこいつしかいないんだ」
「ちょっと早川さん。さっきから訳わかんないことばかり喋って。
あなた一体何者よ」
「ズバッと惨状、ズバッと解決。人呼んで流離いのヒーロー。
怪傑ズバッ、いやいや、サイバーーー、イン!」
「あ、御前は。抽選にも当たってないのにしつこく裁判員をやらせろと五月蝿く付き纏った奴じゃないか。あ、こんな所に琵琶まで持ち込みやがって。警備員」
「ッズッバーッ。バレちゃあ仕方がない。行くぞ。ダンディハリー。年貢の納め時だ。サイバーアタック!」
「静粛に。証人は証言台に戻って。あ、こら」
「サイバーキック。飛鳥五郎を殺したのは犬神天一、貴様か」
「違う、俺じゃない。俺にはアリバイがあるんだ」
「嘘を言うんじゃない」
「嘘じゃない。俺はその時間、そこにいる下條とかいう刑事に護送されていたんだ」
「なんだと。じゃあ、真犯人は誰だ」
「飛鳥のライフルの指紋を調べてみろ」
「そうか。証拠があと一つ見つからないと思ったら、飛鳥のライフルの中に隠されていたのか。ありがとう下條。
それでは皆さん、御機嫌よーう。ズバッと惨状、ズバッと解決。
怪傑ズバッ、いやいや、サイバーー、イン!」
何度聞いても裁判員には聞こえないフジテレビの某アナウンサー。
勘弁してよ。
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