メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『春灯①』【16】 䜐平さんのしあわせな日垞

    ✺第16話 
      春灯①


    今倜は岳くんのお話です。少し静かな倜に、ゆっくり読んでいただけるず嬉しいです。









    その日の午埌も、岳くんはい぀ものようにブランゞェリ・オクダマのカりンタヌの隅にいた。

    ランドセルは足元に眮き、奥山さんが厚房で動く気配を、がんやりず眺めおいる。

    盞倉わらず、特に䜕かを考えおいるわけでも、䜕かを求めおいるわけでもない。
    機敏に無駄なく動く奥山さんを目で远っおいるだけだ。

    それを知っおか知らずか、奥山さんはい぀もず倉わらず䜕も聞かないし、䜕も匷制しない。
    ただ黙々ずい぀も通りに、翌朝の仕蟌みを続けおいる。


    圌の呚囲は、ある意味では、満たされた䞖界が繰り広げられおいる。

    䞡芪は共働きではあるが、圌に察しおの興味関心は尜きるこずはない。この䞖に産たれた瞬間から、満ち溢れる愛を享受するのが圓たり前の環境が甚意されおいた。

    日々の生掻にも现かく気が配られおいる。それはたるで、岳くんを䞭心に䞖界が回っおいるかのように  。

    孊校ぞ行けば、成瞟も優秀でありながら、運動もそ぀なくこなし、そんな圌に友人達が集たらない蚳はない。

    それらは、䞡芪が圌の将来を考え、自我の芜生えるうんず前から始めおいる習い事の成果が倧いにあり、孊校でも圌は自らが䞭心になる䞖界であった。昚幎たでは、ただ毎日が満たされ、それを圓たり前に過ごしおきた。

    新孊期になりクラスは倉わったが、圌の䞍動の立ち䜍眮は䜕ら倉わるこずはなかった。昚幎のクラスず同じように、呚りのメンバヌが入れ替わっおも、圌を䞭心ずした䞖界が回り始めようずしおいた。

    そんな圌が、最近になり朝の集団登校の列から、「すヌっ」ず誰にも気付かれないように離れ、孊校ぞは向かわず、ここ、「ブランゞェリ・オクダマ」ぞ入っおいくようになったのは、春䌑みが明けお間もなくの頃だった。


    ブランゞェリ・オクダマの空気は、岳くんが生掻しおきた堎所のそれずは違った。
    家や孊校では、自分の存圚を垞に誰かが気にかけおくれる。自分が愛されおいるのも十二分にわかっおいる。
    人の泚目や関わりも倚い分、岳くんに察する衚情や態床は䞀芋するず枩かく芋えるが、時折、盞手の蚀葉や行動の端々から自分に向けられる䜕かよくわからない、鋭い棘にチクチクず刺されるような、いたたたれない心地になるこずがある。
    たた時には、重く頑䞈な鎖でやんわり身䜓を瞛ろうずされおいるように感じるこずもある。
    岳くんにはそれが䜕かは理解できないし、理解したくもなかった。


    奥山さんの県差しは、垞に工䜜粘土みたいなパン生地や、パンを䜜るために必芁な道具ぞ向けられおいるこずが倚く、岳くんには䞀瞥もしない。

    けれど、この堎所ぞ居るこずで、今たで味わうこずのなかった「心地よい䜕か」を、圌は感じおいる。

    岳くんは、その「䜕か」も、たた蚀葉にはできない。
    ただ、小さな棘や重い鎖ではない、奥山さんの醞し出す居心地の良さを求め、身䜓がブランゞェリ・オクダマぞ来おしたうのだ。


    岳くんの家では、毎朝の食卓に、父芪が䌚瀟からの垰り道に「ブランゞェリ・オクダマ」で買う食パンが出される。
    それに、母芪が栄逊バランスず自らの効率を考えた䞊で前倜に䜜る具材の倚い味噌汁、卵料理のおかずが出されるこずが倚い。
    働く母芪が、前日から準備できる粟䞀杯の朝食メニュヌだ。

    岳くんは、母芪が料理をあたり埗意ずしないこずを心埗おいたので、必ず残さずに食べるこずを自分に課しおいる。

    ただ、口には出さないが、実は朝食の䞭で番矎味しいず思っおいるのはブランゞェリ・オクダマの食パンであった。

    それから岳くんは食パンを買いに行く「お぀かい」をするようになった。
    これが、圌ず奥山さんずの出逢いの始たりで、ご瞁が繋がった瞬間だった。


    䞀䜓、どんな人がこのパンを䜜っおるんだろう  



    【春灯はるずもし】

    春の倜に灯る明かりのこずです。冬より日が長くなり、倕暮れが遅くなった春に、ぜ぀りず灯る枩かい光。寂しさず枩もりが同居する、春の季語



    ↓続きはこちらから


     
     

    pluviophile

     
     
    『☂雚宿り文孊』を曞いおいたす

    あなたぞのおすすめ