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「私、薬剤師なんで。 〜桜ノ町薬局、本日も平常運転〜」第7話 常葉庵、父と娘の時間

    前の話はこちらです。


    午前8時52分。

    朝のミーティングが終わるのを待っていたように、FAX機が鳴った。

    福田芳江が受付側から紙を抜き取り、宛名を見てから調剤室へ顔を出す。

    「柏木さん、翼在宅医療クリニックから。処方箋FAX」

    「ありがとうございます」

    千晶は白カゴを一つ空け、側面にピンクのFAX札を貼った。処方箋を受け取る。紙はまだ少し温かい。端がわずかに丸まり、FAX特有の薄い線が患者名の上を走っている。

    患者名の欄で、指が止まった。

    森脇清嗣(もりわき・きよつぐ)。

    住所は商店街の裏手。常葉庵(ときわあん)の二階だった。処方箋の住所欄には、店名ではなく森脇清嗣の自宅として番地が記されている。けれど、生活と店を切り分けられる距離ではない。

    「森脇さん……」

    声に出したつもりはなかった。

    椿隆志(つばき・たかし)が横から視線を向ける。白衣の胸ポケットには、黒と赤のボールペンがきちんと並ぶ。椿は、週二回ここへ来る嘱託の薬剤師だ。大きな総合病院の薬剤部に36年勤め、薬剤部長まで務めて定年退職した人で、その経験ごと、この店の調剤と鑑査を支えている。今日はその出勤日にあたる。そこへ、森脇清嗣の名前が届く。

    「ご存じの方ですか」

    「常葉庵のご主人です。お蕎麦屋さんの」

    椿の視線が、処方箋の名前に一度戻る。

    「……ああ」

    それだけだった。千晶ほど通っていたわけではない。それでも、あの静かな蕎麦屋の顔は、椿にも残っているらしい。

    言ってから、千晶は処方箋へ視線を戻した。

    常葉庵。

    常葉庵は、千晶が好んで足を運ぶ店だった。昼に外へ出る日は、白衣を脱いで、商店街の角を曲がる。せいろを頼むと、森脇は黙って湯呑みを置き、薬局のほうを一度だけ見る。急かしも詮索もしない。その距離の置き方が、千晶にはありがたかった。

    椿と一緒に行ったこともある。椿は黙って蕎麦をすすり、最後に「つゆが強すぎないですね」とだけ言う。森脇はそれを聞いて、少しだけ目尻を緩める。

    来局時の森脇も、似ていた。薬袋を受け取る前に待合の時計へ一度目をやる。昼の仕込みに戻る時間を、体で測っているようだった。

    最近は来ていない。

    店のシャッターも、このところ下りたままだ。

    昼に商店街を通るたび、暖簾のない入口が目に入る。体調が悪いのか、家の都合か、店の改装か。深く聞く相手ではない。

    患者でもあり、商店街の人でもある距離は、ときどき難しい。

    電話が鳴った。

    浜口柚衣が受話器を取り、すぐ千晶へ目で合図する。

    「柏木さん、翼先生です」

    千晶は処方箋を手元に置いたまま、受話器を取った。

    「お電話代わりました。桜ノ町薬局、柏木です」

    「翼在宅医療クリニックの翼です。朝からすみません。FAX、届いていますか」

    「届いています。森脇清嗣さんですね」

    「はい。以前からそちらに通っていた患者さんと伺っています。今日から在宅訪問が始まりました。ご本人とご家族の希望で、継続して桜ノ町薬局さんにお願いしたいと」

    患者希望。

    その言葉が、処方箋の紙より重く見えた。

    「承知しました」

    「今日14時に、初回の訪問をお願いできますか。今回は医療用の強い痛み止めの導入です。ご家族の不安が強いので、薬の説明と、今後の確認の流れを丁寧に作りたいです」

    翼の声は急いでいない。けれど、後ろに別の訪問予定が並んでいる音がある。紙をめくる音、誰かが短く返事をする声、キーボードを打つ音。

    千晶は処方箋の下段を見た。患者住所、医師側の許可番号、医師名、医療機関の所在地。特別な管理が必要な処方箋では、普段の処方箋より確認する場所が増える。

    「処方意図と、往診時の状態について共有いただけますか」

    「はい」

    翼は必要なことだけを話した。痛みの波が強くなっていること。本人は自宅で過ごしたいと言っていること。娘が戻ってきていること。強い痛み止めへの抵抗が家族側にあり、眠って話せなくなるのではないかと心配していること。

    千晶はメモを取る。

    本人希望。

    家族不安。

    必要時は翼へ確認。

    最後の一行は、少し強めに書いた。

    「分かりました。14時に伺います。処方箋原本はご自宅で回収でよろしいですか」

    「はい。こちらからご家族にも伝えておきます」

    「ありがとうございます」

    電話を置く。

    在宅といっても、多摩いずみ苑のような施設へ定期で薬を届けるのとは、別の顔の仕事だ。個人のお宅へ、生活の中へ、こちらが入っていく。段取りも書類も、施設とは分けて考える。

    調剤室の音が戻った。プリンター、レセコン、白カゴが台に当たる音。受付側では、浜口がOTC棚のマスクを前に出し、福田がレジ横の釣り銭を確かめている。開店まで、あと数分。処方箋を待つ前から、薬局はもう動き始めている。

    その中へ、常葉庵の名前が置かれる。

    楠山啓一郎が奥から出てきた。

    「森脇さんか」

    千晶は頷く。

    「翼先生からです。14時訪問希望。強い痛み止めの初回導入で、ご家族の不安が強いそうです」

    楠山は処方箋を見る前に、椿を見た。

    「椿さん、今日17時まででしたよね」

    「はい」

    「14時、柏木と一緒に行けますか」

    椿は処方箋を受け取り、要点だけを静かに追う。指先が止まったのは、薬の欄だった。

    「行きます」

    短い返事。

    楠山は壁のシフト表へ視線を移す。

    「14時台は俺が見る」

    「楠山さん一人で大丈夫ですか」

    「大丈夫かと聞かれたら、大丈夫じゃない。でも、行く理由はある」

    その声で、福田が受付側から顔を上げた。浜口も端末の前で手を止める。

    楠山はシフト表にペンを当てる。

    「柏木は11時半に先に休憩。椿さんは12時半。浜口さんは12時で、福田さんは13時にずらせる?」

    「いけます」

    福田が即答した。

    「浜口さん、14時台は受付とOTC、福田さんと分けて。入力は溜めない。処方箋が重なったら待ち時間を長めに伝えて」

    「分かりました」

    浜口の声が少し硬くなる。

    楠山は千晶へ向き直る。

    「通常の個人在宅に薬剤師二人で行くわけじゃない。今日は例外だ」

    楠山は指で、処方箋の端を軽く押さえる。

    「強い痛み止めの初回、家族不安、椿さんの緩和ケアの専門性」

    楠山はそこで一度切る。

    「柏木は管理薬剤師だ。森脇さんが来局していた頃の様子も知っている」

    「はい」

    「二人で行く意味を、こっちが間違えるなよ。人数を増やして安心したいだけなら、行く意味が違う。安全に始めるために行く」

    「分かっています」

    言いながら、千晶は自分の返事が少し早いと思った。

    分かっている。

    そう言う時ほど、まだ整理できていないことがある。

    椿が処方箋を台に置いた。

    「柏木さん、まず準備を分けましょう。私は説明の順序を整理します。柏木さんは薬歴と在宅契約、これまでの来局歴を確認してください」

    「はい」

    「薬の説明は、薬そのものから始めない方がいいと思います」

    「不安から、ですか」

    椿は頷く。

    「何が怖いのかを聞く。そのあとで、この処方が何のために出ているかを、翼先生と同じ方向で説明します」

    同じ方向。

    千晶はメモにそのまま書いた。

    薬局は医師の下請けではない。けれど、患者と家族の前で、医療者の言葉がばらばらに聞こえるのは一番よくない。

    千晶は薬歴を開いた。

    森脇清嗣。来局歴は途切れている。最後の来局日は、常葉庵のシャッターが閉まる少し前だった。お薬手帳の記録、前回の服薬指導、残薬の有無。いつものように淡々と並ぶ文字の間に、昼の暖簾と、白い湯気が自然に入り込んでくる。紙の上の記録なのに、店先の匂いまで連れてくる。

    患者であり、蕎麦屋の店主であり、商店街の人でもある。どれか一つにしてしまえたら、仕事は少し楽になる。

    「柏木さん」

    椿の声で、千晶は画面から顔を上げる。

    「森脇さんは、どういう方ですか」

    「……時間を守る方です」

    最初に出てくるのは、そんな言葉だ。

    椿は待つ。

    「薬を受け取る時、説明はちゃんと聞きます。でも、長くは話さない。店の仕込みがあるから。お薬手帳は毎回持ってきます。忘れたことは、たぶん一度もないです」

    そこまで話して、千晶は一度口を閉じた。

    森脇が来なくなった理由も、常葉庵のシャッターが下りたままの理由も、薬歴には残っていない。

    知らなかった、という言葉は便利だ。

    聞かなかった、とは違う顔をしてくれる。

    薬歴の備考欄には、森脇の癖がいくつか残っていた。

    説明は短め希望。

    仕事の合間に来局。

    お薬手帳は毎回持参。

    食後の薬は昼が遅れることあり。

    昔の千晶なら、こういう記録を「服薬指導のための背景」とだけ読んだ。いま読んでも、もちろんそうだ。昼が遅れるなら、飲み忘れや間隔を確認する。店の仕込みがあるなら、待ち時間の伝え方も変わる。

    けれど、常葉庵の名前がつくと、その一行が急に人の生活の音を持つ。

    昼が遅れる。

    それは、蕎麦を茹で、出汁を温め、客が帰ったあとにようやく自分の昼飯を食べる日々でもある。

    千晶は在宅契約書の控えを出し、必要な箇所へ付箋を貼った。処方箋原本の回収、支払い方法、緊急時の連絡先。

    椿は隣で、白紙のメモ帳に横線を三本だけ引く。

    「椿さん、それだけですか」

    「最初は、それだけです」

    「三本」

    「ご本人。ご家族。医療者」

    椿は短く言う。

    「三つの不安が、同じ方向を向いているとは限りません」

    千晶は返事をしないまま、ペンを持ち直した。薬は同じでも、怖いものは同じではない。

    *

    昼前、商店街側の自動ドアが開くと、少し冷たい外気が入ってきた。

    浜口がOTC棚の前で手を止め、レジ横へ小さく寄る。

    「ノルメディス、仮囲いが半分取れてました」

    千晶は在宅用のファイルに書類を挟む手を止めない。

    「入口から見えるの?」

    「はい。看板の下に、開店準備中って出てます。棚も入ってて、白くて、明るくて。……ちゃんとしてました」

    悪口ではなかった。

    だから余計に、空気の中へ静かに沈んだ。

    12月1日オープン。

    夏に立った白い看板は、もう景色ではなく予定になっている。予定は近づく。工事音は止まり、代わりに棚が入り、照明がつき、レジが置かれる。誰かの便利が始まる準備は、別の誰かの不安として商店街に積もっていく。

    常葉庵のシャッターは閉まったまま。

    通りの向こうでは、新しい薬局の入口が開く準備をしている。

    閉じた店と、これから開く店。同じ通りに並んだ二つの入口が、別々の時間を向いている。

    その二つが同じ商店街に並ぶことを、誰も大げさには言わない。浜口はOTC棚のマスクへ戻り、福田は会計へ目を落とし、楠山は次の白カゴを引き寄せた。店は止まらない。止まらないまま、少しずつ圧を受ける。

    千晶はファイルの角をそろえ直す。紙の角だけは、まだ自分の手で整えられる。そう思うこと自体が、少し苦い。

    *

    13時35分。

    千晶は在宅用の持ち物を、カウンター下へ順に並べた。薬袋と薬剤情報提供文書、明細と領収書、お薬手帳シール、処方箋原本を入れるファイルと契約書、名刺、筆記用具、業務端末、会計用の現金と消毒用品。

    強い痛み止めは、千晶と椿でそれぞれ確認した。数量、薬袋、説明文書、記録。特別な管理が必要なものは、特別に静かな手つきになる。誰も冗談にしない。誰も急がせない。

    椿は老眼鏡を外し、ケースへしまう。

    「柏木さん。現地で、ご家族が薬を怖がっていたら、先に否定しないでください」

    「はい」

    「怖いと思うのは自然です。そのうえで、痛みが強いままだと、話す力も削られることがある。そこを、森脇さんの状態に合わせて説明します」

    千晶は頷いた。

    「眠気と吐き気の確認、痛みの波、使い方で困った時の連絡先。翼先生へ確認するラインも、最初に伝えます」

    「ええ。薬局だけで調整する話ではありません」

    椿の声は柔らかいが、そこだけは一段固い。

    千晶はメモへ線を引いた。

    薬局だけで決めない。

    ご家族の怖さを先に聞く。

    最初に受け取る時の手の形だけは、間違えたくなかった。

    13時50分。

    楠山が鑑査台の向こうから言う。

    「店はこっちで持つ。向こうでは、森脇さんのことだけ見てこい」

    「すみません。お願いします」

    「謝るな。必要だから行くんだろ」

    千晶は白衣のポケットにペンを差し直した。

    椿が革の鞄を持つ。病院時代から使っていると聞いたことのある、年季の入った鞄だった。角は少し擦れているのに、持ち手だけはきれいに手入れされている。

    自動ドアの外で、秋の終わりの光が白くなっていた。

    常葉庵まで、歩いても遠くない。

    けれど今日の訪問は、ただ薬を届けに行く距離ではない。

    *

    常葉庵のシャッターは、今日は半分ほど上がっていた。

    白い紙に太い字で、しばらく休業します、と書かれている。貼り紙はガラス戸の内側に残り、昼どきの暖簾も、店先の鉢植えも見えない。

    千晶は、上がったシャッターの前で一度足を止めた。

    薬局から何度も見ていた貼り紙だ。けれど、森脇清嗣の家へ向かう途中で見ると、ただの貼り紙ではない。休んでいるのは店だけではないのだと、いまさら分かる。

    森脇の自宅は、常葉庵の二階にある。近い、という言葉では足りない。店と家は、階段一つでつながっている。

    その境目に、町の匂いが薄く残っている。

    千晶がインターホンを押すと、店の奥から小さな足音がした。少し間があって、ガラス戸の鍵が外れる。

    戸口に出てきた女性が、小さく頭を下げた。

    「桜ノ町薬局さんですね。娘の森脇美緒(もりわき・みお)です」

    声は整っている。けれど、目の下の影と、結びきれていない髪が、余裕のなさを先に伝えていた。ガラス戸の内側には、畳まれた段ボールと、訪問看護の連絡ノートらしいファイルが重なっている。

    「柏木です。こちら、薬剤師の椿です」

    「椿です。今日はよろしくお願いします」

    椿が深く頭を下げると、美緒も慌てて頭を下げた。

    「こちらこそ、すみません。父が、桜ノ町薬局さんがいいって言って」

    「森脇さんのご希望とうかがっています」

    千晶がそう言うと、美緒の顔に、安心とも困惑ともつかない色が浮かんだ。

    「店に、行ってたからですかね。父、あまりそういうこと言わない人なんですけど」

    美緒はそこで言葉を切り、奥へ視線を向けた。

    「どうぞ。今は少し落ち着いてます」

    「処方箋の原本も、お預かりしますね」

    「あ、はい。先生から言われてました」

    美緒はレジ横の小さな棚から封筒を出す。角が折れている。何度も中身を確認した跡がある。千晶は封筒を両手で受け取り、処方箋原本とFAX内容を照合した。

    「ありがとうございます。あとで契約書の説明もします。先に、お父様のご様子を見せてください」

    「お願いします」

    美緒はそう言ってから、もう一度だけ封筒のあった棚を見る。必要なものを渡したのに、まだ何か足りない気がする顔だった。

    店内は、営業を終えたあとの形で止まっている。椅子はテーブルの上に逆さに上げられ、箸立てと品書きだけが端に寄せられていた。

    千晶は、窓際から二つ目の席を見てしまう。

    何度か座った場所だった。湯呑みが置かれる音も、蕎麦湯の湯気も、まだ身体のどこかに残っている。けれど今は、客を迎えるための隙間だけが消え、店の時間が途中で止められていた。

    厨房のほうから、微かに乾いた鰹節のような匂いがする。

    懐かしい、と思うには近すぎる。寂しい、と言うには、まだ仕事の途中だった。

    美緒が店の奥へ進み、細い階段を上がる。

    二階の廊下には、消毒薬の匂いと古い木の匂いがあった。壁際には常葉庵の名入りの紙袋が畳まれ、紐で束ねられた古い領収書と、木札の入った段ボールが置かれている。

    生活と店が、まだうまく分かれていない。

    居間は、生活の音を小さくしたような部屋だ。テレビは消えている。座卓の上には湯のみが一つ、半分だけ残っていた。急須の横には訪問看護の連絡ノートと、薬を入れるための小さなケースが並ぶ。窓際には、常葉庵で使っていたものだろうか、木の盆が立てかけられている。

    盆の縁は少し欠けていた。千晶はそれを見た瞬間、昼休みに蕎麦湯を受け取った時の森脇の手を思い出す。骨ばっているのに、盆を傾けない手だ。

    布団の上で、森脇清嗣が上体を少し起こしていた。

    千晶が知っている森脇は、白い前掛けをして、蕎麦湯の入った湯桶を軽く持ち上げる人だ。薬局に来る時も、背筋を伸ばし、会計の小銭をきっちりそろえる人だった。

    目の前の森脇は痩せている。頬が落ち、手首の骨が布団の上に細く見える。けれど、千晶と椿が入ると、目だけはまっすぐこちらを見た。

    客が入ってきた時、厨房から顔を上げる目。騒がない。急がない。けれど、誰が来たかは逃さない。弱った身体の奥に、その習慣だけがまだ立っている。

    「……桜ノ町さんか」

    声は掠れていた。それでも、客席の隅まで届くように声を置いていた人の名残がある。

    「森脇さん、柏木です。今日は椿と一緒に来ました」

    「椿です。お邪魔します」

    森脇が小さく頷く。

    「店、閉めっぱなしでな」

    それは挨拶のように聞こえる。

    千晶は返す言葉を探す。店はいいです、とも、大変でしたね、とも言えない。先に口を開いたのは椿だった。

    「下のお店の前を通ってきました。お住まいは、二階なんですね」

    「ああ。近くねえと、朝の仕込みに間に合わねえ」

    森脇の口元が、ほんの少しだけ動く。笑ったというより、昔からそこにあった表情が一瞬戻ったようだった。

    美緒が布団の横に座る。膝の上で両手を組み、ほどいて、また組む。

    「あの」

    美緒は椿を見る。

    「父の薬のことなんですけど」

    「はい」

    「強い痛み止めって聞いてます。先生からも説明は受けました。でも、私、ちゃんと分かってるか自信がなくて」

    声がそこで揺れる。

    「それを使ったら、父がずっと眠っちゃうんじゃないかって。話しかけても起きなくなって、もう、話せなくなるんじゃないかって思ってしまって」

    森脇が目を閉じる。責めるような沈黙ではない。痛みをやり過ごすための沈黙に見えた。

    椿はすぐには答えない。

    鞄から書類を出すでもなく、薬を見せるでもなく、ただ美緒の言葉が部屋に落ちきるまで待つ。

    「怖いと思うのは、自然です」

    椿は静かに言う。

    「強い痛み止め、と聞けば、そう感じる方は少なくありません」

    椿は言葉を急がなかった。

    「眠気や吐き気が出ないか、効きすぎていないか。それは、私たちも確認します。翼先生や訪問看護師さんとも、状態を見ながら相談していきます」

    美緒は唇を結んだまま頷く。

    「ただ」

    椿は森脇のほうへ一度視線を向ける。

    「痛みが強いままだと、話す力も、眠る力も、食べる力も削られます。痛みを減らすことで、ご本人が起きていられる時間や、ご家族と話せる時間が作れる場合もあるんです」

    「話せる時間……」

    「はい。薬は、森脇さんを遠ざけるものではありません。この家で、森脇さんが森脇さんとして過ごす時間を支えるためのものです」

    美緒の目が赤くなる。

    「でも、眠くなったら」

    「その時に見るのは、眠気の強さ、吐き気、痛みの残り方です。必要があれば翼先生へつなぎます」

    椿は、美緒の組んだ指がほどけるのを待った。

    「怖がらなくていい、とは言いません。怖いままでも、ひとつずつ見ていきましょう」

    美緒は膝の上で指を組み替える。

    「ひとつずつって、私に見て分かりますか」

    その問いには、苛立ちではなく、疲れが混じっている。

    「先生も、看護師さんも、みんな説明してくれました。紙ももらいました。でも夜になったら、私ひとりなんです」

    美緒は座卓の封筒を見る。

    「父が苦しそうにした時、それが薬のせいなのか、病気のせいなのか、ただ眠いだけなのか、私に分かる気がしない」

    「間違えたら、どうしようって思います」

    椿は頷いた。

    「ご家族だけで、正しく判断しようとしなくて大丈夫です」

    美緒が顔を上げる。

    「見えたことを、そのまま教えてください。判断は、医師や訪問看護師さんと一緒にします。薬のことで迷うところは、薬局が整理します」

    千晶はその言い方を聞きながら、手元のメモへ短く書いた。

    家族を判断者にしない。

    見えたことを、薬の情報として整理する。

    「眠っている時に、起こしていいんですか」

    「まずは、無理に起こす前に、息づかいや顔色、声をかけた時の反応を見てください」

    椿はそこで、薬袋ではなく訪問看護の連絡ノートへ視線を落とす。

    「いつもと違うと感じたら、訪問看護師さんや翼先生へ連絡する。連絡先は、これに」

    椿は鞄から、連絡先を大きな字で記した一枚を出した。夜間の番号を指で示してから、美緒へ渡す。

    「夜中でも、ここへ。それから、痛みが強い時だけ使う分は、使った時間をノートに書いておいてください。次に来た誰もが、夜の様子を追えるように」

    美緒は紙を両手で受け取った。

    「冷蔵庫にでも、貼っておきます」

    「いい場所です」

    「美緒さんが一人で判断する形にしないことが大事です」

    美緒の肩が、ほんの少し下がる。

    「一人で、ですか」

    「はい。薬を使うか使わないかを、ご家族だけで抱え込む必要はありません」

    椿は森脇を見て、それから美緒に戻る。

    「森脇さんの痛みがどうか。眠気がどうか。話せる時間があるか。そういう変化を、みんなで見ていきます」

    千晶はメモに、家族のみで抱え込まない、と書きかけて止める。

    記録の言葉ではない。でも、美緒の表情は、その一文で少し変わったように見える。

    「あの」

    千晶は、メモから顔を上げた。

    「私、常葉庵のお蕎麦、好きでした。お昼に、何度も。お父様、せいろの前に湯呑みを先に置いてくれるんです。急かさないお店だなって、いつも思ってました」

    美緒が千晶を見る。

    「父が、ですか」

    「はい。だから、お薬のことで分からなくなったら、あの湯呑みくらいの速さで聞いてください。一個ずつで大丈夫です」

    美緒の口元が、今日初めて少しだけ緩んだ。

    「……変な励まし方」

    「よく言われます」

    布団の上で、森脇の口元もわずかに動いた気配がした。

    千晶は、椿の声を聞きながら、手元の薬歴メモに必要な項目だけを書き込んだ。

    痛みの波、眠気、吐き気、食事量、会話可能な時間。

    文字にすると、いつもの確認項目になる。けれど、この部屋では、その一つひとつが森脇と美緒の時間に直接つながっていた。

    契約書の説明は短く済んだ。

    訪問の頻度、薬の届け方、会計、連絡先、処方が変わった時の流れ。千晶が話し、椿は必要なところだけ補う。美緒は一つずつ頷き、署名欄に名前を書く。ペン先が最初の一画だけ震えている。

    森脇はそれを見ていた。

    「字、下手になったな」

    「うるさい」

    美緒が反射で返す。

    その一往復だけ、部屋が昔の親子の速度になった。

    千晶は書類を受け取り、控えをクリアファイルへ入れる。いつもの作業だ。けれど、いまは紙をめくる音を大きくしたくない。

    森脇が、座卓の上の薬袋へ目を向ける。

    「薬」

    美緒が父を見る。

    「飲むの?」

    森脇は小さく頷いた。

    「水」

    森脇が短く言う。

    「あ、ごめん」

    美緒は慌てて立ち上がりかけたが、椿が小さく手で制した。

    「急がなくて大丈夫です。少しずつで」

    美緒は座卓の湯のみを見る。茶は冷めている。迷ってから、横に置いてあった小さなコップへ水を注いだ。トレーは常葉庵のものだった。角には店名の焼き印がある。何度も洗われ、文字の片側だけ薄い。

    美緒はコップを持つ手を少し震わせながら、森脇の口元へ寄せた。

    森脇は薬を口に含み、水で飲み込む。喉が一度、ゆっくり動く。息が漏れる。美緒はコップを引くタイミングが分からず、じっと待っている。

    「お茶も飲む?」

    「水でいい」

    「そっか」

    「お前、昔から茶を濃く淹れるだろ」

    美緒は驚いた顔をした。

    「覚えてるの?」

    「苦かった」

    掠れた声に、少しだけ笑いが混じる。

    美緒の口元も揺れる。笑いきれず、泣ききれない顔だ。

    「だって、店の急須、どれくらい葉っぱを入れればいいか分からなかったんだもん。小学生にやらせるほうが悪い」

    「勝手にやったんだろ」

    「父さんが忙しそうだったから」

    「客に出さなくてよかった」

    「ひどい」

    短い言葉が、途切れながら続く。

    千晶はメモ帳の上に置いたペンを握ったまま、その会話を聞いていた。森脇の声は長く続かない。一言話すたびに呼吸を整える時間がいる。美緒もそれを待つ。待つことに慣れていない人の待ち方だった。言葉を継ぎたい。けれど急かしたくない。その間で、指だけがトレーの縁を撫でている。

    「店のもの、片づけられなくて」

    美緒がぽつりと言う。

    「邪魔なのに。父さんが寝る場所を作らなきゃいけないのに、どれを捨てていいか分からなくて」

    森脇は棚のほうを見る。

    「捨てなくていい」

    「でも、もう店、しばらく開けないよ」

    「今はな」

    その「今は」は、未来を約束する言葉ではなかった。けれど、完全に閉じる言葉でもない。

    美緒はそれを分かっている顔で、目を伏せる。

    森脇が、ゆっくりと目を開けた。

    「美緒」

    呼ばれて、美緒が顔を上げる。

    「なに」

    「飯、食えてるか」

    美緒は一瞬、意味が分からない顔をした。

    「私?」

    「お前だよ」

    森脇は少し息を整える。痛みのない声ではない。けれど、言葉を選ぶ力は残っている。

    「美緒が食えてるなら、それでいい」

    美緒の肩が小さく落ちた。

    「店のこと、怒ってないの」

    「店は、俺が好きでやった」

    「でも、私、継がなかった」

    「お前の腹は、蕎麦じゃふくれねえだろ」

    森脇はそこで少し苦しそうに眉を寄せる。美緒が慌てて背中へ手を伸ばしかけた。椿が軽く頷き、急がなくていい、と目で示す。

    痛みの波が通り過ぎるのを、全員で待った。

    時計の秒針だけが聞こえる。

    やがて森脇の呼吸が少し整う。劇的に楽になったわけではない。顔色も急に戻らない。ただ、次の一言を置くための隙間ができる。

    「店のことより、飯だ」

    美緒は両手で口元を押さえる。

    「なに、それ」

    笑おうとして、声が崩れた。

    「父さん、ずっと店の話しかしなかったじゃない。帰るたびに、出汁がどうとか、そば粉がどうとか」

    「それしか話すことがなかったんだよ」

    「私、聞くのが嫌で」

    美緒の声が細くなる。

    「店を継がないって決めたの、自分なのに。父さんが店の話をすると、責められてるみたいで。だから、忙しいとか、また今度とか言って」

    森脇は目を閉じたまま聞いている。

    美緒は布団の端を握る。

    「もっと早く帰ってくればよかった」

    その言葉は、大きくない。けれど、部屋の空気を少し変える。

    千晶の指が、メモ用紙の上で止まる。

    もっと早く。

    帰ってくれば。

    言葉の形だけなら、よくある後悔だ。けれど、美緒の声には、間に合わなかったものだけでなく、まだ少し間に合っているものへの怖さが混じっている。

    森脇は美緒のほうへ手を動かす。布団の上を数センチ進んだだけだった。美緒がそれに気づき、自分から手を重ねる。

    「帰ってきてるだろ」

    森脇は言う。

    「今」

    美緒は何度も頷く。返事になっていなかったが、森脇はそれでいいという顔をしていた。

    椿はその時間に入らない。

    千晶も、入らない。

    そう決めたはずだった。

    本当は確認したいことがある。必要な確認は、確かにある。痛み、眠気、吐き気、薬を使ったあとの変化。

    項目は、きれいに並んでいる。

    並んでいるものに手を伸ばせば、自分の立つ場所が分かる気がした。

    けれど今、森脇が少しだけ話せている。

    千晶は、薬袋の角を親指で押さえた。紙が小さく鳴る。

    その音を聞いた時には、もう声が出ていた。

    「森脇さん、今の痛みは」

    言いかけたところで、椿がわずかに顔を上げる。

    強い動きではない。制するために手を出したわけでもない。ただ、千晶の声より先に、椿の静けさが部屋に置かれた。

    「柏木さん」

    千晶は止まる。

    椿は森脇ではなく、千晶を見ている。目尻の皺はやわらかい。けれど、そこには業務の線を引く硬さがあった。

    「確認は、足りています」

    千晶の指が、薬袋の角から離れる。

    椿は声を荒げない。美緒にも、森脇にも、叱責として届かない高さで続ける。

    「今は森脇さんと美緒さんの時間です」

    美緒がこちらを見る。

    その目に責める色はない。むしろ、何を言われたのか分からない人の顔だ。だから千晶は、余計に動けない。

    今の自分は、何を切ろうとした。

    美緒が父の手に触れるまでの、一番細い沈黙。森脇が娘の言葉を受け取るまでの、短い時間。

    「……すみません」

    千晶は一歩下がる。

    椿は頷くだけだ。

    美緒は父の手を握り直す。森脇の指が、わずかに美緒の手の甲を押す。痛みが消えたわけではない。息の間にはまだ重さが残る。けれど、その重さの中で、二人は同じ場所にいる。

    *

    午後の光は傾き始めている。商店街の道には、自転車を押す主婦と、ランドセルを背負った子どもが混じっていた。向こう側には、ノルメディス北多摩店の白い看板。開店準備中の紙が外され、ガラスの内側には什器の影が並び始めている。

    新しい店は、まだ誰の記憶も背負っていない顔をしていた。

    千晶は訪問バッグの持ち手を握り直す。

    「椿さん」

    「はい」

    「さっきの確認、必要な確認でした」

    言い訳に聞こえると思った。実際、言い訳だ。

    椿は歩く速度を変えない。

    「必要でした」

    千晶は息を吐く。

    否定されなかったことで、かえって胸の奥が重くなる。

    「では、なぜ止めたんですか」

    椿は少しだけ立ち止まった。商店街の端で、惣菜屋の油の匂いが薄く残っている。

    「確認は、大事です」

    千晶は頷いた。

    椿は、常葉庵のシャッターへ視線を向ける。紙の端が風で小さく浮く。

    「大事だから、逃げ道にもなります」

    言葉はそれだけだった。

    千晶は返す言葉を持てない。

    春日に、そう言った。

    不安を誰かに預けるな。

    確認したあと、どう判断するかは、自分で持て。

    言ったのは自分だ。

    なのに今、自分は正しい作業の中へ戻ろうとしていた。そこなら、誰にも責められない。

    薬剤師としてなら、立っていられる。

    「……逃げたつもりは、ありませんでした」

    声に出すと、自分でも言い訳に聞こえる。

    椿は小さく頷く。

    「そうだと思います」

    その返事が、いちばん痛かった。

    商店街の角まで来たところで、椿が、付け足すでもない調子で言う。

    「柏木さんは、あの時、何を確認しようとしたんですか」

    千晶は、答えを探した。痛みの波、眠気——どの言葉も、手に取る前に崩れていく。

    答えられないまま、角を曲がる。

    *

    薬局へ戻ると、受付プリンターが紙を吐いている。

    「お帰り」

    楠山は鑑査台の向こうから顔を上げただけだった。白衣の袖がまくれている。14時からの1時間を一人で回した顔だが、声はいつもと変わらない。

    「外来、落ち着いてます。白カゴ2つ、どちらも急ぎではないです」

    福田が受付端末から言う。会計用のトレーをそろえる手は止まらない。

    「お電話、1件折り返しあります。メモ、薬歴端末の横です」

    浜口は電話を肩で受けながら、空いた手で付箋を示す。

    「お電話ありがとうございます、桜ノ町薬局、浜口でございます。はい、処方箋の受付ですね」

    声は、電話口に出す時の少し高い調子に戻っていた。

    薬局は回っている。

    千晶が戻ってきても、何かが止まるわけではない。楠山は白カゴを見て、福田は待合を見て、浜口は電話を受ける。誰も大げさに迎えない。誰も患者宅の重さを薬局中に広げない。

    それがありがたいのか、苦しいのか、千晶にはすぐ分からなかった。

    「柏木」

    楠山が短く呼ぶ。

    「はい」

    「水飲め。椿さんも」

    「はい」

    それだけだった。

    千晶は手を洗い、投薬カウンター下のスペースから水筒を取る。ひと口だけ飲むと、冷たさが喉の奥を通った。

    椿は革鞄を椅子の脇に置き、メモ帳を胸ポケットへ戻す。いつもの所作。何かを終えた人ではなく、次の仕事へ戻る人の動きだった。

    千晶は水筒を元の場所へ戻し、薬歴端末の前へ座る。

    訪問記録を残す。

    森脇の痛み、美緒の不安、説明した内容、翼と訪問看護へつなぐ確認事項。父娘の会話そのものは書かない。書けないし、書くべきでもない。

    けれど、薬がその会話を邪魔しないために何を確認したかは、残さなければいけない。

    千晶はキーボードに指を置いた。

    確認済み。

    その言葉を打ちかけて、止まる。

    何が、済んだのか。

    痛みの確認か。眠気の確認か。説明か。それとも、自分が安心するための判子みたいな言葉か。

    千晶は一度消した。

    説明内容、家族の不安、医師・訪問看護との連携先を分けて書く。確認済み、だけで終わらせない。次に読む人が、どこから続ければいいか分かるように。

    椿が隣の端末で薬歴を開き、老眼鏡をかける。

    「柏木さん」

    「はい」

    「薬に関わることは残す。森脇さんたちの時間は、置いてきていい」

    千晶は手を止めた。

    「……はい」

    椿の言葉は、今日二度目に刺さった。

    *

    夜、部屋に帰ると、白衣の重さが肩に残っている。

    千晶はバッグを床に置き、手を洗った。冷蔵庫から水を出して、グラスに注ぐ。テーブルの上には、朝置いたままの文庫本とレシート。昨日と同じものが、昨日と違う顔でそこにあった。

    スマートフォンは開かない。

    帰り道、千晶は常葉庵の前を通らずに帰ってきている。

    角を曲がった時点で、通らない道を選んだことには気づいている。それでも、自転車のハンドルを戻さなかった。閉じたシャッターを見たくなかったのか、そこに貼られた白い紙をもう一度読むのが嫌だったのか、自分でも分からない。

    分からないままにしておけば、見なかった理由を言葉にしなくて済む。

    椅子に座ると、常葉庵の部屋の匂いが戻ってくる。畳、薬袋の紙、美緒の指先、森脇の細い息。

    もっと早く帰ってくればよかった。

    美緒のあの声に、また項目を並べそうになる自分がいる。正しい項目は、いつでも並ぶ。正しいから、逃げられる。

    千晶はグラスを置いた。水面が小さく揺れる。

    耳の奥に、椿の声がまだある。

    確認は、足りています。

    千晶は目を閉じる。

    足りなかったのは、確認の数ではない。そのあとに沈黙を受け止めることだった。

    白い画面が、ふと浮かぶ。

    蛍光灯の色。保留音。自分の指先。

    そこから先は、まだ見ない。

    水は冷たいはずなのに、喉を通るまでに温度を失った。

    千晶はグラスを置く。底がテーブルに当たり、小さく鳴る。

    その音が消えたあとも、椿の言葉だけはずっと残っていた。


    次の話はこちらです。

    第8話では、千晶が大手チェーン時代に置いてきた過去へ戻ります。
    確認したはずだった一日を、彼女はもう一度、自分の言葉で見直します。

    「私、薬剤師なんで。」は、こちらのマガジンにまとめています。

    #創作大賞2026
    #お仕事小説部門

     
     
    現役薬剤師・著者。薬局の見えにくい仕事を、物語と安全な実践知にして届けています。 お仕事小説『私、薬剤師なんで。』全9話公開中(note創作大賞2026応募作)。 Kindle『薬剤師、AIはじめました』著者。 薬局の仕事、AI時代の創作、安全なAI活用について発信しています。

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