
第10話|朝焼けと背徳(オトナ向け⚠️)
これは、自分自身を偽って溺れた男が
人生を裁かれる物語。
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白み始めた朝の光が、ホテルのカーテン越しに差し込んでいた。
隣に目を向けると、結子が静かな寝息を立てて眠っていた。
昨夜、何度も求め合ったとは思えないほど、安らかな表情。
髪はまだ少し湿っていて、肌は湯上がりのように淡く色づいている。
その寝顔は、大人の色香というより
どこか少女のようであどけなく
——無防備だった。
「……すっぴん、か」
つぶやいた声が部屋に溶ける。
(…さっきまで、とんでもない「魔性の女」を抱いていた、と思ったのに)
幸助は、昨夜の激しさを回想しながら
再度結子に視線を落とす。
その肌は、化粧を落としてもなお滑らかで
頬は昨夜の余熱を残してわずかに紅い。
桜色の唇は、地の色。
キスを重ねた記憶が、そこに刻まれていた。
(……やばい、可愛いすぎる)
愛しくて堪らなくなり、
そっと手を伸ばした。
指先が頬をかすめ、耳の裏に触れた瞬間、結子が小さく身じろぎする。
「んー…」
その仕草すら、罪だった。
昨夜の熱が、体の芯にまだ残っている。
——理性が、焼ける音がした。
触れてはいけないものに触れてしまった。
そんな気がしていた。
けれど、その背徳感すら、彼女の寝顔を見ていると遠のいていく。
「……結子」
名を呼ぶと、彼女がかすかに瞬きをした。
「あ……おはよ」
寝ぼけたような声。
その声が、また甘くて。
幸助は応える代わりに、そっと唇を重ねた。
「んっ…」
柔らかくて、温かくて——
昨夜の記憶が、再生されていくようだった。
(やっぱり甘い…
これが、「相性」か?)
キスのたび、思考が遠のく。
彼女の指先が幸助の背中を滑るたびに、もう一度求めたい衝動が高まっていった。
「コウくん…もう…」
(だめだ……まだ、終われない)
結子が拒まない限り、もう止まれそうにない。

「……ハァーー」
大きく息を吐く幸助。
事後、汗ばんだ体をベッドに沈めながら、ふと横を向くと——
視界の隅、ベッドサイドのゴミ箱が映る。
散らばった殻。
空になった、ダース入りの箱。
「……うそだろ」
(ほんとに全部使ったのかよ……)
思わず笑いがこみ上げた。
まさか本当に使い切るとは思っていなかった。
昨夜、自分はどれだけ彼女を求め続けたのか。
記憶が曖昧になるほど、夢中だった。
(やばい……こんなの、初めてかも)
(10代の時でも、こんなにしたことないぞ…)
ふと、妻・時子の顔がよぎる。
朝の家事を済ませ、子ども達を起こし、バタバタと幼稚園に送っていく準備をしている頃だろう。
でも、不思議と罪悪感はわかなかった。
——いや。
これまでは、わかなかった。
体だけの関係だと、自分に言い聞かせていた。
だから、浮気も遊びも“割り切っていた”。
でも結子との夜は、違った。
体だけじゃなく、心までも深く入り込まれた気がして、
気づけば魂の奥を、静かに溶かされていた。
(この人に全部持っていかれたら
戻れなくなる)
そんな予感があった。
けれど——
隣でぐったりとしながらも
紅潮する彼女の顔を見ると
その不安は、どこかへ溶けて消えていった。
罪の意識よりも、もっと強い何かが胸を満たしていた。
「……ちょっと待って、また?
元気すぎる……」
焦ったような、困ったような顔で
そう呟いた結子の声に
思わず笑ってしまいそうになる。
「……ごめん。でも、まだ足りない」
そっと腰に手を回し、半ば強引に体を引き寄せる。
——朝の光が、静かに背徳を照らしていた。
けれど、そんなことはもうどうでもよかった。
この柔らかさも、温もりも、
そして彼女が「許してしまう」この瞬間すらも——
全部、欲しいと思っていた。
【次回】
第11話|マンションを買うつもりなんだ
ラブホテルのチェックアウトギリギリまで、
彼女の身体を手放せなかった朝。
幸助は思わず、あり得ないことを口にしてしまう。