メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

「らしさ」の残骞

    倧塚ぐみ

    「  その薬の飲み方、あなたらしいね」

    食埌にキッチンで薬を飲みながら、ふず、䌊藀くんに蚀われたこずを思い出しおいた。

    久々に䜓調を厩し、病院でたくさん薬をもらった。朝はええっず、これずこれ。倜はこれも。
    パチンず指で薬の容噚をこじ開け、たくさんの空の容噚を目にした瞬間、䜕十幎も前のそのセリフがふず蘇った。


    「  その薬の飲み方、あなたらしいね」ず、圌は蚀ったのだった。

    䌊藀くんは、地元の友だちだ。物知りで腰が䜎く、歩く知性のような人だず蚘憶しおいる。冬は、萜ずしたら床に穎が空きそうなほど重い革ゞャンを着おいた。芪は譊察官だった。

    䞭孊時代に同じ塟に通っおいお、知り合ったのだ。頭のいい高校に行っお、頭のいい倧孊に行っお、今も䜕かの研究をしおいお、倧孊の先生みたいなこずをしおいる。䞭孊以来、久々に再䌚しおも、圌の柔和で頭が切れる印象は倉わらなかった。

    ゞェントルな雰囲気を身にたずい、壊れたパ゜コンの修理方法から、新宿で明け方フラフラになった心身に優しい台湟料理屋たで、本圓になんでも知っおいる人だった。い぀だっお、そばで盞談したい。䞀家にひずり、䌊藀くん。



    䌊藀くんの奜きなずころは、どんな欠点も吊定しないずころだ。

    「なるほど、そういう考え方、いいね」
    「いや、悪いこずだずは思わないよ、そういうずころが “らしさ” じゃない」
    「そんな颚に芋たこずなかったなぁ、面癜い芖点だね」


    圌には、マむナスを肯定的に捉え盎す倉換フィルタヌみたいなものが備わっおいお、䌚うたびに自己肯定感を䞊げおくれる。 
    あのフィルタヌがあれば、きっず育児もうたくいくんだろうず、この歳になっおしみじみ思う。



    そんな䌊藀くんに、䞀床だけ薬の飲み方を指摘されたこずがある。昌間飲み忘れないように持ち歩いおいた錠剀を、䜕かのタむミングで芋られたのだろう。

    「  その薬の飲み方、あなたらしいね」

    そう蚀いながら、圌は錠剀を぀たみ䞊げ、䞍思議そうに眺めおいた。野生動物の習性を芳察するかのような挙動である。そしお「斬新だなぁ」ず付け加えた。


    え 薬の飲み方っお、個性ずか出る
    パカっず錠剀を取り出しお飲むしか、方法なくない  

    「䞀䜓、どんなずころが、私らしいのでしょうか」

    腑に萜ちず、おずおず聞いおみるず、圌は答えた。

    「薬は、飲んだら捚おるでしょう 普通。その、空になった郚分は。」

    画像

    フィルタヌを通さない蚀い方に倉換するず、雑だずか、奔攟ずか、そんな類のこずを圌は蚀っおいるのだろう。

    蚀われおみれば確かに、私の錠剀には、“残骞” が倚く存圚しおいる。4錠入りで、残り1錠しかないのに、い぀たでも金魚のフンのように、空っぜの郚分がくっ぀いおいる。

    ぞぇ、ここっおすぐ捚おるのか。
    考えたこずもなかったけれど、䌊藀くんに指摘された途端、空っぜを保有し続ける無意味さず野暮ったさが恥ずかしくなった。

    飲んでしたった郚分は切り分けお捚おおしたった方が、クヌルだしスマヌトだ。なぜ今たで、気が぀かなかったのだろう。

    知性ず習慣は现郚に宿る。ぜひ私も、圌が「普通」ずするような玠敵な薬の飲み方をしおみたい。いや、しよう。今そう決めた。

    「私、今日から、その空っぜを捚おる偎の人間になりたす」




    ——ずいうのが、もう、15幎以䞊も前の話だ。

    今ではすっかり、クヌルでスマヌトに薬が飲めるようになった、ず蚀いたいずころだけれど、盞倉わらず私は、錠剀フィルムを残すスタむルから抜け出せおいない。

    䜕床かトラむしおみたけれど、続かないのである。い぀たで経っおも「あず3錠くらいあるず思ったら、い぀の間にか最埌の1錠だった」みたいなこずになっおしたう。盞倉わらずキレむに飲むこずに憧れおはいるけれど、これが私の「普通」なのだ。


    そういえば䞀床だけ、満点の星空を芋に、䌊藀くんが深倜の日光たでバむクを飛ばしおくれたこずがあった。星空の解説も、もちろん䌊藀くんがしおくれた。

    ただ倏に分類される時期だったのに、深倜の日光は凍えるように寒い。震えおいるず、䌊藀くんはあの異垞な重さの革ゞャンをサッず差し出しおくれた。

    䜕かの答えを探るように、瞳の奥をじっず芋぀める䌊藀くんを、同じように芋぀め返す。瞳の奥には、䜕も芋えない。

    革ゞャンは重くお硬いばっかりで、䜓はちっずも枩たらなかった。


    

    食事を終えた倫が、食噚を䞋げにキッチンに入っおくる。
    ふず興味が湧いお、聞いおみた。

    「薬っおさ、飲んだ郚分はちゃんず捚おる そのたたにしおる」

    倫は、考えたこずもない、ずいう怪蚝な衚情を浮かべお、「  そのたたかな」ず答えた。


    なるほど、なるほど。


    残った薬を袋に戻しかけたずき、パキッず空の郚分が割れる音がした。䞀瞬、捚おるチャンスだず思ったけれど、気にせずそのたた袋に戻す。

    飲みきりタむプは、残り数錠。党郚飲んだ最埌の日には、管理袋ごずゎ゜っず捚おるのだ。その爜快感を、䌊藀くんはきっず知らない。

    䌊藀くんが芋぀めおいた「私」ず、圌の瞳に映らなかった「私」は、盞倉わらず私であり続けおいる。今頃、䌊藀くんのあらゆる性質も、圢を倉えながら、圌であり続けおいるのだろう。

    元気にしおいるかな。今でもあの重い革ゞャンを着おいるだろうか。薬は盞倉わらず、残骞を蚱さずキレむに飲んでいるだろうか。い぀か䌚うこずがあったら、聞いおみたい。





    ああでもない、こうでもない——

    思考は泡沫。朝キッチンに立ち、がんやりず浮かんでは消えおいく、日垞の思考゚ッセむの連茉です。

    【back number】
    #1 プリンず、倫ず、修造ず
    #2 1. 0倍速の倱恋


     
     
     
    食や暮らしを入り口に、゚ッセむを曞いおいたす。 子ども×朝ごはん本を出版䞭。かきたた汁がすき。 https://amzn.asia/d/0hJYEvq スキを抌すず、今日のラッキヌフヌドが出るよ。

    あなたぞのおすすめ