
35年会わなかった同級生と、ゴルフをして酒を飲むようになった
見世物を演じて家に着く少し前に、先ほどまで一緒にラウンドしていた友人TからLINEが入った。
「今日はありがとう。Iと飲むことになった。来る?」
社会人になってから、飲みを断るという選択肢を教えられてこなかった。
友人Tとは、35年以上会っていなかったと思う。
たまたま練習場で再会してから、4年くらい経っただろうか。
それでも、ゴルフ以外で会うことはなかった。
「あいつも酒飲むんだ?」
ちょっとうれしくなった。
家に帰って、
「Tと飲みに行く」
「あれ?団地の理事会行かないの?」
すっかり忘れていたが、
「時間的に大丈夫!」
するとTから、
「18:20家まで車で迎えに行くから!」
「飲まないの?」
「のむ!」
「了解」
代行で帰るのだと思った。
団地の理事会は予定よりも早く終わって、家で待機していた。
そろそろ来るな?
と思ってトイレに入ったタイミングでチャイムが鳴った。
家内が、
「Tさん来たよ」
「そんなこと言っても、待っててもらうしかないじゃん」
トイレを済ませてお袋に、
「気になってるんだから、会ってみたら?」
「恥ずかしいからいやだ」
家内だけがTにあいさつすると、車からIが降りて挨拶してきた。
Iの車で迎えに来たと知った。
実家とは別に住んでいて、目的の居酒屋に近いから車で迎えに来たそうだ。
「お袋に挨拶したら?って言ったんだけど、恥ずかしいって」
「久しぶりに会いたいと思って、チャイム鳴らしたのに残念だな~」
私は浪人して高専に入学したため、地元から離れて寮生活だった。
だから、地元の同級生にはほとんど会っていなかった。
Iに会うのも久しぶりだった。
Iは小学校からの同級生で、地元では裕福な家庭だったと思う。
当時マイコンとか、ゲームの最新機種を常に持っていた。
Tも私のホームコースに昔連れて行ってもらったことがあると言っていた。
でも、その父親は、そのコースでラウンド中に亡くなったと聞かされていた。
とにかく忙しい人で、あちこち出張で飛び回りながら、休みにはゴルフへ行っていたらしい。
「とにかく休まない人だった」
Iはそんなふうに振り返っていた。
いろいろなところで苦労してきているようだった。
Tに、
「そういえば、地元の新聞に載っていたよね?お袋が見て喜んでたよ!」
「やっぱり地元新聞の威力はすごいな。いろいろな人から連絡があったよ」
酒も進んでくると、友人Tの熱い思いを聞く会になった。
地方のために努力しているようだった。
Tと30分くらいの道のりを歩きながら帰った。
Tの実家は我が家から歩いて3分くらい。
Tも実家で暮らしていない。
転勤で80キロくらい離れた場所に単身赴任している。
実家はお袋さんが一人で暮らしている。
お袋さんは今でも卓球の現役選手で、家は卓球のサーブ練習ができるようになっているらしい。
今日は実家に泊まって明日の朝、職場に向かうそうだ。
会員権を買うことにしたのも、競技をやってみたいからと言っていた。
「やっぱり、競技をやらないとうまくならないのでは?」
Tが言った。
「日曜日開催の月例とかから始めてみたら?」
35年以上、ほとんど会うことのなかった同級生だった。
それが今では、一緒にゴルフをして、酒を飲んで、30分の道を歩いている。
そして今度は、同じホームコースのメンバーになる。
ゴルフを始めた頃には、こんなことになるとは思ってもいなかった。
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