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🦋場を受け渡す三つの所作②〜閉まる扉を、急がせない〜


    エレベーターに乗り込んだ。

    「本日はありがとうございました」

    扉の外で、クライアントが深く頭を下げている。

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    私はパネルの前に立ち、「閉」ボタンへ指を伸ばした。

    早く閉めなければ。

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    その時だった。

    「何を急いでおる。」

    後ろから仙人の声がした。

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    「えっ……だって、早く閉めないと相手に申し訳なくて……」

    「ボタンを押すのが悪いのではない。お前の心の問題じゃ」

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    仙人は私の指先を見た。

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    「始まりと終わりほど、人は急ぐ。」

    私は息を呑んだ。

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    私はもう一度、扉の向こうを見た。

    相手は、静かに頭を下げ続けていた。

    相手の揃えられた靴先が、まだ同じ場所に留まっていた。

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    私はパネルから指を離した。

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    扉の向こうで、相手はもう一度、深く頭を下げた。

    私も頭を下げた。

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    機械がゆっくりと扉を閉める間、私はそのまま動かなかった。

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    扉が閉まっても、私はまだ、頭を下げていた。

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    思考の庭師|キャリアの淀みを「AI×傾聴」で編集 大手生保43年(拠点長・検査役・AI開発)の現場を知るカウンセラー。傾聴による内省と、AI時代のリスキリングを繋ぎ、新たな未来を紡ぎます。「おとめのたたずまい」主宰 産業カウンセラー / キャリアコンサルタント / G検定

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