
となりのゲームは青い | 第5章 アランにまた会う日まで
前回までのあらすじ
「つくれ!この森」の配信を休止したあらたは、新しいゲーム「ポコモン」の配信を始める。配信は順調に伸び、仲間との交流も広がっていく。しかし、その楽しさの中で、学生生活が忙しくなり、ゲームや配信との向き合い方について少しずつ考えるようになっていた。
「つくれ!この森」の世界の中でアランはあらたがゲームをするのを待っている。
わたしは久しぶりに目を醒ました。
実に、半年ぶりだった。
「あらた、久しぶり。」
寝起きの一言で叫びたくなる。
あらたがまたこの森に来てくれた。
それだけで、胸が少し軽くなる。
よし、今日は頑張ってあらたのために働くぞ。
階段を降りて、家の外に出る。
あちこちに雑草が伸び、花壇はすっかり様変わりしていた。
……本当に半年も経っているんだ。
半年間、誰も手入れをしていなかったのだから当然か。
わたしは近くの雑草から一本一本抜きはじめた。
森の住民が近くを通ると、
「最近、見かけなかったね。久しぶり。」
と声をかけてくる。
もともと深い付き合いはなかったけれど、その何気ない挨拶が少し嬉しかった。
ふと、あらたの方を見る。
白いシャツに黒いスーツ。
髪もきれいにピシッとまとめている。
……あらた、ずいぶん大人っぽくなった。
今日は配信はしないのだろうか。
以前なら森に入るなり「ヤッピー!」と元気な声が響いていたのに、今日は静かだ。
ポコモンはどうなったのだろう。
この半年の間に、何があったのだろう。
色々と聞きたいことはある。
けれど、あらたは一言も話さないので、分からない。
わたしは、森の中を歩き回る。
魚を釣る、蝶をとる。
ゴルフ場を通り過ぎ、丘の上のカフェテリアへ登向かう。
辺りには、まだ雑草があちこちに残っていた。
それなのに、あらたは途中から雑草の横を素通りしていく。
……抜かないんだ。
半年前のあらたなら、一本残らず片づけていたはずだ。
花の配置も、川の向きも、少しでも気に入らなければ何度でも作り直していた。
今日のあらたは、違う。
無言で、ただ森の中を歩いている。
あの頃の目の輝きはそこにはなかった。
わたしは止まる。
丘の上のカフェテリアのハンモックに座って一面を見渡す。
あらたはそこで、ぼそっと呟いた。
「前の方がやっぱりよかったな。」
わたしはもう一度、丘の上から景色を見渡す。
あらたも、そう思っていたんだ。
ゲームの世界の海は今日も青い。
その向こうの地平線はどこまでも続いている。
この景色の青さだけは、変わらない。
「セーブして終わりますか?」
あらたは「はい」を選ぶ。
あらたの姿が少しずつ遠ざかっていく。
私はまた眠ることになる。
それでも不思議と寂しくはなかった。
あらたは変わった。
でも、この森を忘れたわけではなかった。
それだけで十分だ。
わたしは目を閉じる。
次に目を覚ますのが、明日なのか半年後なのかはわからない。
それでもきっと、わたしはここで待っている。
読んでいただきありがとうございました。
あとがき
『となりのゲームは青い』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
タイトルの「となりのゲーム」は、新しく始めたゲームだけではありません。
SNSの数字や、次に夢中になれるもの、そして人生の中で挑戦したいこと。
私たちのまわりには、気づけば「となりのゲーム」がいくつもあります。
人は何かに熱中しては、いつか別のものへ心が移っていきます。
それは少し寂しいことでもありますが、そのとき本気で夢中になった時間まで消えてしまうわけではありません。
この作品では、ゲームの中で待ち続けるアランと、ゲームの外で変わっていくあらた、それぞれの視点から、「何かに夢中になること」と「そこから少しずつ離れていくこと」を描きました。
読んでくださった皆さんにも、今夢中になっている「ゲーム」や、かつて心から熱中していた「ゲーム」があるかもしれません。
この物語が、その時間を少しでも思い出すきっかけになれば嬉しいです。
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