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となりのゲームは青い | 第4章 あらたのゲーム

    前回までのあらすじ

    アランは、女子大生あらたのログイン時間が減っていることを気にしていた。ある日の配信で、「つくれ!この森」の配信を休止しようと考えていることを知り、大きな衝撃を受ける。
    同時に、あらたは新しいゲーム「ポコモン」に夢中になっていることも知ってしまう。


    ついに、わたしはつく森の配信をやめてしまった。

    ここまでプレイしてきたゲームだ。

    決断をするまで、本当に悩んだ。

    つく森の配信を続けるかどうか、本当に悩んだ。

    一人では答えを出せなくて、配信で今の気持ちを正直に話した。

    コメント欄には、たくさんの言葉が返ってきた。

    「毎回あらたさんを追ってたので寂しいですけど、最近ポコモンばっかりやってしまいます。」

    「今は流れはポコモンだしね...。ポコモンの配信もいつも楽しみに見てます。引き続き応援しています!」

    その中には一部こんなコメントもあった。

    「ポコモンやってないからなー。わたしはやっぱり、つく森一択です!あらたさん、またつく森にも戻ってきてくれたら嬉しいです。」

    応援の言葉もある。

    引き止める言葉もある。

    どちらも嬉しかった。

    だからこそ、余計に決められなかった。

    ここまで頑張って続けてたのに。

    あんなに好きだったのに。

    やめてしまうなんて、つく森を裏切るような気すらした。

    流行に流されたと思われるのも悔しかった。

    だからこそ、

    「みんなそういう流れだよね」

    みたいなコメントはスルーしようとしても、頭の片隅に残り続けた。


    だけど現実は残酷だった。

    ポコモン発売後から、つく森の動画の再生数は目に見えて落ちていた。

    新しい動画を出しても、以前ほど反応は返ってこない。

    再生数が気にならなかったと言えば嘘になる。

    だけど、再生数だけが理由じゃない。

    本当は、自分でも気づいている。

    アップデートが終わってから、わたしはすっかり次の目標を見失ってしまった。

    前なら、新しいアイテムを見るだけで、

    「これを使って何を作ろう」

    とワクワクしていた。

    でも今は違う。

    森を歩いても、新しい景色が思い浮かばない。

    家具を並べてみても、どこかしっくりこない。

    この前は、丘の上のカフェテリアを思い切ってリゾート風に改装してみた。

    配置を変えて、木を植え替えて、家具も置き直した。

    それなりに良い出来だとは思う。

    実際、コメントでも「リゾートっぽくて好き」と言ってもらえた。

    だけど、完成した景色を見ても胸が高鳴らない。

    前ならば、何時間そこで写真や動画を撮影していたのに。

    もしかしたら、わたしはこのゲームを楽しみ尽くしてしまったのかもしれない。

    そんなことを考えるようになっていた。


    つく森は、今でも好きだ。

    だけど、前みたいな熱量でプレイできなくなっている自分もいる。

    だからこそ、一度つく森の配信から離れたかった。


    去年みたいに、1日中ゲームだけをして過ごす日は少なくなっている。

    その中で、今わたしはゲームの時間のほとんどをポコモンに使っている。

    ポコモンは、発売当初から話題になっていて、最初は少し遊んでみるつもりだった。

    でも、やり始めたら、ゲームのストーリーを進める手は止まらなかった。

    新しいモンスターを見つけられるのも嬉しい。

    つく森にも似ていて、街を作り上げる、そんな要素もある。

    気づけばハマっていた。


    一緒にはじめたポコモンの配信も好調だ。

    前と違って、発売のタイミングで配信を始めることができたのは大きいだろう。

    今まさにプレイしている人が多いからなのか、再生数はつく森時代の倍はある。

    新しいゲームだから、投稿のネタも次々と思い浮かぶ。

    動画を作れば見てもらえる。

    その手応えが嬉しかった。

    もちろん、ゲームの勢いだけじゃない。

    でも、これまで配信を続けてきた積み重ねも、少しずつ実を結び始めている気がした。

    ◇


    今日は、わたしが初めて主催するコラボ配信の日だ。

    同じようにポコモンの配信者4人で通信をして、一緒にプレイする。

    ポコモンを起動して、パソコンと接続する。

    時間になると、ユカンさん@ポコモン、まるこさん、Gameyさんが来てくれた。

    みんな年齢や性別はいまいちわからないけど、コメントをしあったりと交流がある方達だ。

    特にユカンさんはつく森時代から絡みがある。

    こうやってまた別の形でプレイができるのは嬉しかった。


    今日のコラボは1週間前に送ったユカンさんへのDMで始まった。

    あらた💬「今度みんなでかくれんぼコラボしません?前からやってみたくて……。もしよければユカンさんにも参加してほしいです!🙏」

    ユカン💬「是非是非!✨私もやりたいなと思っていました、やりましょう!」

    あらた💬「実はコラボ配信が初めてで、ちょっと緊張してます💦 よかったらお願いします!」

    ユカン💬「大丈夫ですよ!楽しみにしています!☺️」


    コラボ配信をやってみたい気持ちは前からあった。

    でも、自分から周りの配信者さんに声をかけて人を集めるのは思った以上に勇気がいる。

    だから、こうして誰かが乗ってくれるだけで、少しほっとした。

    あれよあれよと他の参加者も決まり、日程も決まった。

    ラッキーなことにママが出かける日の昼下がりにライブ配信の予定となった。

    せっかくのコラボ配信。

    今日は思いきり、楽しみたい。



    まずは、4人並んで集合写真を撮る。

    今日のイベントは「かくれんぼ」だ。

    「ヤッピー!みんな元気?あらたです!今日も配信やってきますよ~!」

    「一緒にユカンさん@ポコモン、まるこさん、Gameyさんが来てくれてまーす!拍手~!こうやってコラボするのは初めてなので、皆さんよろしくお願いします!」

    画面の向こうには、見慣れたアイコンが並んでいる。

    1年前なら考えられなかった。

    コメント欄で見かける人たちと、今こうして一緒に遊んでいる。

    「今日は待ちに待ったかくれんぼです!わたしもずっとやって見たかったんですよよね~。それでは、始めて行きますよ~!まずは、わたしが鬼やります。皆さん隠れてください!」


    隠れる時間が終わった。

    わたしはフィールド内を走り回って、他のプレイヤーを探し始める。

    みんな隠れるのが上手で、なかなか見つけられない。

    見つかるかな。

    なんとか見つけたいな。

    そう思って探していると、建物の上の方に怪しい影があった。

    「Gameyさん、見つけたー!」

    テンションが上がる。

    ただのかくれんぼなのに、ドキドキと笑いが止まらない。

    顔も知らない。

    本名も知らない。

    どこに住んでいるのかも知らない。

    そんな誰かとこんなに楽しく遊べるなんて、思ってもみなかった。


    次はわたしが隠れる番だ。 

    鬼はユカンさん。

    わたしはバレにくそうな家具の後ろに身を潜めた。

    「じゃあ今から探してくださーい!」

    ここなら意外と見つからないだろう。

    そう思っていたのに、はじまって10秒もしないうちに見つかってしまった。

    「やばい、わたし隠れるの超下手ですね~!」

    脱落したので、残り時間は鬼のユカンさんの後ろをついて回る。

    「今誰かちらっと映ってた!w」

    「Gameyさんまじでいないなw」

    なんてコメント欄も大盛り上がりだ。


    その時だった。

    ガチャリ。

    玄関の開く音がした。

    ……あれ?

    今日は夕方まで出かけるって言ってなかったっけ。

    嫌な予感がした。

    足音が階段を上がってくる。

    そして、わたしの部屋の前で止まった。

    「やばっ」

    慌ててマイクをミュートにして、ゲーム機を隠す。

    次の瞬間、ドアが開いた。

    「ただいまー。今日クッキーもらったけど食べるー?」

    ママだ。

    「あ、あの...。今インターンのオンライン会議やってるから!」

    反射的にそう答える。

    「あら、そうなの?」

    ママは部屋の中をちらりと見た。

    「うん! あと30分くらい!」

    「じゃあ終わったらねー。」

    ドアが閉まる。

    ママが遠ざかって行く音がした。

    わたしは大きく息を吐いた。

    本当に焦った。

    よりによって、なんでノックもなしにドアを開けるのだろう。

    冷や汗をかきながらミュートを解除する。

    「すみません! まさかの母乱入でした!」

    コメントが流れていく。

    「あるあるw」

    「配信者の天敵ですねw」

    わたしも苦笑しながら、ユカンさんを追いかけて再び走り出す。

    とりあえず、自分が鬼の番じゃなくてよかった。

    あのタイミングで探す側だったら、完全に終わっていた。

    ダメージは最小限で済んだような気がする。

    ◇

    かくれんぼ配信が終わってどっと疲れた。

    コラボ配信は想像以上に神経を使う。

    自分の配信だけなら好きなタイミングで話せばいい。

    でも今日は違った。

    他の人の動きを確認したり、全体の進行も気にする。

    楽しかったけれど、終わった瞬間に気が抜けた。

    部屋を出る。

    「終わったの?」

    リビングでママが聞いた。

    「うん...。」

    「何してたの?」

    「インターンのオンライン会議だよ」

    母とは目を合わせず、お茶を注ぎながら答える。

    「ふーん、今時オンライン会議なんてコメントがるのね。インターンの方はどう?」

    「まあまあだよ」

    「まあまあって便利な言葉ね」

    「便利だから使ってるんだよ」

    ママが呆れたように笑う。

    「そういえば今日の用事はどうだったの?」

    これ以上聞かれたくなくて、わたしから話題を変える。

    ママはそのまま今日の出来事を話し始める。

    よかった。

    今日はちょっとバレたかも、と思った。

    でも、この様子だとたぶん大丈夫だろう。

    ママも深くは聞いてこないみたいだ。

    このままそっとしておいてくれれば、それで十分だ。


    最近、わたしは本当に忙しい。

    大学二年生になって、インターンも始めた。

    サークルもただのんびりゴルフをしているだけじゃなくなった。

    去年よりも、ゲーム以外にも考えることが圧倒的に増えている。

    その合間を縫って配信は続けているし、ありがたいことに見てくれる人もいる。

    だけど最近は、ゲームそのものよりも、

    「次はどんな動画を出そう」

    「どうしたら再生されるだろう」

    そんなことを考えている時間の方が長い気がする。

    動画を投稿すると、再生数や「いいね」、コメント、フォロワー数が数字になって返ってくる。

    気がつけば、ゲームよりもこの数字を気にしている。

    ゲームを配信していたはずなのに、いつの間にかSNSという別のゲームを遊んでいる。

    そんな感覚すらしてくる。

    どんなに頑張っても、攻略情報なら素人は専門のサイトには敵わない。

    編集や投稿を頑張ったところで、収益が出るほどでもない。

    だから、ときどき思う。

    わたしは何を目指しているんだろう。


    来年になったら、配信をどうしているのだろう。

    考えてみる。

    就活が本格化しているだろうし、サークルも幹部の学年だ。

    大学を卒業したら?

    就職したら?

    それでもわたしは、配信を続けるのだろうか。

    正直言って、分からない。

    ただ、今は純粋にポコモンが楽しいのだ。

    見てくれる人もいる。

    一緒にプレイできる仲間もいる。

    だから、もう少し続けてみようと思う。

    答えなんて、そのうち見つかるかもしれない。

    ポコモンも、配信も、大学生活も。

    きっとまだ全部、道半ばなのだ。

    そう自分に言い聞かせながら、わたしはスマホを開く。

    気づけば、今日の配信動画の再生数を確認していた。




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    ・次の話 →明日公開予定

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    週6フルワンオペの女医。 孤育てに悩んだ経験から、Kindle3冊を出版。子育てや社会のモヤモヤを発信しています。 一緒に考え、自分なりの答えを見つけられる場所を作りたい。 amazonアソシエイトプログラムに参加しています。

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