
山の中での脱輪、その先に待っていた出会い −「ごえん」を巡る旅 ジュリアン・シニョレ展が開催されるまで 2.大三島
大三島美術館で開催される企画展、ジュリアン・シニョレ「ごえん」。
フランスを拠点に活動する彫刻家である彼が、なぜ瀬戸内の大三島美術館で企画展を開くに至ったのか。そのきっかけは、2024年に彼が瀬戸内を訪れたことにありました。本記事では、ジュリアン・シニョレへのインタビューを通じて、彼が大三島へと導かれた「ごえん」を巡る旅のストーリーをお届けします。
脱輪というアクシデント、そこから生まれたごえん
−そこからなぜ大三島を訪れることになったんですか?
ジュリアン:僕の創作活動にとって、「3(さん)」というのは欠かすことのできないテーマだった。「Ⅲ」(フランス語でトヮ)という作品 (アラバスター石、ステンレスミラー、京都の絵具の三つの素材からなる空間展示)も2023年に制作しているし、とにかく「3(さん)」からインスピレーションを受けることが多かった。大三島の「三」という文字は「Ⅲ」を横にしたもので、同じ「3(さん)」という意味をもつ漢字。「3(さん)」に惹かれて訪れたんだ。
−大三島の誰も人が通らない山中で、のりひろさん(※4)に助けてもらって、そこから大三島の方々との交流が始まったと聞きました。そんな細い道を走っていたということは、何か行きたい場所や、見たいものがそこにあったんですか?

ジュリアン:(とてもおどけた表情で)理由なんて何もない。僕はいつも人がいない場所へ行く。人がたくさんいるところにはあまり興味がなくて、人が少ない方へ、行ってみたい方へ車を走らせていたら脱輪してしまったんだ。本当に困ったよ。どうしようかと途方に暮れていたところに、のりひろさんが通りかかってくれて助けてくれた。神様だと思った。
それでどうしても御礼がしたい。お祈りがしたい。どこかそういう場所はないか?と聞いて、だったら大山祇神社がいいよって神社を教えてもらったんだ。

(※4)渕崎 哲弘さん 2019年、大三島へ移住後バイク・カブの魅力に惹かれ、本業の傍らしまなみかぶぬしミーティングの広報、参謀として開催運営を担う。初回から100名を超えた同イベントは、現在では500名を超えることもある。
だけど神社に行こうにも足はドロドロで、裸足で、神様に会えるような格好ではなくて、どこかで何か靴が買えないかと思って入ったのがしまなみアディクションズだった。そこで出会ったのがしんぺいさん(※5)。
しんぺいさんのお店には履き物がないからって近くのスーパーならあるんじゃないかって教えてもらった。その時はまだ大島に拠点があったけど、大三島に移ろうかなと思って、キャンプ場を尋ねたらすぐ近くに台キャンプ場があることも教えてくれたんだ。
(※5)小林 晋平さん アーティスト、しまなみアディクションズ店主。刺繍する絵の作成から刺繍まで全て自分の手でおこなう。2025年には大三島美術館にてMojorizen(しまなみアディクションズ)名義で触れるアート作品として刺繍を展示。
それで大島から大三島に移って、滞在が始まった。

パリの彫刻家ジュリアン・シニョレが瀬戸内大三島で紡ぐ「ごえん」島のひとと共に創る空間芸術インスタレーション
会期:2026年8月13日〜9月23日
Omishima Museum of Art Special Exhibition "Goen" | Julien Signolet
企画展公式Instagram
ジュリアン・シニョレ (Julien Signolet)
2007年よりパリ11区のアトリエを拠点に、木から石に至るさまざまな素材と対話を重ねながら、東西に通じる精神性をテーマに制作を行う。
日動画廊パリにて定期的に展覧会を開催。
近年は、展示空間全体を用いたインスタレーションへと表現を展開する。
パリ・ニュイ・ブランシュ(白夜祭)では、Saint-Séverin教会(2020年)Saint-Leu-Saint-Gilles教会(2021年)にて制作・展示。続くCollège des Bernardinsでの大規模インスタレーション(2023年)には、2か月で一万人が来場した。
日本での主な活動:
・アンスティチュ・フランセ関西(2013年)
・東京銀座 K’s Gallery(2020年)
・現代アートフェスティバル「Art Islands Tokyo」(2019・2020年)
・京都祇園 山添天香堂(2022年・2025年)
・BIWAKOビエンナーレ(滋賀県近江八幡市/2022年・2025年)
2025年秋開催の国際現代アートフェスティバル BIWAKOビエンナーレでは、重要文化財「旧西川邸」にてインスタレーションを行う。
大三島美術館
大三島美術館は、「作家と共に歩み共に成長する美術館」であることを活動理念とし、収蔵展示をおこなっている。収蔵品は、中堅・人気日本画作家らの若き日の作品を中心に、今治市出身の智内兄助画伯の作品、さらに田渕俊夫氏の素描や下絵を含め、総数1,000点を超える。また、質の高い浮世絵作品も併せて収蔵しており、多彩な日本美術の魅力を感じられる。これらのコレクションを年数回の展示替えで紹介していくと同時に、作家との交流を活かした企画展も開催中。