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Photo byryonaga77

【療育探偵10】療育最後の支援計画|ゾンビで遊び学んだ3ヶ月

    はじめまして、emcOmi_in_progress です。

    このnoteでは、
    家族を守るために「仕組み」で戦ってきた
    私の実体験を綴っています。


    ​幼稚園生活も残り半年を切った、年長の10月。

    小学校進学という「息子の門出」を前に、
    私と療育の先生は、ある心配を抱いていました。


    ルールと集団行動が大切になる小学校。


    ​息子の純粋な優しさから生まれた行動が、
    集団の中に埋もれ、
    結果だけを見て「突発的で奇妙な子」と、
    先生やお友達に誤解されるのではないか。

    息子の優しさが誤解されることを防いであげたい。

    ​そんな中、療育の先生から手渡された、
    就学前、療育最後の支援計画。

    【目標】
    ①​自分の行動に対して
     「どうして◯◯なの?」と尋ねられ
     理由を答えられる

    ②​行動の前に「◯◯してもいい?」と
     先生やお友達に許可を求められる

    ​③位置を表す言葉を使って話す

    ​④目的語と述語を組み合わせて2文以上で話す


    一見、シンプルな
    コミュニケーションの練習のようですが、
    親や療育の先生という「通訳者」がいない環境で
    息子を誤解から守るための計画。


    門出の先にある、
    親の不安や息子の壁を少しでも取り除こうと、
    療育の先生方の優しさが込められた、
    最後の伴走計画だったのです。

    ​ここから、息子を新天地へ送り出すための、
    最後の伴走が始まります。



    ​1. 脳内ワールドの衝突:ゾンビとルール

    ​10月、幼稚園訪問支援の記録に、
    微笑ましくも少し心配な出来事が記録されました。

    ​園の先生からのコメント

    運動会のリレーの走順決めのくじ引きでアンカーになりました。アンカーで走る際、後ろから追いかけられるゾンビゲームと思い、銃で撃ったりする素振りをして全力で走ることが難しいです。

    ​
    お友達が「勝ちたい!」と必死にバトンを繋ぐ中、
    息子の脳内では


    「迫り来るゾンビから身を守るために銃を撃つ」

    という、正義のミッションが発動していたのです。

    本人は本当に楽しんでいるはず。


    けれど、周囲からは
    「ふざけて全力で走っていない」と
    誤解されかねない

    ――まさに、最後の支援計画で、
    ワクワクとルールの狭間をつなぐ手立てが
    必要とされたワンシーンでした。

    ​この脳内の「ワクワクマイルール」を、
    適切に周囲と共有し
    「ワクワク」を一緒に掛け合わせるブーストに
    アップデートしてあげたい。

    療育のレッスンでは、
    先生たちの見事なバグ取りが始まりました。

    ​先生たちは、
    息子が大好きな「ゾンビ」を否定せず、
    むしろ最高の教材として活用したのです。

    ​療育の記録(10月)

    先生は息子のために、
    ゾンビやモンスターを使った教材を作り、
    会話を広げます。

    先生がイラストを提示して、

    「何してる?」 

    「ゾンビ、爆弾、死んでる」

    「モンスター、壁壊してる」


    絵の具塗りの課題

    「青と黄色、混ぜたらどうなるかな?」

    「先生見せて!気になる」

    「ちょっと待って、もう一回見せて」



    先生から「何を塗るの?」と聞かれ

    「ゾンビぬる」

    自分の使いたい色を先生に伝えたら、
    先生が色を準備してくれるルール。

    黒、赤、青、白は自立で答え、

    色の名称が出てこない時は先生の発話を真似て

    「きみどり、きいろ、みずいろ、ちゃいろ」

    大好きなゾンビで言葉を引き出す、
    見事な仕掛けでした。


    画像
    レッスン中に描いたゾンビ


    ゲームの準備中

    「先生テープ切るから、端っこに貼って」

    「おっけー、貼る」

    ゲームの時間に向けて、
    先生と合いの手を交わしている。

    療育に通い始めた頃は、
    指差しで要求を伝えていた息子。
    もう言葉の重りはなくなっています。


    レッスンの休憩時間

    「先生、ゾンビゲームやって」

    「先生、逃げるやって」

    「先生、拭き拭きティッシュちょうだい」

    言葉で自分の要求を伝えている。


    次のステップは、相手が自分の希望をどう思うか、
    まず聞いてみる練習です。

    先生の模倣をすることで、

    「休憩していい?」

    「ゾンビゲームやっていい?」

    お友達との対話も「ゾンビ」をきっかけに
    先生が広げてくれます。

    先生の真似をして、


    「〇〇くん、ゾンビする?」

    お友達の名前を呼んで誘う。

    ワクワクをお友達と共有する
    たどたどしいスタートでした。

    さぁ、お友達は
    「ゾンビってなに?」の状態です。


    先生から言葉の選択肢を貰いながら、


    「バン!先生うで爆発、ゾンビ死ぬ」


    銃で腕を撃ったらゾンビが倒せるという
    「ワクワクマイルール」をお友達に説明する。


    「ゾンビ」が言葉を押し出す力のスゴさよ。


    ​ただ突っ込んでいくと怖がられる。
    だから先生は、

    「まずお友達の名前を呼んで、
     相手の意識をこちらに向けて、
     ルールを説明し、ワクワクに巻き込む」


     経験を積ませてくれたのです。


    ​この時期、
    幼稚園の工作の時間でも変化が現れました。

    切り終えた画用紙を頭に乗せて
    「見て、おもしろい?」

    リンゴを制作して
    「ねえねえ見てみて、毒リンゴだぞ」

    お友達に話しかけ、笑いを取りにいったり。

    さらに自由工作では、

    「銃作る、先生描いて」

    ヘルプを求めた後、担任の先生から
    「どんな銃を作りたいか絵で教えて」と返される。

    自力で画用紙に、作りたい銃の絵を描き、
    先生に見せて伝えたのです。
    先生の狙い通り、
    自分のワクワクを作品にできました。

    ​ワクワクを共有する「設計図」を描き、
    お友達と次々と繋がり始めたのです。




    ​​2. 嫌なときこそ「紡ぐ」・行動の前にノック

    ​11月、療育で練習していた「言葉の型」が、
    息子の心を守るための盾として機能し始めます。

    ​幼稚園年少、年中の頃なら、
    しんどい時に壁際でいじけたり、
    部屋から逃げ出したりしていたかもしれません。


    年長11月、息子は「拒否の理由」を言葉で
    示し始めたのです。


    ​療育の記録(11月)

    マンツーマンレッスンでのワンシーン。

    ​・レッスンの部屋に入りたくない理由
     「ゲームやりたかった」

    ​・お絵かきの課題で「もう眠い」と言い、
     理由を聞かれ「難しいから」

    ・​成果物に記名する際「できない」と言い、
     理由を聞かれ「名前かけない」​

    ・リース作りの時間
     「難しいから先生やってよ」

    ・レッスンの部屋から出たい理由
     「丸い積み木が欲しいから」
     先生から提示された選択肢から選び伝える

    ​黙るのではなく、
    眠くて、この課題は難しい。
    名前が書けないから手伝ってほしい。

    自分の想いを、これまで獲得した語彙を紡ぎ
    言葉で伝えているのです。

    理由が伝わるからこそ、
    先生も「じゃあ、一緒に名前を書こうか」と、
    正しい環境調整(ヘルプ)に入ることができます。


    ​さらに療育の集団レッスンでは、
    学校仕様のノック(許可)が駆動し始めます。

    ・先生がみんなに絵本を読んでいる最中、
     話したいことがあると、
     先生の補助を受けながら手を挙げ、

     「話してもいい?」

     質問してから話し始めることができたのです。


    ・お友達が使っているボールが欲しい時も、

     「ボール使っていい?」


    ・休憩時間、
     「水飲みに行っていい?」
     「先生、乗っかっていい?」
    (おんぶしてほしい)

    希望をぶつける前のノック

    これ、大人になっても大切なことですよね?


    ​小学校という新天地で
    トラブルメーカーにならないための、
    「許可を求めるノック」が駆動し始めました。


    嫌な気持ちを伝えられる、
    お友達に向けた事前のノックができるようになり、
    交流が増えていきました。

    ・おもちゃでサーキットを作る場面
     「そっちちょうだい」とお友達と協力する。

    ・ドッチボールの場面
     フィールドが狭いことの驚きを先生に
     「近すぎる」と伝えたり、

     お友達に「線出ないで」と
     与えられたフィールドで
     ボールを当てられないように交渉する。


    ​この療育でのトレーニングは、
    幼稚園の日常を劇的に変えていきました。


    ​幼稚園訪問支援の記録(11月)

    ​園庭に出る際、
    「ねえねえ、一緒に行こ」
    自分からお友達を誘って一緒に園庭に向かう。


    ​お友達から
    「鬼と逃げる、どっちやりたい?」と聞かれると、
    「逃げる逃げる」と希望を伝える。


    ​氷鬼やドロケイで遊んでいる最中、
    鬼役のお友達に
    「疲れた、休憩したい」と伝えることで、
    ひと休み。


    訪問支援の記録にあった​園の先生のコメント

    お友達と関わる中で少しずつ自分のしたい遊びを伝えられるようになってきている。集団活動に拒否感はなく、関心のない活動でも参加できている。参加したくない活動のときは離席するのではなく「疲れた、休憩したい」と先生に言葉で伝えてから活動を終えることができている。




    ​​3. 支援計画の進捗:ワクワクの設計図を描く

    ​12月、冬休み前のトレーニングの成果が、
    幼稚園で発揮されました。

    ​冬の園庭、お友達とのドロケイ遊び。
    ワクワクをお友達と掛け合わせる息子の姿がありました。


    ​幼稚園訪問支援の記録(12月)

    鬼が近づいてくると、

    「やばいやばい、鬼きた、逃げる」

    お友達と感情を共有し、
    捕まったら自ら牢屋(ベンチ)まで進み

    「誰かー!助けてー!」と叫ぶ。

    ​

    ドロケイのルールの中で、お友達にヘルプを出す。

    これまで療育で培ってきた
    「助けを求める力(SOS)」を、
    遊びの中で自然と実践していました。

    お友達もまた、その声に応え、
    一緒にワクワクを掛け合わせていたと思うと、
    とても嬉しかった記録。

    ​そして、12月の療育の記録が、
    支援計画の達成度の進展を証明していました。


    ​療育の記録(12月)

    ​【目標①】
    自分の行動に対して「どうして◯◯したの?」と
    尋ねられて理由を答えられる

    かつては「イヤだ」という感情を、
    部屋の片隅でいじける方法でしか
    表現できなかった息子が、

    ​「どうして〇〇なの?」という問いに対し、
    「のりが手について不快だから」
    「負けるのが悔しいから」という自分の内面を
    言葉に乗せて伝えられるようになっていたのです。

    ・教室の外に出たい理由を問われ
     「疲れた、休憩したい」

    ​・工作をやりたくない理由
     「やらない、ペタペタやだ」
     
    (のりが手に付く嫌悪感の言語化)

    ​・手を洗いたい理由
     「ペタペタになった」

    ・クイズをやりたくない理由
     「クイズ難しいよ、やだよ」

    ・​しっぽ取りゲームの後、
     もう一回やる?と聞かれ
     「やらない、ぼく負ける」
     (悔しい気持ちの自己開示)


    ​【目標②】
    行動の前に「◯◯してもいい?」と
    先生やお友達に許可を求められる

    小学校という新しい集団生活で、
    息子の「突発的な優しさ」に
    ルール違反のレッテルを貼られないためのノック。

    自分の欲求で動く前に、危険な道具に触れる前に、
    一歩踏みとどまって「相手の感覚」にノックする。

    誤解から息子を守る防風林が育っていきました。

    ・工作でパチンコを作った後
     「先生、打っていい?」

    ・先生の使うカッターを貸してもらいたい時
     「先生、カッター使っていい?」


    ​【目標③】
    位置を表す言葉を使って話す

    指差しでの意思表示から、
    細かいニュアンスまで伝えられる言語通信へ
    アップデート。

    ​・的あての際
     「先生は黄色の線の外からボール投げて」
     (位置の指定)

    ・ゾンビゲーム(遊び)の要求
     「先生、そこにゾンビ出して」
     「先生、右、左」
     「先生、2番ね」
     「先生、次ぼくの番だから持ち上げて」

    ゾンビゲームで位置調整をお願いする姿は、
    自分のイメージを言葉を使い、
    他者とチューニングできている証でした。


    ​【目標④】
    目的語と述語を組み合わせて2文以上で話す

    脳内ワールドのプレゼンテーション。
    パパや療育の先生という
    「通訳者」の助けを借りず、周りの人を
    自分のワクワクの世界に招待してみせたのです。

    ・エ作でガトリングガンを作りたい時
     「100、弾いっぱい出る」
     「ダダダーってなる銃」
     「弾、上から出てる」


    ・お友達に紙コップ人形の使い方を説明する場面
     「電池、輪ゴムクルクルして、ダーするよ」

     言葉だけでなく、実演を組み合わせながら、
     お友達に一生懸命レクチャーする姿。




    ​4. なんとかなるかも


    ​当時の記録を振り返り、noteに纏めながら、
    ありがたい時間を過ごせていたことを、
    いま再び噛み締めることができました。

    ​お友達との関わりのなかで、
    自分の想いを言葉で伝え、お友達の言葉に応じ、
    園生活を楽しく過ごせていた。
    園で自然なやり取りができるまで
    成長してくれたことを嬉しく思う。

    当時を振り返って

    ​

    ​幼稚園のクリスマス会、先生から
    「3人で座ってね」と言われたとき、

    お友達から
    「こっちに座る?」と声をかけてもらい、
    嬉しそうに隣に座り、みんなと手を繋いだ息子。


    ​その何気ない日常、

    お友達から
    「手をつなごう」と言われ、
    「こっちだよ」と手を引かれる息子。


    お友達とのあたたかい関わりの後ろには、

    息子が療育の先生と遊びながら
    手に入れた仕組みがあり、

    遊びの中で
    苦手を克服するための練習とは感じさせない
    プロの仕込みがありました。

    ​息子の言葉は、ジェスチャーから、
    だれもが解読できる、
    そしてみんなと笑顔で繋がることができる、
    優しい言葉に移り変わっていったのです。


    ​自分の困り感を説明し、

    行動する前に相手に許可を求める。

    自分のワクワクを言葉で伝え、

    お友達とワクワクを掛け合わせる。


    小学校進学を前に父の心配は絶えませんでしたが、

    「なんとかなるかも」

    希望も持てるようになりました。




    5. 結びに

    運動会、発表会など、幼稚園最後となると、
    親の期待が自然と高まってしまいます。

    この年長の時期は、親にとって
    特別な思い出になるイベントが続きます。


    リレーの練習で「ゾンビが来る!」と
    銃を撃って全力で走れなかった息子が臨んだ
    幼稚園最後の運動会。


    そして、
    私の涙腺が跡形もなく崩壊することになった
    幼稚園最後の発表会。


    ​息子の成長は、父も予想しなかった
    彩り豊かなクライマックスを見せてくれたのです。

    ​(最終章へつづく)



    ​私の言葉が、
     日々、大切な人を支えるため
      不安と闘っている誰かの、
       足下を照らす小さな灯火になりますように。


    ​emcOmi_in_progress


    ​✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡

    ✔子育ての先の見えない不安が「息子の個性」を紐解く探偵の始まりでした。


    ✔助けを求める力が芽吹き始めた頃の記録です。


    ✔最終章のはじまり。幼稚園最後の運動会。
    我が子の凸凹に悩むすべての人へ。


    ✔療育探偵シリーズを振り返りたい方はこちら


    この記事が参加している募集

     
     
     
    ​家族を守る防波堤。発達凸凹長男、癇癪次男、鬱と依存を抱える妻。戦場からの帰還を目指し、育児の悩みを偵察する【探偵】であり、負の感情と戦う【兵士】。親の物差しを捨て【愛を仕組みに、日常を自伝に】家族の世界を彩る。いつか大人になった息子たちが誇れる足跡を残す。固定記事・マガジンへ⇩

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