
【療育探偵05】息子を二度と「社会の迷子」にさせないための誓い
療育の帰り道、
いつものフードコートでのランチ。
どこにでもある日常の風景が、
一瞬に「危機」に変わった日がありました。
ショッピングセンターで起きた息子の迷子事件。
必死で駆けずり回った数十分の果てに、
私を待っていたのは、
再会の安堵だけではありませんでした。
社会の荒波の中で、
息子を守るために必要なものは何なのか。
私の「仕組み作り」の源動力になっている、
忘れられない事件を綴ります。
1. かくれんぼから「危機」へ転落
療育レッスンの帰り道。
いつもの公園で遊び、
いつものフードコートでランチを済ませる。
余裕がある日はショッピングセンター近くの
ゲームセンターで少し遊んで帰る。
これが私たち親子のルーティンでした。
その日も、私は次男を乗せたベビーカーを
片手で操作しながら、
空いた食器を返却口へ運ぼうとしていました。
息子にとって、それは「かくれんぼ」の合図。
人混みやテーブルの影に身を潜める。
私が食器を戻す間に、彼は愉快そうに姿を消す。
いつもなら、視界の端で
彼が楽しそうにパパから離れていく様子を
捉えられていたはずでした。
しかし、この日、食器を運びながら、
「!?……いない」
2. 高速の思考、重いベビーカー
ベビーカーを押しながら、
探しに行くにも食器が邪魔。
食器を戻すにも人混みでなかなか進めない。
苛立つ気持ちが湧き上がります。
ようやく食器を棚に置き、
振り返った私の目に飛び込んできたのは、
行き交う人波、食事を楽しむ人々でした。
私は再びベビーカーを押しながら、
人混みをかき分け、
ところ狭しとテーブルが配置されたエリアを抜け、
ベビーカーでもまだ動きやすい通路エリアに出ました。
通路エリアからテーブルエリアを見渡す。
「……いない」
広いフードコート、少し移動しては
テーブルエリアを見渡す。
「……いない」
フードコートの端まで移動したが見当たらない。
今度はベビーカーを押しながら、
狭いテーブルエリアの中を縫うように進みつつ探す。
「……いない」
脳内で、
幾つものシミュレーションが火花を散らす。
①まだフードコート内に潜んでいる。
②エスカレーターを使ってショッピングセンターの迷宮へ。
③外に出た。いつものゲームセンターを目指して。
外に出たとしたら……
刻一刻と悪い予感が膨らんできます。
「無理だ、一人では探せない」
私は店員さんを探しつつ、
メモに自分の連絡先を書く。
見つけた店員さんに
「息子が迷子です、
外に出たかもしれないので、私は外を探します。
ショッピングセンターの中をお願いします
もし見つけたら、ここに連絡してください」
メモを渡して、私は外へ。
息子が通るであろう道、ゲームセンターの中。
いつもの景色……。
行き交う人々の間で、ベビーカーを押しながら
必死に息子の影を探す。
「無理だ、一人では探せない」
3. 命綱の「着信」
もはや、お手上げでした。
駅前の交番へ飛び込み、
警察官たちに、事の経緯を説明しました。
「捜索に向かいます」
その頼もしい言葉と裏腹に、
私の心は少しの安心と
「もし、このまま見つからなかったら」という
不安で揺れ動いていました。
その時、ポケットの中のスマホが震えました。
「……はい、そうです。
息子です。受付ですね、今すぐ行きます」
警察官の
「迷子のときは、すぐに頼ってくださいね」
という言葉が、
安堵し心が軽くなったばかりの私の胸に
温かく広がりました。
私は再びベビーカーの車輪を回し、
ショッピングセンターの受付へと急ぎました。
しかし、そこで待っていたのは、
安堵だけではありませんでした。
4. 再会、そして「宣告」
ショッピングセンターの受付の隅。
赤く目を腫らし、
泣きじゃくる息子の姿がありました。
「……よかった、いた」
全身の力が抜けるような安堵。
諸所手続きをしながら、
息子に声をかけようとした私を止めたのは、
受付の方の、どこか困惑を含んだ言葉でした。
「お父様で間違いないですね。……実は、
この子に自分のお名前や
親御さんのお名前を聞いたのですが、
全く分からなくて。
なかなかコミュニケーションが取れず、
どうしようかと困っていたんです」
その言葉は、
刃物のような鋭さで私の胸に刺さりました。
「こんなに泣いているんだ。
ふつうに話せるわけがないだろう」
心のどこかで
そう反論したくなる自分がいました。
しかし、
同時に別の自分が、冷静に事実を受け止めます。
「まだこの子は自分の名前や、
家族のことを説明できないんだ……」
幼稚園や療育という
「守られた温室」の中で通じていた言葉は、
一歩外の世界に出て、
自分の身を守らなくてはならない場面で
通用しなかった。
現実と、目指すべきゴールの絶望的なほどの「差」。
それを痛感した瞬間でした。
5. 「かくれんぼ」の終焉と、父の使命
この日を境に、
息子はショッピングセンターでの
「かくれんぼ」をやめました。
あの日、一人で社会に取り残された恐怖は、
彼の中に
「パパの手を離してはいけない」という
教訓を刻み込んだのでしょう。
育児において、
これは「不幸中の幸い」だったのかもしれません。
また、今回の出来事は
私にとっても重要な岐路にもなりました。
「今回のようなピンチの時、
誰が相手でも、どんな環境でも、
自分を助けるための対話ができるように導く」
あの日感じた、
現実とゴールの差を埋めること。
それが、
父親としての私の「使命」になったのです。
息子がいつか私の手を離れて
一人で歩き出すその日のために。
個性を活かしながら、
この先の社会をサバイブするための「仕組み」を
解き明かし、ともに構築し続ける。
パパとして、そして息子の未来と社会をつなぐ糸を手繰る「探偵」として、
挑戦し続けることを決めました。
現実とゴールの差は、
まだまだ遠いかもしれません。
けれど、立ち止まっている時間はありません。
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
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〜あの日、私たちを助けてくれた皆さまへ〜
あの日、私はパニックでしっかりと感謝を伝える余裕はありませんでした。
ショッピングセンターの店員さん。
息子を保護し、見守っていてくださった受付の方。
そして、「いつでも頼ってください」と優しく送り出してくれた警察官。
皆さまのお力添えがあったからこそ、今の私たちがあります。
この場を借りて、心より感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
・「現実とゴールの差を埋める」使命に気づいた後、療育の偵察にも力が入ります。
・あの日、迷子になって私を絶望させた息子は、
数年後、パパの心を救う「守り神」に
なってくれました。絶望の先にあった、
温かい光の物語です。
・今回の「使命」の前に、
どのような試行錯誤を繰り返してきたのか。
この先にどんな成長があったのか
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