
【療育探偵06】息子の「寝そべり」はやる気のなさか、それとも「優しさ」か
はじめまして、emcOmi_in_progress です。
このページに立ち寄っていただき、
ありがとうございます。
このnoteでは、家族を守るために
「仕組み」で戦ってきた私の実体験を綴っています。
前回の記事で、
私はショッピングセンターで息子を見失った、
あの絶望的な一日のことを綴りました。
▶︎あの日、受付で突きつけられた「現実」が、
私の使命になりました。
受付で泣きじゃくっていた息子。
その姿から私が得たのは、
二度と彼を「社会の迷子」にさせないという、
父としての、そして「探偵」としての覚悟でした。
あれから、私の偵察のギアは一段上がりました。
療育2年目、年長。
小学校進学という大きな節目を目指して、
療育では「マンツーマン」に加え、
小学校を意識した「集団レッスン」が
始まりました。
社会の荒波で
自分の身を守るための「道具」を、
いかにして揃えていくか。
今回は、環境が激変した4月の記録を、
一人の父であり、彼の個性を紐解く
「探偵」の視点からお届けします。
1. 偵察のギアを上げる:進学へのカウントダウン
あのショッピングセンターでの迷子事件。
受付で突きつけられた
現実とゴールの「差」を痛感した私は、
それまで以上に「探偵」としての眼差しを
研ぎ澄ませていました。
療育2年目、年長。
小学校進学の大きな節目を意識してしまいます。
この1年、私たちは、
マンツーマンの「個別レッスン」に加え、
子ども6人による「集団レッスン」が始まりました。
長年お世話になっている
療育の先生方への信頼は揺るぎないものでした。
だからこそ、私は「お任せ」するのではなく、
親だからこそ見える息子の特徴を言語化し、
先生方へフィードバックすることで、
息子に最適な支援の形を
一日も早く作り上げたいと考えたのです。
偵察のギアを一段上げる。
あの日、受付でただ泣いていた息子が、
社会で自分の身を守る「道具」を作る場を整える。
この時期の支援目標は具体的なものでした。
【わかりやすく伝える】 3語文で自分の要求を伝える
【状況を説明する】 「何してる?」に主語・目的語・述語で答える
【世界の解像度を上げる】 生活動作・道具のイラストを見て名称を正しく答える
これらは単なる学習目標ではありません。
「社会」とつながるための命綱を
しっかりと編み上げようとしているのです。
2. 「ラボ」での武器製造:世界を描写する3語文
個別レッスンという「ラボ」では、
この命綱の「型」を
インストールする作業が続きました。
療育に通い出した頃は、
単語や先生の手を引くといったクレーン現象で
先生の視線を向けてもらっていた息子が、
4月からのレッスンで明確な変化を見せ始めました。
「先生、消しゴム、貸して」
「できない、先生、やって」
お絵かきの場面、
丸いスタンプがないことに気がつき、
「丸、どこ?」
工作の場面、
のりがないことに気がつき、
「のり、ないよ」
一音ずつ言葉を紡ぎ、
自分を取り巻く世界を少しずつ描写していく。
外の世界と繋がるための「命綱」が
少しづつ編み進められているかのようでした。
3. 集団レッスン:浮かび上がった「優しさ」と「崩れ」
ラボで磨いたスキルは、集団レッスンの場で、
私の想像を超えた形で現れました。
できたことの「光」と、
まだ乗り越えられない壁としての「影」が
混在していました。
他者への目配り(4月1週目 集団初回)
自分の課題をこなす傍らで、
彼は周りを見始めました。
お友達とトイレへ行き、
一人でレッスンの部屋に戻ってくると、
一緒に行ったはずの子が戻ってこない。
再びトイレに向かい、戻ってくる子を出迎え、
一緒に教室に戻る。
幼稚園で「優しい」と言われており、
療育の場でも優しさ発揮できた。
環境が変わっても発揮できる彼の強みであろう。
「静と動」の切り替えに潜む壁(4月2週目)
しかし、集団のルールは時に悲しいものです。
この日は、みんなで挙手をする場面で
自分がなかなか指名されず、
部屋の隅で拗ねてしまう一幕がありました。
さらにその後の「切り替え」も困難を極めました。
思い切り走り回る課題で高ぶった心身は、
次に続く「静かに座って絵本を読む」という
静寂の課題に対応できなかったのです。
一度解き放たれたエネルギーを制御できず、
再び室内を走り回ってしまう。
あの日も、受付で泣き続けていたのだろう。
ここでも彼は高ぶる感情を
「言葉」や「理性」で統治できずにいました。
この時期の偵察で浮き彫りになったのは、
彼自身の「振れ幅」の大きさでした。
前述の4月1週目のように、
しっかり課題に取り組める日もあれば、
4月2週目のように崩れてしまう日もある。
「この前はできたのに、なぜ今回はできないのか」
その答えを探すことも、
探偵である私の重要なミッションとなりました。
欲求のコントロール(4月3週目)
それでも、彼は一歩ずつ前に進みます。
一週間後の集団レッスンで、二組に分かれ、
「だるまさんが転んだ」を通じた
ルールを守る課題がありました。
一方の組が遊んでいる間、
他方のグループは椅子に座って順番を待つ。
待っている間、息子は、
楽しみで椅子からお尻が浮き上がりながらも、
何度も自分を律して座り直しました。
かわいらしい姿でもあり、自分の欲求より
ルールを優先できた立派な姿でもありました。
「対話」の種(4月4週目)
紆余曲折ありながら確実に学習していきました。
集団レッスン中、
自分の課題をすべて終えた後のことです。
溢れ出しそうなエネルギーを抱えながらも、
突発的に走り出すことはしませんでした。
「先生、遊ぶ」
先生のもとへ行き、
許可を得てから走り出したのです。
「走りたい」という欲求と、
「今は課題の時間」というルールの間で、
自分の願いを叶えるための
「対話」が生まれた瞬間でした。
2週間前の「暴走」から「対話」へと、
進化し始めていたのです。
4. 幼稚園での生存戦略:「センサー」
訪問支援で見えてきたのは、
彼なりの知性あふれる適応戦略でした。
「廊下の住人」だった年中時代を経て、
年長の彼は、クラスの真ん中で、
10分間、先生の話を聞いています。
担任の先生の口頭指示が分からないとき、
彼は代わりの情報を集めます。
「周りの子の動きをじっと観察し、
一歩遅れて自分を合わせる」という
戦略をとっていました。
個別レッスンで学んだ「状況を理解する力」が、
ここでは「友達をセンサーにして動く」という
サバイバルスキルに昇華されていました。
5. 「不適切」の正体:5月頭の寝そべり事件
しかし、5月1週目の集団レッスンで、
一見すると「後退」に思える行動が目撃されます。
彼は椅子から立ち上がり、
机に上半身をだらりと投げ出す、
やる気がないような姿勢をとり続けていました。
この時は、先生から促されても姿勢が戻らない。

私はモニター越しに、
その情景を注意深く観察しました。
なぜ寝そべるのか、そこで見つけたのは、
偶発的に生まれた不平等、
ミニマライズされた社会でした。
この考察を伝えるために、
まず教室の配置を下の図で説明します。
中央の四角が机、
青い丸が息子、緑の丸が同じレッスンの子、
ピンクが先生、WBがホワイトボードです。

物理的死角
右利きの先生が、ホワイトボードを指したり、
絵本を右手に抱え、絵本をのぞき込むと、
その大きな背中が、息子の位置からは
完全な「壁」となってしまいました。
【仮説】
息子が机に寝そべっているのは
ホワイトボードや絵本を見るためではないか?
優しさと創意工夫の「寝そべり」
なぜ寝そべる姿勢なのか?
机に両手をついて、前のめりになる姿勢でもよい。
息子は、先生の体でホワイトボードが
見えなくなることが分かっている。
上半身を前のめりにすると、自分の体で
他の子がホワイトボードが見えなくなる、
そう考えたのではないか。

見たいけれど、
立ち上がれば他の子を遮ってしまう。
椅子に座れば自分が見えない。
彼が選んだ「寝そべり」は、
「なんとか見たい、でも邪魔はしたくない」
「他者との共存」のための優しさと
精一杯の工夫だったのです。

6. 結び:設計で「優しさ」を救い出す
「集中力がない」とラベルを貼る前に、
「環境設計」を疑う。
個別レッスンで「言葉」を編み進め、
集団レッスンで
持ち前の「優しさ」や「創意工夫」を発揮する。
しかし、環境がそれを摘み取ってしまうなら、
設計図を書き換えるのが私の役目です。
私はすぐに先生へ、
死角をなくす環境設計を提案しました。
【先生への提案】
ホワイトボードで説明する時、先生が体の向きを変えて複数回説明してくれないか。
絵本の読み聞かせの時、紙芝居があるとよいのではないか。
机や椅子の配置をエ夫し、子ども全員が先生の指示を見られるようにできたら良い。
息子は目で見て理解するので、見えないと集中が途切れるのかもしれない。
息子が「寝そべる」
普段と違う様子を親目線で分析。
息子の真意を伝え、
先生と足並みを揃えて環境を整える。
息子の優しさ、創意工夫を理解してもらい、
環境を整えれば、きっと彼らしく成長できるはず。
迷子の恐怖を乗り越え、
「言葉」を手にし、
「優しさ」を身につけ始めた息子。
その歩みを、
大人の設計ミスで邪魔してはならない。
「息子の個性」を紐解く偵察はまだまだ続きます。
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
emcOmi_in_progress
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
① パパの守り神:転職の不安の先にあった光
今回の記事で紹介した「他者への目配り」や「寝そべりの配慮」。彼の優しさは循環し、数年後にパパを救ってくれました。この記事の未来の「優しさ」を少しだけ綴っています。
②療育が育む息子なりの「優しさ」
自分を守るための「命綱」が、
誰かと心を通わせる「優しさ」に変わっていく、
穏やかな変化の記録です。
③療育探偵の始まり
偵察のギアを上げる前、私たちの最初の一歩。
試行錯誤しながら「探偵」として歩み始めた当時の記録です。