
ダークダンス 第4話「理由」
―ヒーローと、怪人と。そして、わたしたちの、物語―
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ダークダンス 第3話「闇を踊る」
本編
四 理由
大楠宅。
荻野目らの来訪の翌日。
居間のテーブルに大楠。
その向かいに志ず子。
志ず子の前には、ノートが広げられている。
ダイニングキッチンのテーブルには小池。
その向かいで、マチが本を読んでいる。
志ず子、テーブルに両手をつき、身を乗り出している。
志ず子 断った?
大楠 うん。
志ず子 え、断ったんですか?
大楠 そうやて。
志ず子 えなんで断ったんですか?
大楠 しつこいなぁ!最初からやらへん言うてたやろ?
言いながら、大楠、キッチンに茶を取りに行く。
志ず子、大楠を追いながら、
志ず子 え、じゃあなんで少し考えさせてくれって言ったんですか、昨日?
大楠 そう言わな帰らんかったやんあいつら。ていうか何しに来たんお前ら。
志ず子 いやだって気になるじゃないですか。あんなの。
小池 わたしは言ったんだよ。どうせ断るって。
大楠 じゃあ何で来てん?
小池 危ないじゃないこんなとこに女のコ一人で。
大楠 何が危ないねん。
小池 マチちゃんいると思わなかったし。
マチ 友達が委員会終わるまで時間つぶしに来ただけ。この人いると思わなかったし。
大楠 なんで自分んち居って迷惑がられなあかんねん。ていうかお前ここ喫茶店ちゃうからな。あとお父さん!
マチ 仕事は?
大楠 え、今日は休み。
大楠、居間へ行き、ベッドに腰かける。
マチ 昨日も休んでたじゃん。
大楠 昨日はだって、志ず子ちゃん来るいうから休んだんやん。
志ず子 わざわざお休みしていただいたんですか?
大楠 そうや。
志ず子 すいませんなんか。
大楠 まぁまぁ。
小池 すいませんなんて言う必要ないよ。昨日志ず子ちゃんからお金もらったから今日休んでんだよ。
マチ このあとパチンコ行くんでしょ。
大楠 行かへんよパチンコなんか。
マチ うそ。じゃあ座布団の下見せてみなよ。
志ず子 座布団?
マチ わたしが入って来た時隠したの、パチンコの本でしょ。
大楠 ちゃうよ。
大楠、座布団の上に乗る。
小池 ちょっとどきな。
大楠 あかんあかん、これはほんま。
小池 いいからどきなって!
大楠 あかんて!あかんて!
小池、座布団の下を見ようとする。
必死で隠す大楠。
小池 見せろって!志ず子ちゃん手伝って!
二人がかりで、大楠をどかせようとする。
大楠 わかったわかった!!言うから!言うから勘弁して!!
小池 見せりゃいいんだよ!
座布団がめくれそうになる。
大楠 あかんあかん!!エロ本!エロ本やねん!
小池 は?
大楠 見せんのは勘弁してくれ!娘の前でそれだけは!頼む!!
小池 ほんと、どうしようもないね!平日の昼間っから。
大楠 どうしようもない!でもパチンコはもうきっぱりやめたから!
マチ いつやめたの?
大楠 いつ?もうー、かれこれ……。
マチ 一昨日自転車停まってんの見たよ。パチンコ屋に。
大楠 一昨日でやめた!
マチ ウソだよ。
大楠 え。
マチ 自転車見たって。
大楠 汚な!
志ず子 あの、大楠さんて何の仕事されてるんですか?
大楠 配達。家庭に荷物届ける。
志ず子 ああー。え、じゃあなおさらなんでやらないんですか?
大楠 あ、配達バカにしたな今。
志ず子 いや、してませんけど。
大楠 大変やねんでー。フェンスの向こうまで行くこともあんねんから。
志ず子 でも大楠さんじゃなくてもいいですよね配達は。それもそんな働き方してるんだったら。え、なんで断ったんですか?
大楠 うるさいなぁ!いきなり家来られてヒーローなりませんか言われて「はいやります」いう奴おるか?自分やる?
志ず子 やりますね。
大楠 やんの!?
志ず子 やります。
大楠 絶対ウソやんそんなん。お前やる?
小池 なんであたしがやんの。
大楠 ほら!マチは?
マチ しらない。
大楠 な?これが普通やって。
志ず子 え、でもヒーローなりたかったんですよね?大楠さん。
と、志ず子、ノートをとんとん、と叩く。
大楠 それは昔の話。ええ大人なってヒーローって。
小池 ええ大人ではないけどね。
大楠 ほっとけあほ。
志ず子 え、じゃあ大楠さんは今どう思ってるんですか?ボディネーションのこと。
大楠 え?
志ず子 ええ大人になった大楠さんは、かつて憧れたボディネーション、田代さんのことどう思ってるんですか?
大楠 どうって……。
志ず子 もう憧れもないんですか?
大楠 ……。
小池 志ず子ちゃんもうやめときな。だいたいヒーローになりたいなんて言ってたのもほんの一時のことなんだから。
志ず子 そうなんですか?
大楠 そんなことないよ。
小池 そうだよ!周りが騒いでただけで、本人はとっととあきらめちゃってたんだから。
大楠 ……。
志ず子 え、麗香さんと大楠さんってどういうご関係なんですか?
大楠 昔、ちょっとね。
志ず子 えー!
小池 変な言い方すんな。
志ず子 え、え、えー!
小池 違うよ。
志ず子 ほんとに!?ほんとに!?
小池 違うって!
志ず子 えー!いいんですかマチちゃんの前でそんなこと言って!
小池 聞けよ。
大楠 違わんやんけなんも。
小池 違うでしょ。ただの幼なじみ。
大楠 そもそもなんでそんなにやらせたいねん俺に。
志ず子 それは、おもしろそうだから。
大楠 は?
志ず子 だって正義について何の深みもない薄っぺらな価値観しか持ち合わせてないような人が正義のヒーローやるんですよ!絶対見たいじゃないですか!
大楠 お前言葉選べよちょっとは。
志ず子 お二人も見たいですよね!?
小池 別に。
マチ まったく。
志ず子 えー!なんでですか?
マチ、外に出る準備をして、
マチ そろそろ行こ。志ず子さん。この人に期待するだけ無駄だよ。
大楠 お父さん!
マチ お父さんって呼ばれたかったら……ちょっとはちゃんとしなよ。
マチ、出ていく。
大楠 なんやあいつ。まじめな発声して。思春期難しいわ。
小池 あんたに期待したいのに、当のあんたがそんなだからイライラすんのよ。
大楠 なんでお前にわかんねんそんなん。
小池 わかるからだよ。
大楠 は?
志ず子 麗香さんもなにか期待してるんですか?大楠さんに。
小池 は?なんでわたしが。
志ず子 なんかそんな風に聞こえましたけど。
小池 わたしはこんな奴にかける期待は持ち合わせてません。
小池、帰る用意をしつつ、
小池 志ず子ちゃんはまだいんの?
志ず子 わたしは、もう少し。
大楠 帰れよ。
小池 そう、じゃあ気をつけなね。エロ本見てムラムラしてるおっさんと二人きりだからね。
小池、出ていく。
志ず子 ……え。
志ず子、大楠を警戒する。
大楠 いやいや。
志ず子 来ないで。
大楠 行かへんよ。
志ず子 おっきな声出しますよ!
大楠 行かへんて。
志ず子 待って!麗香さん!わたしも帰ります!
志ず子、出て行く。
大楠 はよ帰れ!
志ず子、思いつめた表情で、戻って来る。
志ず子 ……。
大楠 なに?
志ず子、無言のまま、ゆっくりと大楠の方へ近づいて行く。
大楠 え。なに?……なに?
志ず子、そーっと手を伸ばし、テーブルに広げてあったノートを取り、
志ず子 麗香さーん!!
と、部屋を出て行く。
大楠 二度と来んな!……なんやねんあいつ。
しばし考えにふける大楠。
大楠 ……。
大楠、座布団の下からペンダントを取り出し、眺める。
音楽。
いつかの放課後。
小高い丘にある公園。
ランドセルを背負った少年ヨシハルと、少女レイカが出て来る。
二人、町の景色を見ている。
レイカ すごーい!ヨシハルくんヒーローになるの?
ヨシハル おう!レイカ、お前記者になれ。
レイカ 記者?
ヨシハル そう、おっちゃんみたいに記者になって、俺の記事をいっぱい書くんだ。
レイカ えー、やだよ!父さんめったに家にいないんだもん!レイカは母さんみたいに専業主婦になって、こどもといっぱい一緒にいてあげるんだ。
ヨシハル ダメだ!お前は正義感も強いし、作文得意だからな。いい記者になる。俺のカッコいいところをいっぱい記事に書いて世間の人たちに伝えるんだ!
レイカ えー!
照明変化。
時間が進む。
レイカ去り、少年1・2・3出て来る。
少年1 あ、ヒーローだ!
少年2 ほんとだ!
少年3 正義の味方だ!
三人、ヨシハルのところへ駆け寄って来る。
少年1 ああーカバンが重いよー。
少年2 重いー!
少年3 誰か助けてくれないかなー!
少年2 誰かー!死ぬー!
ヨシハル ……あ、持とうか?
少年たち、ヨシハルにカバンを投げつけながら、
少年1 さすがはヒーロー!
少年2 よろしく!
少年3 ありがとう!正義の味方!
と言って去っていく。
ヨシハル ……。
カバンを拾う、ヨシハル。
照明変化。
少年1 ほら来いよー!
少年1・2・3が、少年4を連れて来る。
少年1 おいヒーロー!こいつ悪い奴だぜ。俺のふでばこ隠したんだ。
少年4 隠してない!
少年たち うそつけよー!
少年たち、少年4を小突いたり、引っぱったりする。
少年3 おい、おまえも一緒にお仕置きしてくれよ。正義の味方だろ!
ヨシハル あ、でも隠してないって……。
少年1 は?じゃあ俺らがうそついてるって言うのか!
ヨシハル そうじゃないけど。
少年2 じゃあ早くやれよ!
少年1 お前悪の味方すんのかよ!ヒーローだろ!早くやれよ!
少年3 やれ!ヒー、イー、ロ!
少年たち、少年4を押さえつけながら、
少年たち ヒー、イー、ロ! ヒー、イー、ロ!
ヨシハル ……。
レイカ、遠くから駆け込んで来る。
レイカ なにやってんだよ!
少年1 なんだお前。
少年2 チビは関係ねーだろ!引っ込んでろ!
少年3 ぶっ飛ばすぞ!
レイカ ぶっ飛ばしてみろ!今書いてる学級新聞に全部書いてやる!文化祭で全部の先生と全部の親が見るんだ!学校中で大問題になるよ!
少年1 は?ふざけんな。わけわかんねぇ!
レイカ あんたらこの学校にいられなくなるからね!
少年2 そんなわけねーだろ!バーカ。
少年1 おい、もう行こうぜ!
少年3 おお!
少年たち、カバンを拾い、はけて行く。
レイカ、少年4に、
レイカ 大丈夫?
少年4、うなづく。
レイカ 行こ。ヨシハルくん。
レイカ、少年4とはけて行く。
ヨシハル ……。
ヨシハル、その場に立っている。
大楠、過去の自分を見つめている。
溶暗。
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