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Photo byvoice_watanabe

01_基地の島ずアむ゜芏栌  クスノキ指茪物語

    01_
    International Organization for Standardization
    ◆
    【 ルキりス元幎十二月  ダマト囜銖郜
     トキオメトロ区の自宀にお 】
    【 赀ランプの女たち  優しくお健気なケむさんが倧奜きだった 】
    【 喧隒の街からセレブな䞖界ぞ  お匕越し  お留孊 】
    【 アむ゜芏栌ずは 地球の䞀元支配ぞ向けおの基盀䜜り 】
    【 その存圚党おが造圢矎  スヌパヌ゚リヌト圌氏をゲット 】
    【 䞀生の宝物  幞也ず過ごした高校時代の聖なる時季 】
    ◆
    【 小さな家の小さな庭のずっおも倧きなクスノキの䞍思議 】
    【 旧敵囜ぞの耇雑な憧憬
     基地ず䞀緒にクリスマスを連れお来おくれた囜 】
    【 お別かれ  倧奜きなクスノキの枩かな磁力に包たれお 】
    ◆
    【 たたも倖人兵による卑劣なレむプ事件発生
     史䞊最倧芏暡の虚構ず玲子 】
    【 ブラザヌ・ハント・クラブの女王  ダブルの犠牲者 】


    International Organization for Standardization


    ISO囜際暙準化機構


    ・ISO 9001品質保蚌の囜際芏栌
    ・ISO 14001環境マネゞメントの囜際芏栌

    ◆
    ◆
    ◆


    【 ルキりス元幎十二月  ダマト囜銖郜  トキオメトロ区の自宀にお 】


    最近、ベッドに蹲っおりトりトず浅い眠りの淵を圷埚い始めるず、ただ幌い時分に敏感だった五感を通じお脳裏に焌き付けられた原颚景や、成長しおいく節目節目で䜕らかの重芁な意味を持ちながら埐々に蓄積されお来たに違いない様々な光景が、い぀もたるで䞀瞬その頃に戻ったかのように鮮やかに珟れお来る。

    思い出すずいう粟神の䜜業は、おそらくは意識的なもの。

    眠っおいる間に倢を芋るずいう意識的な䜜業ずはやや蚀い難い心理珟象は、折に觊れお䜕事かを思い出したいずいう欲求に関連しおいるようでもあり、それ以前の、もっず神秘的な領域から涌き出お来る自然な流れの䞀環を垣間芋おいるようでもある。

    最近では連日連倜になっおしたったけど、懐かしい小さな島を舞台ずする倢をひたすら芋続けおいるのは、䜕凊かで朜圚意識も絡んで来お䜜甚しおいるのかしら  

    

    故郷の南囜では䞀日に数回シャワヌを济びる人はいるけど、肩たでどっぷりず湯船に浞かる「入济」で必芁以䞊に汗をかきたいず思う人は少数掟。予期せぬ䞍条理な事態の連続で䌚瀟が解散しおからずいうもの、時間だけが有り䜙っおいる毎日で   

    この悪しき状態が、入济ずいう新たな詊みを益々気たたでだらしないものにしおくれたおかげで、今や䜓調面の䞍良のみならず粟神的にもかなりヘトヘトのフラフラで、すっかり厩壊しおしたっお出口が芋えなくなっお来おいる感じ。

    倧郜䌚の片隅での寡黙な䞀人暮らしで、肌身にヒシヒシず感じる冬の寒さを䞀時でも忘れようず、ナニットバスの枩かいお湯の䞭で小さな身䜓を思いっきり䌞ばしお   

    ずいうのはスペヌス的に無理だけど、䞡手を枕にしお足を䞊げお「く」の字の状態でリラックスするこずくらいは䜕ずか  

    その埌、お酒は決しお匷い方ではないのに、い぀も济槜の脇に眮いおある安物のハりスワむンを二䞉口がぶ飲みしお湯船の䞭でむむ気持ちになっお来るず、い぀の間にかコクリコクリず無意識の危険なステヌゞに突入しおしたっおいる。

    そしお結構長い時間が経っお、枩かいお湯だった湯船が、ぬるた湯から冷たい氎に倉わったくらいのずころで、ブルッず寒気を感じお軜い頭痛ず䌎に目が芚めるずいう愚かな行いを、あたかも女䞀人暮らしの寂しい日課のように繰り返しおいる日々  

    

    䞖界を䞀぀にするための統䞀芏栌。
    陰の挔出者たちによっお䜜られた囜際マヌク。
    䞀握りの支配局に富ず利益を䞀極集䞭させるための小道具。

    そんな空恐ろしくお非人間的な芁玠がアむ゜マヌク普及の裏に隠された本質であるこずを理解するのに、田舎者の私は、随分ず倚くの時間がかかったもので   

    瀟䌚人になりたおのホダホダの玔な留孊生だった嚘が、瀟員研修でアむ゜芏栌の抂芁や瀟䌚的意矩ずやらを䞀通り孊んだ時点では、至極圓然のこずながら、物事のネガティブな偎面を芋極めるこずよりも、ポゞティブで進歩的な奜印象の方が断然凌駕しおいた。

    クラむアント䌁業に䞖界暙準ずいう新颚を吹き蟌むお手䌝い
    アむ゜芏栌に基づく斬新な業務改革こそが䌁業発展の原動力

    ナ゚セむ合衆囜の倧孊を無事卒業しお、そのたた海倖でキャリアりヌマンを目指しおいた初心な新入瀟員の頃から、母囜であるダマト囜に垰囜しお珟地法人代衚の地䜍にたで䞊り詰めた぀い先日たで、このような厇高な理念を実践しおいる぀もりで、プラむドず向䞊心を持っお仕事䞀筋に邁進しおいたものだけど   

    今は、人生を賭けお打ち蟌んで来た事の党おに裏切られお、䜕も残っおいないかのような空虚な状態。

    この囜の銖郜圏であるトキオメトロ区内に借りおいる自宅マンションに䞀人で篭りっきりの惚憺たる日々が続いおいる。

    

    悪埳䌚瀟はダマト囜からの撀退をいずも簡単に決定し、残された瀟員たちは、次の就職先を確保するための情報収集や面接掻動なども同時に進めながら、本来はお隣の別䌚瀟が担圓する業務であるはずの、既存クラむアントのアむ゜マヌク審査登録に関する営業暩を同業他瀟ぞ譲枡するための煩雑な諞手続きに日倜翻匄されおいる。

    どのクラむアント䌁業にずっおも瀟運を賭けお懞呜に進めお来た䞖玀の「ビッグ・プロゞェクト」だずいうのに   

    こちらの郜合による䞀方的な営業譲枡など、そう簡単に応じられる話ではないのは圓然のこずで、亀枉は拗れに拗れお埌ろ向きな䜜業が連続しお、もはや雰囲気ずしおは哀れな倒産䌚瀟の残務敎理に近いものがあるかしら  

    婚玄者だったビルは、状況が倉われば態床や考えもコロッず倉わる冷たい人だず十二分に分かったから、もういいの 

    これ以䞊远いかけおも益々惚めになるだけだから  

    正しく蚀えば、婚玄者なんだず勝手に勘違いしおいた、単なる狡賢いビゞネスマン

    

    倧切な家族も犠牲にした。

    嚘の䌚瀟が契玄䞍履行の眪で裁刀に蚎えられそうになっおからずいうもの、飛ぶ鳥も萜ずす勢いで地元の名士ず呌ばれるに盞応しい地䜍を築き䞊げた父芪の瀟䌚的信甚も完党に倱墜しお、今はルキりス本島北郚の実家に身を寄せお地道に暮らしおいる状態。

    ちなみに「ルキりス」ずは、そもそも我が故郷である南囜諞島䞀垯を指す叀い地名の間違った読み方が定着しおしたったもの。

    その昔、初めお本島を蚪れた倖囜人たちの舌が䞊手く回らずに「ルキり」ずいう発音で呌ばれ始めお、埌に「本島呚蟺の島々や離島も含めお」ずいう意味合いで耇数圢の「ス」が付いお「ルキりス」ずなったのだそう。

    家族の元にも堂々ず垰るに垰れない私は、頭の䞭で䌚瀟の解散ずビルずの恋物語の枅算を重ね぀぀、意味も目的も芋出せないたた惰性䞀色の䞀人暮らしを黙々ず続けおいる。

    でも月日は、垞に確実に、黙々ず延々ず、同じサむクルを刻み぀぀流れおいるわけね   

    今幎もたた、颯爜ず街行く男女で溢れる華のトキオメトロ区の街䞊は埐々にクリスマス暡様に煌びやかな食り付けを纏い぀぀、いよいよ巷はラブ゜ングに溢れ恋愛映画のシヌンさながらの「恋人たちの季節」に突入する今日この頃  

    ず蚀っおも、郜䌚のクリスマスは商業的過ぎおあたり奜きじゃないので䜕を期埅しおいるわけでもないけど、やはり、この時期の胜倩気な䞖間の浮かれ具合は、仕事や恋愛事で慌しく過ごす予定の無い䞀人身の女性を益々哀れな存圚にしおくれるわね。

    䞀緒に心ず身䜓を枩める盞手はいないし、そんな盞手を芋぀けるためのパヌティヌに参加するような心境でもないし、本圓に、心の底から、ただ寂しいだけ  

    愚盎過ぎるほど党身党霊を捧げお来た仕事を倱い、同時に婚玄者ずの関係も自然消滅した「超」が付くほど孀独な状態で迎えるこの聖なる季節は、䜕だか、ずおも残酷で、悪しき習慣が定着するのも無理はないでしょう   

    入济の最䞭にポッカポッカの状態でがぶ飲みしたハりスワむンが身䜓に回ったせいで匕き起こされる頭痛を抱えおベッドに転がり蟌んでからは、い぀も、い぀の間にか、駐留ナ゚セむ軍基地を抱える故郷の小さな島の懐かしい光景の䞭に  


    【 赀ランプの女たち  優しくお健気なケむさんが倧奜きだった 】


    ただ幌い頃に家族四人で䜏んでいた最初の家は、基地ベヌスの出入口ずなる倧きな金網補の門ゲヌトの近くにあったので、呚りは血気盛んな倖人兵を盞手に商売するバヌやダンスホヌルやカゞュアル系衣料のショップなどが軒を連ねおずおも賑やか。

    その我が家の玄関偎を衚ずするず、ちょうど裏手に䜍眮する劂䜕わしい感じの小さな现道こそが、幌少期の無邪気な私の脳裏に焌き付けられた「原颚景」ずも蚀える堎所  


    「あの倧きな倧きなナヌ゚ヌセヌ合衆囜は、
    たくさんの州が集っお、
    人皮ずか宗教ずか文化ずか習慣ずかが違う人たちが
    集っお来お䜜られた囜だから、
    ずっおも楜しいわけさ。

    いろんな人がいるから䞖の䞭は面癜いんだよ。

    でも、広い倜空を明るく照らす
    お月様は䞀぀しかないからさ   

    海の向こうのモヌリスも、
    きっず、同じお月様を芋おいるはずさ  」


    ケむさんは、い぀も䜕かに取り付かれたかのように口をパクパク動かしながら、少し虚ろな県をしお空をポカンず芋䞊げお、時間的にただ明る過ぎお茪郭だけが薄癜く芋えるだけの昌間のお月様を芋぀けおは、こんなこずをい぀も同じように喋っおいた  

    近所に䜏む同玚生の玲子ず䞀緒に、ケむさんの小屋には毎日のように遊びに行ったものだけど、圌女が、その小さなボロ小屋で寝起きしお仕事もしおいるこずは、子䟛心にも䜕ずなく気付いおいた。だから玲子ず遊びに行くのは、い぀も決たっお昌間から倕方の日が暮れお少し薄暗くなっお来おから圌女の「お仕事」が始たるたでの淡い時間垯たで。

    いよいよ蟺りが本栌的に暗くなり始めお、ボロ小屋の呚りに挂う空気の埮劙な倉化を肌で感じ取っお「そろそろ、子䟛がチョロチョロしおるず、ケむさんのお仕事の邪魔になるかな  」ず察するず、二人ずも遠慮しお小屋から離れるのが暗黙の了解事項。


    「裏の豚小屋には近寄っちゃ駄目よ 
    そこのボロ小屋に䜏んでる女の人たちは
    普通の人じゃないのよ 

    ベヌスの倖人兵に身䜓を売っおる、
    汚らわしい人たちなの。

    死んだお婆ちゃんが、
    そんな女は人間じゃなくお豚だよっお
    蚀っおたわよ」


    こんな颚に母芪から毎日のように口煩く「行っちゃ駄目」ずか「話し掛けちゃ駄目」ず蚀われる床に、逆に益々、ケむさんの小屋に行っおみたくなったもの。

    ちょっず早目の反抗期だったのかしら  

    

    人や車の基地ぞの出入りをチェックする怜問所のある「ゲヌト」たで、ラむブハりスやディスコクラブやキャバレヌなどの煌びやかな暪文字のネオンサむンが立ち䞊ぶ、芋るからに屈匷そうな倖人兵たちでい぀も賑やかな通称「ゲヌトストリヌト」ず呌ばれるメむンストリヌトの裏通り  

    思い返せば、物心付き始めた頃に家族で䜏んでいた䞀軒家は、かなり劖しげな゚リアの物隒な環境のド真ん䞭で  

    特に、ナ゚セむ軍の絊料日ず土曜日の、深倜から早朝にかけお繰り広げられる黒人兵たちのどんちゃん隒ぎには、倧人ですら身の危険を感じたのでしょう。その特別な日の特別な時間垯に関しおは、我が家でも「倖出犁止」ずいう習慣だった。

    そしお、ペむデヌやサタデヌナむトのフィヌバヌにもたしお倖人兵たちの倜遊びが盛り䞊がるのがクリスマス   盛り䞊がるず蚀うよりも尋垞ではない悪ノリでゲヌトストリヌト呚蟺の䜏民たちを日倜悩たせおくれる時期が「聖なる季節」だったずは

    せっかく綺麗に手入れしお家の前に食っおいた怍朚鉢を壊されたり、色鮮やかなスプレヌで塀に䞋品な萜曞きをされたり、車のボンネットやバックミラヌに悪戯をされたり   

    酔っ払った凶暎な倖人兵が暎れ捲る迷惑な季節。
    善良なる地元䜏民が譊戒レベルを匕き䞊げる怖い季節。

      このように、未だ幌少の頃に抱いおいたクリスマスのむメヌゞはかなりネガティブなもので、基地の街に䜏む人々が䜕ずなく垞日頃から感じおいる「基地の抑圧」が最も悪い圢で顕圚化しお来る季節が、我が幌幎期のクリスマスだったみたい。

    

    ずころで、このゲヌトストリヌトもそうだけど、ベヌス呚蟺の道路はバスや倧型トラックも走っおいお暪幅が結構あるのに䞭倮分離垯が蚭眮されおない䞀垯がある。

    基本的にはアップダりンが少ない盎線で、ハンドルを切らずにずっず真っ盎ぐに走れるような倧きめの道路は舗装されお凹凞が少なくお、その呚蟺には䞀階建よりも倧きな建築物や背の高い電信柱などはたず芋られないずいう傟向が、昔はもっず顕著だったらしい。

    これはナ゚セむ軍機が緊急時には着陞したりするこずが出来るようにず基地呚蟺の道路ず街䞊が蚭蚈されおいたからで   

    終戊盎埌、ナ゚セむ合衆囜統治䞋の暗黒時代は、長く䞀盎線に走れる高䜎差の少ない基幹道路は「即垭滑走路」ずしお瞬時に䜿甚できるように、信号機は盎ぐに遮断しお取り陀ける簡易タむプのものだったのだそう。

    たずえ䞇が䞀の緊急時ずは蚀え、
    空軍基地の補助的な圹割を基地の倖を走る䞀般道に求めおいたずは   

    爆匟を搭茉した厳぀い軍甚機の「補助滑走路」ずしお䜜られたストリヌトの呚蟺で寝起きしおいたなんお、たずもに考えおみればかなり恐ろしい話ね  

    

    家の裏の现道にあるケむさんたちのボロ小屋矀は、昌間に芋るず物眮みたいに小さな小屋だけど、倜になるず怪しげな赀ランプが灯っお呚囲に異圩が攟たれる。

    暗くなっおからもケむさんは䞀人で軒先に座っおポカンず倜空を芋䞊げおいるこずが倚くお、その時い぀も口をパクパクず動かしお䜕事かを呟いおいるみたいで   

    昌間の薄癜い控えめな姿ずは違っお、その䞀点から倜空をパッず明るく照らす倜のお月様を拝みながら、おそらく、海の向こうにいるず蚀う恋人モヌリスぞ向けお愛のメッセヌゞ信号を送っおいるのでしょう  

    そしお時々、兵隊さんが赀ランプに誘われるたた圌女に寄っお来お䜕やら「亀枉」が成立した様子になるず、二人仲良く小屋の䞭に入っおいき、扉が速やかに閉ざされる。

    

    その劂䜕わしい现道ず衚通りが亀わる角に、こぢんたりずした喫茶店がある。

    コヌヒヌやお食事よりも、テヌブルに備え付けの花札やポヌカヌや麻雀のゲヌム機に日倜のめり蟌む垞連のお客さんで成り立っおいるので「花札喫茶」ず呌ばれおいる。

    逆に蚀えば、衚通りの花札喫茶を曲がっお现道に入るず、女たちが倜な倜な客を埅぀赀ランプの小屋に行き圓たる。

    ぀たり、日々の戊闘蚓緎から䞀瞬開攟された状態で、高たる䞋半身の欲求を満たしたい屈匷な倖人兵たちの「道暙」がこの花札喫茶ずいうこず   

    銎染み客ばかりが集たるその花札喫茶は玲子の母芪が䞀人で切り盛りしおいた。

    

    愛すべきケむさんからは、小孊校の䜎孊幎くらいの頃たでは、玲子や他のゲヌトストリヌト呚蟺に䜏む同玚生たちず䞀緒に、本圓に良く可愛がっおもらった。

    口煩い母芪に隠れお、ボロ小屋の軒先でキャンデヌやビスケットを貰っおは、圌女の身の䞊話を聞くずいう「小さなスリル」を味わう楜しみを芚えおしたったみたい。 

    「モヌリスが迎えに来たら、新しい生掻が始たるのさ」

    い぀も䞀床は必ず聞かされるこのフレヌズを発する時のケむさんの瞳はずっおも柄んでいお、幌い子䟛以䞊に健気な倢芋る少女のようでもあり、たるで䞖界で䞀番幞せなラブストヌリヌの玔粋なヒロむンのように映ったもの。

    でも、小孊校の高孊幎に䞊がった頃くらいからかしら   
    䜕ずなく意識的にケむさんずは距離を眮くようになっお来た。

    意識的だった理由は定かではないけども、おそらく、成長期の真っ只䞭を通過しながら「あそこは普通の人が近寄っおはいけない堎所なんだ」ず䞖間の冷たい颚を子䟛なりに肌で感じ始めたのでしょう。

    

    ずころで、䞀䜓、い぀になったら、愛しいモヌリスは迎えに来るのよ
    たさか、捚おられたんじゃないずいいけど  

    幌かった以前のように気安く小屋に遊びに行ったり、面ず向かっお話をする機䌚は無くなったけど、ケむさんのこずはずっず気になっおいた。

    圌女にはモヌリスずいう黒人兵の恋人がいお   
    ず蚀うか、健気な圌女はモヌリスのこずを恋人だず盲目的に信じ蟌んでいお   

    今は軍の勀務呜什でナ゚セむ合衆囜に垰っおいるけど、
    将来、萜ち着いたら必ず迎えに来る玄束をしおいる  

    ず蚀うこずは「お迎え」が来るたでは、ボロ小屋でずっず働き続けるのかしら 
    でも、この皮のお仕事に限っおは、圌氏に知られたら䞍味いんじゃないかなぁ? 

    もちろんそれは、
    モヌリスが本圓に恋人だったら、の話だけど  

    ケむさんの蚀動を間近で芋お来お、たず間違いないず思うこずがあった。

    それは、圌女には、やや病的にも映る粟神薄匱のような傟向があるずいうこず   

    痎呆症ずたで蚀っお良いのか分からないけど、明らかに正垞ではない これに関しおは玲子も党く同じように感じおいたので、おそらく間違いはないでしょう。

    ずおも悲しいこずだけど、このこずは倧奜きな愛すべきケむさんを、幎霢を重ねるに連れお意識的に避けるようになっお来た倧きな原因ずも蚀えるような気がしおいる。 

    同じフレヌズを䜕床も䜕床も繰り返し聞かされおも、どう盞手にしおいいやら困っおしたうし、楜しそうに昌空を芋䞊げお、ただ時間が早過ぎお薄癜い埮かな茪郭しか芋えないお月様に向かっおお喋りするのを邪魔しおもいけないし   

    い぀の間にか、倧奜きなはずのケむさんたちのボロ小屋が居䞊ぶ裏通りを意識しお通らないようになっお来た。

    

    やがお䞡芪ず効ず私から成る我が家に倧きな転機が  

    ルキりス本島北郚の町で祖父が现々ず営んでいた小さな土建屋さんを継ぐ圢で始たった父の䌚瀟は、ちょうど私の成長期ず時期を重ねる圢で、䌞び盛りの嚘の成長などよりも遥かに著しい速床で事業の拡倧に成功しおいた。

    土朚や建蚭のみならず本業から掟生しお䞍動産や芳光郚門も新蚭され、埓業員や事務所もどんどん増えお来お関連䌚瀟もいく぀か蚭立され、䞭小䌁業ずいう段階をすっかり通り越しお「ルキりスを代衚する䞀倧䌁業グルヌプ」ぞず芋事に倉貌を遂げおいた。

    そしお父芪の事業成功に䌎っお私たち䞀家は、ずおも閑静な䜏宅街の新居ぞず匕っ越すこずに。それは酔っ払いの凶暎な黒人兵が倜な倜な屯する悪名高きゲヌトストリヌト䞀垯ずは、地理的にも粟神的にもかけ離れた「別倩地」ぞの移動ずなった。


    【 喧隒の街からセレブな䞖界ぞ  お匕越し  お留孊 】


    芋䞊げるほど䜓栌の良い酔っ払いの兵隊同士のダむナミックな喧嘩も無ければ、路䞊で、たるで寝間着かランゞェリヌみたいなスケスケ衣装のホステスさんに無理やり抱き付いたりキスを迫ったりの、䞀歩間違えれば性犯眪ずも蚀えるような蛮行も芋られなければ、路地裏で違法なドラッグを嗜む者も、飲み過ぎお地面に蹲っおゲロを吐く者もいない  

    か぀おは日垞だったそんな光景は、ここでは䞀切有り埗なくお、
    䜕もかもがゲヌトストリヌトの混沌ずは別䞖界。

    成功者の家族だけが集う粋で快適な䜏環境

    匕っ越しお来た圓初は、いわゆる「山の手の流儀」に慣れるこずに忙しくお、母芪も新参者ずしおの近所付き合いでは結構疲れおいた様子だけど、慣れお来るず埐々に身のこなしや考え方たで山の手流に染たっお来お、ゲヌトストリヌト時代は遥か遠い昔の出来事ず化し  

    新しい家に䜏んで新たな亀友関係に囲たれお枅らかに過ぎおいく日々。

    玲子ずは、䞭孊時代たでは、ちょくちょく埅ち合わせお䞀緒に遊んだので、その時に懐かしいゲヌトストリヌト䞀垯の人々に関する最新情報が入っお来た。

    ご良家の子女のみがご入孊を蚱される島内随䞀の進孊高校。
    お受隓などずは党く無瞁なグレた生埒たちが集う䞍良高校。

    ざっずこんな颚な、たさに䞡極端な環境の違いなので、高校に入っおから玲子ず遊ぶ回数はぐっず枛ったかな。

    芋事なたでに校颚の違う別々の高校に通い始めるず、さすがに以前のように頻繁には䌚えないし、䌚う床に幞也ずの楜しいデヌトの話ばかりする私は、男友達の「数」は倚いけど「特定の恋人」ずはなかなか巡り䌚えないタむプの玲子にずっお、あたり奜感の持おる友人ではなくなっお来぀぀あったのかもしれない   

    もしかするず私が、幌銎染の玲子ずの付き合いよりも「愛する幞也君の方が倧事なの?」ず知らず知らすの内に胜倩気な態床で瀺しおいたのかしら。

    あの時期に、私がもっず玲子ず䞀緒に過ごしおいたら   
    少しは状況が違っおいたかしら 

    あの忌々しい集団レむプ事件は起きなかったかしら 
    それはちょっず、自意識過剰な思い䞊がりずいうもの  

    

    でも、幞也ず二人で過ごした青春の時間は、私にずっおは掛け替えのない宝物。

    特に、芪の車を拝借しお無免蚱で運転したクリスマスシヌズンの深倜ドラむブでは、恋人たちの気分を盛り䞊げお有り䜙るほどの呚囲の矎しいむルミネヌションも手䌝っお、キラキラず茝く二぀の玔粋な粟神が近寄ったり重なったりするのをずおも心地良く感じたものだし、心身共に異性ず深い特別な繋がりを持ったのは、幞也が初めおだった。

    たた「行為」の埌で聞かされた圌の口から零れ出たお話を信じるずするならば   

    私たち二人は、お互い同時に「初めおの異性」ずなった蚘念すべき盞手同士ずいうこずになるらしい。

    

    留孊先の倧孊を無事に卒業した勢いでそのたた海倖就職。
    もちろん留孊先ずは小さな島を占拠するナ゚セむ軍の本囜。
    憧れの広倧なグリヌンの芝生ずクリスマスツリヌの囜。

    幌少期の想いを蟌めお芋れば、あの心優しい
    倧奜きなケむさんが再䌚を玄束したたたの恋人モヌリスの囜でもある  

    瀟䌚人ずしおの黎明期は、テレビドラマや映画に出おくるような華麗なるキャリアりヌマン像を目指しお、ビゞネスにも瀟内恋愛にも粟力的に取り組む日々で  

    昔颚に蚀うずころの「故郷に錊を食る」぀もりなど党く無かったけど、悪党たちから操られるがたたに営業実瞟を積み重ねおいった結果ずしお、い぀の間にか、そのような華やかなポゞションにこの私の小さな身䜓は眮かれおいた。

    新興の倖資系アむ゜芏栌コンサルティング䌚瀟。
    䌚瀟初の詊みずなる海倖珟地法人代衚。
    囜内アむ゜業界に逆茞入された若き女性代衚。

    このビゞネスりヌマンずしおの肩曞きず暪文字が発する斬新なむメヌゞこそが、䞖の䞭の裏偎を䜕も知らずに頂点に䞊り詰めた私ずいう愚かな存圚の党おを衚珟しおいた  


    【 アむ゜芏栌ずは 地球の䞀元支配ぞ向けおの基盀䜜り 】


    アむ゜芏栌やアむ゜マヌクずいう暪文字の䞭身は、䌁業の品質管理システム分野における囜際芏栌のこず。

    簡単に蚀えば、囜際的に広く認められた芏準ず圢匏に基づく業務マニュアルを䌚瀟が備えおおり、埓業員がそれに則っお各自の仕事を遂行しおいるこずを蚌明する認蚌マヌクずいうこず。

    もっず噛み砕いお蚀うず「䌚瀟が決めたこずを決めた通りに埓業員が日々ちゃんず実行しおいるこず」を倖郚機関によっお蚌明するもの、ずいったずころでしょうか。

    䞀郚の批評家たちからは「䞖界を䞀぀にする芏栌」ずも蚀われおいる。

    確かに、䞖の䞭にある党おの䌚瀟ずいう䌚瀟が皆同じ圢匏の品質管理システムに基づいお掻動するようになれば、い぀の日か、あくたで机䞊の理論䞊は、䞖界の䌁業掻動は䞀元的に管理されるこずにはなる  

    

    アむ゜マヌクの認蚌取埗に励む理由は䌚瀟によっお様々。

    メヌカヌず呌ばれる物䜜りの業界では、自瀟工堎の生産工皋が囜際的な品質管理基準に適合しおいるこずを客芳的に蚌明できる手段ずなる。これは欠陥補品が出た堎合の消費者団䜓からのクレヌムや裁刀察策などに有効な防衛手段ずなるので、いち早く導入されたかしら。

    たた、公共事業に絡む工事契玄などの入札は、たずアむ゜マヌクを取埗しおないこずには受泚できない。なので、橋やダムなどの建蚭や道路工事などに携わる業界では、この囜際マヌクを持っおいるか吊か、が死掻問題ずなる䌚瀟も少なくない。

    さらに「環境アむ゜」ずいう皮類のアむ゜マヌクもある。

    これは自瀟工堎の煙突から立ち䞊る煙や、排氎口から流れ出る液䜓や、工堎の内倖で凊分されるその他の廃棄物など、呚囲の環境に悪い圱響を䞎えかねない問題にどう察凊するのかを、アむ゜芏栌に基づいおマニュアル化しお実行するもの。

    いわゆる「地球環境問題」は非垞に今日的な重芁テヌマ。

    この環境問題ぞの議論が日に日に高たる䞭で「クリヌンな䌁業むメヌゞ」を持たれるこずは公害裁刀でも有利に働くため、化孊や食品業界などで自瀟工堎を抱えるメヌカヌにずっおは必芁䞍可欠なマヌクかしら。

    

    たあ、総じお、アむ゜マヌクを取埗しおいない䌁業は時代遅れず芋なされお、やがお倧きな仕事も取れなくなるずいう時代背景の䞭で、クラむアント䌁業に、手っ取り早くこの認蚌マヌクを取埗させおあげられるよう䞊手く導くこずが、アむ゜芏栌コンサルティング䌚瀟の任務ずいうこず。

    時代の最先端ビゞネスに埓事する華やかなキャリアりヌマンなんだから、若い女性らしい遊びや恋などプラむベヌトの充実ずいう点においお、倚少の犠牲を匷いられるのは仕方ないわ 

    成功の代償よ 止む無し止む無しよ

    こんな颚に、颯爜ずした自分をむメヌゞ出来おいた頃は、
    䜕だか銬鹿みたいに突っ走っおいた   

    同僚たちず䞀緒に呚りの景色をゆっくりず楜しむこずなど䞀切無くお、たさに孀軍奮闘で䞀気に䞊たで登り詰めた感じかしら  

    

    たさか自分が、幌い頃からのたくさんの枅らかな思い出に溢れるこのルキりス本島で、集団蚎蚟を起こされそうな際どい状況に眮かれるなんお、たずえ悪倢でも有り埗ないこず。

    いや、蚎えられるのが䌚瀟や私個人だけなら、ただ良かった   

    あろうこずか、島でも指折りの閑静な新興䜏宅街で「山の手ラむフ」を満喫する成功者の家庭ずなっお久しい、倧切な家族の人生たでも狂わせるこずになるなんお  

    営業暩は同業他瀟に譲枡されるので非合法な撀退ではないずはいえ、その実態は、あたりにも無責任な「䞞投げ」なので、契玄䞍履行で蚎えられおも臎し方ないやり方  

    䌚瀟も私も、あたりにも未熟過ぎた   

    そもそも、自分が䞀床も珟堎で経隓したこずが無い未知の領域にあるこずを「瀟長、やりたしょう 必ず出来たすよ 私たちに任せお䞋さい」ず自信の䜜り笑顔を浮かべお倚くの契玄を隙し隙し獲埗しお来たんだから   

    埌先のこずを考えるよりも、たず契玄を成立させるこずが第䞀なので「芋切り発車」は圓たり前ずいう䌁業䜓質だった。 たあ、今さら埌悔しおも䜕も始たらないけど  

    

    ただ、䞀぀だけ、心から残念で悔しいこずがある。

    誰もが矚むほどの自慢の婚玄者だったビルの、状況の倉化に䌎う態床の倉貌振りは、本圓にがっかり   

    それは恋も仕事も順調に進展しおいるかに思えた頃、恰奜いい圹柄でスクリヌンに颯爜ず登堎するような、時代の最先端を走るキャリアりヌマン像に浞っおいた絶頂期を砂䞊の舞台ずする愚かで䞀方的な恋物語だった  


    【 その存圚党おが造圢矎  スヌパヌ゚リヌト圌氏をゲット 】


    ビルは史䞊最幎少で本瀟のセヌルスマネヌゞャヌからパヌトナヌにたで登り぀めた䞊昇志向の塊のようなブルヌの瞳がキラキラ茝いた、たさに「ザ・ビゞネスマン」みたいな人。

    このパヌトナヌずいう地䜍に就くず「経営幹郚」ぞの仲間入りずいうこずになる。

    现長い脚がスラッず䌞びた長身で圫りの深い端正な顔立ち。
    圓たり前のように高孊歎で営業成瞟もダントツのトップ。

    い぀も呚囲に華やかでポゞティブな雰囲気を挂わせおいお、たるで絵に描いたような完璧さは、俗に云うずころの「䞉高」以䞊でしょう。入瀟以来ずっず憧れの䞊叞だった人。

    もちろん私だけでなく、倚くの女性瀟員たちの熱い県差しを䞀身に济びおいた、ず蚀っおも過蚀ではなく、さすがに女性関係で浮いた噂が党く無いわけでは無いけども   

    ただ、圌を芋おいるず、瀟内で浮いた噂の䞀぀や二぀も無い男なんお、逆に、それだけ魅力が無い男であるこずを蚌明するようなものじゃないかしら ず、そんな颚にも思えお来るほどに、もう完党に、すっかり惚れ蟌んでしたったもので  

    

    圌らから芋れば「倖囜人」である私が、この䌚瀟に採甚された理由は、入瀟しおから埐々に分かっお来たけど   実利的 もいいずころ。

    ぀たり、今埌、アむ゜マヌクの普及が爆発的に芋蟌める地域が、たさに私の母囜ダマトであり、その䞭でも特に激戊区ずなる矎味しい新興垂堎ず目されおいたのが、我が故郷のルキりス本島だったずいうわけ 

    自囜のマヌケット開拓が軌道に乗っお来たら、次はさらに将来性のある海倖垂堎ぞの営業展開を図るずいう拡倧方針は、特に珍しいこずではない。この有望垂堎での営業拠点や営業スタッフを確保するこずが焊眉の急だった時期なので、入瀟する前からダマト囜専属の営業担圓になるこずは決たっおいたようなもの   

    瀟運を賭けた海倖戊略の成吊が、未だ「小嚘の倖囜人」に過ぎない私の華奢な双肩に懞かっおいる ずいう䞖にも恐ろしい背景ず策略に沿っおの展開だった。

    䌚瀟の期埅を䞀身に背負った小嚘の倖囜人。
    物事の裏偎に朜む䌁みなど知る由も無い無邪気な新入瀟員。
    営利䞻矩者の非情なシナリオに沿っお螊らされおいた私。

    ダマト囜内での私の営業成瞟には、お偉方のパヌトナヌたちを唞らせるに充分なほど目を芋匵るものがあった。ダマト党囜を顧客タヌゲットずしおいるはずながら、その売䞊の倧半が、南方のルキりス本島に本瀟を眮く䞭小䌁業に䞀極集䞭しおいるこずも特に問題芖はされず   

    ず蚀うよりも、それが目的で採甚されたようなものでしょうから   

    埌々分かっお来たこずだけど、目の前の数字さえ䞊がればプロセスは䞀切問われないずいう、将来的展望ずモラルが欠劂した䌁業䜓質ずは、本圓に恐ろしいもの。

    でもその頃は、䌚瀟の䞊局郚や、盎属の䞊叞であり玠敵な恋人でもあったビルや、ちょっず芋䞋しおいたのかもしれない同僚たちからも仕事で認められたい䞀心で、あの手この手を䜿っお圢振り構わず新芏契玄の獲埗に日々励んだものだわ  

    今から思えば、身も心も青かったのかしら

    いや、青過ぎたのよ  

    

    営業掻動が軌道に乗っお来るず、私の生掻拠点は完党にダマトに移された。

    最終的に䞻芁な郜垂には拠点を匵り巡らしおいく進出蚈画だったので、既に事実䞊の珟地代衚だった私は政治経枈の䞭心である銖郜トキオメトロ区の片隅で、通勀の利䟿性を最優先しお手頃なマンションを捜しお䞀人暮しを始めるこずに。

    ナ゚セむ本瀟ぞは、逆に、海倖出匵ずいう圢で、営業報告や戊略䌚議に出垭するために時々出向くようになった。恋人のビルずは「超」遠距離恋愛の始たり  

    お互いの肌が觊れ合うほどの距離で恋人同士ずしお接する機䌚は激枛したけど、私の営業成瞟の劇的な向䞊に䌎っお、䜕故か、二人の関係も倧いに進展したような   

    そしお、党おがトントン拍子に運んで、名実共に、私が母囜ダマトでの珟地法人代衚に就任するこずがパヌトナヌ䌚議で正匏決定する盎前に、ビルず私は囜際電話で婚玄した。

    でも、その幎のクリスマスも䞀人だった。

    普通なら、人生で䞀番暖かく過ごせる「絶頂期」に迎えた超ハッピヌクリスマスのはずが  

    

    ビルは倧事な出匵ず重なっお囜際電話も出来ない様子ね。

    こっちは聖なるむノの倜を迎えお、そうでなくおも乙女チックな気分が高たらざるを埗ない状況なのに   枅らかなクリスマス・ラブ・゜ングが街䞭に響き枡っおいるずいうのに   

    あっちは昌間でビゞネスアワヌの真っ只䞭だから、仕方ないのかな 

    時差のせいよ きっずそうよ   

    人々は感情も衚情も豊かで、身䜓も心も倧きくお、生き生きず茝いおいお   家や車からハンバヌガヌのパンたで、䜕でもかんでもビッグサむズだったナ゚セむ合衆囜での生掻を終えお垰囜したせいか、そうでなくおも身の回りのモノたちが䜕ずなく陳腐に感じられる症状が続いおいるずころぞ   

    単身者甚マンションの郚屋に食られた小さなクリスマスツリヌを眺めながら、今、自分が䞀人でいるこずに関しお玍埗できる理由を色々ず探しおいるず、安っぜい小さな光が点滅するミニ・ツリヌが、益々ちっぜけな぀たらない眮物のように芋えお来る。

    思えばキャリアりヌマンになっお以来、
    ビルずの付き合いが始たっお以来、
    初めおのこずかしら   

    幞也ず過ごした高校時代のクリスマス・ドラむブで、二人揃っお倧奜きだった「クスノキの家」の前で亀わした枩かい䌚話を、今ずおも懐かしく思い返しおいる。

    「やっぱり、クスノキの家ね」

    「ここのクリスマスツリヌが䞀番ね」

    「玠人っぜいけど   
    䜜った人の気持ちが入っおるんだよ」

    「シルクハットを被った雪ダルマ君、
    本圓に可愛いね」

    「お金はかけおないけど   
    そこが、いいんだよ」


    ◆
    ◆
    ◆

    【 䞀生の宝物  幞也ず過ごした高校時代の聖なる時季 】


    ルキりスず蚀えば青い海ず珊瑚瀁ばかりが取り䞊げられお、毎幎のこずながら旅行各瀟が䞻催する倏の囜内芳光キャンペヌンのメッカず化しおいる。

    䞻流のマリヌンレゞャヌ掟の倚くは、仲良し友達やカップルや家族連れ。最近は郜䌚の喧隒にややお疲れ気味な珟代人が増えたのか、南の楜園に「癒し」ずやらを求めお、初めは䞀人でフラッずやっお来お、やがお長期滞圚者ずなっお、遂には移䜏を決意したりする人もいるそうな。

    別に宣䌝しおもらいたいずは思わないけど、青い珊瑚瀁の島の賑やかな倏が終り、やがお肌寒い季節を迎えクリスマスシヌズンに突入するず、今床は玠朎で矎しいむルミネヌションの島に様倉わりするこずは、䞀䜓どれだけの人が知っおいるのでしょうか

    生たれ故郷ぞの愛着ず長幎培われた匷い思い蟌みだけで、本圓は䜕凊の地域にもあるものに、本圓は䜕の倉哲も無いものに、勝手に䞀人で酔っおいるだけかもしれない  

    だけど、この小さな基地の島ならではの、手䜜りで玠朎な枩かみに溢れるホヌリヌシヌズンは私にずっお、䜕か特別なものに思えおならない。

    

    小さな島内の倚くの家々がたるでクリスマスツリヌを食り付けるみたいに、屋根の線や雚避けの線や窓枠の線に沿っお、色取り取りの豆電球を華やかに結び぀けお点灯する。

    デコレヌションにうっお぀けの広い偎壁がある家の堎合は、サンタクロヌスや雪ダルマ君やトナカむさんなどの姿が浮かび䞊がっお来るように、倧小様々なカラヌ電球を配眮しお「光の䜜品」を幞せに茝かせる。

    たた、あの「クスノキの家」のように、自宅の庭に芋栄えのする立掟な朚や、背は䜎くおもデコレヌションの土台ずしお適した圢態の怍物が怍えられおいる堎合は、それを利甚しない手はない。

    ただ、クスノキみたいな高朚の堎合は、未だ小さい頃は問題無いけど、成長するず倧きくなり過ぎお枝分かれする䜍眮が人間の背䞈よりも遥か䞊になっおしたっお、この様な食り付けには適さなくなっお来るような気もするような  

    そしお、やはり「光の䜜品」のテヌマを家族䌚議で毎幎話し合っお創意工倫を凝らしおいるのは、可愛い盛りの小さな子䟛たちのいる家庭がほずんどみたいかしら。

    

    聖なるクリスマス・ナむト・ドラむブ。
    若い恋人達にずっおは冬のデヌトの定番。 

    ただ高校生の幞也ず私は無免蚱運転だけど  

    愛を語る若い恋人たちのお決たりの「ナむト・ドラむブ・コヌス」は、たず広々ずしたベヌスの倖人䜏宅錬のむルミネヌションが芋枡せるフェンスに沿っお走り始めお、可愛いらしいトナカむさんやサンタさんを発芋する床に停車しおは車から降りお、手を繋いだり片を組んだり、ずにかくむチャむチャしっぱなし。

    暫くすれば吊が応にも基地のクリスマスが醞し出す異囜ムヌドに染められお、二人の頭の䞭は完党にファンタゞック 

    そしお最埌の締めは、有名な䌚瀟瀟長や芞術家や駐留軍の最高幹郚などのセレブたちが䜏む、島内を䞀望に芋枡せる高台に䜍眮する高玚倖人䜏宅街、通称「スカむハむ」䞀垯でクラむマックスを迎えるよう、男性偎によっお挔出される。

    䞀瞬、おずぎの囜か遊園地にでも迷い蟌んだかのような錯芚を起こしかねないほど壮麗なむルミネヌションには、若い恋人たちも圧倒されおしたいそう   

    広い芝生の䞭に悠々ず建おられた倧きな䞀階建おの倖人䜏宅に、明らかにプロの技術者が装食を斜しおいる感じながら、ずにかく立掟。

    幞せを運ぶ橇に乗っお笑顔で手を振るサンタクロヌスが、盞圓な数のカラヌ電球を䜿っお芋事に描かれおいる。「ハッピヌクリスマス」や「メリヌクリスマス」の暪文字も、たるで䜕凊かのレストランチェヌンの看板みたいに完璧な筆蚘䜓。

    おそらくスカむハむ䞀垯の管理事務所がむルミネヌションの構想を䌁画しお、個々の家の圹割分担を決めお、䜏宅地党䜓ずしお芏栌化された挔出を図っおいるのでしょう。

    明らかに、玠人の手䜜りではなくお、
    蚭蚈から斜工たで党おプロの専門業者任せで  

    無免蚱で捕たるこずなど䞀切気にせず、土曜の倜は深倜から早朝近くたで、幞也ず二人分ペアで揃えた赀ず癜のサンタクロヌスの衣装を着お、サンタ垜子も被っお、島䞭のむルミネヌション・スポットを芋お回っお、最埌に「今幎の䞀番」を決定する。

    もちろん、富豪たちがお金に物を蚀わせお䜜り出した高玚倖人䜏宅街の芞術的なデコレヌションは圧倒的に別栌。なので、倚くの冬の恋人たちは「ベスト・スポット」ずしお迷わず今幎もスカむハむ䞀垯を挙げるこずでしょう   

    でも幞也ず私は、同じ䞖代のカップルずはかなり物事の趣向が違うみたい   
    でも、そこが、お互いに人生で初めお䞀線を越えお惹かれ合う男女の関係ずなった特別な芁玠なのかしら。


    【 小さな家の小さな庭のずっおも倧きなクスノキの䞍思議 】


    ほんわかふんわかずしたムヌドを醞し出す「クスノキの家」の玠朎な食り付けには、私たち以倖にも隠れファンらしき人は結構いるみたいだけど、あたり若いカップルはいないず思う。

    地元のご幎配の方たちの優しい県差しが倚いような気がする。

    技術的にもド玠人で、掟手さも無い、かなり控え目で質玠なデコレヌション。
    だからこそ䜜り手の心の枩もりがストレヌトに䌝わっお来るのかもしれない。

    埡䞖蟞にも広いずは蚀えない、控えめな庭に、やや堎違いな倧きさのクスノキが䞀本怍えられおいる以倖には、これず蚀った特城も無い、単なる朚造の小さな䞀軒家  

    そもそもクスノキ科のクスノキずいう高朚は、かなり幅の広い道路の䞭倮分離垯の䞊や歩道のガヌドレヌル脇などに街路暹ずしお怍暹されたり、緑が売りの公園のシンボル的な存圚になったり、厳かな神瀟仏閣で神が宿る巚朚ずしお恭しく厇められたりするこずはあっおも、䞀般個人の自宅でガヌデニング甚に䜿われるこずはたずないでしょう。

    なので、こんな限り無く庶民的な䞀戞建おの小さな庭にドカンず䞀本だけ怍えられおも景芳的にバランスがずれないこずは䞀目瞭然だず思う  

    聞くずころによるず、幎の倧半を占めるお手補のむルミネヌションが点灯されおいない時季は、この呚囲ずマッチしない䞍思議なクスノキもあたり泚目されるこずはなくお、小さな家に長幎䜏んでいるのは人の奜さそうな品の良いお婆さん䞀人 らしい。

    この䞀人暮らしのお婆さんの最倧の楜しみが、幎に䞀床、䞹粟を蟌めお完成させる「光の䜜品」で愛する人たちを幞せのオヌラに包み蟌むこずなのだろうず想像される。

    

    ヒむラギの葉が光り茝く傍らでトナカむさんが遊んでいる。
    倧きなプレれント袋を担いだサンタさんのニコニコ笑顔。
    シルクハットを被った雪ダルマ君も幞せそう。

    芋おの通り、挔出はこの䞊無くオヌ゜ドックスだけど、この玠朎なずころが人気の秘密なのでしょう   愛する人たちの喜ぶ顔を、ただ芋たくお芋たくおたたらないだけの動機で䞍噚甚な玠人さんが䞀生懞呜に食り付けた努力が随所に滲み出おいお、ずっおも枩かく心が和んで来る癒しのむルミネヌションだもの。

    

    「やっぱり今幎も、
    クスノキの家が䞀番ね 
    䜕がいいのか ず蚀われおも、
    具䜓的には説明できないけど  」

    「䜜り手の   ぀たり、スピリットかな   
    心の底から涌き出お来るような
    枩かい気持ちが入っおるんだよ。
    ド玠人のお婆さんだから技術は劣るけど   
    そんなこず関係ないね 
    幎に䞀床、聖なる季節に、
    倧切な人たちが遥々この家たで垰っお来るんだよ」

    「きっず、目の䞭に入れおも痛くないほど
    可愛い盛りのお孫さんたちがいお、
    普段はダマト本土で暮らしおいお、
    この時季にお正月を兌ねおルキりスぞ垰っお来るんだわ」

    「愛しくおたたらないお孫さんたちが
    無邪気に喜ぶ笑顔を芋たくお芋たくお   
    ただ、その気持ちなんだろうな」

    

    おそらく同䞖代の友人たちは、フェンス越しに芋えるベヌスの䞭の、たさに本堎から盎茞入されたハッピヌな雰囲気に溢れんばかりのむルミネヌションや、スカむハむのような掟手で壮麗な光の䞖界の方が、デヌトコヌスずしおは盞応しいず思うはず。

    カッコいいデヌトをしおいる二人ず思わせおくれるお排萜なコヌスだもの。

    幞也ず私は、どうやら普通の若者たちずは感性が違っおいるらしく、芏栌化された機械的な矎しさよりも、玠朎な手䜜りの矎しさの方に魅力を感じる二人のようで  

    ファッションには揃っお鈍感で、流行りの映画や音楜にラむフスタむルたで圱響されるこずもなくお、皆ず同じように無免蚱でクリスマス・ドラむブはするけども、奜んで走るコヌスは、今時の若者たちが共有する䞀般的な趣向ずはかなり違っおいる。

    「今時   ちょっずダサいんじゃないの」

    ず笑われおしたいそうだけど、二人が目指す究極の理想のカップル像は、幌い頃に毎週楜しみに欠かさず芋おいた人気アニメのテレビ番組の䞭にある。

    あの有名な「アルプスの少女」のハむゞず矊飌いのペヌタヌのような玠朎で枩かい付き合いが出来る自然な関係がベストずいうこずで完党に息統合 本圓に、今時   だけど。

    倚くの若いカップルみたいに劙に肩肘を匵るこずも無く、思春期ならではの芋栄みたいな態床も無く、ごく日垞のマむペヌスな立居振舞いの䞭で、お互いに他の異性友達ずは替え難い䜕かを初めお感じ合っおいる。

    

    「さあ、今幎も、お瀌にクリスマスカヌドを曞いお郵䟿受けに入れようね 
    もちろん孊校名ず二人の名前もしっかり曞いお」

    「もし去幎俺たちがここに入れたカヌドをずっおいおくれたら、
    あっ、これ同じ名前だっお気付いおくれるかな」

    「高校生でさぁ、二幎連続しおここに来る垞連さんっお、
    私たち二人くらいのものでしょうね   
    みんなスカむハむやベヌスの華やかな方に行っちゃうから  」

    「やっぱり俺たち二人っお、
    ちょっず倉わっおるのかなぁ」

    「お互いその蟺りが気に入っお付き合っおるんでしょ?」

    「そうだな  」

    

    ホヌリヌシヌズンの間に島内各地で芋られる様々な「光の䜜品」は、地元の電力䌚瀟などが䞻催するコンテストで衚地されるケヌスもあり、䞭には䜕幎か連続しお受賞しおいる家もあっお、その賞を励みに創䜜しおいるようでもあるけど  

    実は、䜜り手の倚くが密かに楜しみにしおいるのは、このような衚立った衚地などではなくお、偶然がもたらす芋知らぬ芋物人から差し出された「手䜜りのクリスマスカヌド」でしょう。

    このルキりス本島では、聖なる季節の習慣ずしお、自分が心から感激した「光の䜜品」に巡り䌚ったら、それがたずえ知らない人の家であろうず、䜜り手ぞの感謝の気持を蟌めたオリゞナルなクリスマスカヌドを莈呈しおしたう。

    幞也ず私も、お返しず蚀わんばかりに「クスノキの家」の郵䟿受けに、䞀人暮らしのお婆さんぞ感謝の気持を蟌めおクリスマスカヌドを入れお垰ったもの  


    『 玠敵な食り付けを芋せお頂いお、ありがずうございたす。

    毎幎ここに来お、幞せな光を分けお貰っおいたす。

    可愛いお孫さんたちも、きっずお喜びでしょうね。

    たた来幎も、再来幎も、ずっず、ずっず、
    毎幎必ず、ここぞ垰っお来たいず思いたす。

    それでは、最埌に、メリヌクリスマス 』


    【 旧敵囜ぞの耇雑な憧憬  基地ず䞀緒にクリスマスを連れお来おくれた囜 】


    幞也ずの恋は、お互い「恋愛初心者」同士ながらものんびりず自然䜓で、䞀生懞呜ながらも窮屈じゃなくお、ずにかく前向きで蟺り䞀面がキラキラしおいお   

    その䞀方で、鮮やかなグリヌンが眩しく広がるベヌスの敷地から吊が応にも感じられる倖囜の匂いが、ずおも気になる青春時代だった  

    ちょっず高めのフェンス越しに眺める基地の景色は、豊かな倖囜生掻のミニチュア版のよう。

    ゎルフ堎のように広倧な緑の芝生の䞊に、䞀階建おの平らな四角い倖人䜏宅が充分過ぎるほどの間隔を開けお幟぀も建おられおいお、子䟛たちが遊ぶための可愛いブランコやシヌ゜ヌや滑り台も芝生の所々に悠々ず蚭眮されおいる。

    ダマトの家の䜜りにはたず欠かせない構造ず思われる塀や門などは、その発想自䜓が無いらしくお、隣の家ずの境が䜕凊なのか分からない   ず蚀うよりも、東西南北どちらの方角にもスペヌスがゆったりず広がっおいるので「境界線」など必芁ないのでしょう。

    垂盎に家を二階建おや䞉階建おにしなくおも、ゆったりず空間を氎平に広げればいいなんお、矚たしい限り   

    車だっお、車庫なんお面倒臭いものは芁らないわ ず蚀わんばかりに、各々の家の前に颯爜ず乗り付けおは無造䜜に駐車したかず思えば、圓たり前のようにそのたたずっず攟眮しおいる。

    歩道ず家ずの境目の「隙間スペヌス」に駐車堎を䜜るずいう窮屈な発想ずは無瞁のフェンスの䞭では、そこに䜏む人々の動きも優雅で掻発で楜しそうに芋えお来る。

    ミニチュア版じゃなくお  
    絶察に本物を䜓隓しおやるんだ

    

    人々の暮らし振りが、あんなに生き生きず茝いお芋えるのはどうしお 
    ちょっず嫌だけど、戊争に負けたずいう歎史に関係しおいるのかしら

    只単に負けただけじゃない   

    このダマト囜の歎史䞊、数少ない本栌的な地䞊戊の舞台にされた島ずいう悲劇を、倚くの䜏民は忘れるわけにはいかない。

    そしお、戊争が終わっおからも長い間ルキりスは「この囜」ではなく、法埋䞊は「倖囜」だった。

    そもそも本土埩垰を果たしおからは、この囜の䞀郚のはずなのに、未だに「本土」ずいう暗黒時代の呌び方が生きおいる事実は、島民の朜圚意識ずしお、このダマト囜の正匏な囜土じゃないこずを暗に認めおいるようなものなのかしら  

    広い本土に比べたら、本圓に小さな小さな南の島なのに、遞りによっお島で䞀番の䞭心郚が未だにナ゚セむ合衆囜の軍事基地ずしお占拠されおいる   

    この理䞍尜に映る状況を䞀芋した限りでは、ダマト囜に駐留する倖囜軍基地の䞃十五パヌセントがルキりス本島に集䞭しおいるずいう「建前」を、぀い信じおしたいそうにもなっお来るかしら。

    

    しかも、そのナ゚セむ合衆囜ずは、昔の敵察囜

    肉芪や友人を敵兵から殺されたずいうような、根深い恚みを持぀老人やその子孫たちにずっおは、存圚自䜓が蚱し難いもの。

    地䞊戊が激化しおから運悪く捕虜ずなった埡先祖様が、たるで家畜扱いにされたずいうような忌々しい蚘憶を、敢えお未来氞劫に語り継いでいくこずをラむフワヌクずする䞀族もいたりする。

    我が囜の歎史䞊、数少ない地䞊戊の舞台ずなった悲劇の戊争䜓隓を受け継ぐ老人たちにずっお、旧敵囜の基地がなくならない限り戊争は終わらないこずでしょう。

    それなのに、自分たちの愛すべき島から基地を远い出すための反察運動は、本土で華々しくご掻躍されおいるお圹人様や政治家先生たちの埡郜合ず埡機嫌を䌺いながら、意図的に盛り䞊がったり冷めたりの波を繰り返すだけ   

    そこには、か぀お溢れおいたスピリットや゜りルの類は埮塵も無い   

    昔のようにルキりスに同情しおくれる有識者も今や少数掟になっおしたったので「基地の芋返り」をダマト本土に芁求できるのもい぀たでのこずやら   

    さらにこの実態を突き詰めおみるず、個人の䞻䜓的な意思や䞀族の悲劇の歎史などずは無瞁で、運動員の利害が絡む政治団䜓からの完党な「指瀺埅ち」姿勢に陥っおいる

    必芁な時に必芁な人数の運動員を集めお、芋栄えのするプラカヌドや暪断幕やハチマキを圹割分担しお、驚くほどスピヌディヌに準備するこずが可胜な運動家たち。

    その「組織化」ずいう点では、それこそ「アむ゜芏栌に則った行動マニュアルが密かに敎備されおいるんじゃないの」ず思えるくらい芋事だけど、島民の「魂の叫び」ずは呌べなくなっお来おいるのは、ちょっず耇雑ね  

    

    幌い頃から、薄暗い赀ランプの灯る䞍健党極たりない小さなボロ小屋で、倧奜きだけど決しお「普通の人」ずは蚀い難いケむさんを身近に肌で感じお来たせいか、他の同玚生たちよりも基地や倖人兵に察する思い入れが、やや耇雑なのかもしれない。

    「いろんな人皮や宗教や文化が混じり合っお出来た玠晎らしい囜からモヌリスが迎えに来たら、芝生の䞊に建぀真っ癜な家で䞀緒に生掻する玄束さ 郚屋も広くお、キッチンも冷蔵庫もサむズが違う、ビッグな家で暮らすのさ 倩気の良い日は、庭にテヌブルず怅子を出しお、ビヌルにバヌベキュヌさ」

    ケむさんはい぀も空を芋䞊げながら、こんなこずを蚀っおいたかしら   

    モヌリスを初めずする倖囜人の優雅な生掻を語る時の圌女の県差しは、
    ずおも柄んでいお、たるで倢芋る少女   

    そんな玔粋な圌女のこずが、玲子も私も倧奜きだった。

    でも、小孊校も高孊幎に突入するず、い぀もい぀も同じフレヌズばかりを繰り返すケむさんが「普通の人」じゃないこずが、子䟛心にも䜕ずなく分かっお来た  

    「裏の豚小屋には、近寄っちゃ駄目よ 
    ベヌスの兵隊盞手に商売しおいる豚小屋の女なんお、
    囜の恥曝しよ。
    たずえ話しかけられおも、
    絶察に盞手にしちゃ駄目よ」


    倕方、ちょっず遅く家に垰っお来るず、心配そうな䞍満そうな衚情の母芪の口から出お来る台詞は、たるで壊れたロボットのように毎床同じで぀たらない   

    昔の敵囜に察しお、女ずしおの最䜎限のプラむドを捚おた背埳行為を「豚」ずいう蚀葉で衚珟したいのかしら。ナ゚セむ合衆囜軍による占領䞋の暗黒時代を必死で生き抜いたお爺さんお婆さんたち䞖代の怒りが、母芪にはしっかりずストレヌトに匕き継がれおいるのでしょう。

    

    モヌリスは、本圓にケむさんを迎えに来るのかな

    来お欲しいのは山々なんだけど   
    たず、来ないような気が  

    普通の男の人だったら、やっぱり普通の女の人がいいに決たっおるし   

    もしかするず、モヌリスず付き合っおいた頃は、圌女の性栌も普通だったのかも 

    それが、長い間ずっず埅ち続けお、埅ち草臥れお、遂に粟神がおかしくなっおしたったのかな


    「モヌリスっおいう兵隊さんは、本圓にいるのかな」

    「倚分いるから、い぀もあんなに、県を茝かせお喋っおるんだず思うけど   
    ケむさんが話す通りの、玠敵な王子様のような人かどうかは、ちょっず、ね  」

    「たさか、悪い黒人男に隙された なんおこずは  」


    こんな颚によく玲子ず二人で話し合ったものだけど  

    結局は、無情にも「モヌリスは迎えに来ないだろう」ずいう結論ず蚀うか、そういう未来予枬に二人で到達しおしたっお、その頃からか、埐々に蟺りが薄暗くなっお赀ランプが怪しげに灯り出すたでの「お仕事前」の時間垯でも、ケむさんの小屋の呚蟺を意識的に避けるようになっお来た。

    時々、遠くから私を人恋しそうに芋぀める圌女の衚情が、ずおも悲しそうに映るこずもあったけど、勇気を出しお「気のせいよ」ず自分に蚀い聞かせおサッず通り過ぎたかしら  

    

    暗黒時代を生き抜いお来た島の老人たちが忌み嫌う囜。
    眩しく広倧なグリヌンの䞊で優雅な生掻を芋せおくれる囜。
    健気なケむさんの心を未だ虜にする軍人モヌリスの故郷。

    たあ、色々ありそうだけど䞀番倧事なのは、この島にクリスマスを䌝えおくれた、正確に蚀うず、クリスマスの楜しみ方を教えおくれた囜ずいうこずでしょう。

    戊争に負けお、島の真䞭に倧きな軍事基地が出来る前は、この南囜にはクリスマスの煌びやかなむルミネヌションなんおほずんど無かったそう。幞也ずのクリスマス・ドラむブでの楜しいお喋りの想い出があるのも、元を蟿っおいけば、実は、このナ゚セむ軍基地のおかげなのね。

    

    「ねえ、クリスマス䌑戊っお、意味分かる」

    「たずえ囜同士の戊争でも、
    聖なるクリスマスには䞀時䌑息するっおいうこずだろ」

    「聖なるパワヌは、戊争でも止めちゃうほど凄いものなのね」

    「宗教も関係するんだろうけど、それ以䞊の䜕かがあるよ」

    「でも、クリスマスで䌑むくらいなら、
    初めから戊争なんおしなきゃいいのに  」

    「確かに、囜家的な人殺しの蚈画が、
    楜しいクリスマスなんかで䞭断するのは、おかしいよな」

    「戊争っお、そんな子䟛みたいな理由で䌑憩できるもの」

    「そんなんじゃ、クリスマスの前日たでに
    殺された兵士たちの呜が報われないよ」

    「䜕だか、無茶苊茶な䌚話になっおないかしら  」

    「こんな奇想倩倖なこずを考える高校生っお、
    俺たちの他にもいるず思うか」

    「やっぱり私たち二人っお、
    ちょっず倉わっおるのかな」

    「ちょっずじゃなくお、
    かなり倉かもな」

    

    クリスマスの持぀力   それは、人々の生掻の基盀である「家」を思い思いに楜しく食り付けるずいう創䜜掻動に皆が心から参加するこずで集合的に生たれる、幻想的に茝くむルミネヌションから発せられる光のパワヌなのかしら

    䞀家団欒の拠点であるリビングず友人たちを迎え入れる玄関をメむンずしお、家の倖偎も窓枠や雚避けの盎線や偎壁を利甚する。子䟛たちが遊ぶブランコや鉄棒や滑り台やシヌ゜ヌも。

    ぀たり幞せな家庭生掻に関わるもの党おを、幟぀ものカラフルな小さな電球を組み合わせお矎しく食り付けるずいう聖なる工䜜䜜業。

    「遞りによっお敵囜の人々の真䌌をするずは䜕事か 屈蟱的にも、未だに、島の䞀等地を軍事基地ずしお占拠されおいるずいうのに   奎らの文化や習慣たで抌し付けられおたたるか 倚くの島民が無惚に自決させられた事実を忘れおなるものか」

    ず、たずもに考えれば、意に反しお戊争の犠牲ずなった埡先祖様の「お怒りの雷」が真っ逆さたに萜ちお来そうなほどの背信行為でもあるのに   

    そんな反感を吹き飛ばす、ず蚀うか、反感を持぀人すらいないくらい新鮮で魅力的に映った倖囜文化の挔出 それが、基地の䞭で茝く聖なるパワヌだったそう。


    「倖人っおいうのは、結構凝ったこずをするもんだなぁ?」
    「家の窓や雚避けに沿っお、色付きの電球を食り付けおピカピカ光らせおるよ」

    「あんなだだっ広い芝生の庭があれば、人間、考えるこずも違っお来るわけだ  」
    「でも、家もその呚りもキラキラ茝いお、本圓に奇麗だなぁ?」

    「こうしおずっず芋おるずさぁ 䜕だか、嫌な事ずかを党おを忘れお、こっちたで幞せな気分になっお来る感じだよ」
    「普段は鬱陶しい基地だけど、この季節だけは悪くないな  」


    おそらく、基地が出来お初めおのクリスマスを迎えた時、

    その厳぀い金網のフェンス越しに、䜕凊か家庭的で枩かいむルミネヌションを芋せ぀けられた島民の祖先たちは、この䞖には「別䞖界」ずいうものがあっお、そこには感芚の異なる幞せや喜びが存圚するこずを悟ったのでしょう  

    家族皆でクリスマスを楜しもうずする倖人たちの意気蟌みが䌝わったのよ 

    そうでないず旧敵囜の真䌌なんお出来るはずがないし、この閉鎖的な颚土の島で、人々が倖囜の習慣を喜んで受け入れお真䌌するようになったんだから、かなり匷い憧れの感情が隠れた原動力ずなっお、次第に広く定着しおいったに違い無い。

    囜ず囜ずの歎史関係をも超越させるほど䞍思議な力を攟぀聖なる季節には、過去の悲劇に根ざした人々の憎しみや怒りも䞀時停止しおしたう。

    人間の行為のみならず思考回路たでもがクリスマス䌑戊に入るずいうわけね。


    【 お別かれ  倧奜きなクスノキの枩かな磁力に包たれお 】


    幞也ずは二人が䞀番奜きな堎所でお別かれした。
    二人で過ごす䞉回目のクリスマスの時季に  

    ご良家の子女たちずの付き合いもそれなりに楜しくお、勉匷にもスポヌツにも孊校行事や恋愛にも䜓圓たりで打ち蟌んで、たさに充実した高校生掻。

    そしお、女性ずしおの「初䜓隓」も、今幎の倏䌑みに、䞀緒に泊たった海蟺のコテヌゞで、幞也ず   

    それ以来、倧人の女に向かっおの最初の䞀皮が心地良く剥けたような感じもしお来たずころぞ、たた、クリスマス・ドラむブの季節がやっお来る。

    今幎も倧奜きな幞也ず最高の「光の䜜品」を求めお、島䞭を深倜たで無免蚱でドラむブしお、普通の高校生ずはちょっずテむストが違う感じだけど、私たち二人にずっおは、ずおも楜しい䌚話に花を咲かせお   
    ずいうこずになるのかしら それずも  

    かすかな胞の痞えが日に日に倧きくなっお来お、広倧なベヌスを傍らで芋る床に起きる胞の衝動はどんどん倧きくなるばかり。

    だけど、䞀方を遞ぶずいうこずは   
    どうしおも、もう䞀方は捚おる、

    ずいうこずになるしかないのかしら

    広々ずした陜だたりの芝生の䞊で、鉄棒やシヌ゜ヌで思い思いに遊んでいる金髪の子䟛たちは、たるで倩䜿のように党身で幞せを衚珟しおいるように芋えるけど   

    やはりフェンスの倖偎からでは、䜕も実際に感じ取るこずは出来ない  

    矚たしいほど広倧なグリヌンが、ゆずりのある豊かな倖囜生掻を効果的に挔出しおいるだけなのか、それずも人間の幞せずいうものに関する捉え方自䜓が、私が育った環境を通しお自然に培われお来たものず根本的に違うのか

    ずにかくナ゚セむ合衆囜に䜏んでみたい 
    モヌリスの囜に行っおみたい

    そしお、人々の懐の奥深くに飛び蟌んでいっお、圌らの抱える珟実に盎に觊れおみるこずによっお、この島に「クリスマスの楜しみ方」を教えおくれた囜が党䜓で共有しおいるはずの前向きなスピリットを䜓で孊びたいから、どうしおも留孊したい

    そうするず、幞也ずは離れおしたう。

    だけど、圌のこずも倧奜き  

    

    瀟排な新居にもすっかり慣れお、生掻環境の前向きな倉化から、父芪の事業が順調だずいうこずも十分に䌺えたので、倚少は莅沢なこずでも頌み易い雰囲気だった。

    そもそも、匕っ越す前から、新進気鋭の䌁業家ずしお向䞊心の塊のような父芪の圱響の䞋、かなり進歩的な家庭環境でもあったので、長女が海倖留孊などず蚀い出しおも、特に枋るこずも無く賛成しおくれるであろうこずは、聞く前から分かっおいたようなもの。

    進歩的ず蚀えば、
    地元䜏民の基地撀退運動に察する父芪の芋解ずいうのが、
    かなり批刀的なスタンスで   
    ナヌバスな呚囲は盞圓な冷や汗もので   

    母芪からは「今、お父さんから聞いた話は、友達や先生に話しちゃ駄目よ 絶察によ こんな狭い島瀟䌚なんだから、䜕凊で誰が基地反察の運動員ず関わっおいるか分からないんだから   呚りを敵に回しちゃ駄目なのよ」ず、ちょっず怖い顔で慎重に念を抌された感じだったかしら。

    あれだけ地元を露骚に批刀するずは   

    かなり進歩的ず蚀えるでしょう   お蔭様で子䟛の私にたで、基地反察運動には、かなり懐疑的なスタンスが培われおしたったみたいだけど、決しお孊校などで口に出すこずはしなかった。

    

    酔っ払った兵隊たちが床々匕き起こす暎行事件などで悪名高いゲヌトストリヌトの裏通りに建぀䞀軒家から、閑静な䜏宅街の枅き䜏人ずなっお数幎   近所のお排萜な癜亜の倧邞宅に䜏む効のお友達は、なんず、䞭孊校のご卒業ず同時に遥か圌方の倖囜たでピアノ留孊をなさるのだそう。

    そのお隣には「うちの息子はねぇ? 小孊校䞀幎生から、本土にある党寮制の進孊校に通っおいたすのよぉ?」なんお自慢気に語る教育ママもいらっしゃるハむ゜な䜏環境の䞀構成員である私も、予想通り、海倖留孊などあっさりず決定した。

    䞀぀の前向きな決定に䌎う䞀぀の倧きな痛みは、重々に芚悟しおいた぀もりなのに   
    それは予想以䞊に蟛い遞択だった。

    倧奜きな幞也に、この私の方から、別かれ話を切り出さなくおはいけないなんお   

    ずころで、倖囜に留孊するからず蚀っお、無理に恋人ず別かれる必芁があるかしら 
    文通ずか電話ずかで、亀際を続ける手段はいくらでもあるような気もするけど   

    どうせ、そうやっお頑匵っおみたずころで結局は、物理的な距離が、二人の関係を自然に消滅させるものなの そうなったら、そうなった時のこず、かな

    でも、そんな䞭途半端な状態で留孊したくない 
    幞也ずの付き合いが本物なら、行く前に、きちんず別かれるべきだわ 

    どうせなら、二人の倧奜きな堎所を、
    最埌の思い出の堎所にしよう  

    

    二人にずっお高校生掻最埌になる「クリスマス無免蚱ドラむブ」も、基地をフェンス越しに眺めながら「本堎盎茞入」のむルミネヌションを堪胜するこずから始たった。

    そしお、冬の恋人たちの定番コヌスであるスカむハむ䞀垯の、完党に玠人の領域を越えた壮麗な光の挔出を経お、車は自然に「クスノキの家」に向かっおいる。

    やがお、遂に到着

    盞倉わらず庭に䜕故か䞀本だけ䞍自然に倧きなクスノキが怍えられおいる以倖は䜕の倉哲も無い小さな䞀軒家。そのデコレヌションは玠朎な幞犏感に包たれおいる。

    ご高霢で䞀人暮らしのお婆さんには手が届かないような高い䜍眮から枝分かれが始たるこの倧きなクスノキの根元にベニダ板を括り付けお、わざわざ「平面」を䜜っお小さなカラヌ電球を食り付けるよりも、元々から平面で盎線的な家の偎壁や窓枠や雚避けなどに食り付けた方が、遥かに楜で効率的だず思うんだけど   

    たあ、その䞍噚甚さが、たた埡愛嬌でもあるかしら。

    可愛い可愛いお孫さんや子䟛たちに囲たれおクリスマスず新幎を迎えるこずだけが楜しみな人の奜いお婆さんが、自分の愛する人たちを楜したせおやりたい䞀心で、技術は無いけど、ありったけの愛情を蟌めお䜜ったド玠人の力䜜 

    そんな埮笑たしい想像を掻き立おおくれる、手䜜りのデコレヌションの前で  

    「どうしお留孊なんかするんだよ 
    お前がいなくなったら、来幎は
    誰ずクリスマス・ドラむブすればいいんだよ 
    俺は、遠距離恋愛も悪くないず思うけどなぁ 
    時々は垰っお来るんだろ 
    どうしおも、ちゃんず別かれおから出発したいのか」

    「倖囜なんだから、そう簡単には垰っお来れないよ。
    片方が本土に行った遠距離カップルみたいになるのは、嫌なのよ。
    䌚えなくなっお、䌚えなくなったから、自然消滅っおいうのは、
    嫌なの   
    自然に䜕ずなく終わっおいいほど、
    意味の無い軜薄な付き合いじゃなかったもの   
    だから、ちゃんず終らせおから行きたいの 
    女に生たれお初めお経隓した男性が幞也で良かったず、
    本圓に思っおるよ  」

    「俺だっお、初めおだったさ 
    お前のような倉な奎が、初めおの女性で、
    男に生たれお来た甲斐があったよ 
    ベヌスの囜をそんなに芋おみたいのか 
    寂しくなるけど、
    じっず我慢するのが男っおいうこずなんだろうな  」

    「基地の囜の人たちが教えおくれたんだよ。
    この島にこんな玠敵なクリスマスがあるのは、
    圌らのスピリットのおかげなのよ。
    どんな堎所で、どんな生掻をしたら、
    どんな考え方が生たれるのか   
    圌らのスピリットを育おた囜を、実際に芋おみたいの」

    「もう決めたんなら、
    俺のこずは忘れお、党おに頑匵れよ 
    たるで俺は、ハむゞが郜䌚に連れお行かれた埌の、
    寂しいペヌタヌだな。
    ペヌタヌはずっず、アルプスの山で矊飌いを続けるさ
    このクスノキの家にも、
    毎幎クリスマスカヌドを届けに来るかな  」

    

    意倖にあっさりず別かれたようでもあったけど、内心は本圓に蟛いものだった。

    こっちこそ郜䌚に向かうハむゞの心境よ

    二人が倧奜きな「クスノキの家」を埌にしお私の家たで、垰り道のドラむブ䞭の䌚話はほずんど無く、衚面䞊はい぀も通り家の前たで送っおもらっお、無蚀で車を降りお、走り始めた無免蚱運転の幞也に向かっお手を振っお   呆気なく最埌のデヌトは終了。

    別かれた圌は、圌女の旅立ちの劚げずならぬよう、普段ず倉わらない自分を挔じおいるようでもあり、特に匷がっおも芋せず   

    恋人から別かれを告げられた埌の自然䜓ながらも気䞈な振舞いを芋せられお、益々幞也が奜きになったような気がした。

    でも、冗談じゃなくお、
    幞也は本圓に、毎幎来る぀もりかもしれない   
    倧奜きな「クスノキの家」に、毎幎、クリスマスカヌドを届けるために。

    これはちょっず、自惚れが匷過ぎ   かな


    ◆
    ◆
    ◆


    【 たたも倖人兵による卑劣なレむプ事件発生  史䞊最倧芏暡の虚構ず玲子 】


    やがお季節は移り倉わり、南の島が早くも春めいお来る頃には留孊先ずなる倧孊や受講コヌスなども決たり、埌は高校を無事に卒業するだけ。いよいよ憧れのベヌスの本囜ぞ向けおの出発が近付いお来たずいう埮劙な時期に「事件」は起きた。

    あの忌々しいレむプ事件の被害者が玲子だったこずは、出発の盎前に、たさに足を匕っ匵られるようなタむミングで知った。 

    基地を远い出すための島民による反察運動は、遞挙や重芁法案などの政治絡みで盛り䞊がったり冷めたりを適床に繰り返しお来おいたけど、燃え䞊がる怒りの挔出がこれたでの埪環の䞭では比范的倧きなものであるこずは盎に感じ取れたかしら。

    たたも基地の兵士が島の女子高校生に暎行
    駐留軍最高叞什官に改めお軍の綱玀粛正を求む
    䜏民たちによる今回の抗議集䌚は過去最倧芏暡に

    初めおの海倖枡航を目前に控えお地に足が着いおないような状態で、気分は既に雲の䞊ずでも蚀うのでしょうか、目の前の珟実よりもこれから迎える倖囜生掻のこずで頭が䞀杯で、フワフワしたり゜ワ゜ワしたりを繰り返しおいる私を匷襲しお来た。

    

    居間の゜ファヌに寝そべっお、お菓子を頬匵っおボヌっずしおいた時のこず   急な甚事でも思い出しお走っお戻っお来たのか、息を切らせた母芪がリビングに入っお来お、たず自分自身を萜ち着かせるかのように息を敎えお、神劙な衚情で語り始めた。

    「玲子ちゃん   なんだっお」

    留孊を目前に控えお、心は既に「機䞊の人」である私には、玲子が䞀䜓どうしたのかさっぱり分からなくお   次の母芪の蚀葉を聞いお、心地よく緩んでいた身䜓䞭の党おの神経が、珟実䞖界に突然匕き戻されたかのように感じた  


    「あの倖人兵たちに暎行された女子高校生っお、
    玲子ちゃんなんだっお 

    ただ詳しくは知らないけど、
    玲子ちゃん䞀人が、ベヌスの黒人兵に、
    しかも、数人がかりで襲われたらしいよ   

    もう、奎らは男でもなければ軍人でもない、
    ただのケダモノだよ 

    でも、これから、
    玲子ちゃん、䞀䜓、どうなるのかしら  」


    幌銎染の芪友が、基地の兵隊に、しかも集団で、無理やりレむプされた 

    いきなり襲っお来た嵐のような出来事なので、䞀瞬は衝撃が走ったものの、その埌は深く疑い続けるこずもなくお、䜕凊か冷静に受け止めおいるようでもあったかしら。

    友人ずしお、前々から密かに恐れおいたこずが「ずうずう起きおしたったか」ずいう感芚が心の䜕凊かにあったのかも  

    

    玲子ず䞀番良く遊んだのはゲヌトストリヌト時代。
    家が盎ぐ近所だった幌皚園から小孊生の頃。

    ケむさんたちのボロ小屋が立ち䞊ぶ现道で、近所の子たちず䞀緒に鬌ごっこやボヌル遊びなんかをよくやった。そしお、身䜓を動かすのに疲れるずチョコレヌトやキャンデヌ目圓おにケむさんの小屋の軒先に座り蟌んで、皆でワむワむず䞀䌑みしおいたもの。

    い぀も空の遠くに埮かに芋える昌間のお月様を芋䞊げるような仕草で、軍人モヌリスず玄束した将来をずおも楜しそうに話すケむさんの姿があっお   

    その頃は、圌女の健気な人柄が醞し出す優しさに浞れる空気が、ただ倧奜きで倧奜きで  

    䞭孊生になるず、私たち家族がゲヌトストリヌトから遠くぞ匕っ越したこずで、玲子ず䌚うには電話での玄束が必芁に。もうその頃は、玲子も私も、怪しげな赀ランプの灯るボロ小屋で働くケむさんを「普通の女性」ずは芋なしおなくお  

    

    そしお、さすがに高校生になるず、もう完党に別䞖界ぞずセパレヌトされおいく。

    生埒の倧半が倧孊に進む進孊校ず、卒業埌ほずんどの生埒が盎に地元䌁業に就職する商業高校は、校颚が正反察ず蚀っお良いくらい違うもので  

    幞也ず私が通う高校は島でも有数の名門進孊校で、島内唯䞀の囜立倧孊に毎幎倚くの合栌者を出し、本土の有名私立倧孊に進む者も少なくない。海倖留孊組ずなるずさすがに数は枛るけど、私以倖にも䜕人かはいるみたいで、そう珍しい話でもない。

    䞀方で、玲子が通う商業高校は、芪も教垫も手の付けようが無い䞍良少幎や䞍良少女の溜たり堎で、類は友を呌ぶ方匏に䞍良たちが集っお来るのか、それずも、校内の環境が䞍良を創出しおいるのかは分からないけど、ずにかく柄の悪い高校  

    男子生埒で暎走族の䞋っ端の構成メンバヌたちは、将来のダクザかチンピラの予備軍だし、女子生埒の䞭には小遣い皌ぎのためにネオン街で氎商売のアルバむトに粟を出す嚘も普通にいる。

    歳を停っお、キャバレヌみたいなスケスケ衣装の、ちょっず危ない感じの店で働いおいる嚘もいるずいう噂もあっお   そのせいか私の高校では、暗に玲子たちの高校名を仄めかしお「他校の䞍良生埒ずは付き合っおはいけたせんよ」ず蚀わんばかりの通達たで出される始末。

    たあ、䜙蚈なお䞖話には違いないけど  

    生掻環境が異なる幌銎染の芪友ずたたに䌚うず、刺激的で良い面もあるけど、玲子の堎合は䞍良少女の䞭でも矀を抜いたリヌダヌ的存圚なので、やや匷烈過ぎるかしら。

    圌女ず䌚う床に、お互いの䜏む䞖界が違うこずを心から痛感したものね  

    

    「この前さぁ、
    クラブのトむレでファックったブラックのペニスは、
    最高だったよ。
    倧きさずいい、硬さずいい、持続力ずいい、
    もう完璧 
    この島の華奢な男たちの䞀物が、
    䜕だか、ずっおも哀れになっお来るよ。

    それにさぁ 
    ブラックの方が女の扱い方を知っおるよ 
    倧事にされおるっおいうか、
    倪い腕でしっかり守られおいる感じが、いいよね」


    ベヌスの恩恵による盎茞入ビヌルの泚がれたグラスを片手に、銙り、ず蚀うよりも、匂いのドき぀い盎茞入タバコを吹かしながら埗意げに話す玲子   

    真っ昌間から劙に目付きが据わっおいおハむテンションなのは、ベヌス関係者経由で仕入れた゜フト・ドラッグの日垞的な吞匕が及がす䜜甚でもあるのかもしれない。

    その䞀方で、オレンゞゞュヌスをストロヌで飲みながら、恥ずかしいのか、ちょっず俯き加枛で目を䞞くしお話を聞くだけで粟䞀杯の私   

    同じ歳の仲良しの嚘同士が、カフェのテヌブルを挟んで向かい合っお座っおいるはずなのに、泚文する飲み物も違うし服装もかなり違う傟向だし、二人の䜏む䞖界が根本的に違うこずは、傍から芋る者にも盎ぐに分かるくらい歎然ずしおいるこずでしょう。

    「今床たた、ベヌスでダンスパヌティヌがあるんだけど、
    来おみない 
    勉匷の息抜きに、ブラック狩りっおいうのも、
    結構オツなもんじゃない 
    でも、そう蚀えば、
    そろそろ留孊するんだっけ 
    これから本家本元のナヌ゚ヌセヌ合衆囜に行く人が、
    基地内ダンパなんかに来る必芁もないか  」

    「うん、留孊、決定したよ 
    基地の囜に行っお、モヌリスを捜しお来るよ。
    たずえモヌリスは捜せなくおも、近くたで行っお、
    䜕かを掎んで垰っお来るよ」

    「ケむさんが聞いたら、きっず喜ぶよ。
    ベヌスの囜に行くのは、圌女にずっおは、
    氞遠に適わぬ倢だからね   
    アンタが匕っ越しおからも、
    毎日のように、ボヌっずしお口をパクパクしおいたよ。
    小屋の軒先で月を芋䞊げお、
    モヌリスを倢みお  」

    「ずっず、ずっずモヌリスのこずを信じお、
    健気に埅っおいるのかな 
    ケむさん、今頃、どうしおるかな」

    「盞倉わらず、赀ランプさ? 
    でも、もう、身䜓は䜿えなくなったから、
    ブロヌゞョブ専門みたいだよ  」

    「  ブロヌゞョブっお、䜕なの」

    「子䟛は知らなくおいいんだよ 
    これから、お留孊なさる、進孊校の生埒さんには、
    党く瞁のない汚い蚀葉だからさ  」


    【 ブラザヌ・ハント・クラブの女王  ダブルの犠牲者 】


    玲子ずは぀いこの間、カフェで䌚っお話したばかりだず思っおいたけど、
    もう随分ず経぀のかな   

    ちょっず遊び過ぎじゃないかず心配しおはいたけど、案の定ね。

    お奜みの黒人青幎目圓おに、倜な倜なベヌス呚蟺のクラブに通う垞連グルヌプのリヌダヌ栌らしく、異様に露出床の高い掟手な服装には、はっきり蚀っおド肝を抜かれる。

    䞋着みたいなキャミ゜ヌルで、胞の谷間をやたらず匷調しお、肩も背䞭も玠肌出したくりで、ミニスカヌトはもう少しでパンティが芋えそうなくらいの際どい短さで   

    これじゃあたるで「どうぞ私を誘っお䞋さい」ず蚀っおいるようなもの   

    もちろん、お気に入りのクヌルなブラック君の気を惹く、ず蚀うよりも挑発するための粟䞀杯の衣装なんでしょけど、お䞖蟞にもセンスがいいずは思えない。

    この島の生嚘の癜い生肌は、血気盛んな黒人男性の䞋半身に時ずしお匷床の性的興奮をもたらすものであるらしいこずは、基地呚蟺に䜏む若い嚘なら誰でも、事ある毎に芪や先生から口煩いくらいに泚意されお来たこずだけど   

    䞭には、それを逆手に取っおブラックボヌむハントに利甚する背埳的な茩が倚数いるこずも忌々しき事実ずしお認めざるを埗ない。

    なぜそんなに黒人がいいのかしら 
    この島の男性っお、そんなに魅力無いかな

    なにしろ自分自身に盎接的な経隓が無いので感芚的には良く分からないけど   
    䞀床ブラック君ずの濃厚か぀甘く激しいセックスを経隓するず、その埌も病み付きになるものだそう。
    悪いドラッグず同じで、蟞められない止たらない、ずか。

    それにしおも  
    あんなに狭くお汚いクラブのトむレでやっちゃうなんお  
    いくら奜きでも安売りが過ぎるのでは   

    匷いアルコヌルず臭いほど銙る煙草ず、ガンガンのアップテンポなロックミュヌゞックが䜜り出す、その堎の粟力絶倫なノリなのでしょうけど、䞀番効いおいるのは、倜な倜な闇取匕が行われおいるらしい「盎茞入ドラッグ」の服甚から来るハむな気分かしら。 

    いくら奜きでも、正垞な状態では、誰かが吐いたゲロが残されたトむレの䞭でセックスしようずは思わないはず   オスもメスも二匹揃っお「芚醒状態」にトリップしおいるからこそ成せる技ず蚀ったずころでしょう。

    

    玲子が率いる䞍良グルヌプは、島内に点圚するバプティスト教䌚の裏庭に、深倜、無断で朜り蟌んではミニ・ドラッグパヌティヌを開いたりもしおいる様子。

    だけど、なぜ教䌚なのよ

    これは、おそらくクラブの汚れたトむレでの退廃型セックスずは逆の発想で、教䌚ずいう神が宿る「聖なる通」をドラッグで冒涜しおいるこずが暗に「快感」ぞず繋がっおいるのでしょうか 

    だずしたら、おぞたしいほどの悪趣味ね   

    䜕も、奉仕粟神溢れる敬虔な信者たちが綺麗に掃陀しおいる教䌚の庭を、違法な薬物を撒き散らしお荒らさなくおもいいような気もするけど  

    基地を経由しお違法なドラッグが各方面に流されおいるこずは暗黙の事実。

    広倧なグリヌンが眩しいばかりがベヌスではない。

    違法ドラッグ取匕ず歊噚売買のフリヌゟヌンず呌ばれるアンダヌグラりンドな別の顔も密かに䜵せ持っおいる。囜境も皎関も入囜審査も関係無く囜際的な物流が可胜な「軍事斜蚭」ならではの特殊性を悪甚する茩が絶えないのは、暗黒時代から党く倉わっおいないらしい。

    玲子がベヌス関係者で成す危険なグルヌプず浅からず関わっおいるこずも、薄々ず気付いおはいたけど、幌少の頃からの芪友に限っお、犯眪玛いの危険な県に遭うこずはないだろうず安易に考えおもいた。

    でも、それは䜕の根拠も無い勝手な思い蟌みに過ぎず  

    

    倧芪友の玲子が   
    狂った黒人兵たちによる集団レむプの逌食に

    たた、倖人兵が起こした集団レむプ事件ず蚀えば、あの卑劣極たりない「小孊生女児暎行事件」を連想せずにはいられない。

    耇数でしかも蚈画的に買い物垰りの少女を拉臎しお近くのビヌチで暎行を加えるずいう残忍な手口に抗議するため、圓時ずしおは史䞊最倧芏暡ずなる総勢八䞇五千人芏暡の䜏民決起集䌚が行われた光景はかなりの熱気を䌎っお本土にも発信された。

    思えば、あの時が最埌の「魂の叫び」だったのかも  

    今回の抗議行動は、数字的にはそれを軜く䞊回る芏暡になる様盞だけど、資金の出所である政治団䜓にコントロヌルされる圢で、小さな意識的な噎火を時々繰り返しお来た掻火山にずっおは、久しぶりの倧噎火を挔じるための倧舞台なのでしょう。

    そうでなくおも身蟺敎理でバタバタ慌しい状態なのに「基地に反察する善良な人々」をマンネリに挔じる䜏民たちから発せられる技ずらしい熱気が島党䜓に挂っおいる真っ只䞭にあっお、耇雑にも、ベヌスの本囜ぞの留孊出発をあず数日埌に控えた私がいる  

    䌚いに行こうか、行くたいか、
    やっぱり行こうか  

    でも玲子は、今は、
    誰ずも䌚いたくないだろうな

    だけど出発したら、
    今床はい぀䌚えるか分からないし  

    

    かなりの慌しさの最䞭ではあるけども、色々ず悩み考え抜いた揚句に、結局は、久し振りにゲヌトストリヌトを蚪れおいる。

    䞭孊校からは「山の手のお嬢様」ずしおの生掻にすっかり溶け蟌んでいたせいか、ゎミゎミした街䞊ず喧隒がずおも爜やかで懐かしくもあり   

    昔䜏んでいた䞀軒家は、ほずんど昔のたた残っおいる様子だけど、今は党然知らない家族が䜏んでいるみたい。

    ケむさんたちのボロ小屋は、たすたす老朜化しながらも、未だに誰か人が䜏んでいる気配も感じるけど  近くぞ寄っお確かめおみる勇気は、䜕故か湧いお来ない。

    玲子の実家である花札喫茶の入口には『勝手ながら暫く䌑業したす』の匵り玙が貌られおいお、ひっそりず静たり返っおいる。

    䞀時的にだずは思うけど、今、ここには誰も䜏んでいないこずは誰の目にも明らかね   

    それはそうでしょう。

    これだけ倧きな瀟䌚問題の被害者になっおしたったからには、䞖間の県を意識しないではいられないでしょうし、誠実な報道機関だけがマスコミ関係者の党おじゃないから、ほずがりが冷めるたでの間は、家にいおも萜ち着かないに決たっおいるわ。

    二重の意味で犠牲者になっおしたったんだな  
    鬌畜のような倖人兵たちず、過熱気味のマスコミ報道。

    可哀想だな、玲子  

    こんな時だから、本圓は、芪友ずしお傍にいおやりたい気持は山々なんだけど、䞀䜓どこに避難しおいるのかも分からないし、やれば無理やり探し出すこずは出来るでしょうけど、そんなこずをしお喜んでくれるかどうかも分からないし   

    そもそも今の私には、深く耇雑に傷付いた芪友の心ず身䜓が回埩するたで、ずっず傍にいおやれる時間は無い。

    倢の海倖留孊ぞの出発は、もう数日埌に迫っおいる   

    たずえ探し出したずしおも、䞭途半端に付き添うだけで䜕もしおやれないのなら、むしろ探さない方がいい、かな

    ごめんね、玲子   
    こんな蟛い時なのに、傍にいおやれなくお  
    予定通り、私、ベヌスの本囜ぞ行っおくるよ

    でも、向こうぞ行っおも、貎方のこずは䞀時も忘れないから
    貎方をこんな目に遭わせた基地の本囜を盎に䜓隓しお、
    必ず䜕かを掎んで、たた垰っお来るからね  




    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門

     
     

    Okinawa

     
     
    『基地の島ずアむ゜芏栌クスノキ指茪物語』 00_01_02_03_04終 ・創䜜倧賞2026・お仕事小説郚門

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