
絵本「からぼうず」―からっぽの貝がら―

浜には、とてもたくさんの貝がらがありました。うずまきのかたちや、丸いかたち、平べったいかたち。
だけど、どれもからっぽです。

からっぽの貝がらは、飢えていました。
だから、夜になるとからぼうずになりました。
そして、カニや小さな魚を、パクリ、パクリと食べました。
浜の生きものたちは、どんどんいなくなっていきます。

ある日のこと、浜にひとりの女の人がやってきました。
「とてもきれい」
そういって、たくさんの貝がらをひろって持ちかえりました。

女の人は、貝がら作家でした。
貝がらを組みあわせて、髪どめやペンダント、窓のかざりや小物いれなど、さまざまなものを作っていきます。

作品はどんどん大きくなっていきました。
たくさんの貝がらをくだいて、海と浜のりっぱな絵をつくりました。

ある夜、からぼうずは、自分が小さくなっていることに気づきます。

作家はくる日もくる日も、貝がらをひろいあつめ、そしてとうとう、浜に大きなオブジェを作りました。

からぼうずは、とても小さくなりました。
小さなからだで、夜のあいだ、ずっとそれを見ていました。

あくる日の浜では、
カニが走りまわり、小さな魚がむれをつくり、ヤドカリが貝がらをせおって歩いていました。
生きものたちは、またゆたかに暮らすようになりました。