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445 リベラルの反省② その限界を量子論で語る

     はじめに

     量子論とは1、測定値に最小がある理論です。
     それが物のサイズの問題だけなら、拍子抜けするほど当たり前で。目に見える存在がいくらでも分割できるなら、私という存在が何故ここにいるのか、哲学的な問題が出てきてしまう。またエネルギーも分割不可の塊がというのも、エネルギーと質量が等価という特殊相対性理論で考えれば、この理論が確立された現在なら理解しやすいと思います。しかし原子核を回る電子の軌道も量子化されている、電子は(いくつかあると言っても)特定の軌道しか原子核の周りを回らない点については、それが観測データから考えられる合理的説明といっても「なんなんだ?」と当惑するのは当然で。
     つまり物質の本質は量子であるという命題には、門外漢にも納得できる部分、そして不可解に思う部分があり、不可解の点が学習の入門を難しくしてる。だから今回は歴史を追うことにします。

     5.マックス・プランク

     物理の世界に量子を持ち込んだのが当時ベルリン大学教授だったマックス・プランク、1900年のことです。「鉄は国家なり」の時代、新興の帝国のドイツ帝国は製鉄が盛んで、より高温で稼働できる高炉が望まれていました。つまり高炉の内部の精確な温度が必要だったのです。とはいえ当時すでに光と温度の関係は知られていました。いわく、炎の色は燃やすものの材質には関係なく、温度だけに関係するとわかっていました。しかし白色光は色々な色がまざった光です。だから炎の色ごとにどんな光がまざっているか、光の周波数ごとにその分布割合もわかっていました。しかしそれは経験による観測結果であり、そこにどういった法則があるか、方程式を見つけることは長いあいだできなかったのです。
     まず問題設定をします。中が空洞の鉄のボールがあります。ボールといっても内側の空間の直系は例えば5メートル、鉄板の厚みは50cmと想定します。中には空気があり、それを(手段は何でもいいから)熱します。ある程度熱したら火を止め、温度のムラがなくなるまでの待ちます。そして予め設けてあった覗き穴から中を覗き、内壁の色を確認するのです。これで中の空気の温度がわかるのは、空気が球の中を循環してその温度が均されたこと、だから内壁の温度も空気と同じ値になっていると想定できるためです。つまり熱をもった鉄の内壁の色を観察すれば、中の空気の温度がわかるという道理です。
     そしてニュートンによるプリズムの分光から、光の色は様々な波長の色が混合したものとわかっていました。鉄球の内壁でも(色=温度なので)温度ごとに光の種類の分布割合がわかっていました。そしてその分布グラフを式にした最初がヴィルヘルム・ヴィーンでした。しかし1896年に発表された当時、実験値に合うと称賛されたのですが。温度ごとに波長ごとの放射強度を計測すると、波長が長くなるとヴィーンの式の答えとのずれが確認され、以後その差は開き続けると確認されたのです。実測値より高い方にずれていたのです。


     その誤差を解消したのがマックス・プランクで、その手段が量子だったのです。ヴィーンは放射法則を考えるに当たり、輻射の波長と気体分子の速度を関連付けました。温度は分子や原子の運動に拠ると今ではわかっているので、慧眼です。一方プランクは輻射の振動数に注目し、それに対応する線形振動子(プランクによる呼称は共鳴子)を考えたのです。その振動子の集まりのエネルギーが鉄球の空洞内の温度です。そこでプランクは振動子のエネルギー単位εとして式を組み立て、その後でε→0と置こうとしたのですが実験値と合わなかったのです。結局εの値は、

     ε\textit{ε} = hν\textit{hν}

     となることが実測データから要請されたのです。εは光が持つエネルギー、hはプランク定数、νは光の振動数です。この式が正に量子力学の始まりでした。

     6.アルベルト・アインシュタインと光電効果

    「気体をはじめ重さのある物体について、物理学者たちがこれまでに形成してきた理論的概念と、いわゆる“真空”中での電磁気的過程を扱うマクスウェルの理論とのあいだには、深刻な形式上の違いが存在する」

     これは光量子論を扱ったアインシュタインの論文、「光の生成と変換に関する、ひとつの発見法的観点について」の冒頭文です。それに続いて、物体については(当時はまだ実体を把握しきれていなかったけど)分子論や原子論により、大きさのあるものから成り立っていると考えます。一方で電磁気的現象はそれが発生する空間で連続関数が用いられていると。電磁気的現象とは要するに光のこと。つまりアインシュタインは特殊相対性理論につづき、ここでも物質と光の理論的不整合を問題にしているのです。
     だからアインシュタインはプランクが解決した黒体輻射の問題について、始めから光を粒子として扱うことにしました。そのとき前提にした式はプランクが採用したヴィーンの分布式でなく、レイリー・ジーンズの公式です。それというのも低周波領域で実験データとよく合うレイリー・ジーンズの公式こそ、古典力学とマクスウェルの電気力学を土台にした式だったからです。それにも拘らずこの式はすぐに値が発散し、実測データと合致しない。これが「深刻な形式上の違い」です。そこでアインシュタインは連続関数が前提のマクスウェルの理論を修正し、黒体放射のエネルギーを光量子という粒の集まりとして理解しようとしたのです。つまりアインシュタインはレイリー・ジーンズの公式からプランクの公式を求めるため、量子という概念を採用したのです。


     そしてひとたび光量子仮説を採用すると、光電効果も説明できます。光電効果とは物に光を当てた時に電子が飛び出す現象ですが、ある周波数以上の光(電磁波)でしか電子が飛び出すことは無いのです。ここでは光の周波数を古典的な物体の運動量と思えば理解しやすいです。例えばボウリングのピン(1.6kgくらい)を野球の公式のバッテリー間(18.44m)で倒す場合。カラーボールでは難しいかも知れませんが、鋼球でなら(届いて当てさえすれば)選手でなくても可能と思います。それは運動量、重さ×速度が鋼球の方が大きいからです。
     光電効果の場合は光の速度は一定だから、物体の運動量は光の周波数に置き換えられます。そして一定の周波数で電子が飛び出しますが、周波数をさらに上げていくと飛び出す電子の速度が上がり、光量を増していくと飛び出す電子の数が増すのです。その現象が正に光量子仮説で説明できるのです。

     7.黒体輻射で社会を切る

     プランクはヴィーンを信頼して黒体輻射の精確な方程式を作り、アインシュタインは根本から考えてレイリー・ジーンズの公式を導いた上で、プランクの式を改めて導出しました。この節では二人のそれぞれの考え方から、民主主義やリベラルを考察したいと思います。量子を補正項として使ったプランクを保守主義者、ニュートン(力学)とマクスウェル(電磁気学≒光学)の懸け橋としたアインシュタインを根本主義者とします。しかし当時は帝国主義が保守思想で民主主義や自由主義が対抗思想。一方で今の権威は間違いなくリベラルと人権主義。だから私は(政治思想としても)保守のプランクの立場を現在はリベラル、それに反対し根本から考えるべきアインシュタインの立場を加速主義、(新)帝国主義、覇権主義、強権主義として論を進めたいと思います。
     私のリベラルに対する最大の疑問。自分の意見を堂々と言えるこの情報社会の、何に不満があるのか? 自分の意見が反映されないとか、自分の見方とは正反対の見方があるなど、当たり前のことではないのか? その見方は身の毛がよだつから、自分のできる範囲で世間の目にふれさせないなど、自分の思想に自信がないからではないのか? 共産主義/社会主義陣営としのぎを削っていた時代はまだ国のトップ同士の対話があった。しかしリベラルの思想で社会のしがらみを一つひとつつぶしていった結果、人は一人で社会と対峙しなければならない状況になった。それはリベラルが組織論、運動論を嫌った結果である。
     リベラルは一人ひとりが自律/自立した個人となることを期待し過ぎていた。それは個人といいながら複雑な心も過去も持たないエネルギーを意味する。だから長波長領域で実測値とずれるヴィーンの放射法則止まりで、あらゆる波長に合致するプランクの公式に行き着けなかったのではないか? つまりリベラルは人を量子として、形あるユニークな存在として認めになかった。そこが思想としてのリベラルの限界である。

     とは言え今では立場が逆転した帝国主義や覇権主義に(結果としてこれからの趨勢になったとしても)人類の未来を託すことは出来ない。個人による即断即決は権限が集中して良質な情報が上がってこない棄権があるし、『銀河英雄伝説』ラインハルトのような良き独裁であってもトップが失職したら崩壊に入るし。だから中国共産党は集団指導体制をとっているが、それでも問題含みと私は想像する。
     ここからは私の持論ですが、私がリベラルにも関わらず共産党中国を人権の面からそれほど批判しないのは、国家としての中国が結構危うい状況と憶測するから。簡単に言えば寝そべり族と日本以上の少子化。政治以外では自由が許される共産党中国というけど、それは人を考える葦でなく、食う寝る交わるという動物化を促しはしないか? 中国の歴史は政治と生活の分断の歴史だけど、いわゆる(日本を含む)西側諸国は自由な言論空間があるし、イスラム圏は(程度の差はあるけど)政治と生活が密着してる。それらを現地で観て帰ってきた中国人、どう自分の国の政府を思うのか。だからやはり中華人民共和国にも人類の未来を託すことは出来ない。
     つまり帝国主義や覇権主義など強権的な政治は人間活動のエントロピーを増加させ、活力を奪う。その結果は国力の減退。それはまさにレイリー・ジーンズの法則の帰結、値の発散に他ならない。
     つまり強権でもリベラルでも、人類の素晴らしい未来というプランクの公式は導出できないというのが今回の結論です。(大塩高志)

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