
AIに任せる前に、業務を理解する
これは当たり前の話です。
少なくとも、言葉にすれば誰もがそう思うはずです。「業務を理解してからプロダクトを作る」——異論のある人はいないでしょう。
でも、AIという選択肢が加わった途端に、この当たり前の徹底が、思いのほか難しくなります。
プロダクトの新機能開発において、「AIでできないか?」と考える場面が増えています。
AIには大きな可能性があります。曖昧な入力を解釈したり、複雑な情報を整理したり、人が時間をかけていた作業を短縮したりできる。私たち自身も、今まさにAIを活用した機能開発に本気で取り組んでいます。
ただ、なんでもかんでもAIに任せればいいわけではありません。
お客様の業務を十分に理解しないまま、期待される結果を詰めきらないまま、「そこはAIがうまくやってくれるはず」と考えてしまう。それはAI活用ではなく、業務理解・仕様決め・実装設計といった複雑性から逃げているだけかもしれません。
BtoB SaaSで本当に重要なのは、お客様の業務を正しく理解することです。
どの入力に対して、どんな判断が必要なのか。どの結果であれば業務上正しいと言えるのか。どこまで自動化してよく、どこから人間の確認が必要なのか。
そこをすり合わせたうえで、条件分岐やルールで確実に処理できる部分は、きちんと決定論的に設計すべきです。ルールで表現できるものを、わざわざAIに委ねる必要はありません。特に、再現性や説明可能性が求められる業務では、毎回結果が揺れることは価値ではなくリスクや逆に業務負荷になる可能性があります。
一方で、AIが力を発揮する領域も確かにあります。それも、以前は技術的に実現が難しかった領域です。
たとえば、フリーテキストや手書きメモのような非構造な入力を扱うとき。過去の経緯や文脈を踏まえた判断が必要なとき。大量のデータから担当者が確認すべき候補を絞り込むとき。こうした課題は、ルールやロジックだけでは歯が立たず、長らく「人間がやるしかない」とされてきたものです。
AIはその壁を越えつつあります。だからこそ、プロダクト体験を大きく変える可能性がある。
だからこそ必要なのは、AIへの過度な期待でも、過度な懐疑でもなく、適切な役割分担の設計です。
AIに何を任せるか。何をルールで設計するか。どこに人間の確認を残すか。
この見極めが、これからのPdMにはますます重要になります。
AI機能開発は、業務理解を省略するためのものではありません。むしろ、より深い業務理解が求められます。お客様の業務を理解し、期待される結果を定義し、AIの強みと限界、今後の発展を見極めながら、現実的に価値あるプロダクトに落とし込むことが大切です。